† Kissogram †
「ウォーカー!! なんて格好をしているのですか、はしたない!!!!」 朝っぱらからヒステリックな声で怒鳴られて、アレンは眉根を寄せた。 「・・・着替えてるだけじゃん。 いつものことでしょ」 リンクが怒っている理由を知りながら、あえて言ってやると彼は、顔を真っ赤にして目を吊り上げる。 「君の身体がいつも通りではないのです! 少しは気を使いなさい!」 「見なきゃいいじゃんー!」 「見てませんよっ!!」 後ろを向いた上に顔を覆ってしまったリンクへ舌を出したアレンが、コムイのイタズラで女の子になってしまってから、既に数日が経っていた。 「いい加減、女の子の服にも慣れてきたよねー。 ・・・あんまり嬉しくないけど」 たっぷりとしたドレープが波打つワンピースから頭を出して、首のリボンを結ぶと、鏡にはどこから見ても女の子の自分が写っている。 「あぁ、僕・・・可愛い くるくると回ってふわふわとスカートを翻すアレンに、リンクが呆れた。 「・・・自分で言いますか」 「だって可愛いでしょ パッツン凶悪面なんかの100倍可愛い!!」 鏡の前で、アレンが得意げに胸をそらすと、リンクは肩をすくめる。 「比べる対象を間違っていますよ。 第一、あんまり嬉しくない、と言った舌の根も乾かないうちによく言えるものです」 「なっちゃったものは仕方ないし、どうせすぐに元に戻るし。 だったら今しか出来ないことやっちゃおうって思ってるだけですよ」 前向きすぎることをごく当然のように言いながら、アレンがつけたイヤーカフにジョニーの声が届いた。 『アレンー! 新しい団服できたよ!』 嬉しそうな声にしかし、アレンは一瞬、顔をしかめる。 「それって・・・一昨日採寸したやつ? もうできたんですか?」 『仕事早いだろー 「はぁ・・・ホントにね・・・」 今にも舌打ちしそうな顔で、アレンは頷いた。 『早くおいでよー! 任務もあるよ!』 「あぁ・・・やっぱりですかー・・・・・・」 悪い予感は高確率で当たるんだよな、と呟いて、アレンは渋々踵を返す。 「嬉しいのではないのですか?」 リンクが意地悪く言ってやると、アレンは目尻を紅くして彼を睨んだ。 「ここにいる分はね! だけど外の人に見られるのは・・・やっぱり・・・・・・」 任務は任務でも、ノアのいない任務ならいいなぁと、ため息をついたアレンがドアを開ける。 「アクマなら全部破壊して口封じしますけど、ノアには顔見知りが多いから、あっという間に噂になりそうで・・・。 彼らも口封じできればいいですけど、さすがに瞬殺は難しいだろうなぁ・・・」 アレンの自分勝手な言い様に、リンクがまた呆れた。 「ずいぶんと仲のいいことですね。 教団を裏切ったら殺しますよ?」 「・・・あのさ、エクソシストなら大抵、ノアとは顔見知りだよ。 でも好きで顔見知りになったんじゃないって事くらい、理解してよ」 肩越しにリンクを睨んだアレンが、口を尖らせて不満を漏らす。 そのままさくさくと歩を進め、いつもの角を曲がろうとして、襟首を掴まれた。 「これから行くのは食堂ではなく、科学班ですよ」 「・・・ちぇっ」 不満顔のまま、ずりずりと引きずられて科学班に連れ込まれたアレンは、ジョニーの前でも口を尖らせる。 「なんだよ、機嫌悪いな」 きょとん、としたジョニーにアレンは、更に顔をしかめた。 「・・・可愛い団服ができたの?」 「可愛いのがよかったの?」 逆に問われて、今度はアレンがきょとんとする。 「係長は、可愛いワンピース着せる気満々だったけどさ、任務中に男の子に戻ったら気まずいだろ、って話して・・・」 ジョニーが取り出した、いつも通りの団服にアレンは目を丸くした。 「おんなじじゃん!」 「上着はさすがに女の子仕様だけどな」 胸が苦しいだろうから、と、指し示したジョニーにアレンはほっと吐息する。 「なんだ、僕てっきり・・・!」 呟いた瞬間、 「えぇー!!そっちを着せちゃうの?!」 「ジョニー!空気読むさ!!!!」 積み上げられた書類の影から、リナリーとラビがにょきっと出てきた。 「んなっ・・・んで二人とも・・・?!」 目を丸くするアレンに二人は、大真面目に頷く。 「記念写真撮ろうと思って!」 「待ち構えてたんさね!」 「それは盗撮と言うのではありませんか?」 しっかりとカメラを構えた二人に、リンクも呆れ果てた。 が、二人はぶんぶんと首を振る。 「自然な表情を撮りたいなら相手に気づかれない方がいいんだって、バクちゃんが言ってたさ!」 「野生動物を撮るコツと一緒だって!」 大真面目に言う二人に、アレンまでもが呆れた。 「・・・騙されてますよ、それ」 バクの盗撮癖を知る彼は、ため息をついてジョニーの団服を受け取る。 