† THE GHOST IN MY ROOM †






 「フンフンフン〜♪」
 わずかな明かりすらも吸い込んでしまうほどの、真の闇の中に陽気な歌声が響く。
 歌声の主は、闇の中でもなんら不自由を感じさせない手つきで麺棒を転がしては、可愛らしい型抜きでクッキーの生地をくりぬいていった。
 「フンフンフン〜♪」
 大きな手に対して、くりぬいた生地はあまりにも小さな物だったが、彼は粉をまぶしつつ、丁寧に生地をオーブン用の鉄板に並べていく。
 と、甘い香りと彼の歌声に惹かれるように、小柄な少女が明かりの灯ったジャック・オ・ランタンを片手に提げ、ぴょこぴょこと跳ねるような足取りで寄って来た。
 「せーんねーんこー♪」
 甘えた声に振り向けば、黒い耳と尻尾をつけた少女が、色とりどりの風船を手にくるくると回る。
 「どーぉ?可愛いー?」
 「アラv ロードv
 可愛い黒猫ちゃんデスねェv
 彼―――― 千年伯爵が粉だらけの手を拭き、黒猫の仮装をした少女を抱き上げると、彼女は子供らしい高い声で楽しそうに笑った。
 「ねーぇv
 なに作ってるのぉー?」
 伯爵に抱き上げられ、いつもより高い場所から見下ろしたキッチンには、様々な形にくりぬかれた生地がある。
 「ハロウィンにミんナで食べルお菓子デスよv
 カボチャ型に抜イたノもありまスかラ、焼きあがっタラ、一緒ニ顔を描きまショウv
 「キャハハハv 楽しそうーvv
 「楽しいデスとモv
 伯爵の提案に喜んだロードは、諸手をあげて彼に抱きつき、放り出された風船は、ふわふわと闇の中をのぼっていった。


 ―――― ぱんっ・・・と、どこかで風船の割れるような音がした。
 その音に、尖塔の屋根の上で風を受けていたアレンは軽く吐息し、改めて左目を見開く。
 『1機終了』
 軽いノイズの後、通信ゴーレムから聞こえてきた無愛想な声に頷き、また望遠鏡を構えた。
 「・・・次、4時20分の方角。30m。
 海賊の仮装をした・・・少年」
 虚ろなほどに事務的な声を受け、また・・・破裂音が聞こえる。
 『終了。他は?』
 「・・・9時ジャスト。50m。
 妖精の女王の仮装をした・・・ご婦人」
 無線越しに聞こえる淡々とした声に反し、アレンの声には苛立ちが募っていった。
 ・・・破裂音。
 『終了』
 「・・・完了・・・です・・・」
 報告に対するアレンの声は、憂鬱そうに沈んでいた。
 『じゃあ降りて来い』
 傲慢な言い様にむっとしつつ、アレンは立ち上がる。
 塔の屋根から、夕暮れ近いロンドンの街を見下ろせば、ハロウィンの雰囲気に浮かれた人々が楽しげに往来していた―――― 彼らの中から、何人もの姿が消えたことにも気づかずに。
 アレンは深く吐息して、金と黒のゴーレムを伴い、塔を降りた。
 「お待たせしました」
 塔の外で待っていた一行に声をかけると、アレンに向かって恭しく一礼するファインダー達に囲まれ、一人頭の高い神田が、ちらりと彼を見遣る。
 「任務は至極効率的に終了した。帰還する」
 「はい・・・・・・」
 酷く打ち沈んだ様子のアレンに、神田は眉をひそめた。
 「今回の任務は、味方に一人の犠牲者も出さず終了したってぇのに、なにが不満だ」
 「別に・・・」
 「別にってツラじゃねぇだろ」
 舌打ち混じりに言われ、アレンはむっとして目を上げる。
 「後方から指示を出すだけというのが、性に合わないだけです」
 「俺だって、テメェの指示で動きたくなんかねェよ」
 だが、と、傍らに止まった黒い馬車に乗り込みながら、神田は肩越しにアレンを見遣った。
 「結果が全ての戦争で、今回はいい結果が出た。テメェ個人の好き嫌いなんざ、関係ねェ」
 早く乗れ、と、冷淡に言われ、アレンは俯いたまま馬車に乗り込む。
 続いてファインダー達も乗り込み、馬車は無言の一行を乗せて、教団への帰路を辿った。


 「お帰り。うまく行ったようだね」
 帰還した二人のエクソシストを笑顔で迎えたコムイは、ファインダーから報告書を受け取って、満足げな吐息を漏らした。
 「すごいねぇ・・・!
 いや、ここまで満足の行く結果が出るとは思わなかったよ!」
 兄の嬉しげな声に引き寄せられ、リナリーも横から報告書を覗き込む。
 「アクマ42体補足、100%破壊・・・?!すごい!1体も逃げられなかったんだ!!」
 「・・・壊したのは神田ですよ」
 アレンの不機嫌な声に、リナリーは訝しげに報告書から目を上げた。
 「僕は、塔の上からアクマを探して、彼に指示を与えただけです。
 ロンドンの人ごみの中で、確実にアクマを仕留めて行ったのは彼です」
 「だってそれは・・・兄さんの指示なんでしょ?」
 リナリーの問いに、コムイは特に驕る風もなく、淡々と頷く。
 「そう。
 アレン君の目が、どの程度の距離までアクマを補足できるのか、調べたかったしね。
 でも、これ程効率よくコトが運ぶとは思わなかったねぇ・・・」
 コムイは機嫌良く報告書を弾くと、功労者達に笑みを深めた。
 「ありがとう。
 君達のおかげで、有効な戦術が一つ確保できたよ。
 今日はもう、ゆっくりお休み」
 退出していいよ、と、コムイがひらりと手を振るや、真っ先にアレンが踵を返す。
 「え?!アレンく・・・」
 彼の歩調に紛れもない苛立ちを感じて、リナリーが目を丸くした。
 「ど・・・どうしたの・・・?」
 驚いたリナリーが、おろおろと神田と兄を見比べると、アレンの背を見送った神田は忌々しげに舌打ちし、コムイは苦笑してリナリーの頭を撫でる。
 「あのヤロウ、自分だけ安全な場所にいたってェのが、そんなに気に食わねェのかよ!」
 「うーん・・・まぁ、あの子は『戦場に立った以上、自分の手で壊すのが礼儀』だなんて思っている節があるからねぇ・・・。
 指揮官に向いてないって、彼自身が思っているのはわかるんだけど・・・」
 でも、と、コムイはリナリーの頭を撫でる手を止めて、再び報告書に目を落とした。
 「慣れてもらわなくちゃね。色んな戦い方を・・・」
 「兄さん・・・」
 気遣わしげな目で自身を見上げる妹に、コムイは苦笑を浮かべる。
 「彼は・・・『臨界者』なんだから」


 昼でも薄暗い回廊を蹴りつけるように進みつつ、アレンは左手を握り締めて唇を噛んだ。
 ―――― 悔しい・・・!
 ぎゅっと目をつぶり、滲んだ涙を乱暴に拭う。
 ―――― こんなことをするために・・・エクソシストになったんじゃない・・・!
 そんな思いが、頭の中に渦巻く。
 自身の心の弱さから、伯爵の甘言に乗せられ、父をアクマにし―――― 自らの手で壊した。
 幼い頃は、自身の罪を償うため・・・アクマの魂の意味を知ってからは、死してなお苦しみから逃れられない魂を救うため、自らの手で機械の身体を壊してきた・・・・・・そう、自らの手で。
 なのに今回は、アクマを救うべき左手を封じられ、その哀れな姿ばかりを見せつけられた。
 更には、彼らが冷酷な刃によって、破壊される様をただ、見つめていた・・・・・・。
 ―――― 苦しい・・・。
 目を閉じれば、まだあの破壊音が耳に蘇る。
 遠くから聞こえたそれは、まるで風船が割れるかのように軽く、ずっと彼が耳にしてきた魂の慟哭は、彼とアクマの間を吹き抜ける風に流されて、儚く消えてしまった。
 ―――― こんなのは・・・嫌だ・・・・・・!
 こんなことが続けば、きっと、自分は『救済者』ではいられない。
 まるで害獣でも狩るかのように、淡々とアクマを『処理』するようになるのは嫌だった。
 だがそれは『わがまま』だと、神田は言う。
 『任務は至極効率的に終了した』
 そう、淡々と言った彼に、アレンは反駁できなかった。
 ハロウィンに賑わう街中で、一人の市民も巻き込まず、全てのアクマを壊せたのは、奇跡に近いことなのだから。
 『満足のいく結果』と、うれしそうに言ったコムイにも、何も言えなかった。
 味方に一人の犠牲者も出なかったことは、事実なのだから。
 だが、ただ一人―――― アレンの気持ちだけが、納得していない。
 「悔しいよ・・・っ!」
 足を止め、俯いたアレンの肩に羽根を休めたティムキャンピーが、長い尾を気遣わしげに添わせる。
 と、不意にティムキャンピーが飛び立ち、アレンの頭に、大きな手が乗せられた。
 「なーに落ち込んでんさ?」
 陽気な声と共に頭を撫でられ、アレンは詰めていた息を吐く。
 「お前、もう任務終わったんだろ?
 ちょっと俺の手伝いするさ」
 「なに・・・」
 アレンの暗い声音に苦笑して、ラビは彼の手を取った。
 「決まってんだろ?ハロウィンの準備!」
 大きく歩を踏み出すラビに引きずられ、アレンはたたらを踏みつつ付いていく。
 「姐さんがさ、ちょーでっけぇカボチャ用意してくれたんさ!
 今からなら乾燥させて、かぶりもんを作ることだってできんぜ!」
 「はぁ・・・」
 アレンが、ため息交じりの返事をすると、彼の手を引いていたラビは、眉をしかめて肩越しに振り向いた。
 「お前、かぶりたくねーの?
 今年はカボチャ大王になるんだって、張り切ってたじゃないさ!」
 「あ・・・はい、そうなんですけど・・・」
 「早く行かねーと、ガキどもに取られちまうさ!!」
 子供よりも子供っぽいことを言いつつ、ラビはどんどん回廊を進んで一旦本城を出、厨房の裏口に回り込む。
 そこには、ハロウィン用のカボチャが山と積んであった。
 「ねーさん!ジェリー姐さん!」
 ラビが大声で呼ばわると、厨房へと続く勝手口から、ジェリーが出てくる。
 「これ、好きなのもらっていいんだよな?」
 「えぇ、いいわよぉv
 ついでにいくつか、お城に飾るのも作っておいてくれない?」
 「あーぃv
 アレン、どれにする?」
 機嫌良く返事をするや、ニコニコと物色し始めたラビに苦笑し、アレンもカボチャを吟味し始めた。
 「ねぇラビ?
 乾燥させるなら、一番大きいのがいい?」
 「んー・・・まぁ、大きいに越したことはねぇけど、あんまりでかいと、乾燥させる間に壊れちまうさ。
 お前の頭よりみっつよっつ周りでかい奴をいくつかくりぬいて、乾燥させてみっか。
 使わねーのは、ランタンにしちまえばいいさね」
 「うん、わかった」
 ようやく屈託を収めたアレンに、ラビと笑みを見交わして、ジェリーは手を振る。
 「じゃあ、カボチャの細工が済んだら、アタシのとこにいらっしゃいなv
 ご褒美に、パンプキンパイを焼いててあげるわよv
 「わぁい!!
 ラビラビ!早くやっちゃお!!」
 無理にはしゃいだ声をあげて、2、3のカボチャを抱え込んだアレンに、ラビも頷いて、選んだカボチャを抱えた。
 「ほーんじゃ、はりきってやるさー!」


