† Wintergreen †






 クリスマスと言う、一年で最も大きな祭りを終え、どことなくつまらなそうな顔をした団員達が日常生活に戻った一年で最後の日。
 ホウキを肩に担ぎ、もう片方の手に掃除用具を持って回廊を渡る神田に、ミランダが声をかけた。
 「おはようございます、神田君。
 お掃除ですか?」
 途端、神田がビクッと震え、彼らしくもなく怯えた風に歩を下げる。
 「どっ・・・どうかしましたか?」
 「いや・・・・・・」
 そうは言いながら、警戒気味な彼は怯えた小動物のようで、ミランダはそれ以上近づくことをやめた。
 「あ・・・あの・・・?」
 「よっ・・・用がないなら行くぜ!」
 「あ・・・はい・・・・・・」
 目を丸くしたミランダに背を向け、神田が駆け去っていく。
 「ど・・・どうしたのかしら・・・・・・」
 自分が何か、神田に嫌われるようなことでもしただろうかと、ミランダは困惑して、焦燥に火照った頬に手を当てた。


 彼女の困惑は、しかし、間もなく解消された。
 ミランダを見かけた途端、笑いながら駆け寄ってきたリナリーが、はしゃいだ声をあげてまとわりついてきたのだ。
 「聞いて聞いて!
 神田ったら、女性恐怖症になっちゃったんだって!!」
 「じょ・・・女性恐怖症?」
 なぜ、と、目を丸くするミランダに、リナリーがクスクスと笑った。
 「あのね、クリスマスパーティでラビが、キッシング・ボールのいたずらしたでしょ?
 あの時ね、神田ったら多勢の女の人に捕まって押し倒されてキスされちゃって、ボロボロにされちゃったの!
 それがよっぽど怖かったらしいよ!」
 ケラケラと楽しげに笑うリナリーに、彼のあの態度を納得したミランダが頷く。
 「私・・・何か悪いことでもしたかと・・・・・・」
 呟くと、リナリーはぱたりと笑声を止めた。
 「なに?
 もう神田に会ったの、ミランダ?」
 「えぇ、さっき。
 声をかけたら、なんだか怯えた風だったので・・・私、何か悪いことでもしたかしらって・・・・・・リナリーちゃん、どうかした?」
 言う間に頬を膨らませたリナリーに、ミランダが首を傾げる。
 「だって!
 神田、リナリーのことは平気なんだよ!
 私は神田にキスしたりしないから安心してんだって思ってたのに、ミランダもだなんて!
 なんだよ!
 私は女の子じゃないって言うの?!」
 「そ・・・それはリナリーちゃんが、神田君にとって妹同然だからじゃないかしら・・・?」
 慌ててとりなすと、一瞬きょとん、としたリナリーは、唐突に嬉しそうに笑った。
 「そっかv
 そうだよね!」
 神田には女の子扱いされるよりも、妹同然だと言われる方が嬉しいらしい、ご機嫌なリナリーに、ミランダは苦笑する。
 「・・・でも、女性恐怖症だなんて困りましたねぇ。
 症状が症状だけに、病棟に行けませんもの・・・」
 「うん!
 神田を襲った中には、ナースの姉さん達も多勢いたしね!」
 けろりと言って、またケラケラと楽しげに笑い出したリナリーを、ミランダはため息混じりにたしなめた。
 「だって、あの隙のない神田をいじれるなんて、滅多にない機会だよ!
 どうせすぐ克服しちゃうんだから、やるなら今のうちだよ!!」
 無邪気な顔をして、そんなことを言うリナリーはやはり、コムイの妹だ。
 「困った子ですねぇ・・・」
 はぁ・・・と、またため息をついたミランダを、リナリーは訝しげに見つめた。
 「なんですか?」
 「ミランダ・・・顔、紅いよ?熱があるんじゃない?」
 言われてみれば、さっき神田に逃げられた時も、焦燥と言うには頬が熱かったように思う。
 だが、
 「たいしたことありませんよ・・・多分、リナリーちゃんに困ったことを言われて、焦っただけ」
 と、苦笑したミランダに、リナリーは肩をすくめた。
 「そう言われれば、いつものことだね。
 でも、最近教団内で風邪が流行ってるらしいから、気をつけてね。
 ミランダ、身体弱いしv
 クスクスと笑うリナリーを、ミランダは顔を赤らめて睨む。
 「そりゃ・・・あなた達に比べたら身体能力は劣りますけど、身体は丈夫な方ですよ!」
 「そぉ?
 なんだかよく、熱出してるイメージだけどv
 「うっ・・・・・・!」
 からかわれて、ミランダがまた顔を赤らめた。
 「そういう、か弱げなところがミリョクなんだろーなー。
 私は無理だね。丈夫なのはもう、みんな知ってるし」
 うらやましげに言うリナリーに、ミランダがますます紅くなる。
 「もう・・・いい加減に・・・・・・!」
 「えへへv
 か弱い乙女の役はミランダに任せて、私は健康美でがんばるよv
 「・・・・・・・・・・・・はぁ」
 全ての反駁を諦めて、ミランダは大きなため息をついた。
 「もう・・・朝からからかわないで。
 疲れちゃったわ・・・・・・」
 焦燥が収まると、急に力が抜けて、ミランダは回廊の壁に背中を預ける。
 途端、
 「いた・・・!」
 と、ミランダが眉根を寄せた。
 「あれ?
 出っ張ったところでもあった?」
 気遣わしげに問うリナリーには首を振る。
 冬の石壁が冷たいのは当然だが、痛みを伴うほど冷たく感じるのは久しぶりだった。
 「・・・なぜかしら、団服を着ているのに・・・」
 辛そうなため息混じりに言ったミランダに、リナリーが歩み寄る。
 「ね・・・ねぇ、ミランダ?
 本当に熱があるんじゃない?」
 「どうして・・・?」
 「だって、顔紅いし、冷たいのが痛いって、熱で皮膚が神経過敏になってるってことじゃないの?」
 言いながら、ミランダの額に手を当てたリナリーは、やっぱり、と呟いた。
 「おでこ、熱いよ!
 病棟いこ、病棟!!」
 「そんな、たいしたことは・・・」
 苦笑するミランダの腕を、リナリーがぐいぐいと引く。
 「ダメだよ!
 ミランダ一人の身体じゃないんだから!!」
 「・・・えっ・・・えぇっ?!
 わ・・・私、妊娠した覚えはないのだけど・・・!」
 真っ赤になって慌てるミランダに、リナリーはきょとん、と瞬いた。
 「あれ?そう言う意味なの?」
 「意味がわからないのに言わないで!!」
 悲鳴じみた声をあげて、顔を覆ってしまったミランダの二の腕を引っぱりつつ、リナリーは首を傾げる。
 「うぅーん・・・。
 大事な人みんなに言うもんだと思ってたよ・・・。
 そっか、それでアレン君は変な顔してたんだね!」
 「アレン君にも言ったんですか・・・・・・」
 呆れたミランダに、リナリーは大きく頷いた。
 「言ったよ!大事な仲間に言う台詞だって思ってたから!」
 照れ笑いしながら、それでも『大事な仲間』と、きっぱり言った彼女に、ミランダはクスクスと笑い出す。
 「どこで覚えたかは知りませんけど、あまり鵜呑みにしたら恥ずかしい思いをしますよ?」
 今みたいに、と言うミランダに、リナリーは苦笑して頷いた。
 「そっか・・・どこで覚えたんだろ、って考えてみたら、任務先の街で旦那さんが奥さんに言ってたんだった。
 その言い方がすごく優しくて、素敵だなって思ったから、真似したのv
 「おめでただったんですねぇ、奥様」
 クスクスと笑うミランダを、リナリーはいたずらっぽい目で見る。
 「ミランダがおめでたになったら、改めて言ってあげるね!」
 「えぅっ?!」
 今までで一番紅くなったミランダが面白くて、リナリーは楽しげな笑声をあげた。