「じゃあ僕、着替えてくるんで・・・今日のパートナーは誰ですか?」 「はいっ!私っ!!」 勢いよく手をあげたリナリーが、アレンの腕を引いた。 「更衣室いこ! マザーがね、ワンピースの団服作ってくれてるんだよ!」 「作っちゃったんですか?!」 「もちろんだよ! てっきりそっちを着せるんだと思ってシャッターチャンス狙ってたのに、ジョニーったら、いつもと同じ団服だなんてありえないよね!!」 安堵したのも束の間、女性用の団服を着せる気でいるリナリーに、さすがのアレンも及び腰になる。 「だって、途中で戻ったら・・・!」 「そんなの、着替えを持っていけばいいじゃない! 監査官!アレン君の団服、取ってきてください!」 「なぜ私が!!」 「俺が行ってもいーけど、お前、機密書類をデスクに入れてっからって、部屋の鍵閉めてんじゃん。 借りていいんさ?」 「一瞬で合鍵作るような人に鍵なんか渡せませんよ!!」 ラビへ唸り声をあげて、リンクは渋々踵を返した。 「私が戻るまで、どこにも行くんじゃありませんよ!」 「ふーんだ! 女子更衣室に入ってきたら、現行犯逮捕で地下牢に入れてやるんだから!」 「このっ・・・!!」 生意気に舌を出すリナリーを、リンクが思いっきり睨みつける。 「まぁまぁ、早く行ってくるさね。 さもなきゃこいつら、お前を置いて任地に行っちまうさ」 にやにやと笑うラビをも睨みつけ、リンクは無言で踵を返した。 「さ! 今のうちだよアレン君!」 「えー・・・」 ぐいぐいと腕を引かれて更衣室に連行されたアレンは、当初予想していた通りの団服を前にして、深々と吐息する。 「あれ?気に入らない?」 「か・・・可愛いと思いますよ、女の子が着ればね」 言いよどんだアレンに、リナリーが小首を傾げた。 「アレン君、今は女の子じゃない」 「そうですけど・・・本当は男の子なんだって、忘れないでくださいね」 もう一度ため息をつくと、リナリーはにこりと笑ってハンガーにかかった服を押し付ける。 「どうせすぐに戻るんだもん。 だったら、今しか出来ないことやっておこうよ!」 さっき言ったことなんて知らないはずなのに、自分の言葉をそのまま繰り返されて、アレンは苦笑した。 仕方なく今着ているワンピースを脱ぐと、リナリーの目がビスチェで覆われた胸元に引き寄せられる。 「アレン君・・・大きいよね!」 「はぁ・・・まぁ、女の子にしては身長がありますからね」 身体は女性化しても、身長は幸いにも変わらなかった。 「背が高い人って、大体胸も大きいし・・・それだけのことじゃないですか?」 「そうだけど・・・悔しいなぁ!!」 「いっ・・・! ちょっ・・・リナリー!イタイ!!」 ぐりぐりと胸を揉まれて、アレンが悲鳴をあげる。 「ひ・・・酷いですよ・・・! Cカップなら同じサイズでしょ?!」 涙目で抗議すると、リナリーはなぜか目を泳がせた。 「リ・・・?」 「さ、服を着ようか! いつまでもそんなカッコじゃはしたないよっ!」 いやに早口で言って、リナリーはアレンに団服を着せ掛ける。 ハーフトレンチコートのように、しっかりとした前合わせのボタンを留めたアレンは、膝丈の裾からのぞくフリルに首を傾げた。 「なんで僕が着る服って、全部にフリルがついてるんですか?」 「だって好きなんでしょ? 最初に着せてあげた時、フリルをふわふわさせてすっごく喜んでたって、マザーが言ってたよ?」 「う・・・あの・・・それは・・・・・・」 ついさっきも、やはり裾のフリルを揺らして喜んでいたアレンは、気まずげに目を逸らす。 と、リナリーがにこりと笑って自分のスカートの裾をつまんだ。 「私も好きだよ、フリル ふわふわして、可愛いもんね!」 「う・・・うん・・・」 素直に認めるのはやっぱり気恥ずかしくて、アレンは散々逡巡した後、ようやく頷く。 「すごく似合ってるよ! ラビにも見せたげよっ!」 再び手を引かれて更衣室を出たアレンは、外で待っていたラビにまで胸を揉まれて悲鳴をあげた。 「イタイっつってんでしょ、アンタ!! 気安く触ってんじゃないですよ!!!!」 ヒステリックな声と共に殴り飛ばし、踏みしめたラビはしかし、嬉しそうに笑っている。 「アレンがオンナノコになってくれたおかげで、滅多に触れないもん触れてうれしーんさねー 本当の女の子にやったらセクハラだもんな 「僕にだってセクハラだよっ! ジョニー!!これ燃やして!!」 そう言ってラビをぎゅうぎゅうと踏みつけるアレンに、ジョニーが苦笑した。 「まぁ、ぷにぷにぷよぷよしたもんに触りたい気持ちはわかるよ」 気持ちいいよね、と、彼は両手をわきわきさせる。 「・・・科学班のセクハラマスターに言った僕が馬鹿でした」 「酷いあだなだなぁ!」 