 「ラビはさ、今年、何の仮装するの?」
 カボチャの種を取りつつアレンが問うと、ラビはカボチャの側面に描いた顔を確認しながら生返事をした。
 「海賊ー」
 「は?!いつもと変わんないじゃん!」
 「だーって、ユウが『唯一眼帯が浮かない仮装だ』なんっつーんだもんよ。
 いやー、盲点だったさ」
 そう言って笑いながら、ラビは微調整したカボチャの顔に切込みを入れ始める。
 「けっこーさ、盲点ってあるもんなんさ」
 神田の名に憮然とし、無言でカボチャの種を取るアレンの傍らで、ラビが独り言のように言った。
 「今までずーっと、使い道を限定してきたもんに、不意に別の用途ができるってことがさ」
 「・・・たとえば?」
 不機嫌な声で、話の先を促せば、ラビは視線をカボチャに固定したまま、口元に笑みを浮かべる。
 「そうさな・・・たとえばこのカボチャ。
 でかいばっかで、煮ても焼いても食えねぇさ。
 でも、わざわざ栽培されて、ハロウィンの時期にはこうやってもてはやされてる」
 「うん・・・」
 「俺らが記録している『歴史』も、実はそうなんさ。
 俺が蓄えた『情報』なんかはもとより、ジジィが蓄えた『記録』ですら、まだ『歴史』にはなってねぇ。
 90年近く生きてるジジィの、一番古い『記録』でさえ、今ンとこは『ジャンク』なんさ」
 「ジャンク?!ブックマンの記録が?!」
 驚いた拍子に取り出した種を零してしまい、アレンは慌てて掬い集めた。
 「でも・・・貴重な記録だって・・・・・・」
 納得しがたい様子のアレンに、ラビはクスリと笑う。
 「もちろん、俺らが集め、蓄積している『情報』は貴重さね。
 石ころだと思ってたもんが、とんでもなく巨大な城壁の一部だったってこともある―――― 無関係だと思われた情報が、後で多大な影響を及ぼしていたって判ることことなんざ、『歴史』には当たり前のことなんさ。
 第一、人間は感情の動物だかんな。
 人の恨み、辛み、悲しみが滾っている間の『情報』は、冷静な分析ができない。
 長い歴史を持つ国・・・特に中国なんかじゃその点、史家の意識は高ぇさ。
 奴らは絶対、王朝が滅んだ直後に史書は書かない。
 100年近い時を経て、情報が熟す時を待ってから『正史』を編纂するんさ」
 「へぇ・・・じゃあ、ブックマンが集めた『記録』が『歴史』になるのは・・・」
 「そ。
 俺がジジィの跡継いで、3、40年経った後かな?
 今のジジィは、先代や先々代以前の『記録』をまとめた『歴史』しか語らねぇ。いや、語れねぇんさ」
 「随分と・・・・・・」
 壮大なものだと、アレンは言葉を失った。
 が、ラビはそんな彼にお構いなしに、話を続ける。
 「情報でもカボチャでも、使い道を限定しちゃいけねーよ。
 トロイ戦争を神話だと決め付けてたら、シュリーマンが遺跡を発掘することはなかった。
 ジャック・オ・ランタンだって、元々英国じゃカブなんかを使ってたのに、アメリカでカボチャを使い始めてから、こっちでもカボチャを使うようになっちまっただろ。
 お前の能力だって同じさね、アレン」
 「え・・・?」
 珍しく笑みの消えた目に、じっと見つめられて、アレンは居心地悪げに身じろいだ。
 「お前のイノセンス・・・100%の適合率を超えて、お前はもう、すぐにでも元帥になれる力を持った。
 そしてお前の目。
 障害物さえものともせず、遠くのアクマでも補足できるようになった。
 お前の『能力』は申し分なく高まってんのに、なんでお前はたった一つの戦い方に固執する?」
 「あ・・・・・・」
 ラビに指摘され、アレンは呆然と目を見開く。
 今回の任務で、彼はアクマを救うべき左手を封じられたと思った。
 アクマ達の哀れな姿ばかりを見せつけられたと・・・・・・。
 だが・・・アレンの目の前でラビは、ふるりと首を振った。
 「思い違いをしちゃいけねェよ、アレン。
 コムイは、お前に新たな戦術を示した。ユウは、その期待に応えた。それは、卑怯なことさ?」
 今にも泣き出しそうに顔を歪めたアレンに、しかし、ラビは淡々と続ける。
 「俺、前に言ったよな?
 人間に紛れるアクマに対して、俺らは圧倒的に不利なんだって。
 アクマの魂が見えるお前と違って、俺らは向こうが攻撃してこねぇ限り、アクマを見分けることは困難だって」
 こくりと頷いたまま、顔を上げないアレンに手を差し伸べ、ラビは彼の頭を撫でた。
 「お前は、こないだの大敗・・・スーマンがノアに情報をリークしたせいだって思ってるかもしんねぇけど、100人以上の犠牲が出たんは、なにもあの時だけじゃないんさ。
 二年前にも、教団は伯爵に大敗してる・・・そんな戦況で、味方に被害を出さないってことがどれだけ大切なことか、わからないわけじゃねぇよな?」
 「はい・・・・・・」
 「コムイは、負け続けだった教団に、反撃の戦術を示した。
 なのに、その鍵となるお前が、『自分のやり方』にこだわってちゃいけねぇさ」
 「はい・・・」
 「救われるのは、アクマだけじゃない。
 お前だって、救われるべき一人だって、忘れんじゃないさ」
 「はい」
 ぽろ・・・と、涙が膝の上で握り締めた左手の上に零れて、視界が鮮明になる。
 顔を上げると、間近にラビの笑顔があった。
 アレンは、恥ずかしさに真っ赤になった顔を俯け、一所懸命話題転換のきっかけを探す。
 ややして、
 「ラビは・・・ずっとブックマンという一族の『一部』でいたいんですか?それで不満はないの?」
 ふと浮かんだ疑問を口にすると、彼はちらりと苦笑した。
 「そうさ。
 俺は、連綿と続く『ブックマン』の血の一滴でしかないし、それでいいと思ってるさ」
 その答えに、アレンは眉をひそめる。
 「今、自分で『使い道を限定するな』って言ったくせに」
 思わず頬を膨らませたアレンに、ラビが吹き出した。
 「いいんさ。
 それが、『ブックマン』の唯一の使命だかんな」
 「しめい・・・?」
 アレンがオウム返しに問うと、ラビは笑って頷く。
 「お前の『戦い方』は限定しちゃなんねェけど、お前が神から受け取った『使命』は、履き違えちゃなんねぇもんだろ?
 それとおんなじさ」
 「あぁ・・・そうか・・・・・・」
 理解したアレンを誉めるかのように、ラビはアレンの頭をくしゃくしゃと撫でてやった。
 「そうそう。
 俺の仕事は、ジジィ以前の『ブックマン』が記憶した歴史を伝承し、記録した情報を編み、蓄積した事実を正確に次代へ渡す。
 俺個人は、言っちまえば、それだけの存在さ」
 「それだけの・・・存在・・・・・・?」
 ラビの手の下で、アレンはまた、眉根を寄せる。
 「それって・・・・・・ラビはこんなに個性的なのに、仕事・・・ううん、使命のためなら、自分を捨てるってこと?」
 「そ。『俺』って言う、『個』はイラナイ」
 言ってしまってから、ラビは歯痛でも堪えているように、顔をしかめた。
 「・・・今回はマジ、話しすぎたさ。
 アレン、今の会話は説教以外、全部忘れろ」
 「えぇ?!そんなこと言われても・・・!」
 「じゃー、今、俺が話したことは、ぜってー誰にも言うなよ?!ジジィには特に!!」
 「は・・・はい・・・」
 真剣な顔で迫られ、アレンは気圧されるまま頷く。
 「よーっし!
 ほんじゃ、口止め料に特別カッケーの作ってやるさ♪」
 再びカボチャに切込みを入れ始めたラビに、アレンもそれ以上の追求はやめた。
 「じゃあねー、本当のジャックみたいに、光る衣装も作ってくださいv
 が、甘えた声の『お願い』には、首を振る。
 「裁縫は自分でやれよ!」
 「いいじゃないですかー!僕のアスコット・タイ貸してあげますからぁ!」
 ねーねーと、猫のような声でねだられ続け、ラビはしぶしぶ頷いた。


 「にゃーぉv
 その部屋のドアを開けた途端、大きな黒猫に擦り寄られて、ティキは硬直した。
 「ロー・・・っ」
 「お菓子くれないと引っ掻くよぉv
 「・・・・・・ッド!!」
 小柄な少女とはいえ、一人の人間によじ登られ、首の付け根に乗られては、いかに肉体労働で鍛えたティキといえどもよろけてしまう。
 「おまっ・・・!首にぶらさがんじゃねぇ・・・っ!!」
 締まるっ!と悲鳴を上げて背を丸めるが、頓着する少女ではなかった。
 にゃーにゃーとはしゃいだ声をあげては、首周りで暴れてくれる少女を振り落としたいのは山々だが、そんなことをすれば後でどんな報復を受けるか、知れたものではない。
 ティキはロードを首に絡めたまま、よろよろと部屋の奥へ進んだ。
 「せ・・・んね・・・んこ・・・・・・!
 これ・・・・・・剥がしてくださ・・・・・・!」
 息も絶え絶えに訴えるティキを振り向いた伯爵は、彼が黒猫の仮装をしたロードを首に巻いている様を見るや、歓声を上げる。
 「ナァんテ可愛らシいんデショ!
 ティキポン、チョットそのママそのママv
 ロードv お写真撮りまショウねェv
 「わぁーぃvv
 「ちょっ・・・?!千年こぉぉぉぉ?!俺死ぬ!!さすがにこれは俺でも死ぬ!!」
 ティキが必死に訴えるが、伯爵はあっさりと彼の訴えを退けた。
 「チョットの辛抱デスよ、ティキポンv
 「そのチョットの時間で・・・・・・俺は地獄に落ちそうです・・・・・・!」
 「マァ、ナんテ我慢のナい・・・v
 ロードv サァ、コッチ向いテv
 「はぁいv
 「俺の言うこと聞いてねェェェェェェ!!」
 バシャッと、大きな音を立ててマグネシウムが燃え、満面の笑みを浮かべるロードと、彼女に首を絞められた、瀕死のティキの姿が焼き付けられる。
 「サァ、ロードv
 ソロソロ放しテあげナさイv
 か弱いティキポンが、死んデしマいマスv
 「ちぇー!ティッキーの貧弱ー!」
 ロードの理不尽な不満に傷つきながらも、ようやく解放されたティキは、深々と息を吸い込んだ。
 「だーれが貧弱だ!この性悪猫が!!」
 「ふーんだ!
 お菓子をくれないから、意地悪しただけだもんねぇー!」
 言うや、べーっと舌を出すロードに、ティキは忌々しげに舌打ちする。
 「・・・で?
 今日はなんのご用っすか、千年公?まさか、またロードのお守りじゃないでしょうね?」
 「ソノまさかデスよ、ティキポンv
 「〜〜〜〜っ冗談じゃねェ!!
 俺が去年、敵の本拠地に連れ込まれて、どんだけ大変なことになったか、忘れちまったんですか?!」
 「忘れマせンよv 我輩ハ、健忘症とハ無縁デスかラねェv
 「じゃあなんで?!なんで俺がよりによって今日のお守りなんすか?!」
 必死の形相で詰め寄ると、伯爵は人差し指を顎に当て、可愛らしく小首を傾げた。
 「ティキポンの、去年の実績を踏まえテ、本日のお守りに決定しマしタv
 ティキポンv ロードがヤンチャをしナいよう、しっかりお守りするンでスよv
 「いやああああああああああああああああああ!!!!」
 泣いて嫌がっても、伯爵の決定は覆らない。
 「サv
 ティキポンにモ、お菓子を作ってあげマしょうネェv
 楽しげに言うと、伯爵は大きな身体を丸めて、オーブンからいそいそと、焼きあがったクッキーを取り出した。


