† The Rain Leaves A Scar †
8. A curse.






 「で?
 一体、なに聞かれたんさ?」
 耳と肩とで携帯電話をはさみ、目は次々に受信するパソコンのメールを追いつつラビが問うと、電話の向こうの彼は、不機嫌そうな声をあげた。
 『だから、高等部の三つの棟の中で、なんか噂ある棟はないかってさ。隠すなって言われても、俺、マジしらねーし。
 その手のことなら、お前の方が詳しーだろ』
 「あー・・・まーねー・・・。
 でも、さすがに奴ら、俺んとこには来んかったさ」
 『ま、あんなことやっといて、行けるはずがねーわな』
 呆れた笑声に、ラビも苦笑を返す。
 と、
 『行けるはずがねーっつったら、神学んとこもだよな』
 ふと気づいたような声音に、ラビが目を見開いた。
 まさにその時、彼もあるメールを目で追っていたのだ。

 Sol Wrote:
 ―――― 高等部の噂なんて知らない。だけど、部室棟になら幽霊くらい、出てもおかしくないだろ。

 「グエン・・・・・・」
 『あぁ、神学の妹。部室棟から飛び降りちまって・・・あの時のクラウド先生、可哀想だったよな・・・』
 「ん・・・・・・」
 『あれも、奴らが原因だったんだろ?』
 「そうらしいさ。
 俺、学年ちがくてあんましらねーけど、あん時はリナリーがめっさへこんで大変だったさ」
 『お前ん時は無事だったから良かったけどさ、あの事件で神田がマジ切れしたんだよ。
 寮であわや刃傷沙汰だったからな』
 「げ。
 シメたってのは知ってたけど、そんなことになってたんさ?!」
 『寮監が慌てて止めたけど・・・俺、本物の殺気ってやつをあの時、生まれて初めて見たな』
 「道理で・・・今の寮生が、誰もユウに逆らわんはずさー・・・」
 『逆らったらマジ殺られるって、身に沁みたろうからなァ・・・・・・』
 卒業して良かった、と、しみじみ呟いて、彼は口調を切り替えた。
 『そう言うわけで、棟のことは知らない。すまないな、協力できなくて』
 「うんにゃ。
 こっちこそ突然、すまんかったさ。サンキュ、先輩♪」
 『今度は別の用件で電話しろよ』
 笑みを含んだ声を最後に、通話を終えた携帯を閉じ、ラビはしばらく沈思する。
 あの時―――― スキン・ボリック教諭の葬儀の時、クラウドは完璧に平静だった。
 妹を自殺に至らしめた者達の親を前にして、礼儀正しく、粛々と式を進める様を見ては、誰も彼女の妹の事件を、思いもしなかっただろう。
 だが、彼女の胸の内はどうだったのか・・・本当に、平静でいられたのか?
 その時、彼の心を読んだかのように、1通のメールが届いた。

 Thina Wrote:
 ―――― 棟の怪談?
 アンタ、馬鹿じゃないの?双子が死んだのはグエンの祟りよ!

 「タタリ・・・・・・」
 そんな非科学的なものを、ラビは信じない。
 だが、祟りをもたらしている者が、いるとしたら・・・?
 「・・・・・・触んなきゃよかったかなァ」
 自身の思考にうんざりして、ラビは、深々と吐息した。


 「タタリ?なにそれ??」
 きょとん、と、目を丸くして声を上げたアレンに、チャオジーは慌てて口の前に指を立てた。
 「しーっ!!声が大きいっす!!」
 「いや・・・チャオジーの方が大きいと思うけど・・・。
 それより、なにがどうなって祟りなんですか?」
 サラダボウルに再びフォークを突き刺しつつ問えば、彼は食堂に集まった寮生達の目をはばかるように辺りを見回してから、さらに声をひそめる。
 「部の先輩に聞いたんすけど、去年、部室棟から飛び降り自殺した生徒がいたらしいんすよ・・・」
 「あぁ・・・そのことなら、知ってますよ。
 リナリー先輩の友達だったんです。
 あの時の先輩は、本当に落ち込んでしまって、可哀想でした・・・」
 「え?!そうなんすか?!」
 途端に気まずげな表情になったチャオジーに、アレンは苦笑した。
 間接的とはいえ、アレンの知る人間だったと知って、話しにくくなったのだろう。
 「で?