吐息混じりに言ったアレンにジョニーが口を尖らせるが、 「それでいつも、キャッシュさんに殴られてるくせに」 生意気に言い返してやると、彼は気まずげに目を逸らした。 「アァそろそろ時間だね! アレン、任務内容はリナリーに渡してるから、移動しながら聞きなよ! いってらっしゃい!!」 早口でまくし立てつつ、ジョニーはアレンの背中を押す。 「あ、でも僕・・・!」 言いかけたアレンの手を、今度はリナリーがぐいぐいと引いた。 「さぁ!女の子チーム出動だよ!」 「え・・・えぇー・・・!」 いつの間に組み入れられたのかと、抗議の声をあげる前にアレンは方舟の間へと引きずりこまれる。 「いざ!出陣!!」 こぶしを振り上げたリナリーに苦笑し、アレンは共に方舟へと入った。 ・・・その後、しばらくして。 「ウォオオオオオオオオオオオオオオカアアアアアアアアアアアアア!!!! 私から逃げるとはいい度胸ですね!!!!」 置いてけぼりの番犬が、方舟の間できゃんきゃんと吠え立てた。 「リナリー! リンク置いてきちゃったよ!!」 背後を気にして、何度も振り返るアレンの腕を引くリナリーが、たまりかねたように吹き出した。 「・・・わざとやったんだ」 「もちろんだよ♪」 呆れ顔のアレンにリナリーは、どこか得意げに頷く。 「女の子同士のおでかけに、あーんな怖い顔したお目付け役なんて無粋でしょ 「そりゃそうだけど・・・後で僕が、めっちゃ怒られるんですけど」 深々とため息をつくと、リナリーはクスクスと笑い出した。 「大丈夫だよ! 女の子にひどいことしたらどうなるか、身をもって教えてあげるから!」 その自信に満ちた言い様に、アレンは苦笑して頷く。 「ちゃんと助けてくださいね?」 「おっけー アレンと繋いだ手を振り回して、リナリーが自信満々に請合った。 「でもその前に、お仕事片づけちゃわないとね! 今日はなんと! パリでスイーツツアー 「まさかっ?!」 「ってのは冗談でぇ 次の万博に向けて、会場がいくつも建設されてるんだけど、どうも・・・その一つが怪しいって情報なんだ」 「怪しい?」 自然と声を潜めたリナリーに、アレンが屈みこむ。 「うん。 出展者は、どこの国でも、どこの会社でもないんだって。 ただ、書類は正式なものだし、国を代表しなくても、外国の地方領主が出展することは今までもあったことだから、事務局も最初はなんとも思ってなかったらしいんだけど・・・」 リナリーが、更に声を潜めた。 「・・・人が、消えちゃうんだって」 「人・・・・・・」 思い当たることがあって、アレンが呟く。 「作業員の顔ぶれがね、毎日違うんだって。 まぁ大きな街の、大きな催し物だし、その準備には日雇いの人夫がたくさん要るんだから、ある程度顔ぶれが変わるのは珍しくないんだけど、一旦その作業場に入ったら二度と出てこないって言われてるの。 しかも、その作業場からはいつも変な臭いがして、真夜中に何かを運び出している人がいるみたいだって」 「それって・・・」 いつか、この目で見た風景が蘇った。 廃墟となった教会・・・服だけを残して消える旅人・・・。 アクマの巣食ったその場所で、多くの警官達が血煙となって消えた。 「アクマの、餌場になってるんじゃ・・・」 「やっぱり、そう思うよね?」 眉根を寄せて、リナリーはパリへ通じる扉を開ける。 「好きになんて、させておけないよ!」 「同感!」 出口となった教会の窓から差し込む光は、ロンドンのそれより断然明るく、決然と降り立った二人を照らし出した。 待機していたファインダーの案内で、件の作業場へ向かった二人は、大きな会場がすっぽり入る天幕を遠くから睨んだ。 「どう?」 「・・・すごい数のアクマ」 元は白かっただろう天幕が、アレンの目にはアクマの気配に染まって黒く見える。 そう言うと、リナリーはきゅっと眉根を寄せて頷いた。 「このまま突っ込むのはまずいね」 「え?行かないんですか?」 意外そうに目を丸くしたアレンを、リナリーは呆れて見上げる。 「・・・相変わらず、猪突猛進だねぇ。 すごい数のアクマに、なんの作戦もなしに突っ込むつもり?」 当然そのつもり、とは言えずに、アレンは気まずげに目を泳がせた。 「やれやれ・・・」 苦笑したリナリーは、アレンの手を引いて踵を返す。 「リナリー! どこ行くんですか?!」 「あれを怪しまれずに監視できるところだよ!」 ごく当然のように言って、リナリーは建設現場からどんどん離れていった。 「っねぇ! あんまり離れると、僕の目でも捕捉出来なくなるよ?!」 肩越しに天幕を見遣りながら、たまりかねたアレンが言うと、リナリーは『大丈夫』と請け負う。 「会場全体が見渡せる場所が、この街にはあるでしょ?」 「・・・・・・あ」 リナリーが指差した塔を、アレンは口をあけて見あげた。 