† KaleidoscopeV †
〜 The Mistletoe 〜





 パァン・・・!と、パーティ会場に鋭い音が響き渡った。
 驚きのあまり、音楽を奏でる手が止まり、ざわめきすら消えて、目は殴った女と殴られた男に集まる。
 「馬鹿っ!!」
 涙声をあげるや、女は踵を返して部屋を出て行った。
 凍りついた時の中、一人、靴音を高く響かせて、クラウドが視線の中心に歩み寄る。
 公爵夫人にふさわしいドレスの裾をたくし上げた彼女の、白い脚に目を奪われたのも一瞬、鞭のようにしなったそれが男を血だるまにした。
 「なにをボーっとつっ立っとるか、ユウ!!
 女性を泣かすとはけしからん!さっさとエミリアを追いかけろ!!」
 恫喝がびりびりと部屋を震わせたが、誰もが心中に首を振る。
 いくら不死身とは言え、元帥の蹴りを食らった神田が、そう簡単に起き上がれるとは思えなかった。
 が、白い衣装を血に染めて、むくりと起き上がった彼に皆、一斉に息を呑む。
 会場の視線を一身に集めた神田は、無言で踵を返し、袖をひらめかせながら駆け出て行った。
 その様に誰かが手を打つ。
 と、周りの者が続き、徐々に伝播して、間もなく会場は万雷の拍手に満たされた。


 「ちっ・・・」
 背後の歓声に舌打ちし、神田は先に会場を出たエミリアを追いかけた。
 「なんで俺がこんなこと・・・・・・」
 ぼやいているうちに、本気で逃げる気などなかった彼女にあっさりと追いつく。
 「エミリア・・・」
 呼びかけると、豪華なドレスをまとった彼女は振り返って苦笑した。
 「ごめん、痛かった?」
 「お前じゃなく、元帥の蹴りがな」
 打ちあわせくらいしとけ、と、ぼやく彼に歩み寄り、エミリアは神田の頬に触れる。
 「リナリーのことが心配なんでしょ?」
 「・・・・・・あぁ」
 薄暗い廊下では、彼の表情は見えにくかったが、その声には苛立ちや焦り、そして何よりも気遣わしさが滲んでいて、エミリアは苦笑を深めた。
 「すまない」
 「妹相手じゃ、敵わないなぁ・・・」
 謝った神田に一つため息を漏らすと、エミリアはからりと笑って頷く。
 「探しに行きなよ、お兄ちゃん」
 「いいのか・・・?」
 意外そうに問い返した彼に、エミリアはもう一度頷いた。
 「いいも何も、辛気臭い顔で隣に突っ立ってられちゃ、こっちが楽しめないわ!」
 それに、と、軽くウィンクする。
 「あたしだってティモシーがいなくなったら、心配でパーティどころじゃないと思うもの」
 「・・・お前の心配は別もんだろ」
 「あら、同じよ!」
 言外にレベルが違う、と言った彼に、エミリアは鼻を鳴らした。
 「リナリーがどんなおてんばか、よくは知らないけど、ティモシーのやんちゃぶりはよっく知ってるわ!
 お互い、弟妹にはやきもきさせられるわね」
 くすりと笑みを漏らし、エミリアは踵をあげる。
 「・・・口紅がついたろ」
 「つけてやったのよ!」
 頬を拭う神田に、エミリアはいたずらっぽく舌を出した。
 「それと、この埋め合わせはちゃんとしてもらうからね!」
 「だろうな」
 諦めきったため息に、エミリアはムッと眉根を寄せる。
 「なによ!何かご不満?!」
 「別に・・・」
 「じゃあ、ちょっとは嬉しそうな顔しなさいよ!」
 「なんでだ?」
 「こんな美人とデートできるのよ?!
 男なら喜んでしかるべきだわ!」
 「は?!
 デートって、いつの間にそんなことになってんだ?!」
 「埋め合わせしろって言ったじゃん!」
 物分りの悪い神田にやや苛立ちながら、エミリアは彼の襟を掴んだ。
 「どうすんの?!
 これから一緒に会場に戻る?!後日あたしとデートする?!
 二者択一よ!」
 「・・・・・・わかった、デートする」
 最早そうとしか言えず、神田は顔ごと視線を逸らして頷く。
 「よし!」
 満足げに笑ったエミリアは、神田から放した手を軽く振った。
 「じゃあ、がんばってね、妹探しv
 「あぁ・・・」
 乱れた襟を正し、神田が彼らしくもなく、戸惑い気味に頷く。
 「楽しみにしてるわv
 その言葉には答えず、神田は踵を返して回廊の奥へと消えていった。
 ――――・・・それがハロウィンパーティでの出来事。
 約束はしかし、神田の任務が続いたこと、そしてエミリア自身の忙しさもあって、12月の今まで果たされてはいなかった。
 そろそろ決めないと忘れられるな、と、エミリアが危機感を抱いた丁度その時。
 任務から帰ったばかりでまた派遣命令を受けたミランダが、方舟の間でがっかりと肩を落としていた。
 「ど・・・どうしたの、ミランダ?」
 エミリアが驚いて駆け寄ると、ミランダは蒼白い顔に涙を浮かべて、切なくため息をこぼす。
 「もう・・・12月も半ばなのに、クリスマス市にいく暇がないなんて・・・!」
 「・・・・・・・・・はい?」
 なにか場違いなことを聞いてしまった、と、エミリアが問い返すと、ミランダはまたもため息をこぼした。
 「去年は皆さんが張り切って、クリスマスツリー用の樅の木をたくさん仕入れてくださったんです・・・。
 なのにクリスマス市にオーナメントの補充に行っても結局、全然足りなくて・・・。
 今年も同じくらい、樅の木を仕入れてるって言われたのに、私全然、準備する暇がないんです・・・・・・!」
 「あー・・・そりゃ残念よねぇ・・・・・・」
 エミリアもカトリック教徒だけに、クリスマスが大事なイベントであることはわかる。
 だがしかし、
 「クリスマスツリーって、そんなに大事?」
 と、遠慮なく言った彼女に、ミランダははらはらと涙をこぼした。
 「ごっ・・・ごめんミランダ、泣かないで!!
 だっ・・・だってホラ、ツリーってドイツの風習だからあたし、あんまり馴染みがないのよ!
 ね?!わかるでしょ?!」
 「そう・・・ですね・・・・・・」
 慌てたエミリアに頷き、ミランダは涙を拭う。
 「でも・・・パリにだってクリスマス市は立つんでしょう?」
 途端、エミリアがぱぁっと表情を明るくした。
 「パリのマルシェは最高よ!
 クレーシュって言う、降誕をモチーフにした人形が可愛くって、毎年どれにしようかすっごく悩んじゃうの!
 忙しいってぐちぐち言うパパを引っ張り出して、あたしはヴァン・ショー(ホットワイン)、パパはグロックを飲みながら市を冷やかすのよ!
 あぁ、忙しくてうっかりしてたけど、ちょうど今がシーズンなんじゃない!
 すっごく行きたくなっちゃったv
 「だったら・・・」
 細い手を組み合わせ、期待に満ちた目でミランダはエミリアを見つめる。
 「私の代わりに、オーナメントを仕入れてきてもらえませんか?」
 「そうね!
 今、買い物なんかに行けるのはあたしだけだもんね!」
 「す・・・すみません、押し付けちゃって・・・それと・・・・・・・・・」
 申し訳なさそうな顔をするミランダに、エミリアは耳を寄せた。
 「なぁに?」
 「あ・・・あの、こんなことまで頼んで申し訳ないんですが、アレン君にお誕生日プレゼントをあげたいんで、なにか選んできてくれませんか・・・?」
 「アレンに?お誕生日、近いの?」
 問い返すと、ミランダはエミリアから目を逸らして頷いた。
 「えぇ・・・本当のお誕生日はわからないそうなんですが、クリスマスに拾われたからって・・・・・・」
 「あぁ、なるほど・・・」
 孤児院で子供達の世話をしていたエミリアは、事情を察してそれ以上聞こうとはせず、あえて明るい声をあげた。
 「グッドタイミング!
 グッドタイミングよ、ミランダ!
 とうとうあいつに約束を果たしてもらう日が来たわ!」
 「や・・・約束・・・ですか・・・・・・?」
 何のことだろうと、おどおどと問い返せば、エミリアは更にぐいっと身を寄せる。
 「ハロウィンの時に勝ち取った、デートの約束よ!!」
 「え?!まだだったんですか?!」
 ミランダは目を丸くして、頓狂な声をあげた。
 冷厳だが律儀な神田と、強引で自己主張のきっぱりしたエミリアのこと、とっくに済ませていると思っていたのだ。
 「なによ。
 済んでたらとっくにのろけてたわよ」
 けろっとして言った彼女に、ミランダは真っ赤になった顔でこくりと頷いた。
 「そ・・・それじゃあの・・・・・・」
 「シャンゼリゼデーット!
 毎年パパと一緒だったから、すっごく嬉しーわvv
 ねぇ!どうせだからアレンのお誕生日プレゼント、あいつに選ばせちゃおうか!
 すっごく仲悪い二人を仲良く・・・させるのは無理だろうけど、クリスマスくらい、ケンカしない雰囲気にはしなきゃ!」
 握ったこぶしを振り回して、大張きりの彼女を、もう誰も止めることはできない。
 しかし、
 「あの・・・でも肝心の神田君がまだ・・・」
 帰ってないんじゃないかしら、と続けようとしたミランダの背後に向かって、エミリアが大きく手を振った。
 「神田おかえりー!」
 「えぇっ?!」
 強引な彼女には運も味方するのか、あまりにもタイミングよく通りかかった神田に、ミランダが呆気に取られる。
 「かっ・・・神田君、お仕事終わったのっ?!」
 「終わんなきゃ帰ってくるかよ」
 なぜそんなことを聞くのかと、訝しげな神田にエミリアが早速駆け寄り、彼の腕を取った。
 「あのね、ミランダがクリスマスのオーナメント買って来て欲しいんですって!
 神田、あたしとデートするって約束、まだ覚えてるわよね?
 早速シャンゼリゼに行きましょ!」
 説明をすべてすっ飛ばし、ポイントだけで要求を伝えたエミリアに、呆気に取られていた神田が我に返る。
 「・・・っおい!
 今、俺に触るな!アクマの血がついてんだぞ!」
 「アラ!」
 乱暴に手を振り払った神田が珍しく慌てているように見えて、エミリアは嬉しげに笑った。
 「お気遣いありがとv
 じゃあ、早く血を流して、着替えてきて!
 パリとは時差が1時間あるけど、早く行くに越したことないもの」
 「パリ?」
 勝手に話を進めるエミリアにうんざりしていた神田は、その地名を聞いて眉をひそめる。
 「クリスマス市に行くんなら、ドイツじゃねぇのか?」
 「パリにだってクリスマス市はあるのよ!
 あたし、あんたとシャンゼリゼでデートしたいの!」
 きっぱりと言ったエミリアに、神田は軽く吐息した。
 「・・・そんなん、先週行って来たぜ。
 別に普通の通りだろ」
 エミリアはその無遠慮な言葉にカチンと来る。
 「あんた、パリ一美しい通りになんてこと言ってくれてんのよ!!」
 パリ市民として当然の反駁に、しかし、神田はイライラと眉を吊り上げた。
 「通りは整ってるが、その脇にウザったらしい奴らが大勢たむろしてんじゃねぇか!」
 「あれは芸術家達よ!!」
 「日がな一日コーヒーと菓子でだべりやがって仕事しろ仕事!!」
 「あぁやって互いに議論して、インスピレーションを高めるのが彼らのやり方なの!」
 「暇なオヤジ1号2号3号だろ!!」
 「ティエドール元帥だって芸術家じゃない!」
 「オヤジを間近で見てっからよけいにウザったらしいんだよ!!」
 「芸術家馬鹿にする人間は野蛮人って言われるのよ!!」
 「あんな暇人ども理解するくれぇなら、野蛮人で結構だってェんだ!!」
 激しく言い合う二人に、誰もが口さえ出せない。
 「は・・・班長は・・・?」
 「班長どこ・・・?」
 もう、こうなったらあの人しかいないと、皆がきょろきょろとリーバーの姿を探した。
 と、誰かが無線で呼んだのか、科学班研究室奥の室長執務室から、リーバーが出てくる。
 「おい!!
 やめろそこの怪獣二匹!!」
 大声で叱ると、雌怪獣が振り返った。
 「誰が怪獣よ!」
 「お前だろ」
 「お前もだ!」
 神田の頭にげんこつを落とし、リーバーは腕を組んで二人を見下ろす。
 「怪獣が暴れると、ウチの繊細な姫が怯えるんだよ!
 デートでもなんでもとっとと行け!」
 その発言に、神田とエミリアの目がミランダに向けられた。
 お前が呼んだのか、と、無言の圧力を受け、怯えたミランダを更にリーバーが背に庇う。
 「神田、今回の報告書は後でいいから、今はお前の姫を連行しろ」
 「こいつが姫って柄か?」
 「なによ!文句ある?!」
 「大ありだ馬鹿!」
 「あんたそれ、レディに向かって言う言葉?!」
 「レディなんてどこにいんだよ!」
 「ここにいるじゃない!あんた目ェ悪いのっ?!」
 「いい加減にしろ!」
 ぎゃあぎゃあと喚き合う二人を引き離し、リーバーは怖い顔で見下ろした。
 「これ以上ミランダを怯えさせたら、二人とも吊るすぞ!」
 忌々しげに舌打ちした神田と、唇を尖らせ、黙り込んだエミリアを、リーバーの背後からミランダがそっと窺う。
 「あ・・・あの、楽しんできてくださいね・・・・・・」
 「これとっ?!」
 互いを指して怒鳴った二人にミランダが飛び上がった途端、リーバーが伸ばしてきた手から、二人は慌てて逃げ去った。