 「うふんv
 いい匂い〜♪」
 ジェリーは、オーブンから大きなパンプキンパイを取り出すと、満足げに笑った。
 「アレンちゃーんv ラビーv パイが焼きあがったわよぉーv
 食堂に向けて呼びかければ、すぐさま二人が駆け寄ってくる。
 「まぁまぁv
 アンタ達、わんこみたいねぇv
 ホホホ・・・と、品の良い笑声をあげつつ、ジェリーは直径が1mはあろうかというとてつもなく大きなパイと、20cm程度のパイをそれぞれ皿に乗せた。
 「ハイv
 白わんこには大きいの、赤わんこには小さいのねv
 「わーぃvv
 それぞれに喜び勇んで皿を受け取り、テーブルに陣取る。
 ナイフを入れれば、熱い湯気が立ち上るそれをはふはふと頬張りつつ、二人はハロウィンの話に夢中だった。
 「・・・だから、城でのパーティが終わった後にさ、俺らだけ街に出るんさ!
 せっかくお前とユウで街の掃除したんさ。あぶねーことねーって!」
 「それは賛成です!
 ハロウィンのゲームは、子供達が中心だから早く終わっちゃうし、パーティは大人達だけで盛り上がっちゃいますからね」
 子供でもなく大人でもない、ちょうど中間にいる彼らは、暇をもてあましてしまうのだ。
 「リナは強いっつっても女の子だから、夜の外出は推奨しねェけど、いちおー誘わないと怒るさね、やっぱ」
 「怒りますよー・・・。
 リナリー、仲間はずれにされるのが一番嫌いなんですから」
 もしも誘わなかった場合の彼女の怒りを思い、二人はしばらく、無言でパイを噛み締めた。
 「・・・あ、でもさ、どうやってお城出るんですか?
 いくらお祭り中だって言っても、衛兵さん達が全員参加するわけがないし、水門で止められちゃいますよ」
 任務ならともかく、エクソシストが個人的な理由でふらふらと街に出る事には、あまりいい顔をされない。
 必ず行き先や目的を聞かれるだろうと言うと、ラビはなんでもないことのように小首を傾げた。
 「そんなん、ファインダーのカッコして出りゃいいじゃん」
 「へ?!」
 目を丸くするアレンに、ラビはむしろ、不思議そうな顔をする。
 「ファインダーなら、頭からすっぽりフードで覆ってても不思議じゃねぇし、複数人数で夜に出て行くのもいつものことじゃないさ。
 別に、不審にゃ思われんだろうさ」
 「ふえー・・・さすが、そういう悪巧みに関しては、マイスターですねぇ・・・」
 「誉め言葉として受け取っとくさ」
 思わず感心したアレンに、ラビはにんまりと笑った。
 「じゃあ、僕のカボチャ頭は、壊れないように運ばなきゃですね」
 「おう。
 まぁ、俺も帽子は荷物にしなきゃいかんだろうし、ユウとリナリーも参加すんなら、荷物もあるだろうからさ。
 あらかじめ、まとめてからいこーぜv
 「はい!
 ところで、リナリーと神田はなんの仮装をするんですか?」
 「リナはアリス。ユウは・・・ぶふっ!!」
 言いかけて、ラビは吹き出した拍子にパイを喉に詰まらせ、苦しげにお茶で飲み下す。
 「だ・・・大丈夫ですか・・・?」
 未だ、苦しそうにひくひくと引き攣るラビに、アレンが気遣わしげに問うと、彼は目尻に浮いた涙を拭いながら頷いた。
 「ユウは・・・雪の女王さ!」
 「はぁっ?!」
 女装すんの?!と、頓狂な声をあげるアレンに、ラビはまた、コクコクと頷く。
 「ティエのおっさんお手製の衣装らしくてさー、ユウちん、師匠命令でぜってー着なきゃいけなくなったらしいさ!」
 「へ・・・へぇ・・・。承諾したんだ・・・」
 意外だ、と、アレンが目を丸くするが、ラビふるふると首を振った。
 「だって、ユウちんはアレが女装だなんて知らねーもん」
 「え?!わかるでしょ、普通?!」
 「ティエのおっさん、わざとらしく『アンデルセンの童話から衣装を作ってみたよーv』なんつって、なんの仮装かはユウちゃんに教えてねーんさ・・・!」
 しかも、青銀色のローブは一見、ドレスには見えないと言う。
 「ど・・・どんなのですか・・・?!」
 「いうなればあれ!
 ミュシャってパリの絵描きが、サラ・ベルナールの『ジスモンダ』の舞台用にポスター描いてっだろ?あんなカンジさ!」
 「あぁ・・・なんか、異国情緒なカンジの・・・・・・」
 「ビザンティン風だな!」
 「そうそう、ビザンティン・・・へえええええ!!」
 女装するんだ!と、意地の悪い喜びに、アレンは目を煌かせた。
 「雪の女王・・・!
 絶対似合いますよ、あの冷酷な性格ですもん!
 それはもう、ぜひとも女王陛下とお写真を撮りたいものですね・・・!」
 ふふふふふ・・・と、愉快そうに笑うアレンに、ラビが苦笑する。
 「お前、ユウの前で吹き出すんじゃねーぞ?ナマス切りにされっかんな?」
 「大丈夫ですよーv
 僕はカボチャの被り物をするんですから、笑ってもばれません!」
 「・・・そうでした」
 じゃあ危険なのは俺か、と、ラビはうそ寒げに呟いた。
 「気をつけてくださいね!」
 ふふふ・・・と、楽しげに笑ったアレンはしかし、ふと、不安げに眉を寄せる。
 「どした?」
 「いえ・・・楽しみにするのはいいんですけど、僕達が抜け出してる間に出動命令が下ったりしないかなぁって思って」
 任務のない時は城内で待機が原則のエクソシストが、4人も無断で城を出ては、後でどんなお叱りを受けることか・・・と、アレンは恐れおののくが、ラビは相変わらずの笑顔で手を振った。
 「そのための通信ゴーレムさ!
 どうせ、パーティの夜はみんな城中徘徊して、連絡取りにくくなるんさ。構わねーって!」
 「ほ・・・ホントに・・・?」
 気弱な彼に、ラビは大きく頷く。
 「ダイジョブダイジョブ♪
 せっかくのハロウィンに、伯爵も働きたくないだろーさv
 と、力強く請け負った割には、あまりにも説得力のないラビの言葉だった。


 ジャック・オ・ランタンが放つ、ほのかな明かりに手元だけを照らされて、ティキはおぼつかない手つきでカボチャ型のクッキーに顔を描いていた。
 「あの・・・千年公・・・。
 俺らいちおー、戦争してんじゃなかったんですっけ・・・?
 こんなことしてて、いいんすかね?」
 大口を開けて笑うカボチャクッキーが、自分を笑っているかのように見えて、ティキは忌々しく呟く。
 が、
 「あノ悪魔達が崇拝すル神ノ子トやらノ誕生日ト違っテ、ハロウィンは我輩達ノお祭りデすヨv
 無粋ナことハ、言いっコなしデすv
 「えーvv じゃあ、ハロウィンはお仕事お休みなのぉ、千年こぉーv
 ティキと並んでクッキーに顔を描いていたロードが、嬉しげな声をあげると、伯爵はゆったりと大きく頷いた。
 「ハイv
 我輩ハお家デ、子供達がお菓子ヲもらいニ来るノを、待ってマすよv
 「わぁいvv
 僕達、千年公のお菓子大好きだよぉvv
 「アラv 嬉しイv
 「ティッキーも好きだよねぇv
 ホラ、しゃがみこんでないで、なんとか言いなよぉ」
 丸めた背中をロードに蹴りつけられながら、ティキは弱々しく首を振る。
 「も・・・俺のことは放っといテ・・・」
 伯爵が仕事にいそしんでいれば、『長だけに働かせるわけには行かない』とでも理由をつけて、子守から逃げ出すつもりだったのに、思惑はあっさりとくじかれてしまった。
 「逃げようったって、そうは行かないよぉー?
 ねーv 千年公ぉv
 僕、ハロウィンの夜は、お菓子もらいにお出かけしていい?」
 にこぉっと笑うロードの頭に大きな手を乗せ、伯爵は小首を傾げる。
 「アナタのようナ小サなレディが、夜ニ出歩くのハ感心しまセんネぇ・・・」
 「ティッキーと一緒ならいいでしょぉ?!」
 更に言い募るロードに、しかし、伯爵はあまりいい顔をしなかった。
 ―――― よし!その調子です、千年公!ロードの要求を断ってくだ・・・!!
 「・・・いいデしょう」
 「・・・っいいんですかっ?!」
 期待を裏切られた絶望感で死にそうになりながら、ティキは悲痛な声をあげる。
 「そノ代わリ、ティキポンv
 アナタちゃんト、ロードのお供ヲしテくだサいよv
 「えぇ――――――――!!!!」
 ご無体な、と、泣き崩れるティキの背中に抱きついて、ロードが嬉しげにはしゃいだ。
 「きっと楽しい夜になるよぉ、ティッキーv
 おいしいお菓子を、いーっぱいもらって来ようねぇv
 今までにない、悲惨な夜になるだろうことを今から予測して、ティキは果てしなく暗い気持ちになった。