「エッフェル塔かぁ・・・・・・」 「そう あそこなら、外国人がずっといても怪しまれないし、向こうからは見えないし。 監視しながらファインダー達が外堀を埋めていくのを待ってよう!」 「外堀?」 不思議そうに問うたアレンに、リナリーは大きく頷く。 「餌の供給を断って、兵糧攻めにするんだよ。 日雇いの顔ぶれが毎日変わってるってことは、どこかで募集をしてるってことなんだろうけど、アレン君が言うように、ものすごい数のアクマがいるんなら、よほど大きな紹介所じゃないとまかないきれないよね。 だから、そう言う大きな紹介所・・・多分、ブローカーがいるような所をしらみつぶしに回って、『警察からのお知らせ』ってことで、あの中に入った人達が行方不明だって情報を触れ回るんだ。 ちょっとは、話を大げさにした方がいいよね。 そうすれば、一時的な効果だろうケド、2〜3日はあのテントから『人間』は消える。 餌がなくなればアクマの大部分は散って行くだろうから、その各個撃破は応援を呼んで、私達は手薄になった頃を見計らって本陣を攻めよう!」 「・・・・・・さすが」 見事な戦略に、アレンは感心して拍手した。 リナリーは嬉しそうに笑いながら、無線ゴーレムの回線を開く。 「じゃあ、早速手配しよう! うまく行くかどうかは、ファインダーの手腕次第だよ! 張り切ってブローカーを見つけてもらわなくっちゃね!」 自身の戦略をファインダーに伝えると、リナリーは再びアレンの手を引いて、天幕の見える塔へと上って行った。 「人夫を手配できないとは、どういうことですか」 色の薄いサングラスの向こうの目は、硬く閉じられているにもかかわらず、きつく睨まれた気がして彼は、おどおどと彼女から目を逸らした。 「その・・・妙な噂が広まってまして、誰もここには来たがらず・・・・・・」 「妙な噂?」 彼女が小首を傾げると、黒い男物のスーツの肩に、細い金髪がさらさらと流れる。 「は・・・はい・・・!」 思わず見惚れてしまった彼は、慌てて頷いた。 「ここに入った人夫達が消えたとか、彼らが身につけていた物が数日ごとに処分されているとか・・・。 紹介所に警察が来て、行方不明者の写真をずらっと貼って行ったもんですから、みんな怖気てしまって・・・」 口ごもりながらも何とか言い切った彼を、薄く開いた目の、色の薄い瞳が見つめる。 「そう・・・」 「あ・・・あの・・・!」 てっきり盲いているのだと思っていた目が開き、自身を見つめる様に戸惑う彼の目前で、彼女の金髪が黒く染まって行った。 唖然として目が離せない彼へ、彼女は歩を進める。 「ならば、お前が餌になりなさい」 「へ・・・?」 間近に迫った彼女の言葉の意味がわからず、しかし、彼は不安を覚えて歩を引いた。 その背に、何か硬いものが当たる。 「あ・・・?」 肩越しに見遣った彼は、自身のはるか頭上で光る目にすくみあがった。 「ぎゃああああああああああああああ!!!!」 長い悲鳴は途中でくぐもり、引き裂かれた身体から溢れる血はガスとなって立ち昇る。 その赤黒い霧を無表情に眺める彼女に、ため息交じりの声がかけられた。 「ルル=ベルさま・・・。 これっぽっちでは、レベル4の生産は・・・・・・」 「わかっている」 これだけ人間の多い場所なら、餌にも不自由しないだろうと思っていたが、どうやらやり方がまずかったようだ。 「主・・・ごめんなさい・・・」 うな垂れたルル=ベルは、ため息混じりに呟いてサングラスを引き抜いた。 「一旦、分散します。 進化直前のアクマ達は、自分達で『食事』してきなさい。 残る者は建築作業を。 一部は作業員に化けて紹介所へ行き、事実無根だと『証明』してきなさい」 言いながらルル=ベル自身も、作業員の一人へと姿を変える。 「・・・ったく、余計な手間ァとらせやがってよぅ! くだらねェこと触れ回りやがったのは、どこのどいつでぇ!」 外見にふさわしく、粗野な物言いをするルル=ベル・・・今はいかつい人夫が、どすどすと足を踏み鳴らして天幕を出た。 人夫に化けたアクマ達がそれに続き、飢えたアクマ達はそれぞれに散って、天幕の色はたちまち薄くなっていく。 「リナリー! 早速効果が出たみたいですよ!」 その様子を遠くから窺っていたアレンが、はしゃいだ声をあげてリナリーの手を引いた。 「早かったねぇ。 2〜3日は張り込みするつもりだったけど、たった3時間か。 きっと・・・」 「私の手回しがよかったからですね!!」 二人の背後で気炎を吐くリンクには、ため息しかでない。 「ありがたいと思ったなら、ちゃんとお礼を言うように!」 「・・・それって、わざわざ要求することかなぁ」 「人間が小さいよねー」 たんこぶの出来た頭を二人揃って撫でながら、意地でもお礼なんか言うもんかとむくれた。 