 その頃、談話室でラビから神田の話を聞いたアレンは、この一年で一番の大笑いをした。
 「女性恐怖症って、なにそれ!ダッサー!!」
 リナリーに負けず劣らず、ケラケラと笑い出したアレンの口を、ラビが慌てて塞ぐ。
 「バッカお前!
 ユウちゃんに聞かれたらブッ殺されっさね!!」
 「だって面白すぎ!」
 もごもごと言って、アレンはまた笑い出した。
 「キスされたくらいで!
 女の人が怖くなったなんてバッカじゃない?!
 イタイ!!痛い笑いすぎておなかイタイー!!!!」
 ソファに転がり、クッションを叩いて笑い転げるアレンを、ラビは忌々しげに見下ろす。
 「笑い事じゃないさ!
 俺が原因だって言われて、ユウちゃんにボコボコにされたんに!
 それでもユウちゃん恐怖症になんない俺って、強い子だと思わないさ?!」
 「あなたはただ単にうかつなだけでしょう」
 彼らとは少し離れた場所で、愛読書に目を落としていたリンクが冷たく言った。
 「それに、少々離れた場所から見ていましたが、多勢の女性にたかられ、のしかかられて押し倒され、散々蹂躙された様は気の毒でしたよ」
 「・・・助けてはやらなかったんさね」
 「私の仕事ではありませんから」
 「それ教えてくれたら見物したのにぃ〜!!」
 アレンが残念そうに言うと、ちょいちょい、と、ティムキャンピーが尻尾でつついて来る。
 「メモリあんのっ?!」
 キラキラと目を輝かせるアレンの前で、ティムキャンピーは得意げに口を開き、神田受難の図を映し出した。
 「きゃはははははははははは!!!!
 逃げるから押し倒されるんだよ!バッカじゃない?!
 どこまでキスされてんの!!
 呆然としてる――――!!!!」
 脚をばたつかせて笑い転げるアレンを、呆れ顔で見ていたラビが、不意に立ち上がる。
 そのまま、脱兎の勢いで逃げ出した彼を訝しく思う間もあらばこそ、アレンはみぞおちを棒で突かれて息を詰まらせた。
 「・・・・・・なに笑ってんだモヤシ!!!!」
 ソファの後ろに、悪魔も泣いて逃げ出すほど恐ろしい形相の神田が立っている。
 「ティム・・・・・・!」
 ぎろりと睨まれて、怯えたティムキャンピーががちんっと口を閉じた。
 「今すぐ、そのくだらねぇメモリを消せ!」
 びくっと飛び上がったティムキャンピーの尾を、すかさず神田が掴む。
 「げふっ!!」
 彼が前屈みになった拍子に、突きつけられたままの棒がアレンのみぞおちを更に深く抉った。
 「あんっ・・・だっ・・・!!
 い・・・がげんっ・・・!!」
 この苦しみから逃れようと、アレンは掴んだ棒をへし折ろうとする。
 が、
 「ほうきを折ったら清掃班長に罰掃除1ヶ月科せられッぜ」
 冷たい声で言われ、凍りついたアレンのみぞおちを棒が更に抉った。
 「くぴっ!」
 奇妙な声をあげて泡を吹いたアレンに冷たく鼻を鳴らし、神田は捕らえたままのティムキャンピーを睨みつける。
 「消せ」
 ガクガクと光の速さで頷くと、ようやく神田はティムキャンピーを離した。
 と、リンクが本から顔もあげず鼻を鳴らす。
 「ティムキャンピーのメモリが消えても、あの時はJr.が大量の監視ゴーレムを飛ばしていたのですから、映像は教団内のメモリに残っていますよ」
 「保存先は科学班か・・・!」
 「やめなさい。
 監視ゴーレムのメモリは、最低5年間の保管義務があります。
 そのデータを消せば、いくらエクソシストでも罰則は免れ得ませんよ」
 「ちっ・・・!」
 悔しげに舌打ちした神田を、リンクはちらりと見遣る。
 「・・・意外です。
 あなたでしたら、そんなことは知るかと消しに行くと思ったのですが」
 「今まではな!
 だがあそこには・・・・・・」
 珍しく言葉を濁した彼に頷き、リンクは目を本へ戻した。
 「ブリジット・フェイ補佐官ですか」
 「なっ・・・!別に俺は・・・・・・!」
 慌てる神田にリンクは、静かに首を振る。
 「彼女は有能なだけでなく、非常に厳格な方です。
 本部のデータ・ファイルが彼女の元にある以上、横紙破りは許されません。
 早々に諦めると言う選択は、正しいと思います」
 「あ・・・あぁ・・・・・・」
 ほっとして頷く神田に、リンクは鼻を鳴らした。
 「では、速やかに自身の業務に戻ることを推奨しますよ、神田ユウ。
 あなたが手を離さないと、私の監視対象の腹に穴が開いてしまいます」
 「あ?」
 神田が手元を見下ろせば、アレンが未だホウキの柄で腹を抉られている。
 「なんだ、生きてて欲しいのかよ」
 「死んでもらっては困ります」
 聞き様によっては甚だ酷いことを言って、二人は同時に鼻を鳴らした。
 「邪魔したな」
 「どういたしまして」
 互いに温かみのない声で言うと、神田が踵を返す。
 彼が談話室を出て行ってしまうと、リンクは相変わらず本を見つめたまま、紙面に向かって話し掛けた。
 「Jr.、私は手が離せませんので、ウォーカーの蘇生処置を」
 「うわ・・・。
 気づいてんの、ユウちゃんだけだと思ったんに」
 にょき、と、天井からさかさまに顔を出したラビに、リンクが鼻を鳴らす。
 「あなたの普段の行動を見ていれば、容易に想像できることです。
 あなたは『観察対象』のウォーカーから目を離さない。そうでしょう?」
 「んー・・・。
 任務とかで離れちまったらしゃーないけど、同じ場所にいる時はせめてさー」
 照れ笑いしながら天井から降りてきたラビに、リンクは頷いた。
 「それがあなた達の職務であることは理解します。
 ですから側にいるのなら、ついでに手伝いをお願いします」
 「はいはい・・・ってお前、さっきからナニ熱心に読んでんさ」
 リンクが愛読書を手放さないのはいつものことだが、今日の熱心さはまた違っている。
 興味を惹かれれば黙っていられないラビが問うと、リンクはきつく眉根を寄せた。
 「マンマのバースデーケーキをどれにするか、迷っているのですよ!当然でしょう!」
 「・・・・・・当然・・・さ?」
 予想外のことを厳しく言われて、目を点にするラビをリンクは、じろりと睨む。
 「もちろんですとも!
 マンマのお好みは既に把握しておりますが、長官の作られたレシピがどれも素晴らしく、アレンジを試みようにも一点の隙もないバランスに選びあぐねているのです!
 いっそのこと、全て作ってしまおうかとも考えたのですが、ウォーカーと違って繊細なマンマに全てお召し上がりいただくわけにも行かず、かといってお出しすれば慈愛に溢れ、お気を遣われるマンマのご気性では全て召し上がるとおっしゃるでしょうし、そんな無理をしていただくわけには行きませんから、どれかひとつを選ぼうと思ってはいるのですがこれが非常に難題でして・・・」
 「うっさいさ、お前」
 リンクの長広舌を一言で退け、ラビが肩をすくめた。
 「どれも素晴らしいんなら、目隠しでもして適当にめくったページのもんをつくりゃいいことさ!
 アホなことに時間かけてんじゃないさね」
 「マンマのバースデーケーキをアホなこととぬかしますかこの赤ウサギ!!」
 「ミランダとバースデーケーキじゃなく、決断できないお前をアホだっつってんさ」
 ため息混じりに言いつつ、アレンに歩み寄ったラビが泡を吹く彼の頬を軽く叩く。
 「ほれ、アレン、起きな。
 もうユウちゃんはいねーからさ」
 「ふひっ・・・?」
 ようやく息を吹き返したアレンが、抉られた腹を押さえてうずくまった。
 「〜〜〜〜神田の馬鹿!!
 女性恐怖症のくせに僕のお腹散々抉ってぇぇぇぇぇっ!!」
 「女性恐怖症とお前の腹抉ったことは違うさね」
 あっさりと言って、ラビはアレンが腹部に置いた手をどけさせる。
 「どれ、ハラ見してみ?」
 「・・・やだ。
 絶対くすぐるもん」
 「なんさ、その不審の目は!」
 「経験に基づく推理です!」
 「いーから!」
 「やだ・・・きゃははははははははははははは!!!!」
 案の定、シャツをめくられた途端に思いっきりくすぐられて、アレンが甲高い笑声をあげた。
 「・・・っなんですか、騒々しい!」
 忌々しげに舌打ちしたリンクに、アレンが涙目を向ける。
 「だってラビがくすぐるんだもん!!」
 「お前が不審そーにするから、罰さ!」
 「なんだよ!言わなくったってやったでしょー!!」
 「当然〜♪」
 「うるさい子供達ですね!
 さっさと病棟に行ってはどうですか!!」
 「え?いいの?」
 意外そうに言ったアレンを横目で睨み、リンクは頷いた。
 「私は今、それどころではありません」
 「へ?!
 じゃあお前、ついて来ないんさ?」
 「私は忙しいのだと、何度も言っているではありませんか!」
 目を丸くしたラビにも怒鳴ると、アレンが呆れた風に肩をすくめる。
 「ハイハイ。
 なんだよ、リンクのヒステリー!」
 ぼやきつつ、アレンはラビに『おぶれ』と両腕を上げたが、それはクッションを顔に押し付けられて却下された。
 「ラビッ!!窒息する!窒息する!!」
 じたじたと暴れるアレンに、ラビが楽しげに笑う。
 「でも、うるさい監視が外れてよかったじゃないさ」
 「そだね。
 病棟行く振りして、ばっくれましょうv
 クッションの影からこっそり囁くと、
 「聞こえてますよ、ウォーカー!!」
 すかさず怒鳴られて、アレンは目を丸くした。
 「どーゆー耳してんの?!」
 「悪巧みは聞き逃さない耳です!
 逃げたら罰を与えますからね!」
 「・・・ハイハイ」
 観念して、アレンはソファから起き上がる。
 途端、
 「いって・・・!!」
 神田に抉られた腹を押さえて、うずくまった。
 「あちゃ。
 本気でやられちまったらしいな」
 「〜〜〜〜だからおぶってっていったじゃん」
 ぴぃぴぃと泣き声を上げるアレンに苦笑し、ラビが負ぶってやる。
 「んじゃ、病棟に搬送するさ!」
 「ついでに監視もお願いします」
 「ぅえっ?!職務放棄?!」
 驚きの声を揃える二人を、リンクがまた睨んだ。
 「優先順位です!」
 きっぱりと言った彼に、アレンは唖然と口をあける。
 「・・・ミランダさんに負けちゃったよ」
 「仕方ねぇんじゃね?
 長官からして、ミランダのわんこだかんな♪」
 クスクスと笑って、アレンを負ぶったラビは病棟に向かった。


 消毒液のにおいに満ちた病棟は、相変わらずの忙しさだった。
 科学班に次いでワーカーホリックが多いと言われるここで、その自覚のない婦長がきびきびと歩み寄ってくる。
 「あなたも風邪なの、アレン?」
 「へ?僕『も』?」
 ラビに負われたまま、目を丸くしたアレンに、婦長は頷いた。
 「ミランダがさっき来たのだけれど、ベッドに入った途端、熱が上がってしまって。
 どうも、悪い風邪をもらったらしいのよねぇ・・・」
 以前は移動に時間がかかったため、滅多にないことだったが、方舟の扉で世界中と繋がった今、各地の風邪や伝染病などが本部にも入ってきている。
 「わ・・・悪いんですか?」
 病原菌の研究途中にあるこの時代、伝染病は未だ謎が多く、不治の病とされるものも多かった。
 まさかその類では、と焦る二人に、婦長は微笑んで首を振る。
 「調べたけど、ただの風邪みたいですよ。
 寝ていれば治るけど・・・残念ねぇ」
 「なにがっ?!」
 びくびくと声を揃える二人に、婦長は苦笑を向けた。
 「だってあの子、明日お誕生日だったんでしょ?」
 「あー!!カウントダウンパーティ!!」
 せっかく準備したのに、と、ラビが悲鳴をあげる。
 「だから残念ね、って言ったのよ」
 「あぁー・・・そりゃリンクもがっかりしますね」
 「俺の方ががっかりさぁ〜・・・!
 なんでこんな日に熱出すんさね、ミランダ〜・・・!!」
 しくしくと泣き出したラビの頭を、負われたアレンがよしよしと撫でた。
 「それであなたはなにしに来たの?」
 「神田にいぢめられました!」
 婦長の問いにすかさず言って、アレンは彼女を上目遣いに見る。
 「酷いんですよ、神田!
 いたいけな僕のお腹をホウキの柄で突いて、ぐりぐり抉ったんです!
 婦長、お願いです!
 神田をしかってやってください!
 すんごく叱ってやってください!」
 ラビの頭の上で両手を組み合わせ、哀願するアレンを婦長は厳しい目で見つめた。
 「つまりまた意地悪したのね?」
 「違いますよっ!
 神田が僕を・・・」
 「意地悪して、仕返しされたのね?」
 「違ッ・・・」
 「したのね?」
 厳しい口調で言われて、アレンは思わず目を泳がせる。
 「正直におっしゃい、アレン!!」
 「神田の女性恐怖症を笑っただけです!!
 意地悪してません〜!!!!」
 とうとう白状したアレンに、婦長は呆れ顔で吐息した。
 「全くいつもいつも飽きもせず。
 むしろ、仲がいいと言うことかしらね」
 「仲良くなんかありませんよっ!!
 それには断固反発したアレンの鼻先を、歩み寄った婦長が弾く。
 「これだけ元気なら、内臓どころか腹筋にも異常はないわよ。
 お兄ちゃんに甘えてないで、自分で立ちなさい!」
 「はっ・・・はいっ!!」
 叱られて、慌てたアレンはラビから飛び降りた。
 「ホラ、立てるじゃない」
 「ア〜レ〜ン〜〜〜〜!」
 「さっきまでは本当に痛かったんだってば!!」
 ラビにまで睨まれて、アレンは慌てて手を振る。
 「いらっしゃい。
 一応、先生に診てもらいましょ」
 「はぁい!」
 ここは逃げてしまおうと、婦長について行くアレンの頭を、すかさずラビがはたいた。
 「婦長!ラビがいぢめる!!」
 「仕返しさ、バーカ!」
 きゃんきゃんと喚く二人を振り返り、婦長が仁王立ちになる。
 「病棟で騒がない!!」
 「はいっ!!」
 びくっと飛び上がった二人は、現役軍人も目をみはる素早さで婦長に敬礼した。