 部室棟に、彼女の幽霊でも出るって?」
 「あ!いや、そうじゃなくて・・・・・・」
 上級生達の間で、双子やスキン先生が死んだのは自殺した女生徒の祟りだと言う噂がある、と、チャオジーが遠慮がちに言うと、アレンは困惑交じりの苦笑を浮かべた。
 「その発生源・・・ラビだと思うな」
 「えぇっ?!先輩が?!」
 目を丸くする彼に、アレンは頷く。
 「直接噂を流したとか、そういうんじゃないよ。
 でも、彼のことだから、先生達の死因とか調べるために、あちこち聞きまわったんじゃないかな?」
 「それで・・・タタリ?」
 「なんでタタリになったのかはわかんないけど、前も、こんなことあったんですよねー・・・。
 あの時の話は、まだ都市伝説になってるんじゃないかな」
 「えぇっ?!どんな?!」
 驚いて詰め寄ってくるチャオジーに、アレンは手にしたフォークで窓を示した。
 「この近くの中学校の裏に、古い教会があるでしょ?
 僕、中学生の時に宿題で、ラビに手伝ってもらってそこの歴史を調べたことがあるんですよね」
 「中学校裏の教会って・・・あの、こっくりさんをやるとそこの地縛霊に取り憑かれて、呪われるってやつっすか?!」
 「そう、それそれ。
 僕はただの宿題なんだから、神父さんに歴史を聞くだけでいいって言ったのに、彼は町中のお年寄りに散々聞き込みをしてくれて・・・。
 おかげで立派なレポートが出来上がったのはいいんですけど、聞き込みをした人達が、お孫さん達にも面白おかしく教会で起こった不思議話なんか語ってくれたおかげで、あっという間にあそこの墓地には幽霊が出るだの、こっくりさんをやると地縛霊に呪われるだのって噂が広まって、学校じゃ誰もこっくりさんをやらなくなっちゃいましたよ」
 「す・・・すげー・・・!」
 信じてたのに、と、呆然とするチャオジーに、アレンはうんうん、と頷く。
 「そういうことをやっちゃう人なんですよ、ラビって。
 結果なんか考えず、派手に動き回るから、見ている分にはとても面白いんですけど、巻き込まれたら大変なんです」
 しみじみと呟くと、アレンは顔を上げた。
 「そういうわけで、あんまり信じない方がいいですよ、その手の話は。
 真面目に聞いちゃうと、部室棟に入れなくなります」
 くすくすと笑いながら、アレンは食事を終えたトレイを持って立ち上がる。
 「・・・もう遅いかな?」
 食堂内をくるりと見回しただけで、既にいくつかの集団が、ひそひそと囁き合っている様を見て、アレンは笑みを苦笑に変えた。
 「あーぁ・・・しーらない」
 と、アレンは早々に放置してしまったが、同じく噂の元を特定していたもう一人は、笑うどころではない。
 彼はラビのクラスまで赴き、呼び出して詰め寄った。
 「てめぇ、もっと静かに動けねぇのか!」
 「ちょっ?!こわっ!!ユウちゃん、迫んないでさっ!!」
 怯えて壁際に逃げるラビを追い詰め、神田はその胸倉をつかむ。
 「お前が考えなしにあちこち聞きまわるもんだから、妙な噂が立っちまったじゃねぇか!」
 「俺、タタリなんて言ってねーさー!
 言い出したのはティ・・・」
 「どうせお前が原因だろう!」
 「・・・・・・・・・えへv
 「笑ってごまかすな!!」
 「まーまー、落ちつくさ、ユウたんっv
 俺のお話も聞いてv
 「・・・なんだ」
 神田が憮然と眉を寄せると、ラビは彼の耳元に囁いた。
 「・・・ヘタすりゃ、また死人が出るかもしんねーさ」
 「・・・っ?!」
 目を尖らせた神田に、ラビは頷き、口許に指を当てる。
 「まだ、確定じゃないから、秘密な?