「どちらが器の小さい人間ですかね! 私から逃げておきながらゲンコツ一つで許してもらえるなんて、その時点でお礼を言われるべきだと思いますが!」 ガミガミと叱られて、二人はそっくりなむくれ顔を窓に写す。 「女の子を殴るなんて、サイテーです」 「そー思います」 不満げに言うと、背後で盛大な舌打ちの音がした。 「あなた達が本物のレディであれば、私だって手をあげようとは思いませんよ!!」 そう言われては、本当は男であるアレンと、レディ未満のリナリーには返す言葉がない。 「・・・あ! リナリー、そろそろ手薄になったみたいですよ!」 「よし!攻撃開始だね!」 わざとらしい声をあげるや、いそいそと展望台を出て行く二人の後に、忌々しげな顔のリンクが続いた。 天幕の中は一見、普通の作業場のようだった。 作業着を着た人夫達が資材を運び、組み立て、忙しく立ち働いている。 だが、人の皮を被った彼ら全てが、禍々しく歪んだ影をも纏っている姿を、アレンの目は捉えていた。 「・・・レベル1もいるけど、ほとんどレベル2と3です。 4がいなくてラッキーだったな」 天幕の隙間からそっと覗き込んだアレンの言葉に、リナリーが頷く。 「出てったアクマ達が戻ってくる前にやっちゃおう!」 「はい」 軽くこぶしを打ち合わせると、天幕の中にするりと入った二人は、計画通り資材の陰や、仮設置された柱の陰に隠れ、通りかかったアクマを引きずり込んではその数を減らして行った。 やがて、 「アレ?なンか数減ってネ?」 「そウか? こンなもンじゃネ?」 「メシ行っタのカモ」 たどたどしい口調のアクマ達が異変に気づき始めた頃。 「それじゃあそろそろ♪」 「一気に殲滅 物陰から飛び出してきた黒い悪魔達が、疾風となって彼らを襲った。 突然、捕食する側からされる側へと突き落とされたアクマ達は、ろくに反撃も出来ないままに破壊されていく。 「ラスト!」 得点を競いあうように狼藉の限りを尽くした悪魔達は、楽しげな声をあげて最後の個体を破壊した。 「やったね!」 「最強女子会結成だよ 手を取り合ってはしゃぐ二人に、安全を確認してから天幕に入って来たリンクが呆れる。 「地獄の女子会はともかく」 「なんか棘のある言い方だよね!」 「仲間に入れてもらえなくて、拗ねてるんですよ」 「誰も入りたいなんて言ってませんよ!!」 かしましい少女達を忌々しげに睨んで、リンクは背後を指した。 「早々に撤退しなければ、紹介所へ向かった一行が戻ってきます。 二人で更に戦闘を続けることは困難だと思われますが?」 応援の部隊は既に、移動中のアクマのグループを各個撃破するため、パリの各所へ配置されている。 「これ以上の応援が望めない以上、一時撤退はやむをえないかと考えます」 「はーい」 「じゃ、各部隊と連携して、改めて攻撃だね!」 素直に踵を返したアレンの傍ら、リナリーもこぶしを振り上げた。 「誰か元帥が来てくれれば、殲滅は可能かもしれないんですけどね!」 「既にかなりの数をお任せしたのです。 これ以上、無理は言えませんよ」 好戦的な二人に、リンクが鼻を鳴らして水を差す。 「ちぇっ!」 「ふーんだ!」 拗ねた二人は彼に背を向け、乱暴な足取りで出口へ向かった。 「あ!待ちなさい! そんな無防備に・・・」 慌てて手を伸ばしたリンクが、背後からアレンのベルトを掴む。 「わっ!!」 突然後ろへ引かれてバランスを崩したアレンが、つんのめった。 途端、 「まふっ!」 弾力のある何かに顔を突っ込んでしまって、アレンの身体が宙で止まる。 背後でリナリーとリンクが息を呑む気配がし、恐る恐る目を開けると・・・最も嫌な予想が当たっていた。 「ルッ・・・!!!!」 目を見開いてアレンを見下ろすノアの女は、猫のような素早さでアレンの胸倉を掴む。 「・・・これは一体・・・・・・!」 胸倉を掴んだまま、彼女はアレンをまじまじと見つめた。 「アレン・ウォーカー・・・? でも、まさか・・・」 彼女の目が、胸や女物の団服へ落ちていくさまに、アレンは気まずげに身じろぎする。 と、彼女はいきなりアレンの頬をつまみ、引き伸ばした。 「にゃうっ!!」 「傷は・・・本物のようですね。 そして・・・」 「え?!ちょっ・・・やだっ!!なにすんですかっ!!」 むにむにと胸を揉まれて、アレンが真っ赤になる。 「こちらも本物・・・? これは一体、どういうことですか?」 「ど・・・どういう・・・って言われても・・・・・・」 口ごもって俯いてしまったアレンの顔を覗き込もうと首を傾げた隙に、彼女の手からアレンが奪われた。 「アレン君は返してもらうよ、ルル=ベル!!」 