 その後、エミリアに急かされて身支度を整えた神田は、強引に腕を引かれて方舟の間に連行された。
 「へぇ〜・・・ホントに行くんだぁ・・・!」
 意外そうに笑うジョニーの傍ら、ジジがにやにやと二人を眺める。
 「あのちっさかった神田にカノジョができるなんて、感無量だな、コリャ」
 「バカ言ってんじゃねぇよ、クソオヤジ!」
 「おぉー?
 照れちゃってかわいーなオイv
 神田の膨れた頬を、ぷにぷにとつつくジジに、ジョニーが乾いた笑みを向けた。
 「それ以上やると斬られるよ、ジジ・・・。
 それで?
 どこ行くの?」
 ジョニーの問いに、エミリアが豊満な胸を張る。
 「もちろん・・・!」
 「ニュルンベルク」
 「なんでっ!」
 神田が差し挟んだ地名に、エミリアが眉を吊り上げた。
 「シャンゼリゼでデートしたいって言ったでしょお!!」
 「オーナメントの仕入れに行くんだろうが!
 だったら慣れた土地の方が手っ取り早いだろ!!」
 「デートで手っ取り早いとか言わないでよ!!」
 「嫌なら来んなっ!!」
 「なによ!約束破る気?!」
 「じゃあ黙ってついて来いっつってんだ!!」
 「お前ら・・・ホントにデートか?」
 激しく言い合う二人に、ジジが呆れ声を漏らす。
 「神田、お前全然なっちゃいねぇよ・・・。
 女の子エスコートする時はもっと優しくだな・・・」
 「るっせぇ、ジジィ!」
 「誰がジジィだコラ!ジジさんだジジさんだろジジさんと呼べ!」
 首に回した腕でぐいぐい締め上げてくるジジからなんとか逃れ、大きく息をついた神田はエミリアを見遣った。
 「どうすんだ?!」
 決して引かないと、強い眼光で言う神田に、エミリアが頬を膨らませる。
 「・・・・・・わかった。
 ニュルンベルクでいい・・・・・・」
 不承不承ながらエミリアが言うと、その場の全員が顎を落とした。
 「エ・・・エミリアが折れた!!」
 「やっぱ神田すげェェェェ!!」
 「これが絶滅危惧種の亭主関白って奴か!!」
 「サンプル取っとけサンプル!!」
 バシバシとフラッシュをたいて写真を撮り始めた科学者達に、神田がうるさげに手を払う。
 「遊んでんじゃねぇよ!
 とっとと暗証番号渡せコラ!」
 「う・・・うんっ・・・!」
 胸倉を掴まれ、凄まれたジョニーがぶるぶると震えながら頷いた。
 「オラ、行くぞ!」
 「わかったわよ!」
 さっさと先に行く神田を追いかけ、エミリアが彼の腕を取る。
 「くっつくんじゃねぇよ!」
 「いいじゃない、腕くらい!」
 怒鳴りあう二人に怯えていた科学者達も、腕を振り解かない神田と身を寄せるエミリアの姿が、段々微笑ましくなってきた。
 「がんばれよじゃじゃ馬ならし!」
 「誰がじゃじゃ馬よ!!」
 誰かがかけた声に、エミリアが鋭く言い返すが、
 「置いてくぞ!!」
 と腕を引かれて素直についていく。
 「・・・・・・お似合いなんじゃないかな?」
 「神田にゃ、あれくらい強い娘っ子じゃないと無理だろうしな」
 苦笑するジョニーとジジの言葉に、皆が一斉に頷いた。


 「寒いっ!!パリより寒い!!」
 扉の設置場所となった教会を出た途端、非難めいた口調で言ったエミリアは、ますます神田の腕にしがみついた。
 「・・・おい、少しは離れろよ」
 「だって寒いんだもんっ!」
 離れようとした神田に、エミリアが更にしがみつく。
 あからさまな口実に、しかし、神田は気づかないのか、軽く吐息しただけで歩を進めた。
 と、灰色の空から、ロンドンのそれよりも大きな雪粒が綿のようにふわふわと降りて来て、神田の黒髪を柔らかく飾る。
 「ふふふv
 唐突に笑い出したエミリアを、神田が訝しげに見た。
 「どうした?」
 「だって、キレイなんだもんv
 その言葉には、ムッと眉を寄せた彼に、エミリアはまた笑う。
 「あんたじゃないわ、クリスマス市がよv
 わざとはぐらかしてやると、神田は一瞬、気を呑まれたように目を丸くして、『そうか』と呟いた。
 「こんなきれいな街をデートできるなんて嬉しいv
 さっきまでの不機嫌はどこへやら、くすくすと笑うエミリアは、とても楽しそうだ。
 「ねぇねぇ、別にすぐオーナメント仕入れなくていいんでしょ?
 ちょっとお茶していこうよーv
 「無茶言うな。
 カフェなんざどこも、ごった返してんだろうが」
 言われて見回せば、大きな広場の周りにあるカフェはどこも買い物客で溢れ、座る場所どころか、走り回るウェイターを捕まえる隙もなさそうだった。
 「残念・・・。
 でもまぁいいわ。
 屋台冷やかしましょ、屋台v
 この匂いは、きっとあると思うんだー・・・・・・」
 神田の腕を抱きしめ、きょろきょろと辺りを見回したエミリアは、暖かい湯気をあげる屋台を見つけて指差す。
 「あったわ、ヴァン・ショー!
 えぇと、ドイツじゃグリューワインって言うんだっけ?」
 シナモンや蜂蜜を入れて甘くしたホットワインは、クリスマス市には欠かせないものだが、
 「甘いもんは嫌いだ」
 と、拒む神田を、エミリアは力ずくで引き摺った。
 「あ・た・し・が・飲みたいの!!
 お姉さん!2杯!!」
 「お前だけ飲めよ!」
 「嫌よ!一緒に飲みなさいよ!」
 「甘いもんは嫌いだっつってんだろ!!」
 「あ・・・あのぅ・・・・・・」
 屋台の前で激しい怒鳴り合いをされて、怯えた売り子が震える声を上げる。
 「グ・・・グリューワインの他にも、お・・・お茶とか・・・コーヒーとか・・・・・・」
 早く消えて欲しい一心で、びくびくと言った彼女に、神田はあっさりと頷いた。
 「茶をくれ」
 「は・・・っ」
 怒気を消した神田の、驚くほど秀麗な顔に、売り子がワインのように頬を染める。
 「はい!!喜んで!!」
 大声で言うや、カウンターの向こうから飛び出てきた彼女は、エミリアを押しのけ、両手で持ったカップを神田に差し出した。
 「どうぞ!!」
 「あぁ」
 神田がカップを受け取ると、彼女は更に詰め寄る。
 「あの!
 ニュルンベルクは初めてですか?!
 あ・・・あたし土地っ子だから、案内してあげる!!」
 「いや、ここにはたまに・・・」
 言いかけた神田の腕を引き、エミリアがこれ見よがしに身をすり寄せた。
 「あたし達デート中なのv
 邪魔しないでv
 にっこりと笑っていながら、厚く積もって凍った雪のような冷たい目で見据えられ、売り子がビクッと飛び上がる。
 「行くわよ、神田!!」
 お茶代のコインを屋台のカウンターに叩きつけるや、エミリアが神田の腕を引っこ抜かんばかりに引いた。
 「ワインはいいのか?」
 「他で買うわよっ!!」
 怒り狂った雌怪獣の形相に、神田は黙って従う。
 なにが原因で怒っているかわからない女に逆らってはいけない、ということは、既にリナリーで学習済みだった。
 間もなく、
 「おじさんっ!!ワインちょうだい!!」
 見つけた屋台で大声をあげたエミリアを、強盗と勘違いした売り子が怯えてグリューワインを差し出す。
 「落ち着いたか?」
 ワインを一気に飲み干し、2杯目を手にしたエミリアに呆れ声をかけると、彼女はふくれっつらのまま頷いた。
 「自慢できるとは思ってたけど、逆ナンは想定外だったわ!」
 「は?」
 エミリアの言葉の意味がわからず問い返せば、彼女は軽く首を振る。
 「なんでもない!」
 「・・・なんでもないことで俺は、腕を抜かれそうになったのか」
 珍しく、理不尽な暴力の被害者となってしまった神田が、忌々しげに吐息した。
 「なによ。
 か弱い女の力くらいじゃ抜けないでしょ、あんたの腕!」
 「・・・・・・か弱いか?」
 ちらりと屋台を見遣ると、いかつい顔の売り子が仔ネズミのようにぶるぶる震えている。
 「か弱いでしょっ?!」
 ずいっと詰め寄ったエミリアに問われ、彼は涙目でこくこくと頷いた。
 「・・・英国とは表現が違うんだな、きっと」
 それだけ言って、神田は既にぬるくなった茶をすする。
 と、
 「なんか言った?!」
 と睨まれて、神田は軽く首を振った。
 「何も」
 エミリアといると、今まで彼が最も苦手としていた『当たり障りなく』と言う言動が急速に身についていく気がする。
 そんな自分をやや忌々しく思いながら、神田は自分の腕に縋ったままのエミリアと共に踵を返した。
 「なぁに?」
 「そろそろ仕入れに行くぜ」
 まっすぐにオーナメントの屋台へ足を向けると、エミリアが嬉しそうに笑う。
 「うん!
 どんなのがいいかしら♪」
 「お前が好きなのでいいんじゃないか」
 「いいの?!」
 「あぁ」
 それは買い物に興味がない神田の、何気ない一言だったが、エミリアは彼の優しさだと思い込んでしまった。
 「大好きっv
 「そうか」
 女は買い物好きだからな、と、全く別方向に勘違いした神田が頷く。
 「荷物持ちはしてやるから、せいぜいリストを消化できるようにがんばるんだな」
 「リスト?」
 なに?と、首を傾げたエミリアに、神田は懐から取り出した、分厚い巻紙を差し出した。
 広げてみると、それはどこまでも伸びていきそうなほどに長い。
 そして紙面にはびっしりと、オーナメントの種類と数が書かれていた。
 「一日じゃ無理よ!!」
 悲鳴をあげたエミリアに、神田は肩をすくめる。
 「それをやれってのが、今回の任務だ」
 「仕事だったの?!」
 きっとまなじりを吊り上げ、詰め寄るエミリアを、神田はうるさげに押しのけた。
 「はっきりと任務だって言われたわけじゃねぇよ。
 だが、リーバーが命じるってことはそう言う意味だ」
 「あの人・・・実は室長より偉いんじゃない?」
 裏番、と呟く彼女に、しかし、神田はあっさりと首を振る。
 「あいつがいなきゃ、本部が崩壊するのは事実だが、真の裏番は別にいる」
 「誰?」
 今後のためにも聞きたがるエミリアに、神田は無意識に声を潜めた。
 「まずは病棟の婦長。
 あの鬼に逆らえる奴はいない」
 「そ・・・そうね・・・・・・」
 エミリアは、しばらく病棟に入院していた時のことを思い出して蒼褪める。
 アクマとの戦闘に巻き込まれたエミリア達、一般人にはとても優しく、親切な彼女だったが、団員達が完治もしないうちに無茶を働こうものなら鬼と化した。
 ものすごい形相で大の男を捕まえ、軽々と引きずっていく膂力は、とても老境に入った女性のものとは思えない。
 「あの人が教団を牛耳ってる、って言うのはわかる気がするわ・・・」
 「いや、真の意味で牛耳っているのはジェリーかもな」
 「料理長が?それはないでしょ!」
 エミリアは笑って手を振った。
 「料理長はすっごく優しいわよ!」
 「ああ、だが奴を怒らせたが最後、餓死することは目に見えている」
 「・・・・・・・・・逆らえない人ってことね」
 特に神田は、と、エミリアは苦笑する。
 「でももう一人、新興勢力でフェイ補佐官も加えた方がいいと思うわよ?
 あの人、有能な上に、科学班を支配して室長の首根っこを押さえてるもの」
 「そうだな・・・」
 そして更に一人、団員としてはイレギュラーでありながら、存在感を増しているのがエミリアだ。
 「逆らうと後々面倒だ・・・」
 思わず呟きを漏らして、しまった、と思ったものの、婦長達の事だと思ったエミリアは軽く頷く。
 「あの三人とリーバー班長には、逆らわないようにするわ」
 「・・・・・・そうだな」
 勘違いしてくれたことに心底ほっとしている自分に気づき、神田はまた、忌々しげな吐息を漏らした。