 だけど・・・」
 言いかけた時、予鈴が鳴り、廊下に出ていた生徒達が教室に飲み込まれていった。
 「・・・ユウちゃん、今日の放課後、ヒマ?」
 「暇じゃねぇ・・・だが、部活が終わった後なら」
 土曜の今日は、授業が短い分、部活動も早く切り上げられる。
 そう言うと、ラビは大きく頷いた。
 「おっけ♪
 じゃあ、終わったらうち来るさv
 遅くなるようなら、泊まってけばいいしv
 「そうもいかねぇよ」
 規律に厳しい寮長である神田は、また、自分自身にも厳しい。
 その彼の性格を知るラビは、彼の言葉に大きく頷いた。
 「オッケ。
 じゃあ、点呼の時間には戻れるよう、話まとめとくさ」
 「あぁ・・・・・・」
 重要な話が先延ばしされたことは気になるが、今は長い話をする時間がないのも確かだ。
 神田は頷くと、自分の教室へと戻って行った。


 その日の夕刻。
 ラビの部屋に入った神田は、先に来ていたアレンとリナリーに、眉をひそめた。
 「お前らも来てたのか」
 「はい・・・ちょっと、陸上部の中でも洒落にならなくなってて・・・リナリー先輩の付き添いです」
 アレンが遠慮がちに言う隣で、リナリーは大きな目を吊り上げ、ラビを睨みつける。
 「ひどいよ!グエンが祟るわけないじゃない!!」
 「だーかーらー・・・俺が言ったんじゃないってー」
 降参するようにもろ手を挙げたラビに、しかし、リナリーは更に詰め寄った。
 「じゃあ、誰よ?!」
 「俺が知る限りじゃー、ティナとソルさー」
 「彼女達が・・・」
 グエンの親友だった二人の名に、リナリーが口をつぐむ。
 「ほれ、メール見てみ?
 二人から来たのが初めだろ?」
 そう言ってラビは、自分のパソコン画面を見せた。
 『Re:体育館棟の噂』という件名がずらりと並ぶ中、前後して届いたThinaとSolのメールを開く。
 「ホントだ・・・でも」
 リナリーがきろり、と、ラビを睨みつけた。
 「やっぱり原因はラビなんじゃない!!」
 リナリーの怒声に、傍らでアレンもうんうんと頷く。
 「もー・・・ラビはいつも、後先考えないんですから・・・」
 「こいつの暴走は、今に始まったことじゃねぇがな」
 ヒステリックな後輩たちのせいで、自身の怒りを殺がれてしまった神田が、忌々しげに舌打ちした。
 「で?
 結局、わかったのか、体育館棟の噂ってやつは?」
 「いんや。そんなん、誰もしらねーよ」
 あっさりと言ってのけたラビに、リナリーが眉を吊り上げる。
 「じゃあ、なに?
 大騒ぎするだけして、その上、部室棟にグエンの幽霊が出るなんて噂を流しておきながら、放置するつもり?」
 「だから、俺が流したんじゃねっつの。
 それに幽霊じゃなくて、タタリさ」
 「同じようなものでしょ!」
 憤然と声を荒げたリナリーの眼前で、しかし、ラビは笑って手を振った。
 「違うさ。
 幽霊は、恨めしかろうが未練がましかろうが、なんの悪さもしやしねえさ」
 「え・・・そうなんですか?」
 「・・・なんでこっち見んだよ。俺が知るか」
 思わず、神田に回答を求めたアレンを、彼は冷酷に突き放す。
 が、ふと気づいて、瞬いた。
 「なるほど・・・幽霊じゃなきゃ、人間か」
 「さっすが!