アレンを小脇に抱えたリナリーに、宣戦布告のように指差された彼女は、ぼんやりと首を傾げる。 「そちらからぶつかってきたのですが」 「・・・そうだね」 不思議そうに言われて、リナリーが目を泳がせると、背後でリンクが鼻を鳴らした。 「まったく! 君がぼんやりしているからこういうことになるのです!」 「なんだよっ!リンクが引っ張ったからじゃん!!」 「人のせいにするんじゃありませんっ!!」 「あの・・・」 リナリーの腕から飛び出し、リンクに詰め寄るアレンの鉄火な背へ、ルル=ベルが声をかける。 「ここにいたアクマ達は、お前たちが壊してしまったのですか?」 「うんっ! ひゃっ!!」 頷いた途端、刃と化したルル=ベルの手で真っ二つにされそうになり、アレンが飛び退った。 「なにするんですか!!」 「・・・それはこちらの言い分です。 せっかく餌を与えて育てていたのに、全部壊してしまうなんて・・・!」 「・・・あなたは親に隠れてこっそり猫飼う子供ですか」 思わず呆れ声をあげたリンクを、ルル=ベルが激しく睨む。 「代わりにお前達の首を主へ捧げます!!」 「や・・・やっぱり、そう言う展開になっちゃいますよねー・・・!」 ルル=ベルと、彼女が連れていたアクマ達の一斉攻撃を受け、三人は天幕の中へ散らばった。 「監査官は適当にしのいでね!」 甚だ無責任なことを言い放ち、リナリーが天幕の中を蜂のように飛び回る。 目で追えない彼女の残像が一瞬現れる時は、常にアクマの破壊音が伴った。 反撃も出来ないまま、次々に破壊されていくアクマ達を目の当たりにして、ルル=ベルは悔しげに唇を噛むが、彼女でもリナリーの姿を捉えることはできない。 「忌々しい!!!!」 「きゃっ!!」 女の子のような声をあげて、アレンは叩きつけられた刃を剣で防いだ。 「あ・・・相変わらず、ヒステリーだなぁ!」 妙な声をあげてしまったことが恥ずかしくて、殊更憮然とするアレンを、ルル=ベルは今にも舌打ちしそうな顔で睨む。 「・・・・・・気色悪い」 「・・・そう言うこと、思っても言わないようにって、伯爵は躾けなかったんですかね」 ルル=ベルが伯爵に心酔していることを知りつつ、あえて意地悪く言ってやると、案の定、彼女の動きが鈍った。 「そんなことじゃ、一人前のレディにはなれませんよ? せめて、僕くらいにはならないと クスクスと笑ったアレンの背後で、いきなり爆音が上がる。 「・・・え?」 驚いたアレンが肩越しに見遣ると、真っ赤になったリナリーが、恥ずかしげに俯いていた。 「わ・・・私だって、好きでこんなことやってるわけじゃ・・・・・・」 アレンの意に反し、彼の言葉はリナリーにまでダメージを与えたらしい。 「リッ・・・リナリーには言ってませんよ?! リナリーはちゃんと気遣いができるし、仕事にも真面目だし、素敵なレディだと思います!」 慌てふためいて取り繕うも、リナリーは今にも泣きそうな目でアレンを見つめ、首を振った。 「わ・・・わかってるんだ・・・。 いつも、レディらしくないって、神田に言われるし・・・」 「あんな傍若無人な凶悪面の言うことなんか、信じないでください!」 アレンは必死に言い募るが、 「そうでしょうか。 神田の言うことは、的を射ていると思いますが」 と、横から入って来たリンクが、冷たく鼻を鳴らす。 「〜〜〜〜ひょっこり出てきて雰囲気悪くすんのやめてよ、リンク!!」 忌々しげに睨みつけても、憎らしいことに顔色一つ変えず、彼はまた鼻を鳴らした。 「本当のことを言ったまでです」 「うっさい!ハウス!!」 「私を犬扱いするんじゃありませんっ!!」 物陰を指して怒鳴るアレンにリンクが怒鳴り返す。 その傍らではルル=ベルが、ケンカを始めた二人を唖然と見つめていた。 「なぜ・・・?」 この状況で自分が置いてけぼりなんだろうと、不思議そうに呟く。 他の兄弟達に比べて経験の乏しい彼女は今、最も苦手とする『臨機応変』を迫られて困惑した。 「えぇと・・・・・・」 とりあえず、残ったアクマ達を身近に呼び寄せ、態勢を整えて再び彼らに当たらせる。 「ぅわっ!!」 「このっ・・・!」 「ちっ!!」 アクマ達の一斉射撃に逃げ惑い、散らばるエクソシスト達の姿を見て、ルル=ベルはほっと吐息した。 「正解だった・・・ようです・・・」 「ホンット空気読みませんよね、君は!!」 一旦退いて体勢を直したアレンが、ぷんぷんと怒ってルル=ベルを指差す。 「それに僕を殺しちゃったら、伯爵にすごーく怒られると思いますよ?!」 「・・・なんて卑怯な」 アレンの発言に呟いたのは、慌てて銃撃をやめさせたルル=ベルでなく、リンクだった。 「自分の特殊な立場を利用して脅しの材料に使うとは、聖職者にあるまじき行為ですね!」 