 それからしばらくの後、たくさんのオーナメントを仕入れた二人は、ちょうど客の退いたカフェの席に着いた。
 「・・・ったく、お前がじっくり選びたいなんっつーから、無駄に時間食っちまったじゃねぇか!」
 家族連れが満足げな顔を並べて通り過ぎて行く様を眺めながら、神田が重く吐息を漏らす。
 そんな彼に、エミリアは眉を吊り上げた。
 「なによ!デートってのは効率よくやるもんじゃないでしょ!」
 「あ?オーナメントの仕入れのついでだろ」
 「オーナメントの仕入れがついでよ!」
 怒鳴り合う二人で声をかけあぐね、ウロウロするウェイターからエミリアがメニューを取り上げる。
 「せっかくだから、名物でもないかな!」
 「蕎麦は・・・」
 「あるかっ!」
 だんっとテーブルを叩くと、神田ではなくウェイターが震え上がった。
 「怯えてるぞ」
 「お茶とガトーショコラ!」
 メニューを押し返してウェイターを追い払うと、エミリアはテーブルの傍らに積み上げられた箱を見上げてため息をつく。
 「・・・これだけ仕入れて、まだ半分も終わらないって、どんだけ張り切ってんのよ」
 「あぁ、お前は去年、いなかったんだな」
 ウェイターが震える手で運んできた茶を飲みつつ、神田はクリスマス一色の広場を眺めた。
 「大きな部屋がツリーで埋まって、森みたいになってたぜ。
 それを城中に運ぶのがまた大仕事で、クリスマス・ミサではみんな、ぐったりしてたって言ってたな」
 「ふぅん・・・。
 教団はヴァチカン直属でしょうに、よくやるわね」
 ドイツ北部の風習だったクリスマス・ツリーが広まったのは、今の英国女王がドイツ出身だった夫のため、王宮に飾ったことが最初だ。
 ためにドイツや英国、アメリカでは人気があるが、フランス人のエミリアには馴染みがなかった。
 「ハロウィンもだけどさ、教団って宗教団体のくせに、面白いことするのね」
 「そうみたいだな・・・」
 幼い頃から教団にいた神田は、それが普通だと思っていたが、改めて言われるとその通りだと思う。
 「まぁ、やめる気はねぇんだろうけどよ」
 「あら!やめてなんか欲しくないわよ、おもしろいものv
 くすくすと笑って、エミリアはフォークで切り分けたケーキに生クリームをたっぷりとのせた。
 「ハイ、あーんv
 「は?!」
 唐突に差し出されたケーキに、神田が目を剥く。
 「なんのつもりだ?!」
 「デートだもの、ちょっとはラブラブしたっていいじゃないv
 「だからってなんで・・・いらねぇよ!」
 匂いだけで胸焼けがしそうなほどに甘いケーキを押し付けられ、神田が身をのけぞらせた。
 が、それで許すエミリアでもない。
 「仕入れのついでなんて言った罰よ!
 食べなさい!!」
 力の限り、ぐいぐいと押し付けられて、神田は食いしばっていた口を開く。
 「・・・ッ!!
 わかったから力緩めろ!!俺の喉ごと突き刺して殺す気かテメェ!!」
 エミリアの手からフォークを取り上げ、ケーキを口に入れた途端、その甘さに頭痛すら覚えてテーブルに突っ伏した。
 「おおげさねぇ!」
 「・・・その自己中心的思考、どうにかなんねぇのかよ・・・!」
 「あんたの味覚が貧弱なだけでしょ」
 教団の暴言王を一言で黙らせ、エミリアは暖かいお茶を飲む。
 「・・・ところでこの荷物、一旦、教会に運ばない?
 今にも雪崩れそうだわ」
 言われて神田が顔を上げると、積み上げられた箱はぐらぐらと揺れて、危険を察した客達が、周りのテーブルから消えていた。
 「そうだな。
 今仕入れた分は科学班の奴らにでも運ばせて、残りの買い物を・・・・・・」
 言いかけて、神田はエミリアを見遣る。
 「続きをやる前に、ちょっと馴染みの工房に寄るぜ」
 「工房?なんの?」
 ニュルンベルクは古くから工業で栄えた街だけに、様々な工房が軒を連ねていた。
 が、武器の手入れなどは一切を教団に任せている神田の馴染みのある工房となると、予想できない。
 「黙ってついて来りゃいい」
 首を傾げるエミリアに、神田はそれ以上口を開かなかった。