 勘だけはいいさ、ユウちゃんv
 「えっ?えっ?!」
 「どういうこと・・・?」
 わけがわからず、戸惑う後輩達に、ラビはにんまりと笑う。
 「幽霊なんて、いるかいねぇかわかんねぇもんはどうでもいいんさ。
 ただ、このタタリを起こしてる奴は、確実にいる」
 「誰かが・・・復讐している犯人が、別にいるってこと・・・?」
 大きな目を見開いて、ラビを見つめるリナリーの呟きに、アレンがあんぐりと口を開けた。
 「そんな・・・まさか・・・・・・」
 何を根拠に、と、呆然と呟くアレンの目の前で、一瞬、神田と顔を見合わせたラビは、自分の手を開いてみせる。
 「指紋が残ってたんさ」
 「え?犯人の?」
 「まさか・・・」
 驚いた顔を見合わせる後輩達に、ラビは首を振った。
 「双子の、さ」
 途端、二人は訝しげな顔になる。
 「それは・・・当然なんじゃないの?だって、あそこから落ちたんでしょ?」
 リナリーの問いに、ラビはにこりと笑った。
 「あいつらは、どうしてあんなとこから落ちたって言われてるさ?」
 逆に問い返されて、リナリーは顎に指を当てる。
 「えっと・・・理科準備室から盗み出した塩酸でフェンスの継ぎ目をもろくして、枠ごと外れるように細工しようとしたんでしょ?」
 ラビがやられたみたいに、と付け加えると、彼は苦い表情になった。
 と、黙りこんでしまったラビの代わりに、神田が言を継ぐ。
 「・・・こいつが言うには、双子があれで味を占めたんなら、指紋を残すようなへまはしないってことだ。
 それは俺も同感だ。
 奴ら、俺にシメられて以降は、随分とおとなしくなったが、実際は俺の前でだけそう見せて、裏じゃ色々と悪さをし続けていたようだからな。
 その点の姑息さでは、奴らの右に出る者はいなかった」
 「でも・・・後で指紋を消すつもりだったけど、その前に落ちたってことは・・・」
 「ねぇさ。
 だって奴らの指紋は、フェンスの網目じゃなくて、てっぺんについてたんだもんさ」
 「あ・・・」
 「それがどうかしたの?」
 目を見開くアレンの傍らでリナリーが首を傾げると、ラビは椅子から立ち上がって、背もたれの上部に両手を置いた。
 「これがフェンスとすんだろ?
 塩酸で継ぎ目を焼いちまおうとする時、リナリーならどうするさ?」
 「えっと・・・下からもろくなると危ないから、上から継ぎ目の筋に沿って流して、焼いていくよね・・・なによ、上に指紋があっても、不思議じゃないんじゃない?」
 言ってリナリーは、自分の頭のずっと上を手で示す。
 「フェンスって、随分高いでしょ?
 フェンスに上って、てっぺんに手を掛けて体を支えて、上の継ぎ目から焼いていくんじゃないの?」
 と、ラビは肩をすくめた。
 「フェンスの継ぎ目の高さ、ここまでっきゃねぇのに?」
 立ち上がったラビは、そう言って自身の額辺りを水平に示す。
 「こんなに低い場所、手を伸ばしただけで十分届くさ。
 なんで、わざわざフェンスに上る必要があるんさ?」
 ラビの指摘に、リナリーは目を丸くした。
 「え・・・体育館棟の屋上って、そうなの?!」
 「あぁ・・・お前は陸上部だからな。
 体育館棟の屋上には、上ったことねぇだろ」
 納得した神田に、リナリーは大きく頷く。
 「校舎や部室棟の屋上にあるフェンスはもっと高いから、体育館棟も同じだと思ってたよ・・・」
 「外観の問題とかで、あの棟だけ低く作られてんさ。
 ガッコの紹介写真とか見ても、あの棟だけは外からフェンスが見えなくなってっだろ?」
 そうは言われるが、リナリーもアレンも、学校舎の紹介写真など、じっくり見たことはなかった。
 「多くの生徒が出入りする校舎と部室棟は、安全のためにも高く作る必要があるんだろうけど、体育館棟の屋上に入れる人間は限られてっからさ。
 基本的には、鍵を持ってる奴しか入れねぇ・・・まぁ、その管理がルーズだったんで、奴らが入ってもおかしくないって状況になってんけどさ」
 「で?