 「お腹が冷や冷やする・・・」
 診察室から湿布を貼っただけで追い出されたアレンは、頬を膨らませてみぞおちをさすった。
 「お前が余計なこと言うからさ。
 ユウちゃんのコト話してる時は、常に背後注意さね」
 ラビに知った風な口を利かれて、アレンはますます頬を膨らませる。
 「失言王に言われたくないんですけど!」
 「誰が失言王さ!」
 「いっつも口を滑らせちゃ、酷い目に遭ってるじゃないかー!!」
 「静かにしなさい!!」
 きゃんきゃんと喚く二人は、ナースに一喝されて互いの口を塞いだ。
 「あんまり騒ぐとつまみ出すわよ!」
 「ごめんなさい!!」
 「もう退散するさ!!」
 くるりと踵を返した二人は、また別のナースに『走らない!!』と叱られて、急停止する。
 「姉さん達こえぇぇ・・・!
 これじゃ、ユウちゃんじゃなくても恐怖症になるさ!」
 びくびくと震えて動けなくなってしまったラビを、アレンがそっとつついた。
 「じゃあ、怖くないお姉さんと会って克服しませんか、トラウマ?」
 「なんさ、それ?」
 瞬いたラビに、アレンは病室の案内板を指す。
 「ミランダさんのお見舞いしていきません?」
 「あ、そっか。
 ここまで来といて寄ってかないのはつめてーよな」
 途端に震えを収め、くるりと方向転換したラビの後に、アレンは呆れながらついて行った。
 「ほんっと・・・立ち直るの早いですよねー!
 さすが、元帥に殴る蹴るの暴行を受けても懲りずに向かっていくだけのことはありますよ!」
 「・・・褒めてねーだろ、それ」
 「こんなはっきりした誹謗中傷、聞き間違えないでくださいよ・・・いてっ!」
 すぱんっと、小気味いい音を立ててはたかれたアレンが、口を尖らせる。
 「なんだよラビのへたれっ!」
 「もう一発行くさっ?!」
 「きゃ――――!!!!」
 何度叱られても懲りない二人が、騒ぎながら廊下を走り、『ミランダ・ロットー』の名札が下がった病室に飛び込んだ。
 「ミランダさん、お加減いがかですかー?!」
 「風邪引いたのって、クリスマスに薄着してたからじゃね?!」
 「静かにっ!」
 中にいたリナリーに睨まれ、二人は慌てて謝る。
 「・・・そんなに具合悪いんですか?」
 気遣わしげにアレンが問うと、リナリーは苦笑して肩をすくめた。
 「ミランダはどんなに辛くても口に出さないから・・・ベッドに入った途端、動けなくなったくせに、平気だって言ってたんだよ?」
 連れて来てよかった、と吐息するリナリーに、ラビが頷く。
 「確かに・・・ほっといたら、この状態で任務に行ってただろうさ」
 「そんなことしたら、冗談じゃなく死んじゃいますよ!」
 声まで蒼褪めるアレンに、リナリーは眉根を寄せて頷いた。
 「だからね、ミランダが風邪引いちゃった、ってことだけ報告して、このことは内緒にしておこうよ。
 じゃないと・・・・・・」
 ぶるっと、震え上がったリナリーに、アレンとラビも頷く。
 「リーバーさんがどんなに怒るか・・・!」
 「多分俺、横で聞いてるだけで心臓止まるさ・・・!」
 びくびくと震えるラビの前に、リナリーが手を差し出した。
 「約束ね!」
 「おう」
 「はい」
 ラビに続き、アレンも手を載せ、契約は成立する。
 「けどさ、せっかく準備してたんに、ニューイヤーの乾杯だけになっちまうのが惜しいさね・・・」
 「僕・・・昨日は寝ずに風船膨らませたのに・・・・・・」
 そう言ってアレンは、じっとりとラビを睨んだ。
 「ミランダが風邪ひいちまったんは俺のせいじゃないさね」
 「そうだけど、なんで君の計画って、あんなにハンパないんですか」
 「中途半端は俺の気質にあわんさねー。
 やるならド派手に!」
 こぶしを握って断言したラビに、リナリーが笑い出す。
 「お祭り好きだねぇ・・・」
 「そりゃお前もだろ」
 「まぁねv
 ぺろりと舌を出して、リナリーは薬で眠っているミランダを見下ろした。
 「姫に、盛大なお祝いを用意してたのになぁ・・・・・・」
 「じゃああの風船、どうするんですか?
 ニューイヤーパーティで使うの?」
 アレンが首を傾げると、ラビは眉根を寄せる。
 「そりゃ・・・そうするしかないさね。
 病室で大量の風船破裂させて花吹雪なんてやらかしたら、俺ら今度こそ婦長に麻酔なしで切り刻まれるさ・・・」
 「ちぇ・・・。
 一所懸命詰めたのに・・・・・・」
 「残念だけど、切り刻まれたくないしね・・・」
 不満げなアレンの肩を、これまた不満げな顔でリナリーが叩いた。
 「そんで、リナ?
 ミランダのこと、もう報告したんさ?」
 「うん。
 この状態で任務に組み込まれたら大変だから、科学班には真っ先に連絡したよ」
 「え?じゃあ、なんでリーバーさんがいないんですか?出張?」
 目をみはるアレンに、リナリーは首を振る。
 「今、すごくお仕事が忙しいみたい。
 重病とかだったらさすがに飛んで来たんだろうけど、ただの風邪だって言ったら、後で寄るって。
 まぁ、今はミランダも熟睡中だから、来てもらっても仕方ないしね」
 「ふぅん・・・。
 じゃあ、もうすぐ飛んでくんじゃね?」
 犬が、とラビが言うか言わないかのうちに、病室のドアが開いてリンクはじめ監査官達がなだれ込んできた。
 「マンマ!!」
 「マンマご無事で?!」
 ベッドに向けて突進する彼らに、ラビが無残に踏み潰される。
 「ラビ・・・。
 なんで君、そんなに鈍いんですか・・・?」
 監査官達の足下からラビを引っ張り出してやりながら言うアレンの背後で、リナリーが泣き喚く犬達を怒鳴っていた。
 「そんなに騒いじゃ迷惑でしょ!
 静かにしなさい、わんこ達!!」
 いつもは自分達が言っていることをリナリーに言われ、監査官達は悔しげにしゃくりあげる。
 「それにここはレディの寝室なんだからね!
 男の人達は出て行きなさいよ!!」
 パタパタと手を振って監査官達を追い出すリナリーの背後で、アレンとラビが顔を見合わせた。
 「・・・あれ?」
 「俺ら、ナチュラルに勘定されてなかったんさ?」
 「二人はエクソシスト仲間だからいいんだよっ!」
 言われて、ほっと吐息する。
 「ミランダさんは無理しすぎて倒れることがよくあるから・・・」
 「寝顔は見慣れてるさねv
 途端、悔しげな顔をした監査官達に、二人は意地悪く舌を出した。
 と、
 「では、私が残りましょう!!」
 リンクが他の監査官達を掻き分けて、無理矢理病室に残る。
 「あなた達こそ看病の役に立たないどころか、どうせマンマの枕元で騒いで困らせているのでしょう?!」
 「なにー?!聞き捨てならないよっ!!」
 リナリーが激昂すると、リンクは冷たく鼻を鳴らした。
 「では、戦うしか能のないあなたが、マンマの看病をできるとでも?」
 「できるよっ!!
 言っとくけど、看護は素人じゃないんだから!
 後で吠え面かかないでよねっ!!」
 「誰が吠え面などかきますかっ!
 失礼な小娘ですね!!」
 「じゃあ、今かかせてあげましょうか・・・・・・?」
 室内に絶対零度の声が染み渡るや、居丈高代表のリンクだけでなく、ワガママ代表のリナリーまでもが黙り込む。
 「婦・・・長・・・・・・!」
 すっと、上げられた手が、まっすぐに部屋の外を指した。
 「一同」
 すぅっと、婦長の細い首が息を吸い込む。
 「出て行けえええええええええええええええ!!!!」
 びりびりと空間を震わせる怒号が響くや、犬もワガママも脱兎と化して部屋を、そして病棟を駆け出る。
 「こっ・・・こわっ・・・こわっ・・・・・・!!」
 ぶるぶると震え、まともに声も出ないアレンの隣で、リンクもぜいぜいと息を切らした。
 と、
 「わんこなのに、足遅いんだね」
 殊更嫌味を言って、リナリーが笑う。
 「あっ・・・あなたとっ・・・一緒にしないでもらいましょうか・・・!」
 「今はイノセンス使わなかったもんv
 クスクスと笑って、リナリーはアレンに手を差し伸べた。
 「ね、ミランダがパーティに参加できなくてつまらないから、彼女が回復したら小さなパーティだけでもさせてもらえるよう、兄さんにお願いしにいこ!」
 「あぁ、そうですね・・・ラビ?生きてますか?」
 リナリーの手を取って立ち上がったアレンが辺りを見回すと、全力疾走後に倒れたらしい監査官達を蹴散らしてラビが歩み寄ってくる。
 「ん。
 逃げるのは得意さね」
 「・・・ヤな特技だなぁ」
 「うっさいさ!」
 ふんっと鼻を鳴らしたラビが先に立って歩き出すと、アレンとリナリーも続いた。
 「ま・・・待ちなさい!!
 勝手にちょろちょろ出歩くんじゃありません!!」
 「ハァ?!
 監視放棄したの、君じゃん!!」
 リンクの叱声に、アレンが思いっきり顔をしかめる。
 だが、リンクは平然と首を振った。
 「マンマが病床に就かれた今、君の監視が優先となります。
 その程度の状況判断もできないのですか?」
 嫌味ったらしい言いように、アレンが舌打ちする。
 「ホンット・・・ムカつくわんこ!」
 「なんとでも!」
 つんっと言い放ち、リンクはアレンの腕を取って引き寄せた。
 「なにするの!!」
 リナリーも力いっぱいアレンの腕を引いたため、アレンが悲鳴をあげる。
 「ちょっ・・・お前ら!
 ソロモン王見たく、アレンを真っ二つにする気さ?!」
 ラビの言葉に、はっとしたリナリーが手を放した途端、リンクがアレンを引き寄せた。
 「監査官!
 リナリーが先に手を放したんだから、アレン君は私のものだよ!
 返せ!!」
 「馬鹿なことを言ってないで、あなた達は今夜のくだらない馬鹿騒ぎの準備でもしてなさい!!」
 「なんですってぇぇぇぇ!!!!」
 大声を上げて足を振り上げたリナリーを、ラビが慌てて羽交い絞めにする。
 「待て!!
 待て待てナニ暴力に訴えてんさ、お前は!!」
 「なんだよっ!
 もとはラビが『先に放した方が勝ち』って言ったんでしょぉ!なんとかしてよっ!」
 「・・・お前はどんだけワガママなんさ。
 俺は、お前らが引っ張り合うとアレンが裂かれる、って言っただけさ」
 「紛らわしいんだよ!!」
 えいやっ!と、振り下ろされたリナリーの踵を、ラビが間一髪避けた。
 「お・・・お前っ・・・!
 俺の足踏み砕く気かぁぁぁぁぁ!!!!」
 「嫌なら放してよ!」
 「・・・放したら、リンク蹴飛ばしに行くだろ」
 「当たり前!」
 リナリーがムッと睨んだ先では、じたじたと暴れるアレンをリンクが引きずって行っている。
 「今なら余裕で追いつけるもん!」
 「だぁら・・・やめろっつってんさ!」
 もっとも危険な足の攻撃力を封じてしまおうと、ラビがリナリーを小脇に抱えた。
 「はーなーせー!!姫がさらわれるぅー!!」
 「まだお前が王子なんかよっ!!」
 自分のためにもアレンには王子になって欲しいと、ラビは肺の中が空になるほど吐息する。
 「も・・・助けてユウちゃん!!」
 切実な願いはしかし、部屋にこもって大掃除中の神田には届かなかった。


