† PiecesU †
〜2.復讐するは我にあり〜





 コムイがヴァチカンへ出張してしまって、3日目の朝。
 邪魔する者がいないため、業務は順調に進み、科学班のメンバーは久しぶりに人間らしい生活を取り戻していた。
 十分な睡眠とまともな時間の食事のおかげで、それぞれの表情も生き生きと輝いている。
 そんな彼らの心情を映してか、空までもが清々しく晴れ渡っていた。
 「あと一週間くらい、室長の出張が長引いてもいいよなぁ・・・
 うっとりとした表情で、ジョニーが決済済みの申請書を見つめていると、タップも、もらったばかりの許可証に踊りださんばかりに飛び跳ねる。
 「この出張がなかったら、来年まで許可下りなかったよなぁ!!」
 彼らの他にも、科学班の研究室は、嬉しそうに笑みほころんだ顔であふれていた。
 が、平和で穏やかだった室内は、突如、激怒したエクソシスト二人にドアを蹴破られ、あっさりとかき乱された。
 「任務、見事にスカだったさ!!」
 「ファインダーに『何しに来た』って言われたぞ、おい!!」
 足音も荒く入って来た闖入者達に、力ないインテリ達は怯えた小動物のようにおろおろと逃げ惑う。
 「おぉぃ!ちゃんと説明するさ!!」
 「こちとらロシアの大雪掻き分けて行ってんだぞ、ゴラ!!」
 逃げ遅れたために、ラビと神田にそれぞれ胸倉を掴まれ、吊るし上げられた哀れな科学者達は、可哀相な悲鳴を上げた。
 「シベリアの永久凍土に埋まるか・・・?」
 冗談ではない眼光で脅されて、今にも心不全を起こしそうになる。
 と、
 「そこまでだ、ガキども!俺の部下達から手を離せ!」
 巨大なマシンガンの銃口を向けられた二人は、舌打ちすると、乱暴に吊るし上げていた科学者達を放り出した。
 「けどさ、リーバー!!」
 「お前、12月のシベリアなんて行った事ねェだろう!」
 凍死寸前だった、と、口々に怒声を上げる二人に、リーバーは訝しげに眉をひそめる。
 「凍死?神田が?」
 もっともな問いかけに、神田は憮然と口をつぐみ、ラビは怒りを忘れて吹き出した。
 「そういやユウ〜!
 お前、心頭滅却で火の中雪の中平気なんじゃねぇさ?」
 サイボーグだもんな、と言った途端、ラビは神田の拳を受けて、遠くの壁まで吹き飛ばされる。
 「・・・とにかく、なんのために俺達が無意味な行動を取らされたか、納得の行く説明をしてもらおうか!」
 嘘を許さない迫力に、最初から嘘もごまかしも言うつもりのなかったリーバーは、平然と頷いた。
 「室長が留守の間、お前らをリナリーから引き離すためだよ」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
 もの凄い間の後に発せられた声に、リーバーは深々と吐息する。
 「お前らも、あの人の性格は知ってんだろ。
 ・・・・・・諦めろ、とも、許してやれ、とも言わないぜ、俺は」
 リーバーのうんざりとした口調に、神田の剣呑な気が増した。
 「・・・その代わり、お前らには手を出すなってか?」
 「出してほしくないね。
 実働部隊の指揮責任者は室長なんで」
 我ながら卑怯な言い様だな、と、思わなくはなかったが、エクソシスト達の怒りの矛先を変えるには、正直に話すしかない。
 「奴は、いつ帰ってくる?」
 「予定では、21日。
 ただ、クリスマスにはヴァチカンからお偉いさん方が来るからな。
 彼らと一緒に帰ってくるなら、22日か、遅くても23日だな」
 「そうか・・・!」
 言うや、神田はボキボキと恐ろしい音を立てて、拳を鳴らした。
 「楽しみだぜ・・・・・・!」
 不気味に光る目に、室温はたちまち氷点下に落ちる。
 「俺もー・・・」
 低い位置からの声に振り向けば、神田に吹き飛ばされたラビが、むくりと起き上がって、血ぬれた顔を上げた。
 「ぜーったい、仕返ししてやるさ・・・!」
 不気味な笑い声に、室温は更に下がって行った・・・。


 同じ頃、地下水路から教団本部に帰還したアレンは、まっすぐにヘブラスカの元へ走って行った。
 「ただいまー
 「おかえり・・・アレン・・・・・・」
 「イノセンス持って来ましたよ!」
 「ご苦労・・・だった・・・・・・。
 怪我は・・・?」
 わずかに首をかしげて問うヘブラスカに、アレンは笑って首を振る。
 「かすり傷程度です。
 それより、せっかく用意してもらったトルコ料理を食べ損ねたのが未練で・・・・・・」
 がっくりとうな垂れるアレンの視線の先に、ヘブラスカは手をそっと差し出した。
 「それは・・・残念だ・・・ったな・・・・・・」
 笑い混じりの声に、アレンは顔を上げて、イノセンスをその手に乗せる。
 「詰められるだけ、お弁当に詰めてもらいましたけどね!」
 ただでは起きない、と、誇らしげに笑うアレンに、常に無表情なヘブラスカまでもが、笑みを浮かべたようだった。
 その微笑みの中へ、光を帯びたイノセンスが吸い込まれ、ヘブラスカの胎内のホールに収まる。
 瞬間、イノセンスを収めたヘブラスカが、体の裡から光りだす様に、アレンは満足げに目を細めた。
 「きれいですね・・・。
 僕、この瞬間がとても好きですよ」
 戦いに疲れた心身を癒してくれるような、柔らかい光が徐々に収まって行くのを、惜しむようにアレンは呟く。
 「また・・・持ってきて・・・くれたら・・・見せてあげるよ・・・・・・」
 珍しく、冗談めかしたことを言うヘブラスカに、アレンは大きく頷いた。
 「ありがとう!
