† Kiss †






 ―――― その血が、とても甘いことは知っていた。
 芳しいその香りに惹かれるように、黒い森を抜け、お前の姿を見つけた。
 そして―――― 振り返ったお前に、私は心奪われたのだ・・・。


 ―――― 私には、やってみたいことがある・・・。
 どんな化粧より、どんな衣装より、どんな宝石よりも、私をキレイにするもの・・・それを、手に入れること。
 それを、見つけた。
 それは今、私の手に届くところにある―――― だけど・・・・・・。


 視線が絡んだ・・・・・・紅い、目だ・・・・・・。


 コロシタイ・・・ころしたい・・・殺したい・・・・・・・・・!


 しっかりと手綱を握っていないと、暴走しそうになるこの欲求。
 互いに血走った目で、熱い視線を絡めあう。


 アイシタイ・・・あいしてる・・・愛してる・・・・・・・・・?


 どちらが真に望んでいることなのか、自分ですらわからない。
 そっと、手を伸ばすと、あちらも手を伸ばしてきた。


 絡み合う、指。
 重なった、手のひら。
 引き寄せあう、腕・・・・・・。


 ・・・・・・どうしてお前は・・・・・・。
 ・・・・・・なぜあなたは・・・・・・。


 私の、敵なのだろう・・・・・・。


 殺すべき相手・・・なのに、こんなにも愛しい・・・・・・・・・。


 ―――― もしかして、私の正体さえ、隠しおおせれば・・・!
 ―――― きっと、お前の正体にさえ、気づかなければ・・・!


 私たちは、共にいられるのではないか・・・・・・・・・・・・?


 アイシタイ・・・あいしてる・・・愛してる・・・・・・・・・!


 甘い血の香りを放つ女・・・・・・。
 危険な毒牙を持つ男・・・・・・。


 誘惑に抗うすべもなく、引かれるように身を寄せ合う。
 絡み合う視線―――― 殺意に満ちた、紅い瞳を閉じよう・・・・・・今だけは。


 コロシタイ・・・ころしたい・・・殺したい・・・・・・・・・愛しい人・・・・・・・・・。
 アイシタイ・・・あいしてる・・・愛してる・・・・・・・・・殺すべき者・・・・・・・・・。


 紅い視線の代わりに、熱い吐息を絡めて、互いの存在を確かめ合う。


 アイシタイ・・・あいしてる・・・愛してる・・・・・・・・・!


 この暗い森に閉ざされた、孤城の中で、いつまでもいつまでもいつまでも・・・・・・。
 ただあなたと、熱い吐息を絡めていられるのなら・・・私は、誰を裏切ってもかまわない・・・・・・・・・。



 この暗い森に閉ざされた、孤城の中で、いつまでもいつまでもいつまでも・・・・・・。
 ただお前と、熱い吐息を絡めていられるのなら・・・私は、このまま朽ち果ててもかまわない・・・・・・・・・。


 アイシタイ・・・あいしてる・・・愛してる・・・・・・・・・
 ただそれだけのことが、どれほどの罪だと言うのか・・・・・・!


 首筋に当たった、熱い吐息・・・・・・毒牙の感触に、私は微笑った。
 ―――― あなたを・・・愛したかったのにな・・・・・・


 喉に流れ込む、甘い血の味に、私は泣いた。
 ―――― アクマでもやはり・・・お前を愛している・・・・・・


 彼の涙を見て、やっと気づいた・・・。
 ―――― アイシタイ・・・だなんて、馬鹿ね。
 そんなの、とっくに愛していた・・・・・・。
 私だけの吸血鬼・・・・・・。
 祝福を、ありがとう・・・・・・。
 私の魂は、あなたによって救われたの。
 私の身体は偽物だけど、私の心は嘘じゃなかった・・・。


 ―――― 偽りではなかったと信じている、と言えば、お前は笑うだろうか・・・?
 だが、私はお前の、最期の言葉を聞いた・・・・・・。
 夢であったと言うなら、それでも構わない。
 私が、お前を愛した事は真実・・・・・・・・・。


 アイシテル・・・あいしてる・・・愛してる・・・・・・・・・


 安らかに眠れ、我が愛した女よ。
 その骸は、花の中に散り消えても、お前の姿は、いつも我が胸の中に――――・・・。





Fin.

 










L’Arc〜en〜Cielの『抒情詩』を、3日ばかりエンドレスで聴いていたらですね、なんとなく、クロウリーとエリアーデのシリアスが書きたくなりまして。
それでも、『まぁ、思いつくまでは保留ね』と思っていたのに、ベッドに入った途端、冒頭分が思い浮かびまして。(AM3時だよ、3時!!)
『起きたら書こう』と思っていたのに、どうしても気になって、今度は眠れなくてですね!
仕方なく、起き上がってPCを立ち上げ、書いてしまいました。(現在AM4時45分です)
・・・・・・そうね、吸血鬼って、夜の住人だもんね・・・・・・(涙)
ちなみに、推敲して背景など決めて、アップできる状態になったのがAM5時20分。
あー・・・。
なんか、カラスが鳴いてるなぁ、と思ったんだぁ・・・・・・・・・・・・。












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