 その頃、年末年始など関係なく、膨大な仕事量に押しつぶされていた科学班では、久しぶりに執務室から出てきたコムイが部下達の邪魔・・・いや、研究の指導にいそしんでいた。
 「そう言えばさー、ミランダが風邪引いちゃって、今日のパーティに出られないって、聞いたぁ?」
 他支部との連絡のため、リーバーが部屋を出た隙を狙ってコムイが言うと、近くにいたスタッフ達が頷く。
 「クリスマスパーティの時、長い時間薄着でいましたもんね」
 「そりゃリナリーもだろ」
 「リナリーは強い子だから、大丈夫さぁv
 自慢げに言った後、コムイは顔を蕩けさせた。
 「でも、風邪引いちゃっておにいちゃーんって甘えてくるリナリーも可愛いよねぇーvv
 風邪引かないかな、リナリィーvv
 妄想に耽って不気味に笑う上司に、部下達は一斉に首を振る。
 「無理ですって。
 今はたまたま補佐官がいないから、そんな妄想もできますけど」
 「すぐに定期連絡から帰って来て、あんたを執務室に引っ張り込みますから、彼女」
 「リナリーが風邪引いても見舞いにすら行けなくって、『兄さんなんてキライっ!』って言われちまいますよー?」
 「く・・・!
 なんて可哀想なボク・・・・・・!」
 がっくりと首を落とし、作業台に涙の池を作るコムイは、ポケットから乳白色の液体が入った瓶を取り出した。
 「じゃあこれは、ミランダにあげるかなー」
 「・・・・・・なんすか、それ?」
 不信感に満ち満ちた視線を集めた瓶を、コムイは高く掲げる。
 「風邪引いちゃったリナリーが、もっと可愛くなる薬v
 「・・・・・・なんじゃそりゃ」
 あまりにも抽象的過ぎて想像もつかないと、皆が首をひねった。
 と、得意げに起き上がったコムイは、クスクスと楽しげに笑う。
 「普段善良なミランダがさぁ、本当はどんなこと考えてるのかなーなんて、興味ない?!」
 大声を張り上げたコムイに、部下達が目を剥いた。
 「まさか真実薬?!」
 「あんた鬼ですか!!」
 「やだなァ〜!
 ボクがそーんな、当たり前のものなんか作ると思う〜?」
 パタパタと手を振って笑うコムイに、更に不信感に溢れた目が集まる。
 「な・・・なに作ったんすか・・・?」
 嫌な予感を覚えつつも、聞かずにいられないのが科学者のさがと言うものだ。
 思い切って問うた部下に、コムイはまたクスクスと笑い出す。
 「わんこ薬v
 コレ!コレね!!
 わんこ耳とわんこ尻尾が生えるんだよ!!
 ミランダが本当は、どんなことで嬉しがって、どんなことでしょげちゃうのか、見てるとすっごく和む・・・じゃない、今後の彼女のメンタルケアに役立つと思わないかい?!」
 得意げに胸を張ったコムイを、四方八方から不審の目が貫いた。
 「室長、今、和むって・・・」
 「言ってないよ?」
 手で口を塞ぎ、もにょもにょと言うコムイに部下達が詰め寄る。
 「言った!」
 「言ったっす!」
 「言いましたよ!」
 「なんすかそれ!ミランダだしにして、たのしもーって腹・・・!」
 「だってぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
 全員から責められて、コムイが大声を上げた。
 「この一年ボク、可哀想だったじゃない!すごく可哀想だったじゃない!!
 女神は女神でも、地獄の女神みたいな人に監視されて、ずっとお仕事しかさせてもらえなくて、逃げたらリーバー君に殴られて連れ戻されて、もう、ボクほど可哀想な子なんていないくらいに!!
 心の安らぎが欲しいんだヨぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 「だったら病床のミランダにいたずらしてないで、他の奴にやってくださいよ!
 例えば・・・」
 にんまりと、発言者の頬が緩み、それは周りのスタッフ達にも伝播する。
 「わんこと言えば、あいつでしょv
 クスクスと密やかな笑みは、徐々に室内に広まり、やがて大爆笑へと変わった。


 一方、病室を追い出されたアレンは、必死の抵抗で訓練や勉強といった、楽しくない仮題から逃れ、昼食前の軽いお茶を頂いていた。
 ちょっと早いけど、と、ジェリーが出してくれたガレット・デ・ロアにはまだ、王冠も陶器の人形もなく、イベント菓子としての楽しみはなかったが、それでも十分においしい。
 「ジェリーさんのケーキって、ホントに最高・・・!」
 感涙すらして、ケーキを口に運んだアレンは、テーブルの対面を見るや、眉をひそめた。
 「・・・リンク、前から言おうと思ってたんですけど、君の味覚、変じゃありませんか?」
 「普通だと思いますが?」
 平然と言ったリンクに、アレンはぶんぶんと首を振る。
 「普通じゃないよ!!
 どこの世界にコーヒーとクリーム1:3で入れる人間がいるんだよ!!」
 既に真っ白になったカップの中身を指差すと、リンクは不思議そうに首を傾げた。
 「入れませんか?」
 「入れませんよ!!
 その上砂糖!!砂糖!!!!」
 悲鳴じみた声をあげるアレンを、リンクはうるさげに睨む。
 「砂糖は脳の、唯一の栄養源です。
 摂取するに越した事はありません」
 「だからって!!
 コーヒーとクリームと砂糖で対比したら、どう見ても1:3:5じゃん!!
 クリームコーヒーどころか、クリーム砂糖じゃん!!」
 きゃんきゃんと喚きたてるアレンに、リンクは深々と吐息した。
 「まったく、うるさい子供ですねぇ。
 コーヒーが飲めないなら、ジュースでも飲んでなさい」
 「それのどこがコーヒー?!
 冒涜にも程がありますよ!
 コーヒー農家の皆さんに謝れ!!心底謝れ!!!!」
 バンバンとテーブルを叩いて騒ぐアレンの対面で、リンクは悠然とコーヒー・・・と呼ぶ何かを飲み乾す。
 「不要です。
 私はちゃんと、コーヒーを楽しんで・・・」
 言いかけたリンクの耳が、徐々に尖って薄くなり、頭の上に移動した。
 「リ・・・・・・!」
 絶句したアレンの真ん丸くなった目の前で、リンクが慌てて立ち上がる。
 と、ベルトの上からひょこんと、長い毛に覆われた尻尾が現れた。
 「なんですかこれは――――――――!!!!」
 大絶叫に食堂中の視線が集まり、信じがたい光景に皆が目を丸くする。
 「・・・はっ!
 僕は?!
 僕は大丈夫?!」
 慌てて自分の耳をつまんだアレンは、それが元の形で元の位置にあることに心底安堵した。
 「よかった・・・。
 僕は盛られなかったみたい」
 「盛られる?!それはどう言うことですか?!」
 音階の外れた甲高い声をあげて詰め寄るリンクに、アレンは乾いた笑声をあげる。
 「こんなことするの・・・って言うよりできるのは、科学班しかいないじゃないですか」
 「あのホーキ頭か!!」
 「リーバーさんはこんな暇なことしませんよ」
 忙しいもん、と笑って、アレンはテーブルの上を見回した。
 「リンクが口にして、僕が口にしてないものと言えば・・・コーヒーとクリーム、砂糖・・・。
 これのどれかですね」
 「おのれあのホーキ頭!!
 締め上げて白状させてくれる!!」
 激昂するリンクに、アレンは肩をすくめる。
 「だからリーバーさんじゃないって。
 他の誰かがやったいたずらなんだろうけど・・・これだけ即効性で、しかも見事にケモノ化させる薬が作れる人って言えば、僕は一人しか知らないなぁ・・・・・・」
 その顔を思い浮かべた途端、アレンは席を立ってリンクから離れた。
 「なにを逃げているのですか?!」
 「僕、あの人と関わるとロクなことがないんで、そのカッコでいるうちは僕と離れててください!」
 「なにっ・・・」
 「アデュー!
 生きて戻ってね!」
 唖然とするリンクを置いて、アレンは踵を返す。
 「まっ・・・待ちなさい、ウォーカー!!」
 食堂を駆け出て行ったアレンを追うが、どこへ行ったものか、その姿は既に廊下にはなかった。
 「あの・・・クソガキはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 怒号を上げつつ、怒涛の勢いで駆け出したリンクの背が回廊の奥に消えた頃。
 アレンは厨房の作業台の影から、ぴょこんと顔を出した。
 「アラん?
 アレンちゃん、もぉ隠れてなくていいのぉ?」
 クスクスと笑うジェリーに、アレンは大きく頷く。
 「リンクの声が聞こえなくなりましたから。
 まだまだですよねぇ、リンク!
 僕が、おいしいガレット・デ・ロアを置いてどっかに行くはずないのに!」
 クスクスと楽しそうに笑うアレンの頭を、ジェリーは撫でてやった。
 「アレンちゃんも、だいぶリンクちゃんの扱いに慣れて来たのねぇv
 「そりゃあ、24時間一緒ですから!」
 学習しました、と、得意げに言うアレンの鼻先に、ベリータルトが差し出される。
 「はい、ご褒美v
 ゆっくり食べてお行きなさいv
 「わぁい!!!!」
 大喜びで受け取ったアレンは、早速テーブルに戻って、昼食前の軽いお茶を頂いた。


 「ウォーカーを知りませんかっ!!」
 訪ね歩くうちに、科学班に至ったリンクが扉を開けた途端、室内は大爆笑に包まれた。
 「実験成功〜〜〜〜!!!!」
 「いい耳と尻尾だ!」
 「振ってみ!尻尾振ってみ!!」
 げらげらと笑う科学者達を、リンクはぎろりと睨み渡す。
 「やはりあなた達の仕業でしたか!!」
 「それは違うな!」
 「室長だよ!室長一人の仕業!」
 笑いながら手を振る科学者達の間を、リンクは厳しい顔で掻き分け進んだ。
 「コムイ室長!!」
 雑然として歩きにくい科学班を抜け、ようやく至った室長執務室を開けると、まずはブリジットが目をみはる。
 「リンク監査官・・・その格好はどうされましたか」
 常に冷静な補佐官は、言葉を詰まらせることなく言ったものの、その目はリンクの耳に据えられたまま、気になって仕方ないとばかりに微動だにしなかった。
 「・・・忌々しいことに、室長の仕業だそうです!」
 じろりと睨んだ先では、コムイが手を叩いて笑っている。
 「すっごい似合ってる!!
 似合ってるよ、リンク監査官!!」
 「室長・・・。
 私がいない間に、なんてことをなさるのですか」
 忌々しげに言いつつも、ブリジットの目はずっとリンクの耳に据えられていた。
 「あの・・・補佐官・・・・・・」
 「なんでしょう」
 「お気に召しましたか?」
 「・・・・・・・・・そんなことはございません」
 わざとらしく咳払いし、ブリジットはようやくコムイに向き直る。
 「すぐに、リンク監査官を元に戻してくださいませ」
 ブリジットの要望に、コムイは意外なほどあっさりと頷いた。
 「もちろん、すぐに元に戻るとも!
 解毒薬とかは特にないんだけどね、クリームと間違えてコーヒーに入れる程度って言ったらせいぜい5mlとか、入れても10mlくらいでしょー?
 2時間くらいで元に戻るから、安心して・・・・・・どうしたんだい、監査官?
 顔が紫色だよ?」
 「あ・・・あの、室長・・・・・・!
 一瓶使ってしまった場合は・・・・・・?!」
 引きつった声をあげるリンクを、コムイは不思議そうに見つめる。
 「一瓶?
 なんの一瓶?」
 「で・・・ですから、あのクリームを全部・・・その・・・飲んでしまった場合は・・・・・・」
 「え?
 言ってる意味がわかんないんだけど、監査官?」
 眉根を寄せて、コムイは首を傾げた。
 「ボク、ジェリぽんがキミに出そうとしたミルクポットを摩り替えたんだよ?
 コーヒーに入れるんなら、一瓶も使わないよね?」
 元々ブラックでしかコーヒーを飲まないコムイは、クリームは入れるにしても最小限、という認識しかない。
 この世にまさか、コーヒーが真っ白になるほどにクリームを入れる人種がいるなどとは、思っても見なかった。
 だが、
 「丸ごと一瓶飲み干しましたが何か?!」
 開き直ったリンクの大声に、コムイだけでなくブリジットまでもが、鳥肌を立てて硬直する。
 「キミ・・・味覚大丈夫・・・・・・?」
 アレンと同じようなことを引きつった声で言われて、リンクはムッと眉根を寄せた。
 「極めて正常ですが!」
 「でしたら・・・何か身体に不調を抱えていらっしゃるのではありませんか、監査官?
 検査をお勧めしますわ」
 ブリジットにまで至極真面目な顔で言われ、リンクはますます眉根を寄せる。
 「ご厚意はありがたくいただきます、補佐官。
 それでコムイ室長、私の質問の答えはいかに?」
 殊更淡々と言ったリンクに、コムイは苦笑して両手を広げた。
 「そんなのわかんないよ。
 誰も一瓶丸ごとなんて飲んだことないもん」
 「無責任な!!」
 「・・・世間一般の摂取容量でやめといてくれたら、ちゃんとわかってたよ」
 リンクの苦情に、コムイは乾いた笑声をあげる。
 「まぁ、死に至る薬でもないし?
 きっとキミのマンマはお気に召すだろうから、見せといでよーv
 「えっ?!」
 真っ赤になって半身を引いたリンクの尻尾が、かすかに振れた。
 その様にニヤニヤと笑い、コムイはペン先でドアを指す。
 「サイコーの誕生日プレゼントなんじゃない?」
 クスクスと笑いつつ言ったコムイは、真っ赤になって彼を睨むリンクの尻尾が、更に振れる様に、笑声を大きくした。