 奴らの件が事故じゃない以上、奴らをハメて、殺した奴がいるって言いてぇんだろ?誰だ?」
 神田の単刀直入な言葉に、リナリーとアレンは息を呑んで声を失い、ラビは表情を消す。
 「まだ・・・誰かはわからないさ」
 彼らしくない、低く静かな声に、神田の目が吊り上るが、彼はその点を追及せず、言を継いだ。
 「じゃあ、次に狙われんのは誰だ?」
 「次?!」
 「なんで・・・」
 悲鳴じみた後輩達の声を寄せられても、ラビの表情は変わらない。
 不安げな視線で見つめられ、ようやく口を開いたかと思えば、ひどく淡々とした口調だった。
 「教師のティッキ・ミック、一年のロード・キャメロット・・・の、どちらか。もしくはどちらも」
 「えっと・・・なんで?
 それと、ティッキーは知ってますけど、ロードって、誰?」
 首を傾げるアレンの傍らで、リナリーも眉根を寄せる。
 「理事長の一族・・・だから?」
 そんな理由で?と、納得しがたい様子の彼女に、しかし、ラビは頷いた。
 「タタリを引き起こしている人間は、双子を罠にハメて殺した・・・それから日をおかず、スキン君が死んでる。
 ちなみにスキン君は、理事長の甥さ」
 「・・・って、ボリック先生も?!
 あれが殺人なわけないよ!
 だって先生は、雷に遭って亡くなったんでしょ?!
 そんなの、人間がどうやって操るんだよ!」
 ありえない、と、激しく首を振るアレンに、ラビは、机上のパソコンを操作して、画面を開いて見せた。
 「これ、スキン君が死んだって言う日から数日後の分まで集めた、落雷事故の記事と、あの日のピンポイント気象図さ。
 見てみ。
 落雷での死亡事故は、高確率で記事になるのに、スキン君の件は全く報道されてない。
 しかもあの日、あの山に落雷はなかったんさ」
 「え・・・そうなの?!」
 「あぁ・・・市内にゃ落ちて、俺のパソがひでぇ目に遭ったけどな。
 あの山の上には、そもそも雷雲が発生してないんさ」
 「じゃ・・・じゃあ、なんで落雷に遭ったなんて言われてるの・・・?」
 訝しげに眉をひそめたアレンの傍らで、ふと、神田が瞬く。
 「以前・・・同じようなことがあった。双子が関わっていたことだがな」
 途端、リナリーの表情も強張った。
 「グエン・・・・・・!」
 呟いた声には、怒りがこもっている。
 「え?あの・・・」
 一人、事情を飲み込めないアレンが彼らを見回すと、ラビが頷いて口を開いた。
 「グエンが亡くなった日・・・部室棟から飛び降りる直前まで、彼女は双子に追いかけられていたと、何人かの生徒が証言したんさ。
 でも・・・」
 「いなかったことにされたのよ!!」
 割って入った激しい声に、アレンは驚いてリナリーを見る。
 「私だって見たのよ・・・!
 奴らが、グエンを追い掛け回していたの!
 私はその時、校外のランニング中で・・・フェンス越しに、部室棟の非常階段を駆け上るグエンと、彼女を追いかける双子を見たわ!
 ・・・すぐに校内に戻って、部室棟に走って行ったのに・・・屋上に上っていったはずのグエンは・・・・・・」
 「それ以上、言わなくていい」
 神田の、無愛想だが意外と思いやりのある言葉に、リナリーがうつむく。
 「・・・神田先輩も、見たんでしょ?」
 うつむいたまま、リナリーがぽつりと呟くと、彼も頷いた。
 「俺は、双子の姿は見ていないが、奴らのけたたましい笑い声は聞いた。
 あんまりやかましいから、怒鳴ってやろうと武道場を出た時・・・グエンが、落ちてきた」
 暗い声音で語られた事に、リナリーはびくりと身を震わせ、アレンも呆然と彼を見つめる。
 「・・・この部屋だけでも二人、奴らを見た人間はいるんさ。
 あの日、奴らは多くの生徒に目撃されて、グエンを追いかけてたってのも、部活でガッコに残ってた生徒が何人も見てる。
 なのに、奴らはその日、ガッコにいなかった、ってことになってるんさ」
 「なんで?!」
 アレンが当然の問いを発すると、ラビは椅子の背もたれを抱いたまま、深々と吐息した。
 「理事長が、教師達だけでなく知り合いの病院にも手を回して、その日奴らは『検査入院のため登校しなかった』って事になっちまったんさ」
 「そんなことが・・・」
 「校長と校長派の教師達は猛反対したらしいんけど、結局押し切られた・・・っつーか、グエンの『自殺』にすることで、事件を最小限に抑えたんさ」
 「・・・・・・ちょっと待って下さい、ラビ。
 最小限に・・・って、その、グエンさんは・・・・・・」
 最悪の想像に、アレンの言葉が鈍る。
 と、俯いたままのリナリーが、スカートを握り締めて声を震わせた。
 「最初は、事故だって知らされたわ!