 教会に荷物を預け、本部に連絡して引取りを依頼した後、神田は街の中でも奥まった一角へと入って行った。
 慣れた道なのか、迷いなく先を行く彼に置いて行かれないよう、エミリアも歩を早める。
 数区画先では大きなクリスマス市が開かれているのに、ここでは浮かれた雰囲気が消え、徒弟達が淡々と日常の仕事をこなしているのが不思議だった。
 「おい、ちゃんとついて来い」
 声をかけられて、エミリアは神田に駆け寄る。
 「着いたの?」
 「あぁ」
 神田がドアを開けると、細かい糸くずがふわりと漂ってきた。
 ふと足元を見れば、床におがくずが散らばっている。
 「神田・・・・・・」
 ぽかん、と口を開けたエミリアは、目の前にずらりと並んだクマのぬいぐるみに言葉を失った。
 と、
 「か・・・神田・・・・・・」
 奥の部屋から出てきた大男が、エミリアとそっくりに口を開ける。
 「か・・・彼女か?」
 驚きすぎて、裏返った声にエミリアが我に返り、にこりと笑った。
 「妻ですv
 「そうか!それはめでたい!
 記念のクマ作るか?」
 「ぜひv
 「いらねぇよ!!」
 大声で言った神田が、エミリアを睨む。
 「お前は何くだらねぇ冗談ぬかしてんだ!」
 「ここは反応すべきかしらと思って、つい」
 ずっと子供達の世話をしてきただけあって、とっさの対処に慣れたエミリアがくすくすと笑った。
 「どんな反射だ!」
 「ち・・・違うのか・・・?」
 大真面目に信じてしまったマイスターが遠慮がちに問うと、エミリアはにっこりと笑う。
 「今は」
 「・・・あぁ、婚約中か!」
 「違ェよ!!
 お前も冗談の通じねぇ親父からかってんじゃねぇ!」
 「ごめんなさい」
 ぺろりと舌を出したエミリアに吐息し、神田はワケがわからず固まってしまったマイスターに向き直った。
 「こいつの存在は忘れてくれ。
 それより、こないだ頼んどいたもんだが・・・」
 「あ・・・あぁ・・・」
 我に返ったマイスターは、一旦奥の部屋に下がって、数体のぬいぐるみと共に戻ってくる。
 「メンテ済みだ。
 お嬢ちゃんに返してやってくれ」
 「あぁ、ありが・・・」
 「すっごぉーい!!なんて可愛いクマかしら!!」
 手を伸ばした神田をエミリアが押しのけ、マイスターの手からぬいぐるみを取り上げた。
 「これ、おじさんが作ったの?!」
 「あぁ・・・・・・」
 すっかり気を呑まれてしまったマイスターは、未知の生物でも見るような目でエミリアを見る。
 「手触りも素敵ね!!
 こんなに癒されるクマ、初めてだわ!
 夜泣きの治らないマリアンヌとか、お母さんを恋しがるシモンにあげたら、少しは違うんじゃないかしら!」
 嬉しげにぬいぐるみを抱きしめるエミリアに、神田が小首を傾げた。
 「孤児院の子供か?」
 「そうv
 ティモシーのおかげで、経営は随分楽になったんだけど、おもちゃまでは中々買ってあげられなくて・・・。
 あたしも、こんな素敵なぬいぐるみが作れたらいいんだけどな・・・」
 ふわふわの毛並みに頬をすり寄せたエミリアに、その時、にゅっと分厚い手が差し出される。
 「はい?」
 「これ、持って行け」
 目を潤ませ、ぬいぐるみの並ぶ棚を示したマイスターに、エミリアは目を丸くした。
 「そっ・・・そんな、買えないわよ、こんなに!!」
 「やるって言ってんだよ!
 クリスマスプレゼントだ!
 この棚にあるもん全部持ってけ!!」
 「え・・・えぇー・・・・・・」
 どうしよう、と、戸惑いがちに神田を見れば、彼はあっさりと頷く。
 「親父がいいっつってんだ。
 好意を無駄にすんじゃねぇ」
 「う・・・うん・・・・・・。
 じゃああの・・・ありがとう・・・・・・」
 「おう!!
 若いのにできた娘だ・・・神田、いい嫁さん見つけたな!」
 「嫁じゃねぇっつってんだろ!!」
 しみじみと言ったマイスターを睨みつけ、その眼光のまま、神田はエミリアを見遣った。
 「ラッピングは自分でやれよ」
 これ以上マイスターの手を煩わすなと、言外に言った神田に、エミリアは意外そうな顔をして頷く。
 「意外と・・・気配りとかすんのね」
 「意外は余計だ」
 むっとした彼に、エミリアがクスクスと笑い出した。
 「なんだよ・・・」
 いつも予想のつかない行動を取るエミリアを、神田が未確認生物でも見るような目で見ると、
 「だって・・・なんだかわかっちゃったんだもの」
 エミリアは笑声を収められないまま、彼に笑いかける。
 「あんた、室長やリーバー班長にも割と素直でしょ?
 だからもしかしたら、信用できる技術者や確かな腕を持つ職人とか、自分が認めた人間にはあんたなりの礼儀正しさを発揮するんじゃないかなって思ったの」
 違う?と、マイスターに小首を傾げて見せると、彼はいかつい顔に微笑を浮かべて頷いた。
 「やっぱり。
 だったらあんたが認めた職人の、大事なぬいぐるみをあげる人間は厳選されてるはずだわ。
 なんだかんだ言ってあんた、ラビのこと認めてんでしょ」
 「んなっ・・・!
 誰があんなウサギを・・・!」
 真っ赤になった神田を、エミリアが面白そうに笑ってつつく。
 「あーら?
 じゃああんたはマイスターのハイレベルなぬいぐるみを、なーんとも思ってない人にあげたの?」
 「それはないな。
 あのぬいぐるみを選んだ時のお前の顔は、真剣だった」
 「余計なこと言ってんじゃねぇよっ!!」
 大声をあげた神田に、エミリアとマイスターが笑い出した。
 「すっごい照れてるーv
 「こういう奴だが、根は悪い奴じゃないから末永くよろしくな」
 「はぁいv
 「なに勝手に決めてんだてめェらっ!!」
 悪魔も怯える怒号も、真っ赤に照れていては効力が薄い。
 それがエミリア相手ではなおさらだった。
 ずいっと身を寄せた彼女は、ほとんど真下から神田を見上げて笑う。
 「ねぇ、そんなに怒ってないでさ、リナリーとラビにあげたんなら、アレンにも選んであげなよ」
 「なっ・・・なんで俺があいつに・・・!」
 「いいじゃん、クリスマスが彼の誕生日代わりなんでしょ?」
 神田の手を取り、さぁ、と、並ぶぬいぐるみを示したエミリアに、彼は思いっきり顔をしかめた。
 「断る!
 モヤシの顔を思い出すだけでムカつく!!」
 「モヤシ?」
 その言葉に、マイスターがふと瞬く。
 「モヤシってあれか、お前んトコの新人で、戦場で甘っちょろいことばかり言って、自分の命を顧みないムカつく奴」
 「あ・・・!」
 「へーえ!
 神田って、アレンのことマイスターに話してるんだ!」
 止めようとする神田を押しのけ、エミリアがマイスターに詰め寄った。
 「他にはなんて?」
 「お嬢ちゃんにはいい顔するクセに、腹ン中は真っ黒で、よくウサギをいじめてるとか、ガキのくせに妙に意地張って、兄貴達に逆らうとか。
 だが、お嬢ちゃんをしっかり守ったところは評価していいとか言ってたよな」
 普段寡黙な職人も美人相手には口が軽くなるのか、彼がこの工房で話したことをぺらぺらと並べるマイスターに、神田は湯気をあげんばかりに紅くなる。
 「なんでそんなこといちいち覚えてんだよ!!」
 カウンター代わりの作業台をバンバン叩くと、マイスターはにやりと口の端を曲げた。
 「そりゃあ、俺がその話にインスピレーションを得たからさ!
 見ろ、このクマちゃんを!!」
 「カワイイ――――!!!!」
 どん!と、マイスターが作業台の下から取り出した白いクマに、エミリアが歓声をあげる。
 「白!白クマ!!
 なんて可愛いの!!!!」
 早速取り上げ、頬を摺り寄せて感触を楽しむエミリアを満足げに見ながら、マイスターは胸を張った。
 「名づけて!モヤシ1号!!」
 「なんでもう出来てんだ!!」
 怒鳴る神田に、マイスターはにやりと笑う。
 「お前とは随分長いつきあいだが、良くも悪くも他人に無関心だ。
 なのにモヤシのことはよく話していたし、8月にはお嬢ちゃん以外の奴に俺のクマちゃんをプレゼントしたろ。
 こりゃ、『モヤシ』の注文も入るに違いないって思ってな、まだ試作品だが、作っておいたんだ」
 先見の明って奴だな、と、得意げに言った彼を、神田が悔しげに睨んだ。
 と、その傍らで、ぬいぐるみを撫でていたエミリアが瞬く。
 「ねぇ?
 マイスターのぬいぐるみって、背中にファスナーがついてるの?
 珍しいのね」
 何気なく問うたエミリアに、マイスターは嬉しげに手を伸ばした。
 「言っただろ、試作品だってな!
 これは俺にとって、冒険中の冒険だ!!」
 夢中なものについて熱く語る男特有の、少年のような笑顔になって、マイスターはエミリアの手からモヤシ1号を受け取る。
 「実はこのクマちゃん、リバーシブルになっているんだ!」
 「リバーシブルのクマ?!」
 あまりに意外な言葉に、神田とエミリアが声を揃えた。
 するとマイスターはますます得意げに頷く。
 「いい返事だ!
 そう、このファスナーを開けて、背中部分に開いた穴からひっくり返すとだな・・・」
 太い指を器用に動かして、マイスターがぬいぐるみを裏返した。
 と、白い毛並みはたちまち黒いモヘアに飲み込まれ、ややきつい顔立ちをした黒いクマが現れる。
 「リバーシブル!!」
 驚きのあまり、また声を揃えた二人に、マイスターは満足げに笑った。
 「そう、そして肝心なのはこの耳なんだ!
 今のままなら普通の丸耳なんだが・・・」
 言いながら、彼は耳の部分を裏側から押し上げる。
 と、それは耳からティムキャンピーのそれとそっくりの角に代わった。
 「すごい!!さすがぬいぐるみ職人!!」
 「悪魔か・・・この発想はなかったな」
 盛大な拍手を送るエミリアの隣で、神田がただひたすら感心する。
 「いい仕事しただろ」
 「あぁ、これならあいつに・・・・」
 はっとして、神田は言葉を切った。
 「なによ?早く続き、言いなさいよv
 既に予想済みだろうに、あえて問うエミリアを睨む神田の顔が、みるみる紅くなっていく。
 「どうした?モヤシ1号、どうしたいんだ?」
 にやにやと笑うマイスターにも問われて、神田は歯を噛み締めた。
 「・・・・・・・・・・・やってもいい」
 不明瞭な発音で、振り絞った言葉に、エミリアとマイスターが笑い出す。
 「じゃあ、ラッピングはあたしがやってあげるわ、ダーリンv
 「誰がダーリンだっ!!」
 「お前らホント、お似合いだなぁ・・・」
 息がぴったりだ、と、マイスターは温かい目で若い二人を見守った。 


 神田とエミリアがマイスターの工房にいた頃、方舟の中で偶然居合わせたアレンとリナリーは、互いの無事に手を取り合って喜んだ。
 「よかった、アレン君!
 今回、単独任務だって言うから私・・・!」
 「それは僕もですよ!
 リナリー一人で大丈夫かなって、ホントに心配して・・・」
 「あぁ、任務のことじゃないの!」
 アレンの言葉を遮って、リナリーが首を振る。
 「アレン君、任地で迷子になってるんじゃないかって、ものすごく心配してたんだよ!」
 「そっちですか・・・・・・」
 がっくりと肩を落したアレンは、うんざりとした視線を肩越しに送った。
 「僕には歩く地図がいますから」
 「誰が地図ですか、失敬な!
 君はいい加減に、迷子癖を治してはどうですか!」
 「僕だって好きで迷子になってるわけじゃありませんよっ・・・!」
 ひくひくとこめかみを引き攣らせつつ、アレンが悔しげに言う。
 「はっ!
 集中力が足りないから、道に迷うのです!
 いつもきょろきょろして、食べ物の匂いがする度にふらふらつられて行っては、迷子にもなりますよ!
 ちゃんと地図を見ていなさい!!」
 「あーもー・・・口うるさいったらありゃしない・・・・・・」
 ぶぅ、とむくれたアレンの顔がおかしくて、リナリーが笑い出した。
 「ねぇ、今回結構長い任務だったから、ジェリーのご飯が恋しいでしょ?
 早くいこv
 「はい!!」
 途端に機嫌を直し、リナリーと並んで歩き出したアレンは、科学班へ通じるドアの前で歩を止め、彼女の前でドアを開ける。
 「どうぞ」
 「ありがとv
 いつもレディ扱いしてくれるアレンに、少し恥ずかしげな、しかし嬉しそうな笑みを向けて、リナリーが先にドアをくぐった。
 と、
 「おかえりー!」
 笑顔で迎えてくれた科学者達を弾き飛ばし、コムイが猛牛の勢いで突進してくる。
 「おかえりリナリィィィィィィィィィ!!!!」
 「兄さんっ!!!!」
 いつものこととは言え、兄妹の激しい抱擁に、アレンはドアの前で固まった。
 「君との再会シーンとは段違いですね」
 「・・・リンクは言わずもがな、ってスキルを早く身に付ければいいと思う」
 嫌みったらしいリンクに嫌味を返し、アレンは階段を塞ぐ兄妹を避けて扉から飛び降りる。
 軽々と着地を決めると、その後にティムキャンピーとリンクも従った。
 「ただいまー。
 リーバーさん、イノセンス持って帰りましたー」
 「あぁ、ご苦労さん」
 にこりと笑ってリーバーは、歩み寄ってきたアレンの頭を撫でてやる。
 「まだ次の任務は入ってないから、今日は料理長に思いっきり甘えていいぞ」
 「うんv そうしますv
 嬉しそうに笑って、アレンはそわそわとリーバーを見上げた。
 「それで、ツリーは?ツリーはもう来ましたか?」
 わくわくと問うと、リーバーはウィンクして親指を立てる。
 「今年もたくさん来てるからな!好きなだけ星を飾っていいぜ♪」
 「やったぁ!!!!」
 諸手をあげて飛び上がったアレンに、リーバーだけでなく周りの科学者達も笑い出した。
 「張り切ってんなーアレン!」
 「新しいオーナメントは神田とエミリアが買いだしに行ってるから、今ある分は配分考えずに飾っちまっていいぜ!」
 「うん!!
 じゃあ早く着替えて・・・急いでご飯食べてくる!!」
 歓声をあげて駆け出したアレンを、リンクが呆れ顔で追いかける。
 「言っておきますが、去年と同じだけ来ているのでしたら、半端な量ではありませんよ?」
 「ふんっ!
 去年はやらせてもらえなかったから、知らないもんね!」
 リンクのせいで、と、睨んだアレンは、しかしすぐにわくわくと目を輝かせた。
 「今年は思いっきり飾るんだっ!!
 星、いくついけるかな!」
 声を弾ませるアレンに、ティムキャンピーも楽しげに擦り寄って来る。
 「がんばろうな、ティム!」
 「v
 ティムキャンピーは嬉しげにはしゃいで、くるくると宙に円を描いた。


