† 夢見がち小説 †
おぉPrintemps! それは全てのものが光り輝く季節・・・。 「なんだ、プランタンって!春って言え、春って!」 霞たなびく東国の、薄紅の花咲く樹の下で、私達は出会った。 緋色の衣を纏い、艶やかな黒髪を肩に流した童―――― 幼いながら、整った顔立ちはまるで人形のようで、手を差し伸べれば紅葉のように愛らしい手が乗せられた。 「いい年したオヤジがなに気色悪ィ美化してやがんだ!」 『一緒に来るかい?』 私が問うと、嬉しそうに笑い、愛らしく頷いた・・・! 「いつ!誰が!嬉しそうに笑って愛らしく頷いたんだよ!記憶捏造してんじゃねぇ!!」 愛しい我が子・・・! そう、その時からこの子は、私のいとし子となった。 「意味同じじゃねぇかよ!ってか、いつ俺がアンタの子供になったんだ?!」 ユウ・・・私の大事な、可愛い息子・・・ 「ふざけろこのオヤジが!寝ボケんのも大概にしろ!!」 Primavera! それは全てのものが光り輝く季節・・・。 「ア・ン・タ・も・か!プリマヴェーラってアンタ、アメリカ人だろうが!スプリングって言ったらどうだ!」 咲き初めたバラの香る季節、私達は出会った。 「俺が欧州に着いたのは夏だったよなぁ?!」 まだ幼い顔立ちはふっくらと愛らしく、しかし、毅然とした物腰はいずれ美女となる器に違いないと確信した。 「誰が美女だ!俺は男だっつってんだろ!」 名を呼べば、嬉しそうに笑って駆けてくる・・・まるで、仔犬のように可愛い我が子・・・! 「誰が犬っコロだ!!言っとくが駆けてったのはまだ、英語が聞き取れなかったからだ!!」 私が必ず、立派なレディーにしてみせる・・・! あの日の誓いは忘れない。 「忘れろ! ってか、俺は男だっつってんのに、アンタは目が悪ィのかアタマが悪ィのか、どっちだ!!」 それから数年後・・・ある春の、穏やかに晴れた日だった。 美しく整えられた庭には春の花々が咲き誇り、華やかな芳香を振りまいている。 クラウドは、庭に置いた白いテーブルに頬杖をつき、楽しげな小鳥たちの歌を聴いていた。 と、不意に鳥達が歌をやめ、軽やかな羽音を響かせる。 「おや、邪魔してしまったかな」 穏やかな笑みを浮かべるティエドールに、クラウドはゆっくりと首を振った。 「フロワならば、鳥達もすぐに戻ってくるだろう」 どうぞ、と、手を差し伸べると、画家元帥は軽く会釈して、日当たりのいい場所にキャンバスを据える。 と、クラウドの言った通り、彼の穏やかな雰囲気に安心して、一度は枝を離れた鳥達が戻って来た。 「いい天気だねぇ」 「あぁ・・・」 再び歌い始めた鳥達の声に耳を澄まし、ゆったりとまぶたを閉じたクラウドの前髪を、暖かな風がくすぐる。 「そう・・・フロワ、お前のモデルだが・・・・・・」 今にも眠りそうにゆったりと、クラウドが言った。 「もうすぐラウが、導いてくる・・・」 彼女の言葉が終わらないうちに、美しい庭にふさわしい、美しい娘の姿が現れる。 クラウドの白いナイトに手を取られ、優雅に歩を進める様は、それだけで一幅の絵のようだった。 「・・・って、なにしやがるかこのクソ猿が!!放せ!!」 巨大化したクラウドの愛猿、ラウ・シーミンに羽交い絞めにされ、連行された神田が足を踏み鳴らして怒鳴るが、 「ユー君」 嬉しそうに笑って、ティエドールは愛息子を迎える。 「来てくれたのかい?」 「これが来てくれたってザマか!!さらわれたの間違いだろうがこのクソメガネッ!」 激怒のあまり、 顔を赤らめた愛息子を愛しく見つめながら、ティエドールは柔らかく手を差し伸べた。 「あぁ、照れなくていいんだよ。 君はそのまま、いつも通りいてくれればいい」 「誰が照れてんだよッ!放せコノヤロー!!!!」 漲る殺気と激しい怒号に、怯えた鳥達が慌てて枝を離れる。 「ふふ・・・ お前の美しさに、鳥達も恥ずかしがって姿を隠してしまった」 クラウドもその、愛らしい様に笑みを漏らすと、ユウははっとして彼女を見遣った。 