 「ま・・・まったく、なんて方でしょう、コムイ室長は!!
 私をこんな目に遭わせて、ただで済むと思わないでいただきたいですね!!」
 必ず報告してやる、と、気炎を上げるリンクの足は、自室ではなく病棟へ向かっていた。
 コムイに言われたからでは決してなく、ただミランダの容態が心配だから見舞いに行くのだと自身に言い聞かせて、すたすたと回廊を歩くリンクを、すれ違う団員達が目を丸くして見つめる。
 と、通信班へ通じる回廊の奥から出てきたリーバーが、床を蹴るように歩いてくるリンクを見つけて目を丸くした。
 「お・・・おい、どうしたんだ、そのカッコ・・・?」
 「あなたには関係のないことですよ!!」
 きゃんきゃんと吠え立てるリンクが犬そのものに見えて、リーバーはほとんど無意識にリンクの顎の下、首の両脇を掴む。
 「な・・・何をするのです・・・・・・!」
 身長差がかなりあるため、爪先立ちになって抗議するリンクを見下ろし、リーバが瞬いた。
 「あ、悪い。
 よく吼える犬を躾る時にゃ、ここを持っておとなしくさせてから、アイコンタクトで叱ってたからさ」
 「私は犬ではありません!放しなさい!!」
 「どう見ても犬なんだが」
 きゃんきゃんと吠え立てるリンクを苦笑して放し、攻撃的に伏せられた耳をつまむ。
 「こりゃすごいな。
 まるで本物の感触だ・・・やったのは室長か?」
 「まったく忌々しいっ・・・!!」
 顔を真っ赤にして、リンクは怒りに震えた。
 「私にこんなことをして、覚えているがいいですよ!
 絶対に中央庁に報告してやりますからね!!」
 怒鳴れば、なぜかリーバーが吹き出す。
 「なんですか!!」
 「報告すんのはいいけど、だったら証拠として、お前の写真や各身体情報を添付しなきゃな!
 俺が検査写真、撮ってやろうか?」
 意地悪く笑うリーバーを、今にも湯気を噴かんばかりのリンクが睨みつけた。
 「余計なお世話です!!!!」
 リンクの怒号に、しかし、リーバーは小動もしない。
 どころか楽しそうに笑って、リンクの肩をはたいた。
 「んじゃ、気が向いたら俺ンとこ来な。
 うまく撮ってやるぜ、記念写真♪」
 すれ違い、リンクに背を向けたリーバーへ、彼は向き直る。
 「検査写真ではないのですか!!」
 「検査なんかしなくったって、すぐ戻るよ」
 その言葉にはリンクもぐっと詰まり、リーバーの背中をただ睨んだ。


 「・・・っふん!!
 言われなくともわかってますとも!」
 リーバーに再び背を向け、ずんずんと反対方向へ向かったリンクは、憤然と呟きながら病棟に入った。
 目を丸くして彼を見つめるナース達を無視し、まっすぐにミランダの病室に入る。
 「マンマ、お加減は・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・あら?」
 熱に頬を染めたミランダは、ベッドの中でぼんやりと呟いた。
 「変ですねぇ、ハワードさんに耳と尻尾がついて見えます・・・・・・」
 まだ熱が高いみたい、と、笑ってベッドにもぐりこもうとしたミランダに、リンクは気まずげな顔で歩み寄る。
 「いえ、実は・・・室長に怪しい薬を盛られまして・・・・・・」
 「え?」
 目を丸くしたミランダは、もっとよく見ようとベッドに半身を起こした。
 「じゃあこれは・・・本物なんですか?!」
 「は・・・はい・・・・・・」
 ミランダが伸ばした手に耳を撫でられて、リンクの尻尾がわさわさと振れる。
 「ま・・・!
 可愛い!!
 可愛いわ、耳も尻尾も!!」
 ミランダがはしゃいだ声をあげると、ドア前で興味津々と様子を伺っていたナース達も入って来た。
 「これ本物なの?!」
 「てっきり仮装だと思ってたのに・・・!」
 「うわー・・・!
 ホントに動いてる!」
 「なっ・・・何をするのですか!やめなさい!!」
 抵抗するも、暴れる患者に慣れたナース達は見事なチームワークでリンクの抵抗を封じ、耳や尻尾を撫でさする。
 「ねぇ!尻尾振って、尻尾!!」
 わくわくと期待に満ちた目で詰め寄られても、散々蹂躙されて怯えきった尻尾が振れるわけもなかった。
 耳を伏せ、尻尾を垂らして震えるリンクの様子に、ミランダがおろおろと手を差し伸べる。
 「あ・・・あの、皆さん・・・マユゲが怯えてますから・・・・・・!」
 「なによー!姉さんに囲まれて嬉しいでしょ!」
 「ラビやアレンだったら大喜びよ!」
 「今頃ぶんぶん尻尾振ってるんだから!」
 「で・・・でも・・・・・・!」
 ぴるぴると震えるリンクの耳を見遣り、ミランダは彼の腕を取った。
 「この仔は苦手みたい・・・・・・」
 上目遣いで懇願するミランダに、ナース達は渋々頷く。
 「わかったよ・・・仕事に戻る」
 「病室で騒いでたら、婦長に怒られるしね」
 肩をすくめて笑い、手を振って出て行く彼女達に手を振り返し、ミランダはベッドの端に縋って震えるリンクの頭を撫でてやった。
 「もう大丈夫ですよ」
 「マンマ・・・!」
 涙目をあげたリンクの尻尾が、パタパタと床を打つ。
 「あなた・・・長毛種だったのねぇ・・・・・・」
 ふさふさした尻尾を見下ろして、ミランダは妙なところに感心した。