 ・・・あ、イノセンスと言えば」
 ふと、目を見開いて、アレンは顔を上げる。
 「僕の他にも、大勢行ったでしょ、イノセンスの回収?
 もう誰か、持ってきちゃいました?」
 アレンの問いに、ヘブラスカは首を振った。
 「誰も・・・・・・。
 ラビ・・・と・・・神田が・・・戻った・・・ようだが・・・・・・」
 「え?!
 じゃあ、ここに来る前に合流しなきゃ!
 あ、ヘブラスカ!
 もし、二人が先にこっちに来ても、僕が来るまで飲みこまないで下さいね!」
 アレンの勝手な願いを、しかし、ヘブラスカは穏やかに頷いて了承する。
 「いい・・・だろう・・・・・・。
 早く・・・戻っておいで・・・・・・」
 「はい!」
 踵を返して駆け去ったアレンの背を、ヘブラスカは慈愛に満ちた表情で、じっと見送っていた。


 まだヘブラスカの元へ行っていないなら、科学班だろうかとあたりをつけて、回廊を走っていたアレンは、行く先にラビと神田の姿を見止め、足を早めた。
 「ラビ!神田!おかえりー!」
 突進してきたアレンをよけそこねたラビが、撥ねられて固い石床に叩きつけられる。
 「あれ?血が出てますよ、ラビ?」
 「てめぇが轢いたんだろうが、てめぇが!」
 「ユウちゃんのせいでもあるけどな!」
 血まみれの顔でムクリと起き上がったラビが、忌々しげに怒声を上げた。
 「もう・・・なんなんさ、お前ら!
 俺の優秀なオツムが壊れちまったらどうすんさ、コンチクショー!!」
 「そん時は、ブックマンの名を諦めんだな」
 「ですね!」
 無情な言葉を吐く二人を、ラビは思いっきり睨みつける。
 「俺は絶対諦めないさ!
 将来は絶対ブックマンになって、お前らがどんなに悪逆非道な悪魔だったか、後世に語り継いでくれるさ!」
 ふんっ!と、鼻息も荒く言ってのけた瞬間、ラビはチキ・・・という、不気味な鞘鳴りを捉えて、震え上がった。
 「じゃあ今ここで、口封じとくか」
 「神田、初めて気が合いましたね!」
 「オオオオ・・・オマエラが言うと、全然冗談に聞こえねぇさっ!!」
 「あ?冗談じゃねェよ」
 「僕たち、本気ですっ!」
 真顔の答えに、ラビはあっさりと屈する。
 「す・・・すみません、お二方・・・っ!
 生意気言いましたっ!」
 「わかれば良し!」
 うな垂れたこうべに、無情に降り注いだ悪魔達の声が、より一層ラビの気持ちを暗くさせた。
 ―――― ユウはともかく、なんで俺、年下のアレンにいぢめられてんさ・・・・・・。
 思わず目尻に浮いた涙を、ラビはそっと拭い去る。
 「ところでどしたんさ、お前?俺らになんか用か?」
 憮然と問うと、アレンは床に座り込んだままのラビに手を差し伸べた。
 ラビがアレンの手を取って立ち上がると、
 「・・・いえ、そうじゃなくて」
 と、アレンが首を振る。
 「イノセンス、回収してきたんでしょ?」
 途端、ラビと神田の顔が引きつり、こめかみに青筋が浮かび上がった。
 「イノセンスだ・・・?」
 「12月のシベリアは、めっさ寒かったなぁ、おい」
 吹雪のように寒々しい二人の声音に、アレンは逆鱗に触れてしまったことに気づいて、数歩退く。
 「えーっと・・・つまり?」
 それ以上、口にするのが怖くて言葉を濁すと、二人はアレンが退いた距離を一足にまたいで、彼に詰め寄った。
 「大雪掻き分けて行ってやったってぇのに・・・!」
 「俺らを見たファインダー、なんつったと思うさ・・・?」
 「何しにきたんですか、だとよ・・・!!」
 「行くか?お前も行くか、12月のシベリア?!