 だけど・・・部室棟のフェンスはとても高いの!
 事故なんかで、あそこから落ちるわけがない・・・だから、後で自殺ってことになったけど・・・絶対に違う!
 グエンは双子から逃げてたんだもの!
 追い詰められて、仕方なくフェンスを乗り越えたんだよ・・・・・・!」
 話すうちに気持ちが昂ぶって、ぽろぽろと涙をこぼすリナリーの背を、アレンが気遣わしげに撫でる。
 「それで・・・あんなに落ち込んでいたんですね、先輩・・・・・・」
 同じ頃、アレンは後見人と共に一時帰国していた。
 入学を志望していたこの学校の近くに住み、この町の中学校に通っていたのだ。
 「じゃあティナ先輩が、タタリだって言うのもわかる気が・・・でも、スキン先生は関係ないでしょ?」
 なんで?と、眉をひそめるアレンに、リナリーは悔しげに唇を噛み、神田は忌々しげに舌打ちし、ラビはまた吐息した。
 「リナもユウも、わかったみたいだな。
 スキン君の死亡日、もしくは死亡場所が、何らかの理由で変えられている」
 「なんでそんなことする必要があるんですか?!」
 「理由はまだわかんねーよー。
 ただその日、山とは遠く離れたこの近所で、ティナがスキン君の車と同じ車を見たらしいんさ。
 その車、民家の塀を壊して、そこの住人に怪我させた上、逃げちまったらしい。
 ちなみにスキン君はとっても一族想いな人で、双子の悪さを積極的に隠したり、反対するセンセたちを率先して脅したりしていた、ステキな人だったから、恨まれても祟られても仕方ないかも、ってコトさ」
 「まさか・・・・・・」
 「ひと月ちょっとの付き合いじゃ、見えないこともあるってことさ、アレン。
 お前にとっちゃ、早世が惜しまれるセンセーだったかもしれんけど、あの人の葬式で、ホントに悲しんでる人間が何人いたと思う?
 参列させられたセンセたちのしらけた顔に、気づかなかったさ?」
 「・・・・・・・・・」
 あまりのことに呆然とするアレンへ、ラビは気の毒そうな笑みを浮かべる。
 「・・・『犯人』はまんまと双子とスキン君を、『事故死』させたわけさ。
 実際、俺が卒業生達に双子のことを聞き回んなきゃ、『タタリ』だなんて言われるまでもなく、忘れられたろうさ」
 「そうね・・・これが誰かの思惑の上だなんて、思っても見なかったわ」
 「そしてその誰かは、残りの一族も殺そうとしている、と言いたいわけか?」
 それは疑わしい、と、神田は首を傾げた。
 「双子とスキンが恨まれるのはわかる。
 が、犯人は一族の全滅を図ってる、なんて、イカレた奴なのか?」
 「そうだよ・・・ティッキーも理事長の甥だけど、あのひとは中立だったよ?
 双子の味方はしなかったし、スキン先生が他の先生たちにやったようなことはしなかったもの・・・」
 「それに、ロード・・・でしたっけ?