 「・・・・・・ってことで、各支部との調整は終わりましたんで、次の段階進めてオッケーです」
 通信班から戻ったリーバーの報告に、コムイは満足げに頷いて承認印を捺した。
 「お疲れ様。
 通信室に長い間篭って、疲れたでしょ」
 「はぁ。
 音声なんかの通信状態はいいんすけど、遠くなるとどうしてもタイムラグがあって。
 各国と同時に音声会議をするには、回線と通信機の開発が必要っすね」
 時間ばかりがかかる、と、軽くぼやいたリーバーに、コムイも難しい顔で頷く。
 「中央庁が、独占してる回線を使わせてくれたら・・・」
 「不可です」
 「よねー・・・・・・」
 きっぱりと言ったブリジットに、コムイとリーバーが肩を落とした。
 「じゃあ、方舟の中に余りまくってる部屋。
 アレを会議室として使わせてもらうことってできませんかね?」
 「・・・は?」
 訝しげな顔をしたブリジットに、リーバーが言い募る。
 「さっき、各支部の班長達と話してたんすよ。
 音声会議は時間ばかりかかって、中々話が進まないから、どこかに集まれたらいいのに、って。
 けど、今の規則じゃ方舟は、エクソシストの任務に随行、もしくは中央庁の命令と言う形でないと、基本的に一般団員は使用不可でしょ。
 でもそれは、本部および各支部の『扉』から別の『扉』へ抜けるための暗証番号制度が基本になってんだから、単に方舟の中に入って、別の扉から出なきゃ、暗証番号もいらないんじゃないか、って思うんですよ」
 「なるほど、見事に・・・」
 「規則の裏をかくような真似は、感心いたしません」
 コムイの言葉を遮って、ブリジットがぴしりと言った。
 「だめっすか・・・」
 がっかりと肩を落とした彼に、しかし、ブリジットは首を振る。
 「やるならば正々堂々となさいますように、と申しております。
 今回のように、各班長が集まる会議の重要度、頻度、および人数をまとめて中央庁に申請してくださいませ」
 「補佐官・・・・・・!!」
 コムイとリーバーの二人から潤んだ目で見つめられ、ブリジットはわざとらしく咳払いした。
 「申請に対して許可が下りるかどうかは、私の知るところではありませんが」
 「そんなこと言ってミス・フェイ、キミが根回ししてくれるってボクは信じてるよv
 「私は・・・!」
 コムイに反駁しようとしたブリジットの口を、リーバーのきらきらと輝く目が封じる。
 「感謝します、補佐官!
 おかげで仕事がはかどります!!」
 両手でブリジットの手を掴んだリーバーに、ぶんぶんと振られて、ブリジットは困惑した。
 「で・・・ですから私は・・・」
 「じゃ!俺、早速申請書作成しますv
 「お待ちください、リーバー班長!」
 嬉しげに笑って踵を返したリーバーを、我に返ったブリジットが止める。
 「中央庁は現在、クリスマス休暇中です。
 1月6日までは、新たな申請は受付けません」
 ブリジットの淡々とした言葉に、リーバーは訝しげな顔で振り向いた。
 「・・・・・・クリスマスなんてとっくに終わりましたけど?」
 「年末年始の休暇もあわせて取るのが通例です」
 「ハァ?!」
 その言葉に目を吊り上げたリーバーが、こぶしを握る。
 「お役所め!仕事しろ仕事ー!!!!」
 絶叫するリーバーに、ブリジットは淡々として首を振った。
 「職員としての権利ですので、ご理解願います」
 「ちくしょ・・・!
 じゃあ、なんのために俺ら、長時間通信室に篭って会議を・・・!」
 悔しげに言ったリーバーに瞬き、コムイは手元の報告書をぱらぱらとめくる。
 「・・・あれ?
 じゃあリーバー君、突然手が空いちゃったんじゃない?」
 「そうなんすよ!
 俺らがすり合わせてたの、中央庁に提出する研究報告書の今年度まとめだったんで!」
 「・・・でしたら早くおっしゃってくださればよかったのに」
 「中央庁が介入してくる前は、このタイミングでちょうど良かったんすよ!」
 このタイミングとはつまり、コムイのサボり時間込みでちょうど提出に間に合う期間、と言う意味だった。
 リーバーとブリジットの二人からじろりと睨まれて、コムイはわざとらしく書類の束に埋もれる。
 「・・・先に次の段階に進めるにしても、中央庁からの承認なしにやっちゃったら、後で難癖つけてくるだろうしねぇ。
 リーバ君、今見てる研究とかはないのかい?」
 話を摩り替えたコムイを忌々しく思いながらも、リーバーは頷いた。
 「はぁ・・・。
 明日になれば結果が寄せられるんでしょうが、今は進行中のものばかりっすね」
 「だったらミランダのお見舞いでも行ってきたら?
 今、リンク監査官が面白いことになってるから、二度楽しいよ♪」
 途端に表情を明るくしたコムイに、リーバーはまた頷く。
 「リンクならさっき見ましたけど・・・あいつ、長毛種にしたんすね」
 「・・・は?」
 なにそれ、と、目を点にしたコムイに、リーバーは『犬種です』と、至極真面目な顔で言った。
 「可愛くはないっすけど、金髪だし頭もいい方だし、新種のレトリバーでも作ったんすか、室長?」
 「作んないよ。
 なんでそこまでやんなきゃいけないのさ」
 呆れるコムイに、リーバーは肩をすくめる。
 「なんだ。
 それなら面白かったのに」
 平然と言った彼に、コムイはますます呆れた。
 「・・・リンク監査官に対するいたずらには怒んないんだね」
 「へ?」
 「これ、別の子にやってたら、リーバー君はまず間違いなく怒ったよね?」
 「あ」
 指摘されてリーバーは、気まずげに口元を覆い、苦笑する。
 「面白いとしか思わなかったな」
 「酷い子だよね、案外」
 にやにやと笑うコムイに一礼し、リーバーは執務室を出た。
 科学班研究室を見渡せば、部下達はそれぞれの仕事に忙しく、その結果がリーバーの元へ来るにはまだ時間がかかりそうだ。
 「んー・・・じゃあ、見舞いにでも行くか」
 照れ隠しに咳払いしつつ呟けば、敏感に聞き取ったキャッシュが振り返って、にやにやと笑った。
 「班長、ミランダのお見舞いに行くの?」
 「えっ?!
 あ・・・その・・・手・・・手が空いちまったから・・・・・・!」
 懸命に言い訳するリーバーに、次々と部下達の視線が集まる。
 「じゃあ、手ぶらってワケにはいかないっしょ!
 俺の作った強力風邪薬・・・!」
 「いや、俺の滋養強壮剤の方が!」
 「オリジナル栄養ドリンク!」
 「ニンニク注射!!」
 「いらねーよ!
 ミランダを殺す気か!」
 部下達が次々に差し出す怪しい薬品の数々を押しのけると、リナリーとラビが、白衣の中からにょきっと飛び出した。
 「はいはーい!ランチは?!」
 「普通の料理じゃリンクに勝てなくても、今ならお前でも勝てるもんがあるさね!」
 「な・・・なんだよ・・・」
 詰め寄られ、たじろぐリーバーに、リナリーが指を立ててウィンクする。
 「病人食!
 おかゆとかなら料理初心者の班長でも作れるよね!」
 「料理のうまいリンクが作っても感動は薄いけどさ、料理は全然ダメなお前が一所懸命作った、ってなると、絶対感激するさね!」
 ラビも畳み掛けて、二人でリーバーの腕を引いた。
 「ハイ!
 そうと決まったらキッチンいこ、キッチン!」
 「さっさと作ってとっとと病棟行って、婦長に『病室でささやかなお誕生会させてぇv』って頼んでくれさv
 「私たちが頼んだら、つまんで窓から放り出されちゃったけど、班長なら大丈夫だよ!」
 「さすがにつまめねぇし、あっつい粥運んでりゃ、婦長も遠慮するさね!!」
 「ちょっ・・・お前ら本心が透けて見えてるぞ!!」
 なんとか腕を振り解くと、二人はそっくりに頬を膨らませる。
 「素直なだけだよ!」
 「そうさ!リーバーだってミランダのお祝いやりてーだろ?!」
 不満げに言うと、年かさの科学者達が呆れ顔で首を振った。
 「わかってねぇなぁ、ガキども!」
 「ここは大人同士、二人っきりで静かに過ごさせてやるのが親切ってもんだぜ?」
 途端、リナリーとラビが冷え冷えとした目でリーバーを見る。
 「やらしい。班長やらしい」
 「そんな奴だとは思わなかったさ」
 「おまえら汚いものを見る目で俺を見るな!!」
 「じゃあ、私達と一緒にパーティする?」
 嫌だと言えばその場で絶縁されそうな目で見られて、リーバーはリナリーに頷いた。
 「だが、あいつは具合悪くて寝てんだろうが。
 無理させるようなことは・・・」
 「だから、ささやかって言ってんじゃないさ!」
 いくら言っても中々信用してもらえないラビが、口を尖らせる。
 「昨日、一所懸命詰め込んだ花びら入り風船をいくつか持ち込んで、新年と同時にパーティしたいだけなんに!」
 「・・・あ?
 ちょっと待て、お前らそれ、病室でやるのか?
 カウントダウンパーティには参加しないのか?」
 リーバーが意外そうに問うと、リナリーはあっさりと頷いた。
 「私は別に、西洋の新年は興味ないもん」
 「俺はアレンと一緒に、カウントダウン直後に伸で病棟に突っ込もうかと・・・」
 「つまみ出されるに決まってんだろ!」
 げんこつされて、ラビがうずくまる。
 「〜〜〜〜だって!
 カウントダウンはやりたいさ!!」
 「自分の足で来い!」
 憤然と言ったリーバーを、ラビは赤毛を透かして見あげた。
 「・・・つまり、頼んでくれるんさ?」
 「・・・・・・見舞いに行くついでにな!」
 照れ隠しに咳払いすると、リナリーが表情を輝かせる。
 「じゃあやっぱり、お粥作っていこーよーv
 ミランダ喜ぶよー?」
 くすくすと笑って手を引くと、リーバーはため息をつきながらもついてきた。
 が、厨房に入って来た彼らを見た途端、ジェリーはあからさまに嫌な顔をする。
 「・・・なんのつもりよ?」
 乾いた声で問えば、リーバーは平然と頷いた。
 「料理したいんで、ちょっとだけ場所貸してください」
 がしゃん、と、専用のホルダーで運ばれてきたビーカーや試験管、スポイトなどの実験器具の数々に、仕事中のシェフ達が思わず手を止める。
 「アタシはてっきり、衛生検査にでも来たのかと思ったわ!
 コムたんが勝手に摩り替えたクリームで、リンクちゃんがわんこになってしまったからねん!」
 世界一美しく磨き上げられた厨房を背景に、ジェリーは挑戦的に胸をそらした。
 「まぁ、いつ来てもらったって構わないけどん!」
 「そうでしょうね」
 ジェリーの仕事振りは、リーバーもよく知っている。
 「でもそれは、うちらの仕事じゃないんで。
 えぇと・・・材料はなんだ?」
 リーバーが振り返ると、彼の肩越しにリナリーが顔を出した。
 「私は甘いのが好き!
 ミルク粥にしよ!」
 「んー・・・。
 でも、ミランダはドイツ人だからさ、穀物のスープのほうがいんじゃね?」
 ラビが口を出すと、ジェリーは厳しかった表情を和ませる。
 「ミランダに作ってあげるの?」
 「そう!
 これなら班長でも失敗しないでしょ?!」
 「リンクにだって負けないさねv
 こぶしを振りあげて気勢を上げると、何事かと食堂のアレンも寄って来た。
 「なにしてんですか?」
 「ミランダにお粥作ってあげるの!アレン君はどんなのが好き?!」
 問われて、アレンは首を傾げる。
 「お米のプディング。
 アレ、すっごくおいしいんですよねv
 フランスで初めて食べた時は感動しましたv
 「ホラ!
 やっぱりミルク粥だよーv
 一緒一緒、と、アレンの手を取ってぴょんぴょん跳ねるリナリーに、リーバーが苦笑した。
 「じゃあそれで。
 ここにある材料、使っていいっすか?」
 「いいわよぉ。
 でも、間違えないようにねん」
 「はい」
 と、頷いたリーバーが、ラビの記憶からレシピを聞き出しながら、ビーカーに米を入れる。
 「・・・それで作るのん?」
 「はい、これが使い慣れてるんで。
 火加減も・・・」
 と、リーバーはアルコールランプに火をつけた。
 「これの方が見やすいな」
 「・・・あの。
 お粥作ってんですよね?」
 顔を引きつらせるアレンに、リーバーは振り向きもせず頷く。
 「コンロの調整は、俺には難しいからな」
 「そう・・・・・・・・・」
 誰もがそうとしか言えず、リーバーの手元を見守った。
 ややして、
 「こんなもんか?」
 透明なビーカーにふっくらと、白い粥が出来上がる。
 「・・・出来栄えは見事さ。
 見事なんけど・・・・・・」
 「これほど見た目が微妙なお粥は初めて見ました・・・・・・」
 「っんだよ!
 別にお前らに食わせる気はねぇよ!」
 眉根を寄せるラビとアレンに舌打ちし、リーバーは実験器具のホルダーにビーカーを入れた。
 「班長!!
 まさかそのまま運ぶの?!」
 「悪いか?」
 リナリーに意外そうに問い返すと、傍らでジェリーが肩をすくめる。
 「それじゃ食欲なくすわよぉ。
 器だけでも入れ替えなさいな」
 言って、ジェリーはフタ付の深皿に粥を移しかえ、トレイにイチジクのコンポートとナッツの入った小皿を添えた。
 「これがないと寂しいでしょ?」
 「完璧です!さすがジェリーさん!!」
 盛大な拍手をするアレンに微笑み、ジェリーはリーバーに手を振る。
 「いってらっしゃいv
 ・・・そしてアンタ達はここでランチして行きなさい」
 言って、ジェリーはリーバーの背後に従おうとしたリナリーとラビの襟首を素早く掴んだ。
 「なんで?私もついていくよ!」
 「今度こそ婦長に頼まなきゃさ!」
 抵抗する二人を『めっ!』と睨みつけ、食堂へと追いやる。
 「あんまり多勢で押しかけたら、ミランダが疲れちゃうわ。
 交渉はリーバーに任せて、アンタ達は今夜のパーティのお手伝いなさいよ」
 「ちぇっ・・・!」
 「わかったよ!
 班長!忘れないでね!ちゃんと交渉してね!!」
 リナリーの呼びかけに、リーバーは振り返らずに手を振って答えた。