 ナチュラルに凍死体さ!!」
 「わっ・・・わかりましたから・・・っ!放して放して・・・っっ!!」
 生者を冥府に引きずり込む亡者のように、掴みかかろうとする4本の腕をわたわたとかいくぐって、アレンはなんとか逃れる。
 「俺、今度という今度は堪忍袋の緒も切れたさ!
 絶対、コムイに復讐してやるんさ!!」
 拳を握って絶叫するラビに、アレンは首を傾げた。
 「そんなの、ブックマンからコムイさんに一言、言ってもらえばいいじゃないですか。
 お年寄りをムダに12月のシベリアに行かせるなんて、いくらなんでもひどい話ですから、ブックマンが苦情を言えば改善・・・」
 アレンは、目の前でラビが、ぶんぶんと首を振る様に、途中で言葉を切る。
 「ダメなんですか?なんで?」
 「だってジジィ、寒いとこヤダっつって、行かなかったんだもんさ!」
 「・・・あのジジィは知ってたんじゃねェか?
 俺達が無駄足踏むって事をよ!」
 神田が忌々しげに舌打ちすると、アレンも『ありそうなことだ』と頷いた。
 「やっぱ、そう思うさ・・・?」
 空しく呟くラビに、無情な二人はあっさりと頷く。
 「本当にイノセンスがあったんなら、シベリアにだって一緒に行ってますよ。
 だってブックマンだもん」
 「ジジィがいかねぇなんて言うし・・・嫌な予感はしてたんさ・・・・・・」
 深々と吐息したラビに、アレンもまた、残念そうな吐息を漏らした。
 「せっかく、ヘブラスカのホールにイノセンスが収まるところを見られると思ったのになぁ・・・」
 「なに?お前もスカだったんさ?」
 ラビの問いには、首を横に振る。
 「僕の任務は当りでしたよ。
 トルコまで行った甲斐がありました」
 「トルコ?中東支部の縄張りじゃなかったか?」
 訝しげに眉をひそめた神田には、頷いて見せた。
 「ちょうど境界らしいんですよ、僕が行ったとこ。
 調査は、中東支部のファインダーがやってくれてたんで、調査の詳細を聞きに、一旦中東支部に行ったんですけど・・・・・・」
 途端、うっとりと遠い目をしたアレンに、ラビも神田も、揃って首を傾げる。
 「おいしかったなぁ・・・料理長さんの、トルコ料理・・・・・・」
 「そっちかよ!」
 「色気より食い気のガキが・・・」
 ラビに突っ込まれ、神田に忌々しげに言われても、アレンの幸せは止まらなかった。
 「あっちの料理長さんも、すごく親切な人だったんですよぅ
 僕がもりもり食べてたら、どんどん違うお料理運んできてくれて
 任務完了の報告したら、『お祝いにご馳走作って待ってる』って言ってくれたのに・・・のに・・・・・・」
 しゅん、とうな垂れたアレンに、ラビと神田が、再び首を傾げる。
 「なんか、やらかしたんさ?」
 「違いますよぉぅ・・・。
 観光じゃないんだから、早く帰って来いって、リーバーさんに怒られたんですー・・・」
 アレンの言葉に、ラビと神田は驚いて顔を見合わせた。
 「?
 どうしたんですか?」
 二人の様子に、アレンが問うと、彼らは訝しげな目をアレンに向ける。
 「さっき・・・リーバーから聞き出したんさ。
 俺らが、極寒のシベリアで無駄足踏まされた本当のワケをな・・・」
 「コムイが留守の間、俺達をリナリーから引き離すためだとよ!!」
 「え・・・?」
 二人の忌々しげな声音に、アレンは目を丸くした。
 「それなら、なんで僕だけ帰って来いなんて言われたんですか?」
 「知るかよ!!」
 怒声を上げる神田の傍らで、ラビが思案顔であごに手を当てる。
 「それ、リーバーの意思かねぇ?」
 「多分・・・ミランダさんが関わっているんじゃないかと思います」
 苦笑するアレンに、ラビは頷いて先を促した。
 「リーバーさんに任務完了報告した時、ミランダさんもいたんですよ。
 ・・・すっごく、怖かった」
 ポツリと呟いたアレンに、神田が訝しげな視線を向ける。
 「料理長さんの事もあって、僕がすぐに帰還するのをごねてたら、『異教徒の国になんかいないで、早く帰って来い』って言われて・・・!