「アンタも笑ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」 その様があまりにも愛しく、クラウドは歩み寄って、艶やかな黒髪を手に取る。 ラウに激しく抵抗し、暴れたため、見るも無残にボサボサになった ユウの髪の、その感触を楽しむように、指の間に滑らせた。 「いたずらな風に撫でられたのだね、ユウ。 さぁ、ママが梳いてあげよう」 「あぁっ?!ちげぇよ!風じゃなくてあんたのサルだ!!」 忌々しげに頭を振るが、クラウドは抵抗を許さず、ラウに神田の首を締めさせる。 「ほら、じっとおし。 いつまでもおてんばだな、ユウは」 「・・・・・・・・・」 首が折れる寸前まで締められ、さすがの神田が落ちた。 「ふふ 久しぶりに、可愛い娘を飾ってあげよう 甘えるようにしなだれかかるユウを優しく抱きしめ、クラウドは今まで自分が座っていた椅子に座らせた。 「クラウド、ユー君は・・・」 死んだんじゃないか、と、不安がる ティエドールに、クラウドはあでやかな笑みを向ける。 「いいだろう? ホラ、ユウだっていいと言っている」 クラウドがユウの頬を撫でると、ユウはこくりと頷いた。 「・・・それ、意識ないよね?」 「さぁ、ママが髪を梳いてあげよう」 ティエドールの言葉を無視して、 ユウと並んで座ったクラウドは、彼女にもたれかかる彼の長い髪をひと房ずつ取り、丁寧にくしけずる。 「いい子だね、ユウ・・・ まるで、幼いあの頃に戻ったかのようだ」 愛らしい子だった、と、クラウドの呟きに、ティエドールも懐かしく微笑んだ。 「あぁ、とても愛らしい子だったよ。 もっとも・・・」 「その愛らしさは、今でも変わらない、だろう?」 ティエドールの台詞を先取り、クラウドが微笑む。 「フロワ、どうかこの姿を・・・」 「あぁ、キャンバスにとどめよう」 いとし子を見守る親達の暖かな雰囲気に惹かれ、いつしか鳥達も戻って来た。 煌めく日の光に、透き通る新緑の緑―――― 花々は咲き誇り、香気が春の風を洗う・・・。 穏やかな時間は、一枚のキャンバスの上に、永遠にとどめられた・・・・・・。 やがて・・・ 「・・・っておいぃぃ!!!!人の首絞めて落とした挙句に、なにやってんだあんたはッ!!」 暖かな日差しの中、穏やかな眠り就いていたユウが目を覚まし、クラウドに擦り寄った―――― いや、正しくは詰め寄り、彼女の胸倉を掴んだ。 「俺は男だっつってんだろうが!!なんだこのカッコ!!人が寝てる間に着替えさせてんじゃねぇぇぇぇっ!!」 「可愛い娘・・・ お前のために、外国から取り寄せたレースで作ったドレスだよ 気に入ってくれたか?」 「気に入るかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 恥ずかしげに頬を染めたユウはとても愛らしく、クラウドは満足げに微笑む。 「ここに、リナリーがいればいいのに。 おそろいのドレスを着て並べば、さぞかし愛らしい姉妹だろう」 ほぅ・・・と、うっとりとため息をついたクラウドに、ティエドールが笑みを浮かべた。 「では、リナリーをここへ呼ぼう」 ほら、と、ティエドールが筆先で示したキャンバスには、クラウドを挟んで両側に、愛らしい娘達の姿が描かれていた。 「なに余計なことしてんだこのクソオヤジがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 怒号と共に、キャンバスを切り裂こうとした神田を、ラウが再び羽交い絞めにする。 「すばらしいぞ、フロワ! 私の一生の宝だ・・・!」 「燃やせ!そんなもんすぐに燃やせぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」 顔を赤らめたユウに、ティエドールは微笑んだ。 「照れなくていいんだよ、ユー君 さぁ、まだママに甘えておいで」 にこやかに言って、ティエドールは新たなキャンバスを据える。 「させるか!!」 と・・・神田が抜き放った刃の巻き起こした 風に、キャンバスが吹き飛ばされた。 