 そして、ハロウィン当日・・・いや、当夜。
 城内でのイベントを終えたエクソシスト達は、こっそりと本城の地下に集まった。
 「ほんじゃ!作戦決行さー♪」
 「わーぃvv
 ・・・と、諸手をあげて喜んだのは、リナリー一人。
 「ノ・・・ノリ悪ぃさ、二人とも・・・!」
 むっつりと黙り込んだ神田とアレンに、こわごわと声を掛けたラビは、逆に鋭い目で睨まれた。
 「るっせーんだよ、行くならとっとと行くぞコラ」
 「・・・はっ!
 別に、来たくなけりゃ、いらっしゃらなくてけっこーですよ、女王陛下」
 アレンの慇懃無礼な言い様に、神田のこめかみが引き攣る。
 「・・・英国人のクセに、『Her』Majestyなんて言い間違えんじゃねぇ、モヤシ!」
 「僕、英国人ですからー。クィーンズイングリッシュには自信ありますよー」
 「そうじゃねぇ!『His』Majestyに言い換えろ!おろすぞ!!」
 しかし、神田の脅迫にも屈せず、アレンは鼻を鳴らした。
 「はんっ!
 どこの国に化粧した王様がいますかっ!」
 「イヤイヤイヤイヤ!!
 メイクなら俺もしてるし!な?!」
 アレンの暴言に、ラビが慌てて割って入る。
 「そうだよ。この中でメイクしてないの、被り物してるアレン君だけじゃない。
 それに、キレイだよ、神田v
 リナリーの何気ない一言に、また緊迫の電流が走った。
 「リ・・・リナ・・・!お前って奴は・・・!」
 俺以上に空気読めてねぇ、と、ラビが真っ青になる。
 「え?なに?」
 いけないこと言ったかな、と、リナリーは困惑げに金髪のウィッグをいじった。
 「いけないもなにも・・・」
 今現在、神田とアレンの仲が険悪になっている原因は、まさにその、『美しい女王陛下』の仮装なのだ。
 それは今から数時間前のこと・・・。
 城内のハロウィンイベントが始まった頃に、ティエドール元帥が満足げな顔で、パーティ会場へ神田を伴ってきた。
 「見てくれ、みんな!私は芸術作品を作り上げてしまったよ!」
 その台詞を聞いた団員達は皆、大げさな、と笑い、神田の姿を目にした瞬間・・・その笑みを凍りつかせた。
 「まさに!雪の女王だろう?!」
 メデューサの目を見たかのように硬直した団員達に向かって、ティエドール元帥は自慢げに笑う。
 それもそのはず、元帥みずから衣装を作り、メイクまでした神田は、神々しいまでに美しく、いつもの冷酷な目さえも、雪の女王にふさわしい威厳をたたえていた。
 あらかじめ、神田が『雪の女王』の仮装をさせられると聞いていたアレンは、女装させられた彼を笑ってやろうと待ち構えていたのに・・・思わずその姿に見惚れてしまい、激しい自己嫌悪と敗北感に打ちのめされたのだ。
 以来、アレンは何かにつけて神田を嘲弄し、元々沸点の低い神田も受けて立って、パーティの間に、二人の仲は修復不可能までに険悪になっていた。
 「こ・・・こうなったら・・・・・・!」
 ふるふると拳を震わせて、アレンはカボチャの被り物を脱ぐ。
 「ジャックなんてヤメです!
 ウサ耳つけてやるっ!!」
 ヒステリックな声をあげて、アレンは用意していた袋の中から、白いふわふわのウサギの耳を取り出した。
 「リナリー!リナリー!
 僕の方が可愛いですよねっ?!」
 「え・・・う・・・うん・・・」
 ウサギの耳をつけたアレンに涙目で迫られれば、リナリーも頷くしかない。
 「か・・・『可愛い』のは、アレン君の方だね・・・」
 「えへv
 僕、リナリーの・・・あ、いえ、アリスの案内役しますぅーv
 「あ・・・う・・・うん、よろしくね」
 にこぉっと、嬉しそうに笑ったアレンに両手を取られ、リナリーもぎこちない笑みを浮かべた。
 そんな二人の傍らで、
 「・・・あの馬鹿、斬っていいか?」
 「ご随意に、と言いたいとこだけどさ、陛下・・・。仲間内で斬り合いはやめてくんね・・・?」
 怒り心頭の神田を、泣きそうになりながらラビが止める。
 「アレンも・・・そんなことで張り合ってないで、さっさと行くさ・・・」
 「はいっ!
 お菓子たくさんもらいましょうね、アリスv
 「うんっ!楽しみだね!」
 手を取り合って跳ね回る二人に、神田は更に忌々しげに顔をしかめた。
 「・・・やっぱり残るか」
 「ダメさ陛下!
 ゲームで俺が勝ったらついて来るって言ったさー!!」
 既に踵を返した神田に、ラビが一所懸命取りすがる。
 「俺、溺れそうになりながら、アップルボビンがんばったんさー・・・!」
 抱きつかれ、更には耳元で泣き喚かれて、神田は足を止めた。
 「・・・ったく、めんどくせぇな」
 舌打ちしつつ、神田は階上へ向けた足を戻す。
 途端、
 「・・・ちっ」
 思わず舌打ちを漏らしたアレンに、すかさずラビが迫った。
 「・・・アレン?
 これ以上ユウに嫉妬した挙句、ちょっかいかけたら、お前を置いてくよん?」
 「・・・・・・はぁい」
 アレンの憮然とした返事に頬を引き攣らせながらも、ラビが拳をあげる。
 「じゃーあ!
 しゅっぱーつ!」
 無理やり明るく発したラビの声に、承諾の声が続いた。


 「そぉーれ!
 しゅっぱぁーつv
 黒猫の仮装をしたロードに手を引かれたティキは、酷く嫌そうな顔をして歩を踏み出した。
 しかし、
 「ティキポンv ロードをオ願いしマすよv
 と、一族の長じきじきに言われては、頷くしかない。
 「へぇーい・・・」
 心底やる気のない声を吐息と共に吐きつつ、ティキは、派手な羽飾りのついた仮面を着けた。
 「なんだよぉ・・・!
 今年もマスクかぶるだけなのぉ、ティッキー?」
 とことこと、暗い廊下をティキと並んで歩きつつ、ロードが憮然と言う。
 「芸がないなぁ」
 「・・・うっさいよ。めんどくさいんだよ。とっとと帰りてぇんだよ俺は!」
 「まだ出かけてもいないよぉ?」
 にやりと、意地の悪い笑みで見上げられ、ティキは仮面に隠れた目を眇めた。
 「・・・じゃあ、どこから行くんだ?」
 早く終わらせたいと言う気持ちを隠そうともせず言う彼に、ロードは無邪気に笑う。
 「黒の教団!」
 「ふざけろ!!」
 「・・・は、千年公がダメだってぇv
 「・・・このヤロウ」
 頬を引き攣らせながら、ティキは『外』へと続く扉を開けた。
 その先は、ロードが『行きたい場所』へ繋がっている。
 「まずは、僕のガッコでお菓子もらお♪」
 去年のお詫びだよぉ、と、悪びれもせず言うロードを、ティキは睨みつけた。
 「お前、全然悪ぃと思ってないだろ」
 「きゃはははは!
 ティッキーは、お姉様達と先生達と、どっちが好みぃ?」
 言うや、ロードは猫のようにぴょんっと、扉の外に飛び出し、くるりと振り返る。
 「・・・若くて可愛い方」
 「変態」
 「やかましい」
 ロードの容赦ない一言に憮然と返し、ティキは黒猫の耳を引っ張った。
 「取れるぅっ!耳取れちゃうよぉ!!」
 「うるさい。とっとと行くぞ」


 「耳!!耳取れたっ!!」
 お化けで賑わう夜道で、突然あがったアレンの悲鳴にため息をつき、ラビは彼が落としたウサギの耳を背後から着けてやった。
 「もー・・・先に言ってりゃちゃんと着けてやったんに、被り物をいきなり換えんじゃないさ!」
 「だってぇ・・・」
 ふてくされるアレンに、リナリーも苦笑する。
 「ウサギの耳が取れちゃったら、普通のアレン君だね」
 「うー・・・!」
 「もたもたしやがって、ノロモヤシが!とっとと行って帰んぞ!!」
 「ノロモヤシって言うな!・・・っと、失礼」
 神田に怒鳴り返した時、すれ違った青年とぶつかってしまい、アレンが謝った。
 「いや、こっちこそ」
 黒猫の仮装をした少女の手を引いた彼は、そう言ってアレンを返り見た途端、ぎくりと肩を震わせる。
 「あの・・・?」
 怪我でもさせてしまったかと、アレンが改めて彼を見上げると、
 「きゃあああ!!アレン――――!!!!」
 突然、歓声をあげた黒猫に抱きつかれ、アレンは心底驚いた。
 「ロッ・・・ロロロロ・・・ッ!!」
 「ロード?!」
 驚きのあまり、口も利けないアレンの代わりにその名を発したのはリナリーだ。
 「あーv
 リナリー、金髪だーv 可愛いーぃv
 「えへv ありがと・・・じゃなくて!!」
 笑顔から一変、殺気立ったリナリーにティキは舌打ちし、ロードに抱きつかれたままのアレンの背から胸を、腕で貫いた。
 「・・・っ!」
 「ちょっと待って、お嬢さん。
 俺ら、ハロウィンを楽しんでるだけだから」
 リナリーと同じく、イノセンスに手を掛ける神田とラビにも目を配りつつ、ティキはもう片方の手で仮面を外す。
 「あのね、今日は千年公も俺らもオフなんだよ。
 その証拠に、アクマ達も悪さしてないっしょ?」
 穏やかに言いつつも、ティキはアレンの胸から伸ばした手をひらひらと振って、アレンの命が彼の手の内にあることを、言外に示した。
 「俺らにとっちゃ今夜が、あんたらの言う、クリスマスに当たるワケ。
 だからさ・・・」
 アレンの心臓を質に取って、ティキは不敵に笑う。
 「休戦しようや。せっかくのハロウィン・ナイトだ」
 「・・・・・・わかったわ。アレン君を放して」
 長い沈黙の後、ようやく頷いたリナリーに笑みを返し、ティキはアレンの胸を貫いたままの手で、神田とラビを示した。
 「じゃあ、お嬢さんから奴らに言ってくんない?
 武器を収めないと、少年の心臓盗っちゃうよ?」
 「・・・二人とも、武器を収めて」
 リナリーの硬い声を受けて、二人はじわりと、イノセンスに掛けていた手を離す。
 「オッケー♪
 解放だ、少年」
 「わっ・・・!」
 胸を貫いていた手が消えたかと思うと、背中を突き飛ばされて、アレンがたたらを踏んだ。
 「あっ!アレン〜〜〜!」
 代わりに引き寄せられたロードが、名残惜しそうにアレンを見遣る。
 「約束だぜ?
 今夜は、お互いに手を出さないってな。
 じゃ、ヨロシクv
 ロードの手を引いたティキが雑踏の中に消えてしまうと、神田が忌々しげに舌打ちした。
 「人質になってんじゃねェよ、ノロモヤシが!っとにてめェはトロくせェな!」
 「あんなの、どうやって逃げろって言うんですか!!」
 神田の怒声には、ヒステリックに反駁したアレンだが、
 「そ・・・そうだよ!あんな状況じゃ、無理ないよ・・・!
 アレン君、無事でよかった・・・」
 真っ青になったリナリーの、震える両手で手を握られた途端、悄然とうな垂れる。
 「う・・・面目ありません・・・」
 「・・・とにかく、みんな無事で何よりさ」
 帽子を目深にかぶり直しつつ、ラビが深く吐息した。
 「オフ・・・ってのはホントでも、あいつらが近くにいるのに、バラバラになるのはヤバイと思う。
 できるだけ離れねーように、固まって行くさ」
 「・・・こんな状況になっても、帰ろうと言い出さないのがてめェだな」
 神田の呆れ口調に、にんまりと笑みを返して、ラビは気を取り直したように手を打つ。
 「さーぁ!
 ハロウィン・ナイトを楽しもうぜ!」


 「もう!
 せっかくアレンとリナリーに会えたのにぃっ!!」
 ティキに手を引かれながら、ロードは苛立たしげに彼を蹴りつけた。
 「ねーぇ!
 可愛かったでしょお、リナリー?
 あれホントは黒髪なんだけど、金髪も可愛かったよねぇー?」
 「あぁ、そうだな」
 「アレンもさー、ウサギのカッコなんかして、すごく可愛かったじゃんー!
 ティッキーだって、アレン好きでしょー?」
 「お前・・・誤解招くような言い方しないでくんない?」
 呆れ声で抗議するが、ロードはもとより、ティキの話など聞く耳を持たない。
 「アリスとウサギなんて、よくある人形だからつまんないと思ってたけどぉ、あの二人は特別だよぉv
 ねーぇーv ティッキィ―vv
 「・・・なんだよ」
 とても機嫌のいいロードの甘え声に、かなりのところ警戒しつつティキが目を逸らすと、彼女は足を止めて、彼の腕に縋りついた。
 「あの二人捕まえてさぁ、内臓抜いて、僕のお人形にしてぇv
 「無茶苦茶言うんじゃねぇよ、この性悪猫が・・・!
 俺一人で、エクソシスト4人相手しろってか!」
 「僕も手伝うよぉv
 にこぉっと笑うロードに、ティキはこれでもかと顔をしかめる。
 「冗談じゃねぇよ!
 俺ァ、千年公からお前のお守りを頼まれただけでいっぱいいっぱいなんだ!
 これ以上悶着起こしたかねぇよ!」
 思わず大きな声で叱りつけると、ロードが不満げに頬を膨らませた。
 「なんだよぉ、ティッキーのケチ!ヘタレ!!」
 悪口雑言を撒き散らしながら蹴りを入れてくるロードを、ティキは摘み上げる。
 「そうか、そんなに言うなら、『家』に帰ろうか?」
 「ヤダー!!」
 「じゃあ、今夜は俺の言うことを聞け!
 蹴るな!離れるな!エクソシストにちょっかい出すな!」
 「うぐー・・・!」
 蹴りを入れていた足を下ろし、悔しげに唸るロードに少々溜飲が下がって、ティキは口の端を曲げた。
 「わかったら、とっとと菓子をもらいに行くぜ♪」
 そしてとっとと『家』に連れて帰ろう。
 そんな思惑を隠しもせずに、ティキはロードの手を引いた。