 ミ・・・ミランダさんが、敬虔なクリスチャンだって事は知ってましたけど、あの口調はもう・・・・・・!」
 普段のか弱げなミランダからは、想像も出来ないほど恐ろしかった、と、震え上がるアレンに、ラビも苦笑した。
 「きっと、それさ。
 大変だな、リーバーも」
 言いつつ、ラビは内心、ほくそ笑む。
 ―――― ちょうどいいさ・・・利用させてもらお♪
 目的のためには手段を選ばない・・・それも、ブックマンとしての資格だ。
 ―――― アレンはそのうち泣かすとして、今は・・・。
 にんまりと、暗い企みに口の端を歪めたラビは、何気ない様子で顔を上げる。
 「ところでお前、今からリーバーに帰還報告しに行くんさ?」
 さり気ないラビの問いに、アレンも不審に思う事なく頷いた。
 「君達がイノセンスを持ち帰ってるんだったら、ヘブラスカに渡すのを見てから行こうと思ってたんですけどね。
 仕方ないから、このまま報告に行きますよ」
 そう言って、傍らをすり抜けようとするアレンの腕を、ラビが掴む。
 「リーバーには、もうとっくにファインダーから報告が行ってんさ!
 むしろ、待ちかねてるんはミランダの方じゃね?」
 「はぁ・・・そうなんですか?」
 首を傾げるアレンの腕を、ラビは科学班研究室とは逆の方向へと引いた。
 「じゃあ、こっちから行ってやろうぜ!姐さんも待ってるさ、きっと!」
 「ジェリーさん?!うん、行く!!」
 料理長の名前が出た途端、先に立って歩き出したアレンの背に、ラビはしてやったりと笑みを浮かべ、ついて行く。
 と、その腕を、神田が引いた。
 「今度は何を企んでやがんだ?」
 「おや、バレちゃったさ?」
 こらえかねて、クスクスと笑声を漏らすラビに、神田の目が細まる。
 「コムイへの仕返しか?」
 「あったりー ユウちゃん、鋭いね♪」
 「わからない方がどうかしている」
 神田が憮然と言い放つと、ラビは人差し指を口元に当てて、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
 「ユウ?
 黙って見てるんと、俺の手伝いするんと、どっちがいいさ?」
 「・・・手伝いはしねェ。だが、別に邪魔もしねェよ」
 「サンキュ、ユウちゃん それで十分さ
 手を振って、先に行ってしまったアレンを追いかけて行くラビの背に、神田は軽く吐息する。
 「なにをやるつもりだかな」
 言葉とは逆に、大して興味を引かれている様子もなく、神田は自室へと戻って行った。


 「ジェリーさーん!ただいまー!!」
 誰よりも先に料理長に挨拶をするアレンに、彼の後を追ってきたラビは苦笑した。
 が、いつもアレンの声を聞くや、カウンターに駆け寄ってくるジェリーは今、厨房の奥で、なにやら熱心に口を動かしている。
 「あれー?ジェリーさん??」
 呼びかけるが、アレンの声も耳に入らない様子だった。
 「なにしてんさ、姐さん?」
 ラビも寄って来て、厨房の中を覗き込むと、どうやら彼女は、料理の指導をしているようだ。
 「新人か?」
 ジェリーの陰に隠れて、ぎこちなく揺れる鍋が垣間見えた。
 「それにしては、なんか手元が危ないですよね・・・」
 ジェリーの部下になるくらいなら、新人とはいえ、基礎はできているのが普通だ。
 「一体、どんな奴さ?」
 カウンター沿いに移動して、何とか見えた顔に、アレンもラビも目を丸くした。
 「な・・・」
 「なにやってんさ、リナー!!」
 ラビの大声に、驚いたリナリーが涙目を向ける。
 「助けてぇ・・・!」
 リナリーが、情けない声を上げると、ジェリーの叱声が飛んだ。
 「ホラ!よそ見しないの!アンタ何回焦がしたと思ってんの!」
 「だってぇ・・・・・・」
 えぐえぐとしゃくりあげるリナリーを、アレンが気遣わしげに見遣る。
 「どうしてリナリーが料理人修行してるんですか・・・?」
 その問いには、気まずげに口をつぐんで答えないリナリーに、アレンは首を傾げた。
 「・・・もうちょっと頑張る」
 答えになっていない答えを呟くリナリーに、アレンはラビと、訝しげな目線を交わす。
 「それより、お帰りなさい、アレンちゃん
 素早くカウンターに駆け寄って、ジェリーが嬉しげな笑顔を向けた。
 「聞いたわよぉ
 中東支部でも、料理長に気に入られちゃったんですってぇ?」
 「はい おいしいものたくさん食べさせてもらいました
 「・・・んまっ!