 病棟に入ると、ナース達が珍しそうな目で彼を見る。
 「あら・・・どうかした?」
 詰め所に立ち寄ると、婦長も意外そうな顔を上げた。
 「ミランダの見舞いです。
 ちょっと早いけど、ランチ持ってきたんで・・・」
 「あぁ、それならミランダの部屋は外すように配膳係に言っておくわ。
 でもせっかく来たのに、部屋には番犬が詰めているわよ?」
 クスクスと笑う婦長にリーバーは肩をすくめる。
 「知ってますよ。
 新種のレトリバーでしょ?」
 「あら!あなたもそう思った?」
 「でも、あれを見て癒されるのはごく一部でしょうから、介護犬には向きませんよ」
 意地悪く笑って、踵を返したリーバーは、ふと立ち止まった。
 「そうだ、リナリーとラビが・・・」
 「病室で真夜中に騒ぐことは許しません」
 機先を制し、ぴしりと言った婦長に、リーバーは苦笑する。
 「ですよね」
 「ミランダが部屋に戻るなら、私の関知するところではありませんけどね。
 それは今夜までに、彼女の熱が下がるかどうかだわ」
 「そりゃそうでしょうが・・・無理はさせたくないんすよね」
 病室ならともかく、男のリーバーが女性団員の居住フロアに入るのは、かなり抵抗があった。
 ここは自分のためにも、病室でのパーティは諦めさせようと、リーバーは甚だ勝手なことを考えながら病室に入る。
 と、最初にリンクの獰猛な目と目が合った。
 「ご苦労だな、番犬」
 「では私の役目のためにも、すぐに出て行きなさい!」
 きゃんきゃんと吠え立てるリンクを無視してベッドに歩み寄ったリーバーは、苦笑するミランダの顔を覗き込む。
 「食欲あるか?
 ミ・・・ミルク粥を・・・作ってみたんだが・・・た・・・食べられるかな・・・・・・」
 病床のミランダのために料理をした、と言うことが今更ながら恥ずかしくなって、声を詰まらせるリーバーに、ミランダは微笑んで半身を起こした。
 「ありがとうございます。
 とっても嬉しいです」
 熱のためか、ほんのりと染まった頬に笑みを浮かべる様が愛らしくて、思わず見惚れてしまう。
 「リーバーさん?」
 「あ!すまん!」
 慌ててベッド用のテーブルを出し、トレイを置くと、深皿のフタを開けたミランダが微笑んだ。
 「おいしそうv
 いただき・・・」
 「お待ちくださいマンマ!!!!」
 ほとんど悲鳴をあげたリンクに驚き、ミランダがスプーンを止める。
 「ど・・・どうしました・・・?」
 「科学班の作ったものなど、信用できません!!」
 不信の元凶たる耳を攻撃的に伏せ、怒鳴るリンクにリーバーは眉根を寄せた。
 「薬品はともかく、これは危険なもんじゃねぇだろ!
 材料だって厨房のもんを使ってんだから・・・」
 「その厨房から出されたクリームで、私はこんな耳になったのです!!
 コムイ室長が面白がって摩り替えてくださいましたのでね!」
 猛抗議するリンクに、リーバーは舌打ちする。
 「お前が狙われただけだろ!
 厨房じゃいつも通り料理してたけど、お前以外に耳や尻尾が生えた奴はいないぜ!」
 「くっ・・・!!」
 悔しげに唇を噛んだリンクに苦笑し、ミランダはトレイに手を添えた。
 「じゃあいただき・・・」
 ます、と、下ろされたスプーンがトレイを打つ。
 「ま・・・なにするの、マユゲ・・・」
 ミランダが困惑顔で見あげたリンクの手に、深皿は取り上げられていた。
 「少々お尋ねしますが、リーバー班長?!
 これは間違いなく、厨房で、厨房にある材料で、厨房にある調理器具を使って作られたものでしょうね?!」
 疑い深いリンクにさすがに怒ったリーバーが、彼の手から皿を取り上げてトレイに戻す。
 「当然だ!
 科学班に置いてあるもんなんか、危険で使えるか!」
 きっぱりと言った彼に安心し、ミランダがスプーンをくぐらせた。
 「調理器具は、使い慣れたビーカーを使ったけどな!」
 途端、リンクが光の速さで深皿を窓から捨てる。
 「なにすんだ!!」
 「科学班で使っていたものなど、マンマに出せるわけがないでしょう!
 どんな薬害があるかしれないと言うのに!!」
 「ちゃんと消毒してんだよ!!」
 「信じられるか!!!!」
 リンクが怒鳴った時、
 「あら?」
 と、不思議そうな声をあげて、首を傾げたミランダの耳が、犬のそれに変わった。
 「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
 悲鳴をあげたリンクの傍らで、リーバーも硬直する。
 「す・・・すまん、ミランダ・・・!」
 「おいしかったんですけどねぇ・・・・・・」
 残念そうに呟いたミランダが、しゅん、と耳を伏せた。
 「かっ・・・可愛い・・・!!!!」
 リーバーとリンクが、同時に同じ呟きを漏らす。
 「おっ・・・お揃いですね、マンマ!!」
 パタパタと尻尾を振りつつ、嬉しげに言ったリンクに、ミランダも毛布の下でパタパタと尻尾を振った。
 「面白い・・・v
 これ、自分で振れちゃうんですねv
 またパタパタと毛布の内側を叩く尻尾を見たい気もしたが、ここで誘惑に負ければ間違いなく窓から捨てられる、と、リーバーは耐え忍ぶ。
 が、
 「・・・なにを考えているのですか、この変態」
 リンクにはあっさりと見抜かれて、リーバーは慌てて咳払いした。
 「あー・・・。
 わんこが捨てちまったから、ランチがなくなっちまったな。
 お前、責任とって作って来いよ」
 「なぜ私があなたに命令されなければならないのですか!!」
 「マユゲ・・・。
 私、穀物のスープが食べたいv
 「かしこまりましたマンマ!!」
 最敬礼した次の瞬間、リンクが病室から消えてしまうと、ミランダは楽しそうに尻尾を振る。
 もこもこと毛布が盛り上がる様でそれを想像したリーバーが思わず目で追っていると、それは不意に、毛布の下から飛び出てきた。
 「あららっ・・・!」
 ずり落ちた毛布を慌てて引き寄せるが、完全には元に戻せず、意外と長い尻尾の先がはみ出ている。
 「さ・・・触っていいか・・・?」
 とうとう誘惑に負けて言ってしまったリーバーの前で、それはパタパタと振れた。
 「ミランダも長毛種か・・・」
 「そうみたいですねv
 リーバーに撫でられて、尻尾がまたパタパタと振れる。
 「これ、どんなカンジなんだ?」
 「そうですねぇ・・・。
 自分の意志で動くけど、手の指ほど器用には動かない感覚・・・。
 足の指を動かす感じに似ているでしょうか」
 またパタパタと振って、自分の手を打つ尻尾を、リーバーはまじまじと見つめた。
 「あのぅ・・・・・・」
 あんまり見られて、頬を染めたミランダが呼びかける。
 「ちょっと恥ずかしいんですけど・・・・・・」
 「あ、すまん!」
 慌てて手をどけたリーバーは、次にぴんと立った耳に触った。
 「犬そのものだな・・・」
 何度も撫でられて、ミランダの尻尾がパタパタと今まで以上に振れる。
 元々ミランダは感情表現が素直だったが、尻尾がついたことで、更にわかりやすくなってしまった。
 そうなると、試してみたくなるのが科学者と言うもので、リーバーはミランダを抱き上げ、ベッドの上に座らせる。
 「な・・・なんですか?」
 驚いたミランダの背後で、長い尻尾がくるんと巻いていた。
 「実験」
 くすりと笑って、リーバーが耳や頭を撫でてやると、尻尾がパタパタと振れる。
 「これは好きな行動、と。
 じゃあ・・・」
 「きゃあ!」
 突然抱きしめられて、驚いた瞬間は尻尾の毛が逆立ったものの、ややしてそれは、パタパタと振れた。
 「これも嬉しいんだな♪」
 いたずらっ子の口調に、ミランダの耳が恥ずかしげに垂れる。
 「も・・・もういいでしょう・・・・・・?」
 リンクが戻ってきたら困る、と、焦って薄く汗ばんだ額に、リーバーの手が当てられた。
 熱を測ってくれてるいるのか、と、油断した一瞬、額に軽くキスされる。
 「っ!!」
 驚いてくるんっと巻いてしまった尻尾は、またパタパタと振れた。
 「これも・・・」
 「もっ・・・放してくださいぃー!!」
 感情を全く隠せない焦りと恥ずかしさに、ミランダの顔が真っ赤になる。
 「じゃ、最後な」
 顎に指をかけられ、上向かされてキスされた。
 「〜〜〜〜っ!!!!」
 無言で抵抗するミランダを抱きしめて、じっと尻尾を見つめるがそれは、今までのように振れない。
 「・・・これは嫌なのか?」
 困惑して問うたリーバーの腕の中で、ミランダががくりと崩れ落ちた。
 「ミランダ?!」
 慌てて横たえると、ミランダは顔だけでなく、全身を真っ赤にして目を回している。
 「・・・あ。
 そういえば熱があったんだっけか」
 実験となると周りが見えないリーバーに、抗議するかのようにミランダの尻尾が一度、ぱたりとベッドを打った。


 「く・・・薬が効いて眠ったみたいだ」
 スープを持って戻ってきたリンクに、リーバーはぎこちない笑みを浮かべた。
 「薬?
 まだ何も召し上がっていないのに、薬を飲ませたのですか?」
 非難めいた目で見られ、リーバーは慌てて首を振る。
 「イヤ、俺が飲ませたんじゃなくて・・・前に飲んでたのがまた効いたんじゃない・・・か?」
 「そのようなことがあるのでしょうか」
 「わんこ薬が影響したのかもな!」
 畳み掛けて、リーバーは疑わしげなリンクの問いを封じた。
 「急に熱が上がって寝ちまったから、そっとしておいた方がいいかもしれない」
 「はぁ・・・そうですね」
 「お・・・俺がついてるから、お前はアレンの監視に戻っていいぞ!」
 更に言い募ると、リンクは不快げに眉根を寄せる。
 「優先順位はマンマの方が上でいらっしゃるのですから、お気遣いなく。
 班長こそどうぞ、お仕事にお戻りください」
 「あいにく、年末年始休暇の中央庁のおかげで、中央庁のおかげで今日一日手が空いちまったんだ。
 お前こそ構うな」
 普段のリンクに負けず劣らず嫌味ったらしく言ってやると、彼はムッとしてリーバーを睨んだ。
 「二度もおっしゃらずとも理解できますが」
 「大事なことなんで二度言ってやったが何か」
 病室で睨み合う二人の間で散る火花にあてられたか、ミランダが目を覚ます。
 「あら・・・」
 「ぅあっ・・・起きたか・・・!」
 どぎまぎと鼓動を早くするリーバーをぼんやりと見つめたミランダの耳が、しゅん、と垂れた。
 「ど・・・どうかされましたか、マンマ?」
 一目でしょげてしまったとわかる状況にリンクが驚くと、ミランダは眉根を寄せて頷く。
 「いつまでこの格好でいるんでしょう・・・・・・」
 悲しげに呟くと、リンクはポケットから懐中時計を取り出した。
 「コムイ室長は、5ml程度で約2時間の効果だとおっしゃってました。
 マンマが召し上がった中に、この薬がどの程度含まれていたかはわかりませんが、見たところスプーン一杯程度でしたし、そう長い時間ではないかと思います」
 「そうですか・・・」
 ほっとして、ミランダはリーバーに眉根を寄せる。
 「安心しました」
 「す・・・すまん・・・・・・」
 「どうかされましたか?」
 二人の様子に違和感を感じ、尋ねたリンクには首を振った。
 「スープをありがとう。
 食事の後は寝ておきたいので、二人とももう、お仕事に戻って結構ですよ」
 「え・・・」
 「しかし・・・!」
 気まずげなリーバーと反駁しようとしたリンクに、ミランダは微笑む。
 「結構ですよ」
 いつも気弱な彼女らしくない、強い語気に二人は同時に頷いた。
 「心配しなくても、熱が下がったら部屋に戻ります」
 「あ・・・あぁ・・・」
 「では・・・お大事に・・・・・・」
 ハウンド・マイスターの迫力に気圧され、二人は慌てて病室を出る。
 「はぁ・・・まったく・・・・・・」
 発熱した身体に酷な負荷をかけられ、疲れ果てたミランダは、リンクのスープを口にして、ほっと吐息した。