 身支度を整え、食堂でジェリーと熱烈な再会シーンを演じた後、アレンはツリーが置かれているという部屋に入った。
 「うっ・・・わぁ・・・・・・」
 量がすごい、と言う話は散々聞いていたが、実見するとまた違う。
 「ホントに森ができてる・・・・・・」
 呆然と呟くと、常緑の枝の間でなにやら紅いものがごそごそ動いた。
 「あれ、おかえりさー」
 「ぅわっ!びっくりした!!」
 ひょい、と顔を出したラビに、アレンが飛び上がる。
 「おっきい寄生虫かと思った!」
 「誰が虫さ!」
 すぱんっと硬いオーナメントで叩かれて、アレンがうずくまった。
 「いったぁ・・・!!
 ラビ!それすごく硬い!!」
 「じゃなきゃこれで殴るもんか、バーカ!」
 舌を出したラビを、アレンが涙目で睨みつける。
 何か言ってやろうと口を開いた時、横からオーナメントの溢れる箱が差し出された。
 「くだらないケンカなどしていないで、さっさと始めなさい。
 いつまでも終わりませんよ!」
 「はい・・・!」
 悪口を封じられたアレンが噛み締めた歯の隙間から声を漏らすと、リンクは小馬鹿にした風に鼻を鳴らし、踵を返した。
 「Jr.、ウォーカーがうろうろしないように、見張りをお願いします」
 「ん?
 別件さ?」
 部屋を出ようとするリンクにラビが声をかけると、彼は肩越しに頷く。
 「ワガママな子供の世話ばかりが、私の仕事ではありませんので。
 では」
 「なんって嫌味な・・・・・・!」
 すたすたと姿勢よく出て行ったリンクの背中を、アレンが睨みつけた。
 「虐待されて可哀想!僕可哀想!!」
 ぷんぷんと怒りながら金モールを取り出したアレンは、まだ何の飾りも纏っていない樹の周りをくるくると回って巻きつける。
 「なんか今の、メイポールみたいだったさ!」
 「それ、五月祭じゃん」
 アレンが憮然と言うと、ラビは手にしたオーナメントを下げてやりながら頷いた。
 「こっちじゃ初夏の祭りだけど、スカンジナビア辺りじゃ夏至祭でやるんさ。
 その時に、クリスマスに歌う歌を歌詞だけ換えて歌うんだと。
 ま、クリスマスは元々冬至の祭りだし、対だと思えば間違ってないかもしんないさ」
 そう言って笑ったラビは、箱からまたモールを取り出してアレンに渡す。
 「ほれ、踊れ♪」
 「はいはい」
 ひとつ吐息して、アレンは片方の端をティムキャンピーに咥えさせた。
 そのままティムキャンピーが、パタパタと飛んで樹の先に止まると、アレンがまたくるくると樹の周りを回ってモールを巻きつける。
 「こりゃいい流れ作業さね!
 アレン、お前モール巻きつけ係な!
 俺はオーナメント下げてくから!」
 「えぇー!!僕もオーナメントがいい!!」
 大声で抗議するアレンに、ラビが肩をすくめた。
 「星は飾らせてやっから、文句言うんじゃないさ!
 見てみ、この森!
 効率よくやらんと終わらんさね!」
 「うー・・・・・・」
 不満げに唸るアレンの背中を叩き、ラビがモールの詰まった箱を押し付ける。
 「いくつかはオーナメント飾らずに置いといてやるから、はやくやろーぜ!」
 「うん・・・」
 ようやく頷いて、アレンはまた、別の樹の周りをくるくると回りだした。
 だが、単調な作業ほどつまらないものはない。
 任務帰りで疲れたアレンのまぶたが落ちそうになるまで、そう時間はかからなかった。
 「アレン?
 お前、なにふらふらしてんさ?」
 「らってぇ・・・・・・」
 のろのろと返ってきた寝惚け声に、ラビが苦笑する。
 「お前、任務中眠れなかったんだろ?
 いいぜ、ちょっと寝てな」
 「んー・・・・・・」
 今にも起動停止しそうなアレンの背を押し、ラビが部屋の隅まで連行した。
 「毛布持ってきてやっから!
 風邪ひくなよ」
 「んー・・・・・・」
 ぽて、と、床に転がってしまったアレンに笑い出し、ラビが一旦部屋を出る。
 と、彼と入れ替わりに、リナリーが森の中へと入って来た。
 「あ・・・眠り姫見っけv
 笑みを含んだ声に気づいて、ティムキャンピーがパタパタと寄って来る。
 「?
 なに咥えてるの、ティム?」
 見あげたリナリーは、ティムキャンピーが咥えた枝をまじまじと見て・・・真っ赤になった。
 「なっ・・・なんでヤドリギなんか持ってっ・・・!!」
 クリスマスの風習には、ヤドリギの下にいる男女はキスしてもいい、と言うものがある。
 ティムキャンピーはそれを狙って、クリスマスリースの中からヤドリギを引き抜いて来たのだろうが、
 「だっ・・・ダメだよ、アレン君寝てるのに!!」
 と、リナリーはぶんぶんと首を振った。
 するとティムキャンピーは、『寝てなきゃいいの?』とばかりに身体を傾げ、長い尾でアレンをつつく。
 「おっ・・・起こしちゃダメ!!」
 慌ててティムキャンピーの尻尾を掴み、リナリーはその口からヤドリギを取り上げた。
 「も・・・もう・・・!
 い・・・いたずらばっかりするんだから・・・・・・!」
 「っ!」
 いたずらじゃないもん、と、歯を剥いたティムキャンピーは、尻尾を握るリナリーの手を振り解き、パタパタとアレンの傍らに降りる。
 「ご・・・ごめん、ティム・・・。
 拗ねちゃった?」
 ぷぃっとそっぽを向いて、不機嫌に尻尾を揺らすティムキャンピーに、リナリーは肩を落とした。
 「ごめんってば・・・」
 リナリーが手を伸ばし、そっと撫でたティムキャンピーの身体が、ビクッと震える。
 「え?!なに・・・」
 何か痛いところにでも触っただろうかと、驚いたリナリーもまた、ティムキャンピーが見つめるアレンの変化に気づいた。
 「アレン君・・・」
 悪い夢にうなされているのか、彼の表情は苦しげで、時折くぐもった唸り声をあげる。
 起こすべきか迷うリナリーの前で、アレンはアレンでない者へと変わっていった・・・。


 ――――・・・暗い闇の中にいる夢だった。
 身体は凍え、痛みすら感じるのに、なぜか胸の中は熱くて、大声で叫びたい衝動に駆られる。
 いや、叫びたいのではない、泣きたいのだ・・・。
 胸に凝った何かを吐き出したくて、泣きたいのに泣けない・・・。
 そんなもどかしさに悶々としていると、不意に明かりが灯った。
 「・・・っ!」
 「お誕生日おめでとぉ、兄弟ぃ」
 ゆったりとした口調で呼びかける幼い声に、彼は目を見開く。
 「お前を祝ってあげられなかった年は・・・ずいぶん寂しかったよぉ・・・」
 クスクスと笑う声に、彼も唇を歪めて手を伸ばした。
 「ロー・・・ド・・・・・・!」
 幼い少女の細い首は、容易に彼の手中に納まり、少し力を加えれば簡単に折れそうだ。
 だが、彼に命を握られた少女は平然と笑った。
 「なにを苦しがってるのさぁ・・・。
 戻ってくればいいだろぉ、僕らのところへ・・・」
 「ダマレ・・・・・・」
 「懐かしいだろぉ、この闇がさぁ・・・。
 お前は神の側なんか、ふさわしくないんだよぉ・・・」
 「ダマレ・・・!」
 「お前は神が奪った供物の羊・・・。
 迷ってないで、千年公の庭に戻るんだ・・・。
 そうすれば、誰もお前を苦しめたりしない・・・誰もがお前を愛して、お前を温かく迎え入れるんだ・・・。
 本当はわかってるんだろぉ、14番目の兄弟ぃ?」
 「ダマレ!!」
 力を込めた手の中で、幼い骨が折れる感触がする。
 背後に首を落とした彼女はしかし、心地よさげに笑声をあげた。
 「あははっ・・・あははははっ・・・!!!!
 僕を殺したい、14番目?!
 できないよ!だってお前は『家族』を愛してる!
 僕らがお前を愛しているように、お前だって僕らを愛してる!!」
 けたたましい笑声をあげながら、折れたはずの首がむくりと起き上がる。
 「愛してるよ、14番目・・・。
 アレンよりももっと、お前を愛してる・・・・・・」
 何度も『愛』をさえずる唇が、彼に寄せられた。
 「お前はイラナイ人間なんかじゃない・・・忌まれた人間でもない・・・僕らの大切な家族だよ・・・」
 少女の首を掴む手から、力が抜ける。
 「・・・***」
 囁かれた名前に、彼の表情から険がとれた。
 「愛してるよ・・・」
 彼の唇に、ロードの小さな唇が重なる。
 「おまえは?」
 優しい声の問いに、表情が揺れた。
 「俺・・・ハ・・・・・・」
 ロードのぬくもりに凍えた身体はほぐされ、愛の言葉に凝った憎しみは消えそうになる。
 「俺・・・・・・」
 和んだ声で呟いた時、彼の額に激痛が走った。


 「アレン君!!」
 必死の呼びかけに、彼はうっすらと目を開ける。
 彼を覗き込む少女の顔は影になって見えず、揺れる黒髪にロードの姿が重なった。
 「違・・・ウ・・・・・・」
 「アレン君・・・?」
 伸ばした手で、再び少女の首を掴む。
 「違・・・ウ・・・・・・!」
 「っ!!」
 ティムキャンピーが驚き、アレンの腕に尾を絡めて引くが、彼はリナリーの首を鷲掴みにしたまま、更に力を込めた。
 「ア・・・・・・!」
 夢の中のロードと違い、苦しげに顔を歪めたリナリーが、アレンの腕に震える手をかける。
 途端、アレンの手は、弾かれたように離れた。
 「ア・・・アレン・・・くん・・・?!」
 喘ぎながら名を呼べば、目を丸くしたアレンが半身を起こす。
 「リナリー?!どうしたんですか?!」
 咳き込むリナリーの首がみるみる紅くなり、手の形を現していく様に、アレンは目を剥いた。
 「これは・・・まさか、僕・・・・・・?!」
 「あ・・・あの・・・えっと・・・・・・」
 手に残る感触に呆然とするアレンの前で、リナリーは慌てて襟をかき合わせ、困惑げに目を逸らす。
 「あの・・・あのね、アレン君・・・。
 私の首を絞めたのはアレン君じゃないよ・・・アレン君はそんなことしないもの・・・」
 懸命に言葉を探すリナリーを、瞬きもせず見つめていたアレンの目から、涙が零れた。
 「夢じゃ・・・なかったんだ・・・・・・!」
 今も手に残る、細い骨を砕いた感触・・・。
 甲高い笑声が脳内にリフレインし、くらくらと眩暈までしてきた。
 今にも倒れそうな彼の腕を、リナリーが咄嗟に取る。
 と、またも激痛と共に、彼の腕が弾かれた。
 「なに・・・?!」
 唖然としてリナリーが見下ろした自身の手は、ティムキャンピーから取り上げたヤドリギをしっかりと握っている。
 「ヤドリギ・・・が・・・?」
 聖なる枝がアレンの中のノアを・・・14番目を祓ったのだろうかと思い、リナリーは困惑に揺れる目でアレンを見た。
 「アレン君・・・大丈夫?」
 未だ呆然とし、ただ涙を流すアレンに、リナリーは眉根を寄せる。
 「アレン君・・・」
 ヤドリギを放ったリナリーは、身を硬くするアレンにいざり寄り、痛みと恐怖に震える彼の手を両手で握り締めた。
 「リナッ・・・僕に近づいたらまた・・・」
 「いいの!!」
 逃げようとするアレンを引き寄せ、リナリーがきつく抱きしめる。
 「闇に引き込まれそうになったら、何度でも私が引き上げてあげる!
 アレン君が白と黒の境界で揺れてるんなら、私はずっと白の側にいるから!
 だから・・・!」
 アレンの目が、紅く染まった自分の首に注がれていることに気づいて、リナリーは顔をあげた。
 「だからもう、心配しなくていいんだよ・・・!
 苦しまなくていいんだ・・・・・・!」
 彼の目をまっすぐに見つめたまま、リナリーは彼女の目以外のものをアレンが見ないように、両手で彼の顔をはさむ。
 「わかった?!」
 大きな目で見つめられ、有無を言わさぬ迫力で迫られたアレンは、思わず頷いた。
 と、リナリーの目がほっと和む。
 「腕、痛かった?」
 未だびりびりと痺れる腕に、リナリーが触れた途端、痛みはやんわりと引いていった。
 「もう大丈夫です」
 まだ屈託は残すものの、にこりと微笑んだアレンにリナリーが頷き、彼の額に手を当てる。
 「おでこも痛かったでしょ?
 アレン君、飛び起きちゃったんだから・・・」
 「あぁ・・・そうなんだ」
 夢の中で感じた激痛はそれだったのかと、つい額にやった手とリナリーの手が重なった。
 途端に真っ赤になったアレンに、リナリーが笑みをこぼし、彼の唇をついばむ。
 「リッ・・・?!」
 驚きのあまりアレンが絶句すると、リナリーはいたずらっぽく笑った。
 「ヤドリギなんかなくったって、キスくらいできるもんv
 「ぁう・・・・・・」
 ぺろりと舌を出した彼女に何も言えず、奇妙な彫像のように固まってしまったアレンから、リナリーは笑って身を離す。
 「ホラ、目が覚めたんならクリスマスツリーの飾りつけ手伝って!
 去年はホンットに大変だったんだから!」
 「って、えらそーに言ってっけどお前、去年はツリー運んだだけで、なーんも飾りつけやってねぇじゃんか」
 にょっと、常緑の中から出てきた紅い髪に、リナリーが飛び上がった。
 「ラッ・・・ラララッ・・・ラビはいつからそこにいたのかなっ?!」
 真っ赤になって上ずった声をあげると、ラビがにんまりと笑う。
 「ヤドリギなんかなくったって、キスくらいできるもんv
 「サイテ――――!!!!」
 リナリーの口真似をしたラビに、怒りの鉄拳が炸裂した。
 「それ!プライバシーの侵害って言うんだよ!!」
 「・・・・・・それは問答無用で俺の顎を砕く理由になるんさ?」
 「十分だよっ!!」
 憤然として、リナリーはラビからマフラーを取り上げる。
 「寒いからこれ貸してね!」
 「止血してくれんのかと思ったんに!!」
 「自分でやれば!!」
 かき合わせた襟の上から更にマフラーを巻いて、首の痣を隠したリナリーは、アレンの手を引いて座り込んだままの彼を立たせた。
 「ホラ!早くやろ!」
 「う・・・うん・・・」
 ラビを気にしつつ、リナリーに従って常緑の中へ入り込んだアレンを、ラビは無言で見送る。
 ややして、
 「ティム・・・」
 こっそりとティムキャンピーを呼び寄せたラビは、二人とは離れた樹の陰で、一連のメモリーを確認した。