 そんなにうれしそーな顔されちゃ、妬けるわぁ」
 ジェリーはカウンター越しに手を伸ばすと、アレンの頬をむに、と、つまむ。
 「でも、ジェリーさんのお料理が世界一おいしいです!」
 「んまっ!!」
 途端、ジェリーは喜色満面となり、嬉しそうに身を捩じらせた。
 「アレンちゃん、可愛い――――
 うんっ!イイ子っ!!」
 「あは
 ジェリーに抱きしめられ、盛大に頭を撫でられて嬉しそうに笑うアレンの傍らで、ラビが苦笑する。
 「出た、天然ナンパ少年・・・」
 面と向かって女性を褒め称えるなど、団員多しといえども、やってのけるのはアレン一人だ。
 感嘆に皮肉を込めて言うと、アレンはジェリーに懐かれたまま、にこりと笑う。
 「なんですか、うらやましいんですか?」
 「いや、別に・・・」
 言い掛けて、ラビは慌てて首を振った。
 「うんっ すっごくうらやましいんさ!」
 この教団で、料理長を敵に回すことはすなわち、餓死を意味する。
 いくらラビでも、そこまでうかつではなかった。
 「それより姐さん、後ろでなんか焦げてんさ・・・」
 追求されるのを避けるように、ラビが厨房の奥を示すと、リナリーが黒い煙を上げる鍋を持ってうつむいている。
 「私・・・無理・・・・・・」
 悄然と肩と涙を落とした彼女に、ジェリーは深々とため息をついた。


 最初に、リナリーから『何も聞かないで』と釘を刺されてしまったために、アレンもラビも、妙に居心地の悪いまま、テーブルを挟んでリナリーと向かい合っていた。
 「・・・なんだか知りませんけど、そう気を落とさないで」
 ココアのカップを両手で包んだまま、じっと下を向いているリナリーに、アレンが声を掛けると、彼女は力なく頷く。
 「めっさ気になるけど・・・そんなに落ち込んでんなら、気分なおしに出かけて来たらどうさ?」
 「おでかけ・・・?」
 憂鬱そうな吐息と共に漏れた暗い声に、ラビは好奇心を懸命に押し殺して頷いた。
 「あぁ。
 クリスマスの買い物とか、色々あんじゃね?
 アレンも帰って来たし、こいつがお供すんなら、誰も文句ねェさ♪」
 な、と、笑みを向けられて、アレンはシシュケバブを咥えたまま頷く。
 「はい、お供します!」
 リナリーとは対照的に、明るいアレンの声に、ラビは内心ほくそ笑んだ。
 トルコで食べ損ねた料理を、全てテーブルに並べてもらった彼は今、最高に機嫌がいい。
 多少の無理を言っても大丈夫と判断し、ラビは笑みを深めた。
 「じゃあさ、リナの気分なおしに、ロンドンまで行ってくるさ、アレン。
 そだなー・・・ナイツブリッジで買い物して、ハイドパークで散歩するとか」
 「えーっと・・・ロンドン動物園のあるところ?」
 「そりゃ、リージェンツ・パークさ。
 あの辺は特に、買い物するようなとこは・・・」
 「えー。僕、フクロオオカミ見たいなぁ」
 「ガタガタ言ってねェで行けっつの!
 お前、人がせっかく・・・」
 言いかけて、口をつぐんだラビを、アレンとリナリーが訝しげな目で見つめる。
 「な・・・なんでもないさ・・・」
 わざとらしく咳払いをすると、ラビはぎこちない仕草で窓の外を見遣った。
 「せ・・・せっかくのいい天気なんさ。
 さっさと行ってくりゃいいさ」
 「はぁ・・・」
 あからさまに怪しいラビの態度に、アレンとリナリーが不審げな顔を見合わせる。
 が、最後のシシュケバブの串を皿の上に置いたアレンが、
 「どこに行きたいですか?」
 と尋ねると、リナリーは少し考えて、まだ晴れやかとは言い難い笑みを浮かべた。
 「じゃあ、今のうちに行っておきたい所があるの・・・つきあってくれる?」
 「はい、喜んで
 本当に嬉しそうに笑ってアレンが頷く様に、内心快哉を挙げて、ラビは次の作戦に移る。
 「じゃあさ、アレン〜 俺もちょっと、お願いがあるんさ
 ティムキャンピー、貸してくれ
 「へ?ティム?」
 アレンが首を傾げると、同じく、金色のゴーレムも丸い身体を傾けた。
 「そう♪
 俺、ジジィに中国での戦争の記録を取っておくように言われてんだけど、お前の動きは丸々抜けてんじゃん?
 だからお前たちが出かけてる間、ティムのメモリー見ようと思ってんさ♪」
 陽気な声で言うラビに、リナリーが訝しげに眉を寄せる。
 「え・・・?
 でもラビ、船の上でずっとティムのメモリー見てたじゃない」
 リナリーが言うと、ラビの顔からはたちまち陽気な表情が消え、俯けた顔は憂鬱そうな陰りを帯びた。
 「あん時は・・・アレンが死んじまったと思ってたからさぁ・・・・・・。
 それが、我ながら驚くほどショックだったみてェで、気づいたら全然記憶に残ってなかったんさ・・・笑っちまうよな!」
 自嘲気味に笑い飛ばして顔を上げると、ラビの思惑通り、二人は目にいっぱいの涙をためて彼を見つめている。
 「ラ・・・ラビ・・・!
 そんなに僕のこと!!」
 「や・・・やっぱり、仲間だって思ってくれてたんだね、ラビ・・・!