 「Trick or treat!!」
 お化けの群れに混ざって呼びかけると、ドアが開いて、お菓子をたくさん入れた籠を持った老婆が、にこにこと出てきた。
 「あらまぁ!可愛い!」
 とりわけ、アリスとウサギに目を和ませた老婆は、その隣に目を移した途端、ぽかんと口を開ける。
 「まぁ・・・どこの女王陛下かと思ったわ!」
 またしても『女王』と呼ばれて、神田の機嫌が悪くなった。
 「あっはっは!
 雪の国の王様さ、マダム!
 おいしそうなお菓子をありがとv
 ラビがすかさず間に入って取り繕い、神田の背を押して踵を返す。
 しかし、
 「ホントにキレイだよねー」
 「ねぇ、どこの国のひと?」
 「ホントに雪の国から来たの?」
 周りのお化け達からも興味津々と問われ、神田の目がつり上がって行った。
 「ひっ?!
 あっ・・・えっとー・・・そうそう!
 雪と氷に閉ざされた、北極圏の国から来たんさ!なぁ、陛下?!」
 『His』Majestyと、ラビがわざわざ呼びかけると、お化け達がざわつく。
 「男なんだ?!」
 「すっげぇ!!こんな美人、女でもいないよ!!」
 「うひゃああ・・・!」
 いくら取り繕っても、ちっとも収まらない場と、どんどん悪くなっていく神田の機嫌に、とうとうラビが悲鳴をあげた。
 「恨むさ、ティエドール元帥〜〜〜〜!!!!」
 なんでよりによって女王なんかさせるんだと、さめざめと泣くラビの肩を、アレンが慰めるように叩く。
 「仕方ないですよ。女装がよく似合ってますもん」
 神田の機嫌が悪くなるのに反比例して、アレンの機嫌はどんどん良くなっていた。
 「・・・うれしそーさね、アレン」
 「ふっふっふv
 僕、神田の嫌がることなら大歓迎ですよv
 リナリーに聞こえないよう、声を潜めるアレンの腹黒さに、ラビは深々と吐息する。
 「・・・とにかく、このままじゃ流血沙汰になりそうでめっさ怖いさ・・・!
 リナ!
 別ンとこ行こうぜ!」
 ラビに呼びかけられたリナリーは、彼女にまとわりつく小さなお化け達に手を振って駆け寄ってきた。
 「ずいぶんとたくさんの求婚者達でしたね」
 アレンがからかうように言うと、リナリーも笑って頷く。
 「全然離してもらえなくて、大変だったよ」
 可愛い上に優しいリナリーには、子供達がずっと、仔犬のように群がって、中には本気で求婚する子もいた。
 「まさか、受けてませんよね?」
 「さーぁ?どうかなー?」
 冗談めかしたアレンの問いを笑ってかわすと、リナリーはラビに目を向ける。
 「で、どこ行くの?」
 と、ラビは乾いた笑みを浮かべて、一人離れた場所に佇む神田を示した。
 「陛下がご機嫌わろしゅうあらしゃるんで、4人だけで行動しようぜ。
 あっちなら、もう人がはけてんさ」
 そう言って、ラビはお化け達の行列を逆流する方向を指す。
 「じゃあ、早速行きましょー!」
 大量のお菓子が入った袋を抱え直し、アレンがリナリーの手を引いた。
 「はは・・・ユウ、こっちー!」
 今にも駆け出しそうな気配のアレンを押しとどめ、ラビが神田を呼び寄せる。
 「出来るだけ離れんなよ!
 なんたって、同じ街にノアも・・・」
 「じゃあとっとと帰ればいいだろ。いつまでいんだ!」
 ラビの言葉を遮って、苛立たしげに言う神田に、ウサギに手を引かれたアリスがにこりと笑った。
 「もちろん、袋がいっぱいになるまでだよv
 そう言って彼女が掲げた袋には、まだまだ十分な余裕があった・・・。


 「ティッキー!
 今度はあっちぃー!」
 ぐいぐいとティキの手を引き、ロードは黒い尻尾を振り回しながら、ジャック・オ・ランタンが飾られた家のドアをノックする。
 「Trick or treat!」
 呼びかけると、大きな腹をゆすりつつ、赤ら顔の中年男が出てきた。
 「こりゃあ、可愛らしい黒猫だ!」
 ハロウィンパーティの酒ですっかり出来上がった彼は、ロードに籠ごとお菓子を渡す。
 「おいおい、酔っ払ってねぇか?」
 「いいんだよ!俺は猫が大好きだからな!」
 歓声をあげるロードに目元を和ませると、彼はふと顔を上げて、派手な鳥の羽根がついた仮面のティキに吹き出した。
 「アンタはさしずめ、この可愛い猫に捕まっちまった鳥かい?!」
 「あー・・・まぁ・・・そんなとこだなぁ・・・・・・」
 的確な評価にかなりのところ憮然としつつ、ティキはロードの手を引く。
 「ありがとぉーv
 「あぁ、またおいで!」
 ティキに手を引かれてその家を出たロードは、楽しげな笑みを浮かべて彼を見上げた。
 「あのおじさん、うまいこと言うよねぇ♪」
 「・・・ウルサイ」
 「ティッキー、籠の鳥だったんだぁv かわいそーうv
 「誰が籠の鳥だ。気色悪ィこと言うな」
 「じゃあ、ジャングルの野鳥ぉ?
 うん、ティッキーはむしろ、そっちだよねぇv
 熱帯の森で、サルとかからかってるカンジぃ」
 「・・・お前は一体、俺をなんだと思ってんだ」
 「なにって、兄弟だよぉ?違うのぉ?」
 うまいようにはぐらかされて、ティキは更に憮然とする。
 「・・・兄弟といえば、甘党もそろそろ来てんじゃねェか?」
 「あれぇ?
 スキン、来るのぉ?」
 ロードが首を傾げてティキを見上げると、彼はこくりと頷いた。
 「こんなおいしいイベントに、あいつが参加しねぇわけねぇだろ」
 「そりゃそぉだけどぉ・・・あんないかついのが『Trick or treat!』なんてノックしたら、本物のお化けだと思ってドア開けてくれないよぉ」
 「だったら双子でも連れて歩いてんだろ」
 「あ!そっかぁ!
 じゃあさ、合流しないー?」
 「やだ」
 きっぱりと断られて、ロードは顔をしかめる。
 「なんでだよぉ!」
 「これ以上、面倒を増やしたくねぇ」
 嫌にしみじみと呟かれて、ロードは頬を膨らませた。
 「なんだよぉ!自分はまともみたいな言い方じゃんかぁー」
 「少なくとも、俺ァ好き好んで面倒を起こしたいとはおもわねェよ。
 それよりロード、菓子はさっきのおっさんにたっぷりもらって、十分たまったろ。
 そろそろ帰るぜ」
 「えぇー?!なんで?!やだぁー!!」
 ティキの提案にロードは不満げな声をあげ、
 「千年公が家で待ってるだろ」
 という言葉にもぶんぶんと首を横に振る。
 「もうちょっと大丈夫だよぉー!
 あ!今度はあそこんち!」
 ロードにぐいぐいと腕を引かれて、ティキは仕方なく、ランタンの灯った家の玄関に立った。