 ・・・その後。
 クリスマスの準備が進む中、リナリーの二日酔いがバレて、飲酒した彼女と飲酒を勧めたキャッシュ、ミランダとエミリアの4人がジェリーに罰当番を科せられたり、ティムキャンピーが死に瀕したダイエットを決行して縮んだり、おかげでまたリナリーが罰当番を科せられたりと、相変わらず騒々しい教団にも、クリスマス当日がやってきた。
 「なんとか終わったさねー・・・・・・」
 「あぁ・・・・・・」
 団員のほとんどがクリスマス・ミサに行ってしまった時間、クリスマス・ツリーを城内に飾るよう命じられたラビと神田が、ぐったりとソファに倒れこむ。
 「・・・ユウちゃん、そろそろミサも中盤さね。
 早く着替えんとー」
 「・・・じゃあお前、先に立てよ」
 「・・・もう俺、このまま倒れてたい」
 うつ伏せたまま、顔もあげないラビに神田が頷いた。
 「坊主の説教はパスでいいだろ・・・」
 「さんせーぃ・・・」
 教団のクリスマスパーティは、一年で最も大きなイベントだが、その分『中央のエライ坊さん達』の挨拶や説教も長い。
 ラビは力なくあげた手を、ぱたりと落とした。
 途端、二人のゴーレムがけたたましいベルを鳴らす。
 「・・・鳴ってんぞ」
 「・・・ユウのだって」
 重苦しい吐息を漏らした二人は、不承不承ゴーレムの回線を開いた。
 『メリークリスマス!
 アンタ達、ツリーの配置終わったんでしょぉ?食堂の手伝いに来て!』
 連続重労働を前に二人が絶句すると、ゴーレムは獲物を狙う猛禽のように彼らの頭上を旋回する。
 『どぉしたの?!
 メーデーメーデー!』
 「クリスマスさっ!」
 泣き声をあげて起き上がったラビが絶叫すると、回線の向こうで笑う気配がした。
 『そうそう、クリスマスだから大変なの!
 早くメーデー(助けに来て)!
 さもないとごはん抜きよ!!』
 「ちっくしょぉぉぉ!!行けばいいんさっ!行けばいいんさねっ!!」
 疲れきって萎えた足をソファから下ろすと、既に回復した神田がめんどくさそうに立ち上がる。
 「ジェリー、俺はパスだ」
 「はぁぁっ?!
 ナニ言ってんさ、ユウちゃん!
 戦線離脱たぁサムライの風上にも置けんさね!!
 姐さんもそう思うさ?!
 なんか言って!!言ってやってさ!!」
 ぎゃあぎゃあと喚きたてるラビに、しかし、ゴーレムは無情な言葉を吐き出した。
 『そっか、アンタ盛装じゃ動きづらいものね。
 じゃあ、ラビだけお願いv
 「はああああああ?!」
 喉から血を吐かんばかりに絶叫したラビに、ゴーレムが苦笑交じりの声をかける。
 『だってんv
 エミリアからお願いされてたこと、思い出したんだものん』
 「今度はナニを言ってくれたんさ、あの巨乳?!」
 エミリアが聞けば、殺人キックの餌食にされそうなことを言い放ったラビに、ゴーレムがため息を漏らした。
 『ハロウィンの時に神田が着てた着物、あれをエミリアが気に入ったらしくて。
 クリスマスにもぜひ着て欲しいって言ってんのよ』
 「それでその要求を呑むんかい、ユウちゃんが?!」
 言い訳じゃなく?!と、詰め寄ってきたラビを、神田がうるさげに振り払う。
 「袖はなんとかなるが、袴はテーブルの並んだ場所じゃ動きづれぇんだよ」
 「だったら袴なしでいいじゃん!着流しでいいじゃん!!」
 「パーティでそんなだらしない真似ができるか」
 不遜に見えて、実はTPOをわきまえている神田の言葉に、ラビが詰まった。
 その隙に、ゴーレムがラビの肩に乗る。
 『ホラ、早くいらっしゃい!
 アンタの希望で色々準備してあげたんだから、お手伝いくらいしなさいよぉ!』
 「あーもう!わかったさ!!」
 うるさげに言って、ラビはドアに向かった。
 「後でな、ユウちゃんっ!」
 「あぁ・・・」
 軽く手を振って別れると、ラビは食堂へ歩を早める。
 その後ろから、パタパタとついてくるゴーレムをふと見遣って、ラビは手を打った。
 「ひひひっv
 いーこと考えちゃったさv
 はたから見れば、またろくでもないことを思いついた、と言われても無理はない笑声をラビがあげる。
 「実行のためにはまず科学班〜♪」
 くるりと踵を返し、ラビは科学班へと走って行った。


 それからしばらくして、礼拝堂のミサが終わり、団員達はそれぞれにパーティ会場となる食堂へ移動していた。
 「寒かったね、礼拝堂!
 早く食堂であったまろ!」
 肩を露わにした、淡い黄色のドレスをふわふわと揺らめかせながら歩を進めるリナリーに、アレンはぎこちなく頷く。
 14番目に身体を乗っ取られ、リナリーを危険にさらして以降、アレンは彼女と二人きりになることを極力避けていた。
 それがリナリーには気に入らない。
 「アレン君!ホラ!!」
 手を差し伸べても、取ろうとはしない彼の手を、リナリーは無理矢理握った。
 「もう、気にしないでよ。
 痕なんか、とっくに消えちゃったんだから!」
 こっそり囁いて、身を寄せたリナリーの首は、回廊の明かりに照らされて白く輝く。
 「ね?なんともないでしょ?」
 「は・・・はい・・・・・・」
 頷いたものの、アレンは彼女がしばらく、襟の高い服を着ていたことを知っていた。
 それはきっと、痕が消えないのを気にしていたせいだろうと、アレンはいたたまれない気持ちで目を逸らす。
 「・・・もう!
 せっかくセクシーなドレス着たのに、似合わないなら似合わないって言ってよ!」
 「あ!いえ、そんなことは全然っ・・・!
 すごく・・・似合ってますよ・・・」
 「えへ・・・そぉ?」
 リナリーは嬉しげに笑うと、アレンと手を繋いだまま、ダンスのようにくるりと回った。
 「少しは様になってる?」
 「えぇ、とっても・・・」
 にこりと笑ったアレンはとても紳士的で、それがまた、リナリーは気に入らない。
 「なんだよ!
 前のよそよそしいアレン君に戻ったみたい!」
 憤然と言って、リナリーは繋いだ手を放した。
 「ご・・・ごめんなさい・・・・・・」
 数歩先に行ったリナリーを追いかけようともせず、しゅんとうな垂れたアレンの背を、大きな手が叩く。
 「喧嘩か?」
 「リーバーさん・・・・・・」
 明らかにほっとした様子に、リーバーは苦笑した。
 「室長が女神に強制連行されて、枢機卿の接待してる上に、リンクまで中央庁の官僚の案内でいないんだ。
 こんなチャンス、二度はないぜ?」
 「あ・・・はい。
 そうなんですけど・・・・・・」
 「なにかあったの?」
 濃紺のドレスの上に、白いファーのマントを羽織ったミランダが、リナリーを手招いてマントの中に入れてやる。
 「リナリーちゃん・・・。
 上に何か着ないと寒いわよ、って言ったのに・・・」
 「きゃあv ミランダあったかぁいv
 お説教を封じようと、リナリーはマントの中でミランダに抱きついた。
 「もう・・・。
 風邪ひいても知らないから」
 「平気だもーん♪」
 それより、と、リナリーは電飾で飾られて、いつもより格段に明るい回廊の先を示す。
 「お腹すいたっ!
 早くパーティいこっ!」
 「はい・・・」
 屈託のある笑みを浮かべ、リナリーとは離れて歩くアレンの姿に、リーバーとミランダが訝しげな目線を交わした。
 だが、二人とも口に出しては何も言わず、いつもとは別世界のように華やかな食堂へと入る。
 「これは・・・ラビの仕業か?」
 天井のいたるところに飾られたヤドリギのオーナメントを見上げ、リーバーが呆れ声をあげると、彼らを迎えたラビが諸手をあげた。
 「イエースv
 キッシング・ボールがこんだけありゃ、隙を見つけて元帥とキスできるさv
 下心丸出しで、きょろきょろと会場を見回すラビに、リーバーが無言でげんこつを落とす。
 「全く、そう言うことばっかり熱心だな!」
 「〜〜〜〜なんだよお前もチャンスだってんのに!」
 ずきずき痛む頭を抱え、ラビが文句を言えば、リーバーは眉を吊り上げた。
 「馬鹿!
 こんなもんあったら防衛が大変なんだよ!」
 「ま・・・まぁ、そんな・・・・・・」
 真っ赤になって、ミランダが顔を覆う。
 その弾みで、ファーのマントが肩から滑り落ちた。
 「わおv
 濃紺のシックなドレスだとばかり思っていたが、ネックストラップのそれは大胆に背中が開いている。
 目の前に現れた艶姿に、ラビはじめ会場中の視線が集まった。
 「ミランダ!
 ナイス肩甲骨っ・・・あぎゃああああああああああ!!!!」
 ガーディアンに足払いされた上に踏み潰されて、ラビが濁った悲鳴をあげる。
 「リーバー!!潰れる!!潰れるさぁぁぁぁ!!!!」
 「ミンチにしてやる、馬鹿ウサギ!」
 軽く褒めただけのラビの運命を目の当たりにした団員達が、ミランダに近寄ることもできずに遠巻きにした。
 その隙に、アレンが落ちたマントを着せ掛ける。
 「これ、着ておいた方がいいですよ、皆さんの安全のために」
 「え・・・えぇ・・・・・・」
 「しっかり結わえておかないとね!」
 胸元のリボンを結ぼうと、伸ばしたリナリーの手が、アレンの手と触れた。
 「・・・・・・・・・」
 互いに無言で離した手を、ミランダが不思議そうに見る。
 「・・・あ!
 パーティ始まるみたいだよ!」
 気まずげな雰囲気をごまかそうと、アレンとミランダに背を向けたリナリーが、壇上を示した。
 「ご・・・ご挨拶は・・・早く終わるといいね!」
 背を向けたまま、アレンを見ようとしないリナリーを訝しく思い、ミランダは肩越し、そっとアレンを見遣る。
 「何かあったんですか・・・?」
 「いえ・・・あの・・・・・・」
 言いにくそうに口を濁すアレンが気になり、ミランダは振り返った。
 と、結びかけたままリナリーが手を放してしまったリボンが解け、滑り落ちたマントがテーブルのデキャンタを倒す。
 「あっ・・・!」
 「ワインが!!」
 紅い液体が流れ、白いファーをあっという間に染めていった。
 「すぐに洗わないとまずいさ!
 ちょっと席外すから後よろしく!」
 すかさずラビが歩み寄り、アレンとミランダを伴って部屋を出て行く。
 「・・・班長は行かなくてよかったの?」
 リナリーが気まずげな口調で問うと、リーバーは頷いて彼女の頭を撫でた。
 「あっちはラビとミランダがうまくやるさ。
 だから俺は、お前のケア」
 「う・・・・・・」
 唇を噛んで、リナリーが俯く。
 「なにがあったか、正直に話してみろ」
 「うー・・・・・・」
 困惑げな唸り声をあげたリナリーは、強情にもぶんぶんと首を横に振った。