 私・・・信じてたよ・・・!!」
 「ありがとうございます!!」
 泣きながら抱きついてきたアレンを抱き止めて、ラビが頭を撫でてやると、その仲睦まじさにリナリーが感動の涙を流した。
 彼女が、とめどない涙に顔を覆った瞬間、ラビはアレンの耳に素早く囁く。
 「ちょっと早ェけど、俺からのクリスマスプレゼントさ。楽しんで来いよ」
 「え?」
 アレンが驚いて、涙目を上げると、すぐ側にラビの笑顔があった。
 彼は横目で、リナリーがまだ顔を覆っているのを確認すると、アレンの頭を撫でつつ、コソコソと囁く。
 「俺だけじゃねぇよ。多分、仕掛けてくれたんはミランダさ。
 コムイがいねェなんて、滅多にねェことなんだから、このチャンスをしっかり掴むんだぜ!いいな?」
 念を押されて、アレンは何度も頷いた。
 「ラビ・・・大好き!」
 「できれば、『ラビお兄ちゃん大好き』って言って欲しいさ
 楽しそうな笑声を上げて、ラビはアレンの頭の上からティムキャンピーを取り上げる。
 「じゃあ、ちょっとコイツ借りんな♪
 代わりに、俺のゴーレム持ってくさ
 「え?通信用なら、私も持ってるけど?」
 長い睫毛にまだ涙を含ませたまま、顔を上げたリナリーに、ラビは苦笑を向けた。
 「アレンがはぐれないって保証は?」
 「あ・・・そうね」
 「納得しないで下さいよぅ!!」
 アレンの悲鳴じみた声に、明るい笑声が上がる。
 「じゃ、俺のゴーレム、回線開いて繋ぎっ放しにしてっから、なんかあったらまず俺を呼んでくれ。
 俺は、部屋に帰ってジジィのゴーレムを側に置いとくからさ、リナに中継してやるよん♪」
 至れり尽くせりの申し出に、もはや断る理由もなく、アレンとリナリーは、ラビに背を押されるようにして城を出て行った。
 「さーぁ お楽しみは、これからさ


 ティムキャンピーを連れて部屋に戻ってきたラビに、ブックマンは新聞の紙面に落としていた視線を上げた。
 「今度は、なにをやらかしたのだ?」
 「これからやらかすんさ
 ・・・それより、ジジィ。今度のシベリア行きがスカだって、知ってたんさ?」
 微笑を浮かべながらも、かなり剣呑な声音で言うラビに、ブックマンはいけしゃあしゃあと頷く。
 「そんな気はしておった。
 室長も、目的が目的であったため、私に行かせるつもりはなかったようだしな」
 「・・・・・・クソジジィ」
 ラビが忌々しげに吐き捨てると、ブックマンは口の端を曲げて笑った。
 「その代わりと言ってはなんだが、お前がこれからやろうとしていることは、止めずに置こう」
 「ったり前さ、根性悪のジジィが!」
 憮然と言い放つと、ラビはブックマンに手を差し出して、師の通信ゴーレムを受け取る。
 ブックマンの声紋で回線を開かれたそれは、すぐにアレンとリナリーの会話を伝え出した。
 「ふっふっふ・・・泣き喚くがいいさ、コムイ・・・!
 It’s show time〜♪」
 楽しげに宣言して、ラビは城内に飛び回る中から、適当に捕まえてきたゴーレムの回線を開き、コムイのゴーレムへと繋いだ・・・・・・。


 一方、教団本部を出た馬車の中では。
 「リナリー、行きたいところって?」
 アレンが問うと、リナリーは頬を染めて、膝の上に乗せたバッグを撫でた。
 「あの・・・覚えてる?
 ブリュッセルレースを飾りにしたドレスを作ろうと思ってる、って言った時、アレン君・・・」
 「はい。
 きれいな生地を見に行きましょうね、って言いました、僕」
 「ずっと忙しくて行けなかったら、行けるうちに行っておこうと思ったの」
 「そうですね、でも・・・」
 カレンダーを思い浮かべながら、アレンは首を傾げる。
 「クリスマスには間に合いませんよ?」
 と、リナリーは笑って首を振った。
 「クリスマス用じゃないの。お正月用よ
 「新年用って行っても、オーダーメイドのドレスが出来上がるのは、早くて1ヵ月後・・・」
 言いかけて、アレンは『あ』と声を上げる。
 「君達の新年は、2月・・・でしたね」
 「うん そう
 嬉しそうに笑うリナリーから、アレンは引きつった顔を背けた。
 彼女と彼女の兄が行う『新年行事』に対して、アレンはいい思い出を持っていない。
 「そんなに心配しなくても、次のお正月には爆竹を使わないように言っておくわ」
 なかなかこちらを向かないアレンに、リナリーが苦笑すると、彼は深々と吐息した。
 「みんながそう言っても、いつも・・・」
 引きつった笑みを向け、信じ難いと言わんばかりの声音で言うアレンに、リナリーは自信ありげに笑って膝の上のバッグを軽く叩く。
 「だから、新しいドレスを作るんだよ
 兄さんのことだもん、『私のドレスを汚さないでね』って言ったら、爆竹は使わないわ」
 「その手が・・・!」
 目から鱗が落ちたように、感嘆の声を上げるアレンに、リナリーは笑みを深めた。
 「だから、真剣に選んでね?