 「Trick or treat!」
 町外れにある、広い邸宅の玄関の前で、エクソシスト達は大きな声をあげた。
 門から今、彼らが立つ場所までを繋ぐ長いアプローチは、その両側に置かれたジャック・オ・ランタンで、明るく照らされている。
 更に玄関の両脇には特別大きなランタンが灯されて、『カボチャ屋敷』とでも呼びたいくらいだった。
 普段は決して、邸内に見知らぬ人など入れない屋敷だろうに、今夜は門も開け放たれ、様々な仮装をした人々がアプローチを行き交っている。
 「どんな人が出てくるのかな?」
 わくわくと、声を弾ませるリナリーの鼻先で、ドアがゆっくりと邸内に引かれた。
 「いらっしゃイv
 「・・・っ?!」
 聞き覚えのある声に、エクソシスト達は声をあげることも出来ず、ただ喉を引き攣らせる。
 まもなく姿を見せた主人は、その顔にふくよかな笑みを浮かべて彼らを迎えた。
 「アラアラv
 可愛らしイ子供達でスねぇv
 オ菓子をドウゾv
 だが、差し出された籠に手を伸ばすどころか、驚きのあまり声も出ない彼らに、主は愛らしく首を傾げる。
 「オヤ?お菓子は欲しくアりまセンか?」
 傾いた肩の向こうで、透き通った妖精の翅が揺れた。
 「は・・・・・・!!」
 「伯爵・・・・・・ッ?!」
 エクソシスト達の引き攣った声に、千年伯爵はエルフのようにとがった耳の先を、ひょこひょことうごめかせる。
 「ようこソ、可愛いエクソシスト達v
 まるで、悪戯が成功した子供のように嬉しげに、彼は笑みを深めた。
 「サァサァ、固まっテないデv お菓子をドウゾv
 今日ハ休戦デすよ、エクソシストv
 言いながら、彼は可愛らしくラッピングされた菓子の小袋を、一つずつ彼らに渡す。
 「我輩お手製ノお菓子デスv
 ゼヒ皆さんデ食べてクださイナv
 「ど・・・毒でも入ってんじゃ・・・・・・?」
 手の上に乗せられた袋を凝視したまま、引き攣った声をあげるラビに、伯爵は不満げな吐息を漏らした。
 「失礼ナv
 我輩、ソんナ姑息ナことハしまセンv
 殺るならば堂々と、と、眼鏡の奥の目が、妖しく光る。
 途端、びくりと身体を震わせた彼らに、伯爵は再び柔らかい笑みを向けた。
 「ホラホラv
 アナタ達がぼうっトしていル間ニ、行列がデきテしまいまシタv
 道を空けテくだサイv
 柔らかく手を差し伸べられた途端、4人はすかさず飛び退ってその手を避け、できた隙間に子供達がわらわらと割り込んでくる。
 小さなお化け達に更に押しのけられ、アプローチに降りた彼らは、しばらくの間、声もなく立ち竦んでいた。
 が、大きな声で礼を言う子供達に、伯爵が愛想良く手を振ってドアを閉ざすと、呪縛が解けたように互いの顔を見交わす。
 「な・・・・・・」
 「なんなのあれっ・・・?!」
 伯爵との邂逅を未だ現実と認識できず、ただ悲鳴じみた声があがった。
 「まさかここ、伯爵の家なんさ?!」
 「こんなところにですかっ?!」
 だとすれば、教団本部の目と鼻の先に、強大な敵の本拠地があることになる。
 「そんな馬鹿な・・・!」
 真っ青になって、声を揃えた三人を見渡し、いち早く冷静さを取り戻した神田が、女王の冠を取った。
 「どちらにしろ、確認と報告は必要だろ」
 言う間にも、彼は次々と衣装を脱ぎ捨て、軽装になる。
 「ユウちゃんずりー!
 女王様の扮装してたくせに、下にちゃっかり服着てんじゃねーさ!」
 「当たり前だ。
 あんなカッコじゃ、アクマに遭遇した時に動きにくくてしょうがねぇ」
 髪を結いなおすや、冷厳と言い放って六幻を握り締めた彼の背後から、嘲笑が沸いた。
 「せーっかくの美人が、男になっちまった!」
 「つまんないっ!ヒッ!!」
 鋭く見遣れば、巨大なフランケンシュタインと双子のスケルトンが、げらげらと笑いながら寄ってくる。
 「あなたたち・・・!」
 「おっv 可愛い子もいるじゃん〜♪」
 「金髪!
 デロの真似してるっ!ヒッ!」
 馬鹿笑いする双子を、リナリーが睨みつけた。
 「ぎゃははは!睨んでやんの!カーワイー♪」
 「怖くない!ヒッ!」
 「なん・・・っ!!」
 「下がってください、リナリー」
 双子にからかわれ、激昂しそうになったリナリーを、アレンがさりげなく背後にかばう。
 「ここは・・・あなた達の『家』なんですか・・・?」
 油断なく周りへ目を配りながら問うたアレンに、フランケンシュタインの仮装をしたスキンが進み出た。
 「その問いの答えは、是でもあり、否でもある」
 「真面目に答えやがれ!」
 ギリ・・・と、目を吊り上げる神田には、楽しげな笑みを浮かべる。
 「己は真面目だ。
 ここは、祭の間だけの『家』だからな」
 「祭が終わったら消える!ヒッ!」
 「まぁ、祭の間だけ存在する、別宅ってやつー?」
 嘲弄と共に軽やかに舌を回す彼らを、しかし、ラビは却って訝った。
 「随分素直じゃないさ。
 俺らをハメよーって魂胆じゃねーよな?」
 「ブッ!ぎゃははははは!!」
 「疑い深くて吹いた!ヒッ!」
 「そんなことをして、己たちになんの得がある?」
 あざ笑われ、ラビは憮然と片眉をあげる。
 「へぇ・・・。
 じゃあ、ホントにハロウィンは、あんたらの休日ってわけさ?」
 「そうだよぉーv
 さっきも言ったじゃない?」
 突然間近であがった声に振り向く間もなく、リナリーの腰に黒猫が抱きついた。
 「また会えたねぇ、リーナリーィv
 「ロ・・・ロード・・・!」
 驚いて振り返った視線の先では、ティキがしゃがみこんでうな垂れている。
 「なぁ・・・お前ら、なんでこんな間の悪いことしてくれるわけ・・・?
 俺を心労で殺す気か・・・?殺す気なんだな・・・?
 殺すなら一思いに殺せコノヤロー・・・・・・!」
 陰気な声でぶつぶつと恨み言を言うティキに、双子達からまた笑声が沸いた。
 「本気で泣いてやんのー!!」
 「泣き虫ティッキー!ヒッ!」
 「うるせぇよ、双子!!」
 涙の浮いた目をあげ、ティキはよろよろと立ち上がる。
 「・・・この性悪猫を、ようやく『家』に引きずってきたと思ったら、双子はいるわ甘党はいるわ・・・お前たちまでいるわ・・・・・・・・・・・・」
 肺が空になったのではないかと思うほど、深々とため息をつかれ、エクソシスト達は気まずげに身じろいだ。
 「お願いだから帰ってくんない?
 せっかくの休暇は、気楽に過ごしたいんだよ、俺・・・」
 「そんなのだめだよぉーv
 せっかく来てくれたんだもん、ご招待しなきゃぁv
 リナリーも、もっと僕と遊びたいよねぇv
 ロードがはしゃいだ声をあげると、ティキは、彼女に懐かれて困惑しているリナリーをじっと見つめる。
 びくっと、身構えたリナリーに、ティキはまた、深い吐息を漏らした。
 「そうさな・・・やっぱり疑わしいって言うんなら、『家』に招待しようか、エクソシスト達?
 納得いくまで、調査でもなんでもすりゃいいだろ」
 「え・・・?!」
 「やったぁvv
 歓声をあげたロード以外、全員が驚いてティキを見る。
 「いいのか?千年公はなんと言うか・・・」
 「怒られても知らねーから、俺ら!」
 「ヒッ!しらんぷりっ!!」
 兄弟達の指摘に、ティキは自暴自棄的な笑みを浮かべた。
 「俺はねー・・・ロードのお守りから解放されさえすれば、どうでもいいんだよ、後のことは。
 どうやらロードは、お嬢ちゃんのことが気に入っているらしいし・・・」
 「うんっ!
 僕、リナリーのことが大好きだよぉv
 すかさず答えて、ロードはリナリーの背に頬を摺り寄せる。
 「リナリーv お家で僕と一緒にあそぼーv
 「じょ・・・冗談じゃありませんよっ!!
 リナリーをそんな危険な目にあわせられるわけないでしょ!!」
 ようやく我に返ったアレンが、怒声と共にロードを無理やり引き剥がした。
 途端、
 「もちろん、アレンも来るよねぇー?」
 ロードに飛び掛られ、頬に頬を寄せられる。
 「ちょっ・・・何するんだっ!!」
 「えー?
 だってぇ、リナリーだけにスリスリしてあげたのが寂しかったんでしょぉ、アレンー?」
 間近でにんまりと笑われ、アレンが頬を引き攣らせた。
 「ど・・・どんな誤解っ・・・!!」
 「だーぃじょうぶーv
 僕は、アレンのことも大好きだよぉーv
 「いっ・・・いやあああああああああああ!!!!」
 ロードに唇を寄せられ、まるで乙女のような悲鳴をあげるアレンに、神田は思わず額を押さえる。
 「・・・なにがなんだか、わけがわからん」
 「なんだ、お前もやって欲しいのか?」
 「っぶった切るぞ!!」
 小首を傾げて問うたスキンに青筋を立て、神田は六幻の鯉口を切った。
 「まぁまぁ女王様v そんなに怒ンなってー♪」
 「Jr.は興味津々っ!」
 「は?!」
 ジャスデロの指摘で全員の視線を集めてしまい、ラビが焦る。
 「あー・・・ブックマンの一族なんだっけ、お前?
 そりゃー興味あるよな」ー?
 タバコに火を点けたティキが、気のない声で更に指摘すると、ラビは面白いように慌てふためいた。
 「いやっあのっ・・・!!
 俺は別に、お招きに預かりたいなんて・・・っ!!」
 「・・・お前さー、ブックマンのくせに、そんなに考えてることわかりやすくていいの?」
 「あうっ・・・!!」
 ノアだけでなく、仲間達にまでじっとりと睨まれて、ラビの目が忙しなく泳ぐ。
 「ま、いいや」
 ふぅ、と、煙を吐き出すと、ティキは仮面を取って、リナリーに歩み寄った。
 「お手をどうぞ、お嬢さん。
 ウチの黒猫を家に入れるには、あんたに来てもらうのが一番みたいだ」
 言うや、ティキはリナリーの腕を引き、抵抗する間も与えず、彼女をドアの向こうへ押しやる。
 と、
 「リナリー!!」
 ロードを絡めたまま、アレンがティキを押しのけてリナリーの後を追い、
 「あ!俺もっ!!」
 ラビもすかさず後に続いた。
 「ぎゃはははははは!!祭だ祭だ!!」
 「ヒッ!!不思議の国へご案内〜〜〜〜♪」
 楽しげな笑声をあげつつ、双子までもが入っていったドアを睨み、神田が忌々しげに舌打ちする。
 「・・・ッあの馬鹿ども!不用意に入り込みやがって!」
 「お前は来ないのか?」
 意外そうな声音に振り向けば、スキンが、神田の脱ぎ捨てた衣装をいそいそと拾い集めていた。
 「・・・何してんだ、テメェは」
 怒りというより、うそ寒げに言い放つと、スキンは衣装を抱えて小首を傾げる。
 「決まっている。祭の続きをするんだ」
 「はぁっ?!
 テメェ、馬鹿は休み休み言え!!」
 「怒ると化粧が崩れるぞ、『女王陛下』・・・」
 「キサマ・・・ッ!!」
 目を吊り上げる神田に、にやりと笑いかけ・・・スキンは大きな手で、むんずと彼の腕を掴んだ。
 「放せ!刻むぞゴラ!!」
 怒声をあげるが、スキンはお構いなしに神田を引きずっていく。
 「楽しい祭にしよう♪」
 陽気な声と共に、神田も邸内へと引きずり込まれた。


 「オ帰りナさイ、ミんナv ・・・と、アラ?」
 帰って来た子供達を迎えた伯爵は、彼らが連れてきた客人を見止めて、小首を傾げた。
 「アラアラv
 これハようこソ、いらっしゃイv
 愛想の良い会釈に対し、警戒のあまり声もないエクソシスト達に、伯爵は残念そうに長い耳を伏せる。
 「そんナに怯えナくてモ、ナニもしまセンのニ・・・」
 「・・・この状況で信じられっか、ボケ!」
 忌々しげな声を見遣れば、スキンに片腕を掴まれ、吊るされた神田が、凄まじい目で伯爵を睨んでいた。
 「オヤマァv
 スキン君、放しテあゲなさイv
 「あぁ」
 スキンは伯爵の言葉に頷くと、神田をぽいっと放り投げる。
 「てめ・・・!!」
 「マァマァ、落ち着いテv
 せっかクのオ祭でスv 楽しミましょウv
 伯爵が、機嫌良くホスト役を引き受けたと見るや、ティキはほくそえんで一礼した。
 「じゃあ、千年公v
 俺はそろそろ失礼を・・・」
 「ティキポン。
 オ客様のオ相手を、放り出しチャいけまセンv
 「え?!
 そんな千年公〜〜〜〜!
 俺、ロードを無事に家に帰したんすから、お守りは解放でしょ?!」
 と、伯爵は出来の悪い生徒に呆れる教師のように、吐息しながら首を振る。
 「まったク・・・。
 ご招待したレディを放っテ帰るナんテ、無礼にモ程がありまス。
 ティキポンが失礼しましタね、レディ・・・アリスv
 改めて伯爵に一礼され、リナリーは思わず、お辞儀を返した。
 「アラv
 ナァんテ優雅ナお辞儀デショv
 伯爵は笑みを深めると、ゆったりとした動作でエクソシスト達を見回す。
 「今夜ハ休戦でスv
 ノアの長たル我輩が約束しまスv
 ゆっくりとした口調で宣言し、伯爵は大きな手を、お茶の用意がされたテーブルへと差し伸べた。
 「さァ、お客人v
 今夜はゼヒ、楽しんデくださイv