「あぁ、春のいたずらな風だ」 「本当に・・・」 にこりと、微笑んだクラウドの目が、妖しく光る。 「さぁ、ユウ? もう少しお眠り」 ごきっと、折れたのではないかと思う音を立てて、神田の首が曲がった。 「・・・・・・・・・」 暖かな日差しに包まれて、ユウは再び眠りにつく。 クラウドはユウの頭を抱きよせ、艶やかな髪を優しく撫でた。 「可愛い子・・・ いくつになってもお前は、私の可愛い娘だよ」 慈母の笑みを浮かべた彼女に、ティエドールはもう、何も言わない。 ただ、白いキャンバスに筆を乗せ、春の女神達のような二人の姿を描いていった・・・・・・。 ―――― 春の陽も傾きかけた頃。 「ふふ・・・ようやく目を覚ましたか、お姫様 未だぼんやりとしたユウは、クラウドに頬をすり寄せられ、くすぐったそうにした。 「・・・花畑が見えた」 小さな声の呟きに、クラウドは笑みを深める。 「そうか、いい夢を見たのだな」 「明らかに臨死体験だろっ!!」 ぎゅっと抱きしめられて、ユウは頬を染めた。 「放せこのヤロ・・・っ!!」 「まだ眠り足りないのか?」 クスクスと笑って、クラウドはレースのリボンを編みこんだ黒髪を撫でる。 「今日はまた、たくさんの宝物をいただいた」 「・・・っあんたまさか、写真まで撮ったんじゃないだろうなっ?!」 クラウドはあでやかに微笑み、満足げに頷いた。 「この宝を胸に、また戦場に赴ける」 「置いてけ!そんな忌々しいもん、ネガごと燃やしちまえ!!」 クラウドは、なだめるようにユウの頬を撫で、笑みを深める。 「お前のために・・・お前に残された命が安らかであるように、ママは戦うからな?」 最後にぎゅっと抱きしめ、立ち上がったクラウドを、ユウは見あげた。 「待て!絵と写真とネガを・・・っ放せッつってんだろクソ猿――――――――!!!!」 ラウに再び羽交い絞めにされ、動けない ユウに、クラウドは優しく微笑む。 「そんなに心配するな。 お前のためにも、私は生きて帰ってくる」 「まっ・・・!!」 待て、と言う絶叫は、背後から伸びたラウの手で塞がれた。 「では、また会おう、可愛い娘。 それまで、ユウを頼むぞ、フロワ」 「あぁ」 戦場へ赴こうとする彼女へ、ティエドールが寂しげに微笑む。 「生きて帰っておいで、ユー君のためにも」 「もちろん」 肩越しに・・・足を踏み鳴らして怒り狂う ユウを見遣り、クラウドは微笑んだ。 「見送り、ありがとう」 「ぜってぇ帰って来いよ!!」 ひらりと、手を振るクラウドの背中に、ラウの手を振り解いた ユウが手向けの言葉を放つ。 「写真持って帰って来い!!ぜってぇ取り返して、燃やしてやる!!」 足を止めたクラウドは、くすりと笑みを漏らすと、もう一度手を振って、春の陽に輝く庭を後にした。 あぁPrimavera! それは全てのものが光り輝く季節・・・。 黄金に輝く昼下がりの煌めきは、キャンバスの上にとどめられた。 永遠に・・・・・・。 「なわけあるか!とっとと燃やせ、そんなもん!!」 「やだよ、せっかく描いたんだもーん♪」 神田が繰り出した剣戟を、舌を出しつつ遮って、ティエドールは自分史上最高の絵を手に、黒の教団本部から逃走した。 Fin. |
| エイプリルフールにちなみ、元帥二人の夢小説ならぬ『夢見がち小説』でした(笑) ティエ様とクラウド元帥のユウたん萌え妄想ですよ さぁ、信じがたい夢と寒気がするほど耽美な世界を堪能された後は、ぜひとも文字反転して、行間の白文字を読んでみてください(笑) 耽美世界が、途端にギャグに変わります(笑) 実はこのやり方、私が考えたのではなくて、以前幻水の祭に参加した時に、別の作家さんが使ってらした方法なんですよ(笑) 非常に面白くて、印象に残っていたんですが、『エイプリルフールはなにしようかなぁ』と考えていた時にふと思い出しまして、D.グレバージョンでお送りしました★>無断ですみません;;; 執事シリーズに神田さんが出てなかったのは、こっちが神田さん中心だったからさ(笑)>あんたフェイクも大概にしなさいよ; |