 やがて年末最終日の日が暮れて。
 残り少なくなっていく年と、近づいてくる新年に、城中がそわそわとざわめきだした。
 「ねー?
 風船、本当に取っとかなくていいんですか?」
 カーテンの裏に隠した箱の中に風船を押し込みながらアレンが問うと、リナリーとラビが頬を膨らませて頷く。
 「班長が頼んでもダメだったらしいからね!」
 「融通利かないさ、婦長〜!」
 しかし、彼女の目を盗んでやってしまおうとは、いかな二人でも言い出せなかった。
 それを言うには、敵が強大すぎる。
 「・・・せっかくたくさん用意したのにねぇ」
 切なく吐息したリナリーの落ちた肩を、アレンが苦笑して叩く。
 「婦長には神田だって逆らえませんもんね。
 仕方ないから、後日ミランダさんが回復したら、パーティさせもらいましょ」
 「今、神田って言った?!」
 突然カーテンを引かれて、驚く三人の前にエミリアが仁王立ちした。
 「あいつ、どこにいるの?!
 クリスマスからこっち、避けられてるんだけど!」
 言うや、三人はそれぞれ、微妙な笑みを浮かべる。
 「エミリア・・・知らないの、神田のこと?」
 リナリーが苦笑すると、アレンがケラケラと笑い出した。
 「な・・・なによ・・・」
 「ユウちゃんなら部屋さv
 あいつの国の風習で、年末は大掃除して、年始は静かに過ごすのが慣習なんさ!」
 笑うアレンの口を塞いでラビが言うと、エミリアが大きく頷く。
 「じゃあ、特にあたしを避けてたんじゃないってこと?」
 「それは避けてたかもv
 「なんでっ!」
 楽しげに言ったリナリーに、エミリアが目を吊り上げた。
 「だって、エミリアも神田を襲った一人なんでしょ?
 キッシングボールの時、神田ったら多勢の姉さんに襲われちゃって、かなりトラウマになったみたいだよv
 「あ・・・・・・」
 思い当たることがあったのか、エミリアは気まずげな顔をする。
 「そう言えば・・・あいつが逃げようとするから、襟首引っつかんで・・・・・・」
 襲ったかも、と、小さな声で言ったエミリアに、ラビがニヤニヤと笑った。
 「俺やアレンだったら大歓迎だったんけどねv
 「そうなの、アレン君?!」
 リナリーに非難がましい顔で睨まれて、アレンは口を塞がれたまま、ぶんぶんと首を振る。
 「あっ・・・あたしだって、襲う気はなかったのよ?!
 だけど皆寄ってくるから、奪られてたまるもんですか!ってつい、むきになっちゃって・・・・・・」
 言い訳すればするほど、立場が悪くなっていって、とうとうエミリアは口をつぐんだ。
 そのままくるりと踵を返したエミリアにアレンが手を上げ、
 「どこに行くんだ、って言ってるさ!」
 と、ラビが通訳する。
 「神田の部屋よ。
 一応・・・謝ってくるわ」
 「逃げるんじゃない?って言ってるさ」
 首を傾げたアレンの通訳をすると、エミリアは肩越し、舌を出した。
 「だったらちゃんと会ってくれるまで、何度でも行くわよ!
 言っとくけど、悪ガキ躾けるのは初めてじゃないんだからね!」
 「さすがエミリア!心強い!って言ってるさ」
 ぱちぱちと拍手するアレンの通訳をするラビを、エミリアは呆れ顔で見遣る。
 「放してあげたら?」
 「二人で遊んでるんだよ」
 口を尖らせて言ったリナリーは、拗ねた顔をエミリアに向けた。
 「まだ、お兄ちゃんをあげたわけじゃないからね?」
 「はいはい。
 うるさいなぁ、小姑!」
 大仰に肩をすくめ、歩み去るエミリアの背中に、リナリーが目を吊り上げる。
 「誰が小姑だよ!!」
 「お前さ!」
 ラビの裏拳突っ込みを額に受けたリナリーは泣き声をあげ、ようやく解放されたアレンは大きく吐息した。


 その後、消灯時間を迎えた病棟の電灯が落ち、深更の月が病室の窓を照らす。
 「あ・・・月・・・ですか・・・・・・」
 意外な眩しさに、十分な睡眠を得たミランダが眼を覚ました。
 何時間寝ていたのか、昼間に彼女を悩ませただるさは消え、額に当てた手もひんやりとしている。
 しかし、
 「犬耳、消えてないじゃありませんか・・・・・・」
 ぴょこん、と立ったままの耳に触れて、ミランダはため息を漏らした。
 「尻尾も・・・まだありますねぇ・・・・・・」
 ふわふわとした感触を手で撫でながら、またため息を漏らす。
 「早く消えないかしら」
 呟いた途端、立っていた耳がしおしおと垂れた。
 「あぁもう・・・・・・」
 ただでさえ感情を隠すのが下手なのに、こんなものがあっては皆に感情を読まれてしまう。
 「これじゃ・・・部屋を出られないわ・・・」
 ぼやきつつ半身を起こすと、いつもよりよく聞こえる耳が、微かに音楽を捉えた。
 カウントダウンパーティの最中だろうか、窓の外から聞こえる曲に引かれて、ミランダはベッドを降りる。
 「寒っ!!」
 窓を開けた途端、冷気が流れ込んできて、ミランダは震え上がった。
 早く閉めてしまおうと、震える手を伸ばした先に、透明な風船が風に乗って流れてくる。
 「あら・・・パーティで使っていたのが、ここまで来ちゃったのかしら」
 目の前をふわふわと通り過ぎていくそれを目で追っていると、突然パンっと弾けて、夜闇に何かを撒き散らした。
 「な・・・なに・・・?」
 びくびくしながら、窓を閉めた方がいいだろうかと迷っているうちに、また風船がひとつ、ふたつ、風に乗ってやってくる。
 風向きが変わっていないのか、ほぼ同じ軌道を描いて飛んできた風船は、やはり同じような場所で弾けて細かい何かを撒き散らした。
 「何かしら・・・紙吹雪でも仕込んでいるのかしらね?」
 さすがにもう驚かず、また飛んできた風船を目で追っていると、やや風向きが変わったのか、風船がこちらへ向かってくる。
 「取れないかしら・・・・・・!」
 大きく窓を開け、身を乗り出すとそれは、もう少しで手の届きそうな場所で留まった。
 「んー・・・!!」
 女性にしては背の高いミランダが懸命に手を伸ばすが、中々届かない。
 更に身を乗り出すと、窓の下で悲鳴が上がった。
 「ミランダ!
 なにしてるの、そこ3階でしょ!!」
 巡回中らしいナースの大声に驚き、バランスを崩したミランダの身体が前に倒れる。
 「きゃあ!!」
 落ちる、と、彼女もミランダ自身も思った。
 が、いつもはない尻尾が生えたたために重心が変わったのか、ミランダの身体は危ういバランスで窓枠にかかる。
 「だ・・・大丈夫?!」
 声をかけるが、この状態では頷くことも声をあげることもできなかった。
 硬直した彼女の状況を察し、ナースは無線機で詰め所とリーバーに連絡を取る。
 「今、応援呼んだから!堪えてね!!」
 言いながら、自分はミランダが落ちた時のために、1階のリネン室に駆け込み、ありったけのシーツを大きな回収ワゴンに積んだ。
 ガラガラと音を立てていくつも窓の下に置き、周りにクッションや枕を積み上げて臨時のマットを作る。
 そうする間にも3階の病室では、ナース達がミランダの救出を試みていた。
 「下手に触ると落ちるわ。
 三人で足と両脇を支えるの!」
 婦長の命令に、ナース達が機敏に動いてミランダを支える。
 「いい?
 ミランダはそのまま動かないで!
 あなた達は引きずられないように気をつけて!
 1!2!起こせ!」
 手を叩く婦長の合図に、ミランダは無事、室内に戻された。
 その様に、窓の下でハラハラと状況を見つめていたナースもほっと吐息する。
 と、
 「メアリ!!」
 大声で呼ばれて、彼女は駆けて来たリーバーに頷いた。
 「無事よ。
 病室に戻ったみたい」
 「そ・・・そうか・・・・・・」
 ほっとしたリーバーに頷き、彼女は彼の背を叩く。
 「行ってあげなよ」
 「あぁ・・・」
 歩を踏み出そうとしたリーバーは、彼女が大量のクッションを片付け始めたのを見て足を止めた。
 「手伝うか?」
 「いいよ、このくらい。
 連絡したお礼なら・・・そうねぇ、神田にゴメン、って言っておいてv
 襲ったから、と、からりと笑う彼女に笑みを返し、リーバーはミランダの病室に向かう。
 「大丈夫か?!」
 部屋へ飛び込むと、ベッドの上でナース達に囲まれたミランダが、真っ青な顔を彼に向けた。
 「リーバーさん・・・!」
 撤収、と、無言でドアを示した婦長の命令に従い、ナース達が病室を出て行く。
 代わりに駆け寄ったリーバーは、ミランダを抱きしめた。
 「落ちそうになったって・・・!」
 昼間とは違い、冷えきったミランダの身体が震える。
 「こっ・・・怖かった・・・・・・!!」
 「なんで落ちそうになんか・・・まさか身投げか?!」
 「違いますよ!!」
 悲鳴じみた声をあげて、ミランダは首を振った。
 「まっ・・・窓の外を風船が飛んでて、それが破裂する度に何かを撒き散らすものですから、なんだろうと思ってみていたら、ひとつ近くに来たから・・・それで・・・・・・」
 「手を伸ばしちまったのか」
 「はい・・・・・・」
 しゅん、とうな垂れた頭の上で、耳も悲しげに垂れる。
 「まだ余ってたら持って来てもらうか?」
 言って、インカムのマイクを口元に持ってくる途中、窓を見遣ったリーバーは手を止めた。
 「引っかかってるじゃないか」
 「え?」
 言われて見遣れば、また風向きが変わったのだろうか、別の窓辺に引っかかった風船が、ゆらゆらと揺れている。
 「ちょっと待っていれば、簡単に取れたんだがな」
 「う・・・ごめんなさい・・・・・・」
 また耳を垂らしたミランダの肩を叩き、立ち上がったリーバーが、風船を持って戻ってきた。
 「これな、ラビ達が昨日、一所懸命細工してたんだぜ」
 くすりと笑って、リーバーはミランダの頭上に風船を飛ばす。
 と、それは天井に触れた途端、パンッと弾けて、花びらを撒き散らした。
 「まぁ・・・・・・!」
 花の香りに包まれて、笑みほころんだミランダの膝に、小さなカードが落ちる。
 「何かしら・・・」
 手にとって裏返すと、カラフルなペンで『Happy Birthday Dear.Miranda!』の文字が連ねてあった。
 「・・・っ!」
 声にならず、頬を染めたミランダの尻尾がパタパタと振れた。
 「あいつらには大喜びしてた、って言っておくよ」
 クスクスと笑うリーバーに、ミランダは何度も頷く。
 と、カードに目を落としたままの彼女の顎に、リーバーが指をかけた。
 「で?昼間の続き。
 キスは嬉しいのか?」
 「・・・・・・・・・状況によります」
 迷った末に言ったミランダに、リーバーが軽くキスする。
 「ハッピーバースデー」
 囁いたリーバーの視線の先で、ミランダの尻尾は嬉しげに振れていた。


 数日後。
 とうに元の姿に戻ったミランダと違い、犬の呪いが解けないままに新年を迎え、日を過ごしたリンクの機嫌は、日増しに悪くなる一方だった。
 そんな彼を、アレンはせせら笑う。
 「これに懲りたら、今後はコーヒー農家の皆さんに敬意を払うんですね♪」
 言ってミルクポットを取り上げてやると、リンクは今にも噛み付かんばかりにアレンを睨んだ。
 「犬の呪いっつーより、コーヒーの呪いだったんじゃね?」
 ラビにまで笑われて、リンクは目を血走らせる。
 「狩ってやりましょーか、このウサギ!!」
 「ぅわっ!こわっ!!」
 獰猛な猟犬そのものの目に、ラビが震え上がった。
 その様を、いつもは真っ先に嫌味を言うリナリーが笑って見ている。
 不思議に思ったアレンが問うと、彼女は楽しげな笑声をあげた。
 「班長がねー、風邪引いて寝込んじゃったんだってー」
 「へぇ・・・日頃の無理が祟ったんですかね」
 気の毒に、と呟いたアレンに、リナリーはなぜか、上機嫌で笑い出す。
 「リーバーが風邪引くと、なんか嬉しいんさ?」
 ラビも意外そうに問えば、リナリーは大きく頷いた。
 「風邪引いたんだよ、風邪v
 潜伏期間とか数えると・・・カウントダウンの日、班長ってばミランダと何したのかなーってv
 クスクスと笑うリナリーとは逆に、男子達が凍りつく。
 「きっと、リンク監査官が悔しくってしょうがないことだよねぇ!」
 言わずもがなのことを言って、リナリーはリンクを絶叫させた。




Fin.

 










2010年最初のSSは、毎年恒例ミランダさんお誕生日SSです!
・・・遅れることまで毎年恒例にしなくていいんだが な!(痛っ;;)
まったくもって遅れてしまってすみません;
現在1/2AM6:50でございますv>可愛く言ってもダメ。
ちなみにこれは、リクNo.52『科学班がらみでリバミラ』を使わせてもらっています。
科学班といったら薬害。薬害といったら科学班。
久しぶりにコムイさんも登場でした!
そして正直に言う。
女性恐怖症の神田さんと、犬耳&尻尾のミランダさん&リンク君が書きたくて書きました!>正直すぎる!
お粥ネタはニコさんから頂きまして、使わせてもらいましたよv
いつもありがとうございます!
遅れに遅れた上、なんだか班長がヤラシイんですけど(苦笑)、お楽しみいただければ幸いです。












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