 兄さんの暴挙を止められるかどうかは、アレン君のセンスにかかってるよ?」
 いたずらっぽいリナリーの言葉に、アレンは真剣な顔で頷く。
 「はい!がんばります!!」
 「うん、よろしくね
 クスクスと、明るい笑声をあげるリナリーに、御者が到着を告げた。


 同じ頃、ヴァチカンにある宿舎の一室で、コムイは会議の準備をしていた。
 と、その目の前に、黒い通信用のゴーレムが、呼び出し音を上げながら飛び出してくる。
 「なーにー?何かあった?」
 呼びかけて回線を開くと、黒いゴーレムは楽しげなラビの顔と声を転送した。
 『やっほーコムイ そっちの状況どうさ?いつ帰ってくるん?』
 「ん?順調だよー?
 明後日まで会議があって、しあさってには予定通り帰ろうと思ってるけどー。
 枢機卿達とは明日会食するから、その時にあの人達が『一緒に』って言ったらもう数日遅れるかもね。なんで?」
 問い返すと、ゴーレムが映し出すラビの顔が、にんまりと不気味に笑う。
 『じゃぁ、コムイ。今日明日中にロンドンに帰ってくるんは無理ってことさ?』
 コムイの問いには答えず、楽しげに言うラビに、コムイは不思議そうに首を傾げる。
 「当たり前じゃない。
 ボク今、ヴァチカンだよ?そんなの、物理的に無理でしょ」
 なんなの、と、コムイが眉根を寄せる様が見えたかのように、ラビの楽しげな笑声が届いた。
 『ところでコムイ?お前の通信用ゴーレム、映像は受信できるんさ?』
 「うん・・・できるけど・・・」
 中々目的を明らかにしないラビを、コムイが不審に思いつつ答えると、ラビは大声で笑い出す。
 『んじゃ、ステキ映像送ってやっからー これ観て残り日数、がんばって
 「はぁ・・・?」
 眉根を寄せ、首を傾げるコムイの目の前で、ラビは思いっきり舌を出すと、一旦回線を切った。
 直後、軽いノイズの後に、別の映像と音声が届く。
 途端、
 「リナリィィィィィ――――――――!!!!」
 宿舎中に、コムイの絶叫が響き渡った。


 ロンドンのナイツブリッジにある婦人服店では、教団の紋章入りの馬車で乗りつけたおかげで、リナリー達は若いながらも、下にも置かないもてなしを受けていた。
 目の前にずらりと並べられた、色とりどりの生地をうっとりと見つめながら、採寸を受けるリナリーの傍らで、アレンは店員と一緒に、熱心にカタログをめくっている。
 「こちらのデザインなどは先日、レディ・フランシスのご用命にあずかりまして、バッキンガム宮殿への伺候の際に纏われたという、格式の高いものでございます」
 「・・・レディ・フランシス。
 素敵な方ですよね。もうご高齢でいらっしゃるのに、いつまでも若々しくて、ゴシップ新聞を賑わせていらっしゃる」
 笑顔ながらも、否定的な声音のアレンに、店員は慌てて別のページをめくった。
 「えー・・・で、では、こちらのデザインは・・・」
 「あぁ・・・僕の知っている老婦人が、こんなドレスをお好きでしたねぇ」
 仮面のように笑顔を貼り付けたまま、言外に店員のセンスを否定するアレンに、店員は益々焦り、狼狽してカタログのページをめくる。
 ややして、ようやく若い女性向けのデザインを探し出した店員に、アレンは微笑んでリナリーを呼んだ。
 「リナリー。
 店員さんが、素敵なデザインを探してくれましたよ」
 「ホント?!見せて
 ぱぁっと、笑み輝いて振り返ったリナリーに、アレンだけでなく、店員までが顔を赤くする。
 「これなんかどうですか?」
 腰に巻尺を巻きつけられて、身動きの取れないリナリーの側に、アレンがカタログを持って行くと、彼女はキラキラと目を輝かせた。
 「素敵・・・」
 差し出されたデザインは、一見、シンプルなマーメイドラインだが、腰に長い引き裾がついていて、華やかなデザインになっている。
 「これなら、みんながドレスアップしている時に着たいなぁ・・・
 「えぇ!レディでしたら、きっとお似合いですよ!」
 リップサービスではない声音で、意気込んで言う店員を押しのけ、アレンが大きく頷いた。
 「リナリーなら、花の中の花になれますよ。
 他のデザインも見てみますか?」
 「あら・・・でもこれ、アレン君が選んでくれたんじゃないの?」
 にこ、と、微笑まれて、アレンも嬉しそうに笑みほころぶ。
 「気に入ってもらえました?」
 「うん!これがいい!」
 リナリーが大きく頷いた弾みで、採寸をしていた女性店員が手を滑らせ、巻尺がリナリーの足に絡んだ。
 「きゃっ?!」
 「リナ・・・!」
 足をすくわれてよろめいたリナリーをアレンが受け止める。
 「も・・・っ申し訳ありません!!」
 「大丈夫ですか?」
 悲鳴じみた声を上げる店員を、手を挙げて制し、アレンは爪先立ちのままのリナリーを支えたまま問うた。
 リナリーが頷くと、アレンは女性店員に微笑む。
 「僕が支えてますから、今のうちに」
 「は・・・はい!」
 女性店員が素早くかがみ込み、リナリーの足に絡んだ巻尺を取り去った。
 「ご・・・ごめんなさい、採寸中に・・・」
 私が動いたから、と、気まずげに呟くリナリーに、店員が首を振る。
 「アレン君も・・・」
 リナリーを抱きとめたまま、いつまでも離さないアレンを、リナリーは遠慮がちに見上げた。
 「もう、離してくれていいよ?」
 「え?