 「・・・なんで俺は、こんなとこで茶ァ飲んでんだ」
 「アラv お気ニ召しまセンかv
 宇治かラ取り寄せタ抹茶デすがv
 「・・・いや」
 眉間に皺を寄せたまま、神田は抹茶をすすった。
 滑らかな舌触りの抹茶は薫り高く、懐かしさと温かさが体内を満たす。
 「我輩、日本びいキでしテv お抹茶点てルノ上手デショv
 しゃかしゃかと、見事な手さばきで茶を点てる伯爵に、神田は憮然と頷いた。
 「まぁな・・・」
 「アラv 嬉しイv
 お菓子モ召し上がっテくださイv
 「あぁ・・・・・・」
 紅葉の形にぬかれた干菓子に手を伸ばすと、傍らから伸びた大きな手が、彼より先に皿を覆い、そのほとんどを一掴みに握りこむ。
 「コレッ!スキン君ッ!
 お茶菓子ハ、そノ様にボリボリ食べルもノじゃアりまセン!」
 「ケチくさいことを言うな」
 伯爵の苦言を聞き流し、スキンは優雅な菊をかたどった練り切りを、鑑賞もせずに口の中へ放り込んだ。
 「ンマッ!!
 ティキポーン!ティキポン!!
 チョっとスキン君を別室ニ連れテ行っテくださイ!」
 「はいはい・・・・・・」
 部屋の隅のカウンターで酒を飲んでいたティキは、伯爵に呼ばれると億劫そうに歩み寄って、スキンの腕を取る。
 「何をするっ!
 己はまだ、満足してない・・・!」
 「お前はこの席にふさわしくないってよ。
 向こうでバケツプリンでも食ってろ」
 「バケツプリンがあるのか?!」
 「あるんじゃねーの?
 まぁ、なくても、別のモンがあるだろうよ」
 ずりずりとスキンを引きずっていくティキを吐息混じりに見送ると、伯爵は改めて美しい和菓子を皿に盛った。
 「スミマセンねぇ。
 ウチの子供達ハ、イイ子なんデすケド、礼儀ヲ知らなくテv
 「別にかまわねぇよ」
 憮然と応じつつ、神田は差し出された和菓子を懐紙に取り、黒文字を入れる。
 「アラまぁv
 さすがニ心得テマスねv
 姿良く菓子を口に運ぶ神田に伯爵が感心すると、彼は照れ隠しか、更に憮然と応じた。
 「常識だろ」
 「ウフv
 本場ノ人間相手ニ腕ヲ振るうノハ、嬉しイでスねぇv
 アナタはいかがデスカ、Jr.v
 問われて、ラビは茶碗を鑑賞していた目をあげる。
 「よいお点前でした。
 茶碗は萩焼と拝見しました。銘は?」
 「マァv
 茶道の作法に則った問いに、伯爵は目を輝かせた。
 「老松(おいまつ)トv
 「茶杓は?」
 「竜田川デスv
 「棗(なつめ)は?」
 「唐紅(からくれない)デスよv
 「・・・拝見まですんのか、お前は」
 神田の呆れ声に構わず、ラビは伯爵と問答を続ける。
 「本日ノ茶花ハ竜胆(りんどう)デスよv
 「お見事でスv
 拝見を終えて、ラビが懐こい笑みを浮かべた。
 「さすがは伯爵、そこまで造詣が深いとは感心したさv
 でも、なんでそんなに日本びいきなんさ?」
 「・・・・・・・・・」
 ラビの本当の目的を察して、神田は黙々と菓子を口に運ぶ。
 「ただ日本びいきってだけじゃ、ここまで詳しくはなんねーだろ?
 あの国には、随分長いこといるみてーだし?」
 「アラv
 我輩、好奇心旺盛ナ方ですヨv
 「あ、それは俺もさv
 萩の大井戸には、世界が見えるんだよなv
 「ンマァァv
 Jr.v アナタわかっテらっしゃルv
 楽や唐津モ良いデすが、我輩ハなんと言ってモ、萩を愛しテマスv
 「あぁ、そんじゃ、あっちでは長州に住んでんさ?」
 「イエイエ、江戸ですヨーv
 京で吟味されタものガ、江戸に下っテ来まスのでネェv
 江戸にはイイ物が集まるんデスv
 それからまた、ひとしきり焼物や茶道具の話になり、頃合を見てラビがもう一度問いを発すると、伯爵は嬉しそうに何度も頷いた。
 「方舟始メ、諸々の機械ハ我輩ガ発明しまスが、それをメンテナンスできる人間は、中々見つからナいのデス・・・。
 しかし、日本人ハ器用デすからネェv
 メンテナンスだけデなク、コのようニ改良したイと言えバ、見事ニ応えてくれマスv
 それが理由、と漏らした彼に、ラビはにんまりと笑う。
 「なるほどなぁ。
 確かに、任務遂行にかける情熱には頭が下がるさ」
 「子供達にモ見習わせたイものデす。
 特にティキポンにハ・・・・・・」
 そう言って伯爵は、こちらに背を向けて酒を飲んでいるティキを、ため息混じりに見遣った。
 「あっはーv
 なーんか、一人でとぐろ巻いて可哀想さー!
 じゃあ伯爵v
 俺、ティキポンの酒に付き合うことにしまスv
 おいしいお菓子以上においしい情報を仕入れたラビは、ほくほく顔で深々と一礼し、席を立つ。
 次なる獲物を求めるラビの思惑を知ってか知らずか、伯爵は丁寧に礼を返した。
 「ティキポンをヨロしくお願いしマスねv
 そう言って、神田に向き直る。
 「お茶、もう一服イかガでスか?」
 「あぁ・・・・・・」
 ―――― 本当に、なんでこんなことをやってるんだか・・・。
 また、しゃかしゃかと茶を点て始めた伯爵に眉間の皺を深くしつつ、神田は視線を横に流した。
 その先では、アレンが黒猫にのしかかられ、リナリーが襲い来るスケルトン達への反撃に追われている。
 「ゴールデン美髪はデロだけでいい!!
 取れ、女っ!ヒッ!!」
 「いい加減にして!!」
 リナリーのウィッグをしつこく引っ張るジャスデロに、とうとう堪忍袋の緒が切れて、リナリーが鉄拳を繰り出した。
 「ギャッ!!」
 「デロ!!」
 双子の片割れをぶっ飛ばされたデビットが、リナリーを睨みつける。
 「ふざけんな、女っ!」
 「なによっ!そっちが悪いんでしょ!!」
 リナリーがまなじりを吊り上げて怒鳴り返すと、デビットがつかつかと歩み寄った。
 「お前がデロと同じ髪色してんのが悪ィんだろ!」
 「どんな仮装しようと私の勝手よ!!」
 理不尽な言い様に激昂したリナリーの甲高い声に、デビットはこめかみを引き攣らせる。
 「大体、なんでアリスなんだよっ!スカート長すぎだろ!!」
 「ちょっ・・・スカート引っ張らないでよっ!!」
 「アラ・・・・・・」
 鋭い回し蹴りを食らって吹き飛ばされたデビットの描く放物線に、伯爵は抹茶を点てる手を止めた。
 「ジャスデビv
 レディに嫌がラセをしちゃイけまセンv
 ウチの子供達が無礼をシテ、スミマセンね、レディv
 デすガ、蹴りハどうカト思いマスよ蹴りハ・・・」
 「蹴りはダメでも、手ならオッケーですよね?」
 伯爵の言に、異様なほど暗い声音が返ったかと思うと、ようやくロードを振り切ったアレンが、同じ場所に折り重なった双子の頭を両手に掴む。
 「ウチの姫に気安く触ってんじゃないですよ、アンタ達!!」
 ごぅんっと、互いの頭をぶつけられて、双子がのた打ち回った。
 「ヒィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!」
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っにすんだこの暴力ウサギ!!」
 「うるさいエロ髑髏!!
 今度リナリーに不埒なマネしたら、砕いて海に散骨してやる!」
 もう一度双子の頭蓋骨を打ち合わせ、白目を剥かせたアレンが憤然とリナリーを抱き寄せると、彼女は頬を赤らめて、嬉しげな顔を伏せる。
 「リナリー!
 ここを出るまで、僕から離れないでくださいね!」
 「う・・・うん・・・っ!」
 油断なく双子を睨みつけるアレンの手を、リナリーがそっと握った。
 が、その二人の間に、楽しげな笑声をあげてロードが割って入る。
 「やーっぱサイコーvv
 ねぇねぇv このまま二人、僕と一緒にいないー?
 キレイに飾ってあげるよぉーv
 「いっ・・・嫌よっ!!
 どうせまた、人形にしちゃうんでしょ?!」
 「いつまでもキレイでいられるよぉー?」
 ロードは抱きついたリナリーの腰に頬をすり寄せ、甘えた声をあげるが、その言葉の意味はあまりにもおぞましいものだった。
 「ロード、リナリーから離れて!」
 「じゃあアレンが、僕の召使になるぅー?」
 「嫌ですよっ!!」
 互いに庇い合うように、二人が身を寄せる。
 と、ロードが不満げに頬を膨らませた。
 「もぉ〜〜っ!
 二人でくっついてないでさぁ〜!僕とも遊んでよぉ〜!」
 駄々をこねたロードが、無理やり二人の間に身体をねじ込む。
 「ねぇねぇv
 ジャスデビなんかほっといてさぁー、僕とゲームしよv
 「嫌よ!」
 なにをされるかわかったもんじゃない、と、リナリーにきっぱり言い放たれ、ロードは憮然と尻尾を振り回した。
 「リナリー、なんで僕には優しくしてくれないのさぁー・・・」
 ぴしぴしと、黒い尻尾ではたかれて、リナリーがこめかみを引き攣らせる。
 「あのね・・・自分の内臓を抜こうとしてる子に、優しく出来ると思う?!」
 リナリーが思わず語調を荒げると、ロードはにんまりと笑った。
 「内臓抜けるのはティッキーだけだよぉー。
 今はなんだか哀しそーにお酒飲んでるし、僕もキミタチをすぐに人形にしちゃう気はないから、遊んでぇーv
 ぐいぐいと腕を引かれ、リナリーが仕方なしに従うと、アレンがすかさずついてくる。
 「あーv
 アレンも遊んでくれるのぉーv
 じゃあねーじゃあねー、まずは僕とお菓子食べよぉv
 「お菓子・・・・・・」
 その甘い誘惑に、アレンは激しく葛藤した。
 「千年公のお菓子、まだ食べてないでしょぉ?
 すっごくおいしいんだからぁv
 「う・・・」
 更に言い募られ、アレンは今まで懸命に見ないようにしていたテーブルの上に、視線を吸い寄せられる。
 「毒なんか入ってないってばぁv
 ほらぁ。あっちはフツーに千年公とお茶してるじゃん〜v
 「うん、でも神田は・・・・・・」
 「毒くらいじゃ死にませんから!」
 「――――・・・聞こえてんぞ、てめェら!!」
 ぎろり、と、鋭い目で睨まれて、二人は顔ごと目を逸らした。
 「きゃははははははっ!
 二人とも、往生際が悪いよぉー。
 Jr.だって、さっきから楽しんでるじゃないー?」
 ロードの指摘に、逸らした視線を巡らせれば、ラビは部屋の隅にあるカウンターバーで、くだを巻いているティキの相手をしている。
 「・・・・・・なにやってんの、あのひと」
 「さーぁ?
 通じるものでもあるんじゃないのぉー?」
 呆れ声のアレンに、くすくすと笑声をあげながら、ロードは彼の手を引いた。
 「ホラホラ、アレンもぉv
 ご馳走、食べて行ってよぉーv
 「ご・・・ご馳走・・・・・・!」
 その言葉の魅力にとうとう負けてしまい、アレンは丸いテーブルに着く。
 「リナリーはこっちぃv
 「いえ!
 リナリーは僕の隣です!!」
 アレンとリナリーを、自分の両隣に配置させようとしたロードにきっぱりと言い放つと、アレンは一旦席を立ち、自身の隣の椅子を引いた。
 「どうぞ、リナリー」
 「あ・・・うん。ありがと・・・・・・」
 アレンに導かれるまま席に着いたリナリーは、頬を膨らませたロードからお茶を受け取る。
 「アレン、僕には椅子を引いてくれなかったぁ!」
 がしゃんっ!と、ロードはアレンの前にも、乱暴にお茶を置いた。
 「君は自分で、さっさと座ったじゃないですか」
 白々しく言えば、ロードは勢い良く席を立つ。
 「じゃあ、やり直して!」
 「なんで客人である僕が、君の椅子を引くんです?
 黙って座ってなさい」
 「・・・アレンもいぢわるだっ!!」
 ロードは憤然と椅子に座りなおすと、テーブルの上に足を投げ出した。
 「女の子がはしたない。
 それじゃあ、立派なレディにはなれませんよ」
 「アレンまで先生みたいなこと言わないでよぉ!」
 憮然と言いつつ、ロードはテーブルの上の菓子を引き寄せる。
 「どぉぞぉ!
 毒が入ってるかもしんないけどぉ!食べてみてよ、おいしいからぁ!」