 リナリーとは逆に、水場を借りたアレンは、ワインを洗い流しながら訥々と事情を語った。
 「まぁ・・・!
 それでアレン君は、リナリーちゃんを避けていたんですね・・・・・・」
 「はい・・・。
 今回は無事でしたけど、またあいつが出てきたらと思うと・・・・・・」
 手元から目を上げないまま、泣きそうな声で言う彼の背を、ミランダが優しく撫でる。
 と、アレンはビクッと震え、ミランダからも身を離した。
 「あ・・・あの、僕に触らない方が・・・・・・」
 「ねぇ、それっていつのこと?」
 「いつって・・・・・・」
 「ミランダ達が、酒盛りして罰則食らう前さね」
 それまで黙って水を流していたラビが答えると、アレンが目を見開く。
 「ラビ・・・知って・・・・・・!」
 「もちろん」
 あっさりと頷いたラビの傍らで、ミランダが小首を傾げた。
 「じゃあ・・・アレン君、リナリーちゃんは本当に、その事をなんとも思っていないと思いますよ?」
 「そんな馬鹿な!
 だってリナリーは、僕に殺されかけたんですよ・・・?!」
 表面上は平静を装っていても、心中では恐れを抱いているはずだとアレンは言う。
 だが、『善良』という言葉を体現するミランダは、淡く微笑んで首を振った。
 「人って酔っ払うと、どうしても無防備になってしまうものだけど、リナリーちゃんは酔って寝てしまう前に、みんなのことが大好きだって言ってましたよ。
 もちろん、アレン君のことも」
 「・・・・・・・・・・・・」
 ミランダは黙り込んだアレンの濡れた手を取り、冷えきった彼の手を温める。
 じわりと伝わる温もりが、彼女の優しさと同じく、冷えた心まで溶かすようだった。
 「大丈夫ですよ、アレン君。
 私達は仲間でしょう?
 あなたが私達を守ってくれるように、私達にだってあなたの全てを受け入れるだけの覚悟はあるんだと、信じてもらえないかしら・・・?」
 「ミランダさん・・・・・・」
 顔を上げたアレンは、しかし、彼女の笑みを正視できず、また目を逸らす。
 「でも・・・・・・」
 「いつも優しく、楽しくあるだけが仲間じゃないんでしょう?
 時には、神田君みたいに厳しかったり、ラビ君みたいに放置だったり・・・」
 くすくすと笑われて、ラビが気まずげに顔を背けた。
 「リナリーちゃんは強い子ですよ。
 彼女は、同じホームの仲間だと認めた瞬間から、『家族』を信頼し、守ると決めているの」
 「家族・・・・・・」
 その言葉はロードの夢を連想させて、アレンは表情を苦くする。
 と、
 「同じ『家族』でも、ロードの言うそれと、リナリーの思うそれは違うさ」
 アレンの思考を見透かしたように、ラビが口を出した。
 「お前が白と黒の境界で揺れるなら、リナリーはずっと白の側にいて、何度でもお前を引き上げる。
 それがあいつの本気だ。
 なんで信じてやんねぇんさ?」
 「・・・・・・全部聞いてたんだ?」
 「俺を誰だと思ってんさ」
 むっと睨んでくるアレンににやりと笑い、ラビはくしゃりとアレンの頭を撫でた。
 「俺は教団の人間じゃねぇけど、ここにいる間は助けてやってもいいさね」
 「なんか、僕の方が助けてばっかって気がするけど!」
 「そっ・・・そんなことないさね、多分・・・・・・」
 アレンの頭をぐしゃぐしゃとかき回しながら、ラビは気まずげに目を逸らす。
 と、その先にはミランダの笑顔があった。
 「ようやく、いつも通りになりましたね」
 くすくすと笑う彼女に、アレンも苦笑する。
 「ご心配かけました・・・」
 「あら。
 家族の心配をするのは、家族として当然ですよ」
 そう言ってミランダは、アレンの手を握る手に力を込めた。
 「それに、私の方がたくさん心配かけてますものね」
 アレンに苦笑を返して、ミランダは小首を傾げる。
 「汚れはあらかた落ちたようですから、後は被服係の方達にお願いします。
 アレン君、ラビ君も、ありがとうございました」
 にこりと笑ったミランダに、二人は揃って首を振った。
 「家族のお役に立てて何より」
 冗談めかした口調までもが、ぴったりと揃う。
 「仲良しさんですね」
 またくすくすと笑い出したミランダに、ラビは頷き、アレンは肩をすくめた。


 ミランダを先にパーティ会場へ戻らせた二人は、彼女のマントを被服室に運びながら、くすくすと意地の悪い笑声をあげた。
 「リーバー、どんな顔すっかな!」
 「僕、リーバーさんがジャケット脱いで、慌てて着せ掛けると思う!」
 「そんでその隣で、放置されたリナリーが膨れてんさね!」
 今夜はリナリーも、随分露出の高い服を着ているが、まだまだ色気よりも清純さの方が勝っている。
 リーバーが放置するのは必至、と声を揃え、二人はまた笑い出した。
 「なんだこれ、全然賭けにならないよ!」
 「だってあいつら、行動の予想がしやすいんだもんさ!」
 けらけらと笑いながら、二人は被服室のドアを開ける。
 と、中では華やかなドレスをまとった女性団員達が、花吹雪のように行き交っていた。
 「うっわー!
 皆さん、すごく綺麗です!」
 アレンが大声を上げると、自慢の腕を惜しみなく発揮したお針子達が、嬉しげに笑みほころぶ。
 「ねぇ、もうパーティ始まっちゃった?」
 「みんなの分作ってたら、自分の分が最後になっちゃって・・・」
 「リンダ!!あたしの背中、しつけ糸がまだ取れてないでしょ?!」
 小鳥のように囀るお針子達の姿に目の保養をしつつ、二人は被服室の続き部屋を開けた。
 「すみませーん!
 クリーニングの依頼って、この部屋でよかったですよねー?」
 「誰もいないさー!」
 大声で呼びかけると、いつも服を受け取ってくれる女性団員が、ドレスの裾をさばきながら駆け寄ってくる。
 「ごめんごめん!
 後でやっておくから、籠の中に入れててくれる?
 タグはカウンターの上にあるから、誰のものか書いておいて!」
 「あーぃ」
 二人は快く頷き、指示通りファーを籠に入れた。
 「じゃあ、戻りましょうか」
 さっさとアレンが踵を返すと、ラビがその襟首を掴む。
 「ちょい待ち。
 お前、ずぶ濡れさね!」
 「あぁ・・・。
 だってファーを洗ったから・・・タオルないかな?」
 きょろきょろと辺りを見回すアレンの顔を、ラビは無理矢理自分へ向けた。
 「ちょうどいいさ!
 ちょっと早いけど、兄ちゃんからプレゼントがあるさね!」
 「にゃに?」
 頬を潰されたまま、アレンが問うと、手を離したラビは部屋の奥へと声をかける。
 「おーい!マザー!!
 ちょっと早いけど、あれ出してもらっていいさ?!」
 「アラ、いらっしゃいラビ・・・きゃああvv アレンーvvvv
 花吹雪の向こうから顔を出した被服係の係長は、アレンを見るや部下達をかき分け、彼に駆け寄った。
 「まぁまぁv
 今日も素敵な小紳士ぶりだわv
 でも髪の毛はくしゃくしゃねv どうしたの?」
 細い手でさらさらと髪を撫で付けてくれる彼女を、アレンは上目遣いに見る。
 「ラビにやられちゃって・・・」
 「きゃあvv
 アレン、そのままそのままv
 ・・・ゃーんv やっぱりアレンの上目遣い、かわいーぃvv
 少女のような表情でうっとりと見つめられ、困惑するアレンの隣で、完全に無視されたラビが苦笑した。
 「マザー・・・俺のお願いも聞いて欲しいんけどv
 「・・・あぁ!アレンの服ね。出来てるわよ」
 「僕の服?」
 ようやく係長の視線から解放され、顔を上げたアレンに、ラビがにこりと笑う。
 「俺からの誕生日プレゼントさ。
 服一式v
 「へぇ・・・・・・」
 意外そうな声をあげて、アレンは小首を傾げた。
 「でも僕、ラビが選ぶような服って似合わない気がするんだけど・・・・・・」
 「それは大丈夫さ!
 とりあえず、着替えて来いよ」
 リボンをかけられた包みを渡され、アレンは戸惑いながらも更衣室に入る。
 「シャッター・・・!」
 「盗撮で訴えられたくなけりゃ、やめるさマザー」
 係長が取り出したカメラを取り上げ、ラビは苦笑を深めた。


 ややして、困惑顔のアレンが更衣室から出てきた。
 「・・・・・・やっぱり、いまいちだと思う」
 光沢のあるダークグレーのボトムスに、黒いシャツをきちんと収め、一番上までボタンを留めたアレンは、なんだかとても田舎臭く見える。
 「そーじゃなくて」
 くすくすと笑いながら歩み寄ったラビは、襟のボタンを大胆に外した。
 すると襟の内側に薄くついたファーが、銀色の彩を添える。
 更にシャツの裾を全部出してしまった彼を、アレンが上目遣いに見上げた。
 「・・・・・・あのー・・・これって・・・・・・」
 だらしない、と、小さな声で言った彼に、ラビも係長も、大きく頷く。
 「このままだと確かにね」
 「これからが俺の腕の見せ所ー♪」
 ラビは黒い襟にシルバーのネクタイを滑らせ、随分ラフに結ぶと、ボトムスと同色のベストを羽織らせた。
 前のボタンを留めようとするアレンを止め、前は開けたまま、銀のウォレットチェーンでベストとボトムスを繋ぐ。
 「そんで、俺の手作りチョーカーv
 グレーとシルバーでまとめた服の最後に、エメラルドカットされたガーネットが紅い光りを放った。
 「俺が緑だから、二人でクリスマスカラーだな♪」
 にこりと笑った彼に、アレンも思わず笑みを返す。
 「じゃー仕上げv
 ジェニー!整髪料貸してさ!」
 ちょうど髪をまとめていたお針子に手を差し伸べ、手に取ったワックスをアレンの髪になじませた。
 「そして、無造作ヘアーはこうして作る♪」
 にやりと笑ったラビは、アレンの頭にタオルをかぶせ、わしゃわしゃとかき回す。
 「わああああああああ!!!!なにすんだよっ!!!!」
 突然の狼藉に驚くアレンの頭からタオルが取り除かれると・・・白い髪がふわふわと浮き上がった。
 「ふえ・・・ええええええええええええ?!」
 鏡の前で、別人のような自分にアレンが絶叫する。
 「こ・・・こうもなるんだ、僕!!!」
 鏡に手をつき、まじまじと見つめるアレンの背後で、係長とラビが楽しげに手を打ち合わせていた。
 「さ、パーティ行こうぜ、アレン♪
 みんなびっくりするさね!」
 「う・・・うん・・・っ!!」
 照れくさそうに笑いながら、アレンが頷く。
 「あ・・・あの、マザー!ありがとうございました!!」
 「いいえぇ!気に入ってくれて嬉しいわv
 記念に一枚、写真とっていいかしら?!」
 「よ・・・喜んで!」
 そう言って嬉しそうに笑ったアレンを囲んで、しばし被服室は撮影会会場と化した。