 あ!ごめんなさい!!」
 アレンは真っ赤になって、慌ててリナリーから手を離す。
 ―――― コムイさんに見られたら、即時処刑だな・・・。
 ティムキャンピーを連れて来なくて良かった、と、アレンはゴーレムを取り替えてくれたラビに心から感謝した・・・―――― それが、ラビの策略だとは知らないままに。
 「じゃあ、次は生地を選びましょうか!」
 アレンは照れ隠しに、テーブルに並べられた生地に視線を移した。
 「色は明るいものがいいですよね!織りの柄は・・・・・・」
 生地を手に取っていたアレンの傍らに、すい、と、リナリーが並ぶ。
 「あ この小花柄の織り、可愛いー
 少し視線を向ければ、頬が触れそうなほど近い所に、リナリーの顔があった。
 ―――― 嬉しい・・・
 パタパタと、耳の近くを飛び回るゴーレムすら気にならず、アレンはリナリーと楽しげに生地を選んだ。


 アレンがロンドンで、『見られたら即時処刑』だと思ったシーンは、ヴァチカンにいるコムイに、全て音声付で転送されていた。
 「ア〜レ〜ン〜くぅぅぅぅぅぅん〜〜〜〜!!!!」
 ギリギリと、ぬいぐるみの耳に噛みついていた歯の間から、コムイが怨念にまみれた声を漏らす。
 「・・・処刑!」
 死刑宣告と共に、コムイはウサギの耳を食いちぎった。
 頭部から白い綿を出して床に転がったぬいぐるみを蹴飛ばすと、コムイは部屋の端からトランクを取り上げ、ベッドの上に広げる。
 わっさわっさと、衣類や書類をトランクに詰めていると、ドアがノックされ、ヴァチカンの幹部が入って来た。
 「コムイ室長、そろそろ会議が始まるが・・・何をしているのかね?」
 詰め物が溢れて、閉まりきらないトランクの上に乗って掛け金を合わせようとしているコムイの背に、彼が訝しげな声を掛ける。
 と、
 「帰る!!ロンドンに帰るぅぅぅぅぅぅぅ!!」
 ヒステリックな声を上げるコムイに、彼は呆れた顔をして歩み寄った。
 「何を馬鹿なことを言ってるんだね!早く来たまえ!!」
 彼はコムイを背後から羽交い絞めにし、トランクの上から引きずりおろすと、そのままずるずると引きずっていく。
 「ヤダ――――!!放してー!!お願いぃぃぃぃ!!!!」
 宿舎中に響き渡るような声で、泣き叫ぶコムイを持て余し、彼は衛兵達に呼びかけた。
 「君たち!コムイ室長を会議室に連行しろ!」
 「イヤ――――!!ロンドンに帰るんだぁぁぁぁ!!リナリィィィィィ!!!!」
 甲高い悲鳴に、うるさげに耳を塞ぎ、彼は開けっ放しのコムイの部屋に戻って、会議に必要な書類を手に取る。
 「・・・なんなのだ、一体」
 呆れ果てた顔で吐息すると、彼はコムイの悲鳴が響き渡る回廊を、会議室に向かった。
 ・・・その後、開かれた会議では、コムイはただ問われたことにのみ答える機械人形と化し、まったく使い物にならなかったという・・・。





To be continued.

 










2006年の、アレン君お誕生日SS第2弾です♪
第2部は、リクエストNO.13『アレリナを応援・手助けするラビ』です。
手助けする動機が、かなりのところ不純ですが、まぁ、この子達らしくてよろしいかと(笑)
リナのレースのお話は、『The Chain of Fate』参照です♪
ついでに、ドレスはこちらのイメージ・・・って、ウェディングドレスですよヲイ!
実は策士なアレン君のことですから、ウェディングドレスだとわかっていて差し出したかもね!(って、嘘です;単に、19世紀のドレスカタログが見つからなかっただけ;)












ShortStorys