糾弾されたがしかし、アレンはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く。 「有利な条件はとことん利用する。 師匠から教わった、立派な戦術です」 生意気に言ったアレンは、意地悪な笑みをルル=ベルへ向けた。 「さぁ 殺れるもんなら殺ってミナサイ 「あ・・・あくどい・・・・・・!」 その態度には、やや離れた所から状況を窺っていたリナリーまでもが呆れる。 と、困惑しきったルル=ベルが小首を傾げた。 「主は・・・果たして今のお前を欲しがるでしょうか?」 「へ?」 意外そうに瞬くアレンに、ルル=ベルは眉根を寄せる。 「その姿のままで・・・14番目は顕れるのですか?」 その指摘に、アレンの動きが止まった。 「・・・どうなのですか、ウォーカー?」 リンクがこっそり問いかけると、アレンが記憶を探るように宙を見つめる。 「そう言えばあいつ・・・僕が女の子になってからは全然出てきてない・・・?」 囁き返すと、猫並みに耳がいいルル=ベルの唇がわずかに上がった。 「そう・・・。 今のお前には、14番目は出現しないのですね」 嬉しそうに言ったルル=ベルの手が、巨大な刃と化す。 「ならばもう、お前は不要です、アレン・ウォーカー! 死になさい!!」 「きゃっ!!!!」 リンクと重ねて真っ二つにする勢いの刃を、アレンは大きく飛び退って避けた。 「ちょっ・・・女の子になっても、僕が14番目の宿主だってことは変わんないでしょ?! なにこの仕打ち!!」 猛抗議するが、ルル=ベルは嬉しそうな顔で更に刃を繰り出す。 「宿していても、覚醒しないのであれば主は喜ばないでしょう。 ならば一刻も早くこの器を壊して、次の転生を待った方がいい。 そうすれば・・・」 ルル=ベルはうっとりと頬を染めた。 「私が生きている間は・・・主は私のものです。 14番目に盗られることなどない・・・ 「なんて勝手なんですか、君は――――!!!!」 別の生き物のように唸りを上げて襲い掛かる刃をバックステップでかわしつつ、アレンが絶叫する。 そうするうちに、アレンは資材が積み上げられて壁になった場所に追い詰められた。 「鉄ごと真っ二つにおなりなさい」 初めて見るルル=ベルの鮮やかな笑顔に、アレンが死を悟った瞬間。 「そうはさせないよ!!」 駆け寄ったリナリーが、ルル=ベルの刃を避けてアレンをさらった。 「リ・・・リナリー・・・!」 ほっと吐息したアレンの胸倉を、リナリーが両手で掴む。 「っ?!」 乱暴に引き寄せられたかと思うと、リナリーの唇で口を塞がれ、アレンの呼吸が止まった。 「元に戻った?!」 言うやリナリーは、呆然とするアレンの胸倉を掴んでいた手で、彼の胸をパタパタと叩く。 「・・・よし!豊胸解消・・・ にんまりと、俯いた顔に浮かんだ邪悪な笑みは一瞬で振り払い、リナリーはにこりと笑ってアレンを見あげた。 「男の子に戻ってよかったね、アレン君! せっかく新しい団服まで作ったんだから、もうちょっと見てたかったけど・・・仕方ないね。 でもこれで思う存分、ルル=ベルを脅せるよ!」 明るい笑顔でとんでもなく邪悪なことを言う彼女に、未だ呆然としたままアレンが頷く。 「・・・びっくりした」 肩幅が広くなったせいか、苦しくなった襟をくつろげ、アレンはほっと吐息した。 「・・・コムイさんにはなんて言い訳したらいいかな」 苦笑しつつ、発動した剣を抜く。 「そう言うことは、生き延びてから考えても遅くないのでは?」 「人事だと思って」 リンクに呆れ口調で言われ、尖らせた口に、アレンは笑みを浮かべた。 「じゃあ、改めて 殺れるもんなら殺ってごらんなサーイ 殊更意地悪く言ってやると、ルル=ベルは忌々しげに唇を噛む。 「まったく・・・憎らしい・・・!」 「敵ながらお察ししますよ」 意外な方面から同意を得たルル=ベルは、一瞬、目を見張ってリンクを見遣った。 しかし、 「不本意ながら、お味方は出来ませんが」 リンクが取り出した札に危険を察し、大きく飛び退る。 「リンク!酷い言い方!」 「不本意ってなんだよ!」 「そのままの意味です。 まったく、聖職者ともあろう者が、人前で破廉恥な行為に及ぶとは嘆かわしい。 あなた達のように恥を知らない者達が神の使徒だなんて、敬虔な信者の方々に失礼というものです」 ぐだぐだと文句を垂れるリンクに、エクソシスト達はぱんぱんに頬を膨らませた。 「さぁ、一気に殲滅を」 札で動きを封じられたアクマ達の中心で、リンクが顎をしゃくる。 「仕切らないでよっ!」 「いばりんぼっ!!」 怒った闘牛のように湯気をあげながら、二人は天幕の中に吹き荒れる嵐となって、アクマを破壊して行った。 