 「うんわ!随分かかっちまったさ!
 いい加減、坊さんたちの説教も終わってるだろうけどさ!」
 パタパタと廊下を走りつつ、早口に言ったラビに、アレンは前髪を気にしながら頷いた。
 「ねぇねぇ、これ、ホントに変じゃない?変じゃない?」
 何度も聞くアレンの背を、ラビは苦笑して叩く。
 「大丈夫さ!カッキーぜ?」
 「う・・・うん・・・・・・」
 だが、初めての格好に未だ自信の持てないアレンは、食堂前で足を止めてしまった。
 「も、なにビビってんさ!大丈夫だって!」
 「び・・・びびってなんかないけど・・・・・・」
 「だったらホレ!入れ!!」
 どんっと背中を押されて、アレンが食堂に飛び込む。
 と、いきなり何か、すごく気持ちいいものに包まれた。
 「ナニしてんのあんたー!!!!」
 避ける間もなく飛んできたこぶしにみぞおちを抉られ、アレンがうずくまる。
 「・・・・・・馬鹿か」
 頭上から降ってきた冷厳な声に顔を上げると、藤色の羽織袴をまとった神田が、冷酷な目で見下ろしていた。
 「誰が馬鹿・・・!」
 「あんたよ馬鹿!
 いきなり人の胸に顔をうずめるなんて、どういう教育してんのここは!!」
 真っ赤になって胸をかばうエミリアに怒鳴られ、アレンは深々と頭を下げる。
 「す・・・すみません・・・」
 エミリアに負けず劣らず真っ赤になったアレンの背を、ラビが苦笑して叩いた。
 「ゴ・・・ゴメンさ、エミリア!
 俺がコイツ、突き飛ばしちまったから・・・」
 「まさか、狙ったんじゃないでしょうね?!」
 「いやまさか!!」
 誤解だと、必至に手を振るラビを疑わしげに睨みながら、エミリアは神田の背後に隠れる。
 「どうだか・・・!
 あの大量のキッシング・ボール、料理長に拝み倒して飾ったのはあんただって聞いたわよ?!」
 天井を指すエミリアに、ラビはあっさりと頷いた。
 「あぁ、それは確かに俺だけど」
 「語るにおちたわね、セクハラ男!!」
 その抗議にはきっぱりと首を振る。
 「違うさ!
 俺は目的がはっきりしてんだから、狙う相手はただ一人・・・元帥発見さ――――――――!!!!」
 目の端にクラウドの姿を捉えた途端、人間とは思えない反射神経で飛び掛ったラビが、血まみれの肉塊と化すまでほんの一瞬の出来事だった。
 「・・・・・・・・・・・・。
 ホントにすみませんでしたっ!」
 全力でラビの一件を見なかったことにしたらしいアレンがもう一度謝ると、彼とは逆に、血みどろのラビから目が離せないエミリアは上の空で頷く。
 「ありがとうございます!」
 まんまと許しを得たアレンが急いで踵を返そうとすると、シャツの裾を掴まれた。
 「ちょっと待ちなさい、アレン」
 やっぱりこんなだらしのない格好をするんじゃなかった、と、だらだらと恐怖の汗を流すアレンに、エミリアがにこりと笑う。
 「神田から、いいものがあるわよ?」
 「んなっ・・・なんでここでやんだよ!!」
 「神田から?」
 なんだろう、と、振り返ったアレンに見えないように、エミリアは神田の袖を拝借して何かを覆った。
 「なんだと思う?」
 「さぁ・・・・・・」
 思いっきりそっぽを向いた神田の横顔を見ながら、アレンが首を傾げる。
 「また刃物とか・・・ですか?」
 反対側に首を倒したアレンの答えに、エミリアは呆れた。
 「あんた普段、どんなプレゼントしてんの!」
 「うるせぇ!」
 耳まで真っ赤になった神田に笑い、エミリアがリボンのかかった包みを押し付ける。
 「ホラ!
 あんたからあげなさいよ!」
 「なんで俺が・・・!」
 「あんたが選んだようなもんじゃない!」
 更に言って、エミリアは神田に包みを押し付けた。
 「ちっ・・・・・・!
 おらよ!
 テメェにはもったいねぇしろもんだが、作っちまったもんはしょうがねぇ!!」
 乱暴に押し付けられたそれに、アレンが目を丸くする。
 「なに・・・?」
 「開けりゃあいいだろ!」
 神田の言い様にはむっとしたものの、その隣でエミリアが、そわそわと自分の手元を見つめていることに気づいて、アレンはリボンを解いた。
 「クマのぬいぐるみ・・・・・・」
 呟きは、周りで何事かと見ていた団員達の耳にも入る。
 「神田がぬいぐるみ・・・?」
 「まさか・・・!」
 ざわざわと寄って来た者達が、遠目にもわかる愛らしい顔つきに歓声を上げた。
 「ハンスおじさんのクマだ!!!!」
 「アレンが?!アレンがもらったのか?!」
 「お前ら・・・!
 お前らようやく仲良く・・・!!」
 感動のあまり、泣き出す者まで出てきて、渦中に放り出されたアレンと神田が固まる。
 と、当然ながら騒ぎを聞きつけて、リナリーやミランダ、リーバーも寄って来た。
 「まぁ・・・!
 アレン君、素敵にしてもらいましたね」
 にこりと笑ったミランダの隣で、リナリーが大きく頷く。
 「かっこいいよ、アレン君!!
 それ、ラビのコーディネート?」
 「は・・・はぁ・・・まぁ・・・・・・」
 ミランダがとりなしてくれたのか、すっかり屈託を払ったリナリーに、アレンは恥ずかしげな笑みを向けた。
 「こ・・・こんな格好初めてで・・・ホントに似合ってるかどうか、自分でも良くわかんないんですけど・・・・・・」
 「かっこいいよ!」
 直球の褒め言葉に、アレンは真っ赤になって照れる。
 「クマさんが神田君のプレゼントで、服がラビ君のプレゼントなら、私たちもそろそろあげましょうか」
 にこりと笑ったミランダが一旦側を離れ、花束を持って戻ってきた。
 「いつもお花でごめんなさいね。
 でも、とっても綺麗だったから・・・」
 紫と黄色のバラで作った花束は、ミランダの好みを反映して、とても可憐だ。
 「ありがとうございます!」
 花束を受け取ったアレンの笑顔に、不意に影がさした。
 「?」
 見上げると、ティムキャンピーがパタパタと頭上を旋回している。
 その口には、リボンで飾った袋を咥えていた。
 「なに?くれるの?」
 満面に笑みを浮かべ、受け取ったアレンは、その中からティムキャンピーそっくりのぬいぐるみを取り出して歓声を上げる。
 「すごい!そっくり!!
 しかも感触が気持ちいい!!」
 「それ、ティムがマザーに作って欲しい、って頼んだんだぜ!」
 いつの間にか復活したラビの言葉に笑みを深め、アレンはティムキャンピーを抱きしめた。
 「ありがと!すごく嬉しいよ!!」
 「あら!
 確かにティムぐるみもよく出来てるけど、マイスターの仕事はもっとすごいわよ!
 ねぇ、神田?」
 「あぁ・・・」
 「なに?」
 問うと、エミリアが手を差し伸べて、皆にマイスターの腕前を披露する。
 「すっげぇぇぇぇぇ!!」
 「クマだからアクマ?!」
 ・・・その言葉は、皆によって丁重に無視された。
 「あ・・・ありがとうございました、エミリアさんも」
 「いいえ!」
 にこりと笑ったエミリアが、ふと天井を見上げる。
 「どうかした?」
 リナリーの問いに、エミリアは天井を見上げたまま頷いた。
 「今なんか、あのキッシング・ボールが動いたような・・・」
 呟いた彼女の側で、ラビがにんまりと笑う。
 ひらりと身を翻した彼は、誰もいなくなった壇上に勝手に上がり、指を鳴らした。
 「MerryXmas!
 キッシング・ボール・ゲーム開始さ!!」
 その宣言と共に、あらかじめ打ち合わせていた楽団が賑やかな音楽を奏で始め、その曲に乗って、キッシング・ボールを咥えたゴーレムが頭上を飛び交う。
 「キッシング・ボールが上に来たら・・・わかってるさね、みんな!!」
 はしゃいだ声をはりあげたラビに、一部の女性団員達が、顔を引きつらせた。
 「セクハラよ・・・まごうことなきセクハラだわ・・・・・・!」
 だが大部分はむしろ、意中の男性の側に寄り、キッシング・ボールが過ぎる瞬間を狙ってキスする。
 「あ・・・あれってヤドリギ・・・ですよね・・・・・・」
 聖なる力に弾かれた時の痛みを思い出し、怯えるアレンの手を、リナリーが取った。
 「心配しなくったって、ゴーレムは落としたりは・・・」
 言い終える前に、ゴーレム同士がぶつかって、アレンの頭上にキッシング・ボールを落とす。
 「うぎゃっ!!」
 「だ・・・大丈夫?!」
 悲鳴をあげてうずくまったアレンの上に、リナリーが屈みこんだ。
 「ご・・・ごめん、アレン君の不幸が並みじゃないってこと、忘れてた・・・」
 苦笑したリナリーが、アレンの頭を撫でてやる。
 「どう?
 やっぱり・・・痛かった?」
 気遣わしげに問うと、顔を上げたアレンは、ふるりと首を振った。
 「ボールが落ちて来た衝撃だけで、あの痛みは・・・」
 ない、と言った唇を、リナリーの唇が塞ぐ。
 「リ・・・・・・!」
 「だったらもう大丈夫。
 アレン君は、ちゃんと14番目を抑えてるんだよ」
 それに、と、リナリーはいたずらっぽく舌を出した。
 「次は負けないからね?」
 「あ・・・・・・・・・」
 今更ながら、彼女が普通の女の子ではないことを思い出して、アレンが笑う。
 「お手柔らかに・・・」
 「それはどうかな?」
 くすりと笑いあった二人の頭上を、またキッシング・ボールが通った。
 「メリークリスマスv
 賑やかな音楽と賑やかな仲間たちに囲まれて、二人は今までよりもちょっとだけ、長いキスをした。




Fin.

 










2009年アレン君お誕生会第三弾です!
遅れてしまってすみません;
とりあえず出来上がったのが12/25AM4:35で、推敲まで終わったのは同日20時半のことでした;;
のろくてごめんなさいまし;;;
これが完成したのを受けて、Tのガールズトークの方も修正しています。
アレン君のお誕生日なのに、TとUで彼が目立たなかったのは、リナリーを避けてたせいですよ、ってコトで。
『Kaleidoscope』はアレン君視点ではなく、周りがアレン君をどう思っているか、と言う方向で書きたかったんですが、まだまだ修業が必要だな;;;
ともあれ、お楽しみいただければ幸いですv












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