 ぷんっと、そっぽを向いてしまったロードに、アレンは思わず苦笑して、皿に手を伸ばした。
 「うっ・・・・・・!」
 クッキーを口に入れた途端、目を見開いた彼に、リナリーが表情をこわばらせる。
 「アレン君?!」
 「うまいー!!ナニコレー!!」
 アレンの絶叫に、伯爵が長い耳をそばだてた。
 「お口ニ合いマしたカ、アレン・ウォーカーv
 「はいっ!おいしいですっ!・・・・・・あ」
 伯爵に対して歓声をあげてしまい、アレンが気まずげに言葉を切る。
 が、伯爵は構わずに、嬉しげな笑みを浮かべた。
 「我輩、昔かラお菓子作りガ趣味でシテv
 長い年月をかけテ培っタ技術ハ、誰ニモ負けまセンよv
 そう言って、得意げに胸を反らせる伯爵に対し、認めたくはなかったが、この菓子の味は、今まで最高だと思い続けていたジェリーですら一歩を譲るかもしれない。
 「サァv
 遠慮しナイで、どんどん食べテくだサイv
 「は・・・・・・」
 はい、と、素直に頷けない気持ちを持ちながらも、アレンの手はついつい皿に伸びていった。
 「わ・・・私も頂こうかな・・・・・・」
 アレンがおいしそうに食べる様を隣に見て、リナリーも伯爵手作りの菓子に手を伸ばす。
 「おいし・・・っ!!」
 大きな目を見開いたリナリーに、ロードの機嫌もようやく直った。
 「だから言ったでしょぉ?
 千年公のお菓子はおいしいんだってぇv
 我がことのように自慢げに言って、ロードはカラフルなロリポップを咥える。
 「別の部屋にも用意してあるからさぁv
 後で探検がてら、家の中を巡って・・・」
 「バケツプリンはどこだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 突然、ロードの声を遮って、スキンの絶叫が部屋に響いた。
 「おい、ティキ!!
 お前、己を騙したか?!」
 猛牛の勢いで迫り来るスキンに、ティキは面倒そうな舌打ちを返す。
 「バケツプリンは物のたとえだろーが。
 遊戯室にゃ、ちゃんと食いもんの用意が・・・」
 「あれは甘くないッ!!」
 絶叫と共に、ティキに掴みかかったスキンの身体が彼の中を通り抜け、隣のラビに襲いかかった。
 「んな――――?!」
 逃げ遅れたラビが、巨体の下敷きになってもがき苦しむ様を、ティキが気の毒そうな目で見遣る。
 「あれ・・・?
 スマン、眼帯君。
 隣にいたなんて知らなかったぜ」
 気まずげに言うと、立ち上がろうともがくスキンの下ですり潰されそうになりながら、ラビが絶叫した。
 「白々しい嘘つくんじゃねーさ、この地黒ッ!!
 今まで誰がテメェの愚痴聴いてやったと思ってんさ?!
 「あー・・・相槌打ってくれてたの、お前だったんだ?」
 一人、幻と話しているつもりだった、などとほざくティキに、ラビだけでなく、スキンまでもが気の毒そうな目をする。
 「お前、そんなに寂しい奴だったんさ・・・?」
 「己の菓子を分けてやろうか・・・?」
 「うるせーよ、眼帯!
 余計な気ぃ使ってんじゃねぇ、甘党!!」
 二人から寄せられる同情に、ティキの気は更に滅入った。
 「なぁ・・・もう俺のコトはほっといてくんない?
 空気みたいなもんだと思って、そっとしといてくんない?
 それがダメなら、俺をおうちに帰らせテ・・・・・・」
 さめざめと言うティキに、しかし、
 「家はここだろ」
 と、思わず突っ込みを入れてしまう。
 途端、はかなく泣き崩れて、どんどん鬱状態に陥っていくティキに、二人は気まずげに顔を見合わせ、ティキの傍らにしゃがみこんだ。
 「まぁまぁ、そんなに泣くんじゃないさ!」
 「己も、件の部屋に軽食しか置いてなかったことは水に流そう・・・」
 「ミンナのとこに、帰りてーよー・・・・・・」
 スキンの言葉に、ティキは更に激しく嘆く。
 「ちょっ・・・?!
 お前、余計泣いちまったじゃねーさ!
 こういう時は、あんま心配かけるよーなコト言っちゃいけないんさ!」
 「どこがだ?!
 己はただ単に、甘いものだと思って食べたサンドウィッチがマスタードのきいたものだったから、コイツに苦情を・・・!」
 「その程度のことであの突進かぃー!!
 てめェはタイヤキに鯛が入ってないって怒るクチかー?!」
 「そんな気色の悪いもの、己は食わんッ!!
 己が好きなタイヤキは、皮はぱりっとして、尻尾まであんこの詰まった・・・」
 「タイヤキはカンケーねぇだろ!!」
 くだらなすぎる二人の言い争いに、ティキはぐわばっと泣き顔を上げた。
 「俺はもう、こんなくだらねぇ集まりにうんざりしてるんだよっ!!
 なんで?!
 なんでアクマも遊ぶこのハロウィンに、俺はロードのお守りを押し付けられ、エクソシストと渡り合い、甘党のフォローしてホスト役までやんなきゃいけないわけ?!」
 「ホスト役は我輩に渡しテ、ほったらカシじゃナイデスカ、ティキポンv
 「俺に帰るな言うたの、アナタじゃないっすかー!!!!」
 再び泣き声をあげたティキは酒瓶を抱きしめ、またカウンターに突っ伏す。
 「あぁ・・・もう嫌だ、こんな日々・・・!
 俺は海の底で貝になりたい・・・・・・」
 「イヤでスネェv
 皆さんハ、アンナ大人になっちゃイケませンよv
 ふぅ、と、呆れた様子で吐息しつつ、さりげなく毒を吐くことも忘れない伯爵に、皆、引き攣った笑みを浮かべた。
 いや、二人を除いて、か。
 ティキとは別の意味で、ダメな大人候補の双子が、頭蓋骨陥没の危機を乗り越え、ようやく目を覚ました。
 「・・・ごっさ痛てぇぇぇぇぇぇっ!!」
 「ヒー!!ムカツク!!」
 突然吼えたかと思うと、双子は見事にシンクロした動きでアレンとリナリーを指差す。
 「なぁーに仲良く菓子食ってんだよ!!」
 「ヒッ!!イチャイチャ!!ムカツク!!」
 「・・・別にお菓子を頂くくらい、いいでしょ。
 散々固辞した挙句、勧められたんですから」
 アレンがお茶を飲みつつ、白々しく言い放つと、双子は更に激昂した。
 「言っとくけどな!
 お前なんかどうでもいいんだよ、クロスの弟子!!」
 「邪魔邪魔!
 帰れっ!ヒッ!!」
 双子の言質を捉えて、アレンの口元に笑みが浮かぶ。
 「そうですね、ではそろそろ、おいとましましょうか」
 席を立ち、リナリーへ手を差し伸べたアレンに、ロードが不満げな声をあげた。
 「なんでぇー?!
 もっといいじゃないぃー!!」
 アレンの腕に取り縋るが、彼はロードの手を、やんわりと外す。
 「ご馳走様でした―――― 伯爵」
 やや離れた場所にいる伯爵へと、直接会釈すると、伯爵も立ち上がりかけた。
 が、
 「帰るならてめェだけ帰りな!!女は置いていけよ!」
 「ジャスデビまだ遊んでないっ!ヒッ!!」
 彼らの無礼な物言いに、リナリーの目が苛立たしげに細まる。
 「まったク・・・困っタ子達デすねぇ・・・」
 礼儀知らずな双子の言動に伯爵も、呆れ気味に吐息した。
 「お嬢サンv
 ウチの子達がとんダご無礼ヲ・・・」
 「いーじゃん、社長ぉ〜〜〜♪」
 「女!居残り決定!ヒッ!!」
 ふざけた声をあげるや、リナリーに飛び掛かろうとする双子に、アレンの目がギラリと光る。
 「・・・散骨決定!」
 ノアも鼻白むほどの邪悪な笑みを浮かべ、アレンは両手に、火の灯ったジャック・オ・ランタンを取り上げた。
 「ヒッ?!」
 「うぎゃあああああああああああ!!!!」
 なんの躊躇もなくぶつけられ、砕かれたランタンの火は、消えることなく双子に燃え移って、彼らを火達磨にする。
 「火葬!」
 「ごの゛ぐぞえ゛ぐぞじずど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 「あはははははははははは!
 ナニ言ってるか、聞こえませんねぇ〜」
 悪魔の形相で哄笑をあげるアレンから、リナリーが思わず数歩下がった。
 「うーん・・・でもあれは、ジャスデビが悪いよねぇ」
 いつの間にか、ちゃっかりとリナリーにくっついていたロードが、炎に包まれた兄弟を見て、楽しげに笑う。
 「あ・・・あなた・・・怖くないの?!」
 リナリーが思わず顔を引き攣らせると、ロードはむしろ、きょとんとした表情で彼女を見上げた。
 「リナリーさぁ、そんなに怯えるんなら、アレン僕にくれない?」
 「あげないわよっ!!」
 「けちぃ〜!
 僕の人形になるのもヤダ、アレンもくれないなんて、リナリー冷たいぃー!」
 「うっ・・・うるさい!!」
 リナリーのヒステリックな声に振り向いたラビは、すぐに姿勢を戻して、隣に座るティキに首を傾げる。
 「なぁ・・・あんたの兄弟、火達磨になってっけど。
 水かけてやらんでいいんさ?」
 「ほっとけ。
 あの程度じゃ死にゃしねーよ」
 凄まじく暗い声音で吐き捨てながら、ティキは大量のウィスキーを、瓶からグラスへと移した。
 「今日はえらく呑むな。つまみはいらんのか?」
 ティキを挟んでラビの反対側の席に着き、打って変わって機嫌良く巨大パフェを食していたスキンも、ティキの酒量に思わずスプーンを止める。
 「いいからほっといてくんない?
 もう俺、世界の全てを拒絶したい気持ちでいっぱいだから・・・」
 「あはははははははははははははっ!あーっははははははははははははっ!
 骨になるまで燃え尽きるがいいっ!!」
 ティキの暗い声にかぶさるように、アレンのサディスティックな哄笑が部屋中に響いた。
 「・・・・・・ホントにいいんさ?」
 今度はスキンにも問うが、彼は構うことなく、一旦止めたスプーンを再びリズミカルに口へと運んでいる。
 「あのままじゃアレン、マジであいつら殺すかもしんねーさ」
 「・・・・・・お願いだから、静かに飲ませてくんない?」
 ティキがぐったりとカウンターに突っ伏すと、パフェを空にしたスキンが眉をひそめた。
 「泣き上戸だとは知らなかった」
 無情な言葉を残して、甘味のおかわりを取りに席を立ったスキンに代わり、ラビがティキの肩を、ぽんぽん、と叩いてやる。
 「男だってさ、泣きたい時は泣いていいんさ・・・」
 「なんで俺、よりによってエクソシストに同情されてんだよ・・・!」
 「俺だってわかるさ、仲間に・・・それも、年下のガキに虐げられる気持ちはな」
 いやにしみじみとした口調で言われ、ティキは涙に濡れた目を見開いた。
 「赤毛・・・・・・!」
 「・・・ラビって呼んでくんね、瓶底ホクロ?」
 「ティキだ、眼帯。
 ・・・なんだか、今日初めて、心温まる気がしたぜ、ラビ!」
 感極まった声と共に差し出された手を、ラビはしっかりと握る。
 「同感さ、ティキ。
 今夜は二人で飲み明かすさ・・・!」
 ハロウィンの狂騒を背に、二人がグラスを合わせると、小さな琥珀色の波に漂う氷が、カロン・・・と涼やかな音を上げた。



Fin.

 










2007年ハロウィンSSでした!
私、一応何度かお茶席には行ってますが、体験版程度で本格的にやってないので、拝見のことは深く突っ込まないでやってくださいね・・・。
ところで、おいしいもの大好きな私のSSには、ほとんどの場合、何か食べ物が出てきます。
しかも、その時に自分が食べたいものを書くので、書いている途中でいきなり出かけたりしますよ(笑)>それを食べに!
でもパンプキンパイは正直なところ、今までに食べた中では自分で作った物が一番うまいです。>自画自賛と言われようともそうなんだいっ!(笑)
さすがに作るのがめんどくさいので、飢えていますよチクショー;;
誰か私の代わりに作って(笑)
今回、ラビが通常より不幸な目に遭ってませんが、代わりにティッキーが気の毒なので、許してくださいね♪←どこまでも鬼畜












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