その後、無事帰還した三人を・・・正しくはリナリーを、いつも通りコムイが方舟の間で迎えてくれた。 「ただいま、兄さん ルル=ベルには逃げられちゃったけど・・・アクマは殲滅したよ 駆け寄って来たリナリーをコムイが受け止め、ぎゅう、と抱きしめる。 「偉いよ、リナリー 怪我は?!痛いところなんかないかい?!」 「平気!」 得意げに胸を張ったリナリーの頭を撫でてやりながら、コムイは視線を彼女の背後へ移した。 「アレン君と監査官も、ご苦労さ・・・アレッ?!」 突然上がった大声に、アレンがビクッと震える。 「アレン君!どうやって男の子に戻ったの?!」 案の定、聞かれてしまい、アレンは視線をさまよわせた。 「ル・・・ルル=ベルに襲われまして・・・・・・!」 頬を染めて口ごもるアレンを、コムイが疑い深い目で見つめる。 「それでキスしたの?敵と?」 「お・・・襲われたんですから、仕方ないじゃないですか・・・・・・」 耳まで赤くしたアレンの声が、段々小さくなって行った。 と、突如彼の背後に、にょきっとラビが生える。 「あぁー・・・残念さ! せっかくのぷにぷに触り放題が真っ平らに・・・!」 背後からつるぺたの胸を触られ、こめかみを引き攣らせたアレンは思いっきりラビの足を踏んでやった。 「いぎゃあああああああああああ!!!!」 「いい加減にしろっつったでしょ!!!!」 ラビの悲鳴を圧する怒号をあげ、アレンは彼の手を振り解く。 「コムイさん、僕・・・! なんかノアに好かれる性質らしくって、ロードにも襲われたし、ルル=ベルには以前も誘拐されそうになったし・・・とっても可哀想な子なんです!!」 傍らで、リンクが『自分で言うか』と呟いたが、アレンは無視してこぶしを握った。 「信じてくれますよねっ?!」 「あ・・・うん・・・・・・」 アレンの迫力に気圧され、コムイが思わず頷く。 「じゃ・・・じゃあ僕、報告書書かなきゃいけないからー そうだ、マザーに女の子の服も返さなきゃ!」 早口に言って、アレンはさかさかと足を早めた。 団服はリンクがパリまで持って来てくれたため、既にいつものそれに着替えている。 「では後ほど!」 煌めく笑顔と共に、軽く手を振ったアレンがすれ違った瞬間、コムイの長い腕が伸びて、彼の肩をがっしりと掴んだ。 「・・・ねぇ、お待ちよ、アレン君 「・・・・・・イヤ、僕色々用事がありますので」 額に汗を浮かべつつ、挙動不審に目をさまよわせるアレンを、コムイが引き寄せる。 「そりゃあ色々あるだろうけどさぁ その前に、ちゃーんと男の子に戻ったか、調べてあげよう 「いえっ!! そんな結構ですから!!」 必死に首を振るが、蛇のようにしつこいコムイが許してくれるはずもなかった。 「遠慮しなくていいんだよーん? ボクの作った薬は、確かに『人間の』女性のキスで薬効を失うけど、ルル=ベルは男にだって化ける色のノアなんだから、どっかに狂いがあるかもしれないじゃなーい 「そっ・・・そんなことありませんよ! 僕、ちゃんと男の子です!!」 必死に言い募るが、コムイは軟体動物のような動きでアレンに貼りつき、動きを封じる。 「後々のためにも、ちゃんと調べてあげるってばぁ 「いやああああああああああああああああ!!!!リナリィィィィィィィィィィ!!!!」 呼びかけるが、リナリーもさすがに兄の前で『自分がキスした』とは言えないのか、気まずげに目を泳がせた。 「・・・女の子は助けるって言ったけど、今のアレン君は男の子だからなぁ」 「そんなっ!!」 思わぬ裏切りに目を剥いたアレンの傍らで、リンクも重々しく頷く。 「そうですね。 所詮彼女は敵ですし、君が女性であった間、14番目が顕れなかったことも気になります。 室長に診て頂いた方がいいかもしれません」 「ちょっ・・・!」 事情を知っているくせに、あからさまな悪意をもって陥れてくれた彼を、アレンが睨みつけた。 と、 「またオンナノコになるんなら、俺はうれしーけど 立ち直ったラビにまた擦り寄られて、アレンが悲鳴をあげる。 「も・・・二度と嫌だ――――――――!!!!」 絶叫は城内の回廊を渡って、初夏の空にまで突き抜けた。 Fin. |
| リクエストNo.70『新団服』でした。 コムイさんお誕生日SSの後日談ですよー。 リク内容は『絵でもOK』だったんですが、『新』団服を書くなら、本当にどの段階になっても『新』であった方がいいな、と思いまして(笑) アレン君に犠牲になってもらいましたよ。←ひどい。 なんか・・・微妙にエロくてすみません; これ書いてた時、タイバニの青薔薇がひんぬーだってことで萌えまくってたんで、ちちに頭が占拠されてました・・・。>嫌な脳だな!! たゆんたゆん 大きさよりも形だよね!>うっさい!! ちちは貧しても美しく!!>黙れ!! |