 その子、一年生なんですよね?グエンさんの件には、関係ないでしょ?」
 彼らの視線の中心で、ラビは、立てた人差し指を軽く振る。
 「まず、ティッキー。
 彼は、双子とスキン君の暴走を止められる、唯一の人間だったにもかかわらず、それをしなかった。
 何もしなかったことによって、恨まれることがないとは言えないさ。
 そして、ロード・キャメロット。
 彼女は理事長の娘で、兄達の死に疑問を持っているらしい。
 犯人たちにとっちゃ、目障りで、できれば消えて欲しい存在じゃないさ?
 それに彼女、エリリンの証言によると・・・」
 「お前、まだ保健室に入り浸ってんのか」
 神田の呆れ口調に、ラビは気まずげに目を泳がせた。
 「いや・・・えーっと・・・授業中に倒れたクロちゃんを介抱してやっただけさ、俺は!」
 「どうせ・・・その原因を作ったのもお前だろ」
 「はは・・・まさか、蛇の抜け殻投げつけたくらいで、成年男子が気絶するとは思わんかったんさ・・・・・・」
 確信犯だな、という、疑いに満ちた視線の中、ラビはわざとらしく咳払いをして話を戻す。
 「あー・・・そんで、エリリンに聞いたところによれば、ロード・キャメロットはここしばらく、保健室に来ては奥のベッドを占領して、調べ物をしているらしいさ。
 キーボードを叩く音がうるさいって、エリリンが愚痴ってた。
 それがあんまり頻繁なんで、エリリンは彼女が何を調べてるか気になって、こっそり見たんだとさ」
 「何を調べてたんだ?」
 「ホームページ。
 もう閉鎖されちまったけど、『Treasure,to leisure』ってサイトがあったの、しらね?」
 ラビの問いに、リナリーが頷いた。
 「知ってるよ。
 私がこの学校に入ったのは、兄さんが先生をしていたからだけど、トレ・トレを参考にして進学先を選んだって子、結構いるし」
 「有名なサイトでしたよね、トレジャー・トレジャー。
 掲示板が荒れて、閉鎖されちゃいましたけど・・・」
 「俺は見たことないが・・・グエンはその掲示板で中傷されたのが自殺の原因だって報じられたよな」
 神田の言葉に、リナリーがまた、怒りを纏う。
 「あんなの後付けじゃない!!あることないこと中傷したのはマスコミだわ・・・!
 なぜかあの時、トレ・トレの管理人が掲示板のメンテできてなくて・・・その隙に書き込まれたグエンの事を、自殺の原因だった、ってこじつけただけだよ!」
 「あれだけ大きなサイトだけど、管理人は制限数以上の掲示板の過去ログを残さなかった。グエンが生きてた頃の書き込みなんて、とっくに流れてたさ」
 肩をすくめたラビに、アレンも頷いた。
 「けど・・・いつもは対応の早い管理人さんが、あの時はなんの措置も取らなくて、炎上した挙句に突然閉鎖でしたよね。
 あれは・・・意外でした」
 アレンの感想に、リナリーも頷いた。
 「それは、私も思ったよ。
 あのサイトの管理人って・・・なんとなく、教職についてる人っぽかったよね。
 コメント読んでると、時々、兄さんみたいなこと言うな、って思ったもん」
 「はい。
 結構、学校の裏事情とか詳しくて面白かったし、閲覧者同士が険悪になったら上手に収めてました。もちろん、掲示板の中傷文なんかはすぐに削除されてましたよね」
 「・・・だから変なのよ。
 炎上するまで掲示板を放置してた、ってのは、なにか、アクセスできない事情があったにしても、その後、何の説明もなしにいきなり閉鎖でしょ?
 あの管理人なら、なにか対策を講じて続けると思ってたわ」
 「・・・それで?
 ロード・キャメロットは、トレジャー・トレジャーの何を調べてたんだ?」
 一人取り残された神田が、苛立たしげに口を挟むと、ラビはまた肩をすくめる。
 「そこまではエリリンもしらねーさ。
 トレ・トレの検索画面が、いくつも開いてたのを見たってだけだもんさ」
 「なーんだ・・・じゃあ、たまたま開いてただけなんじゃない?」
 「俺だってそれだけじゃ、『兄達の死に疑問を持って調べている』なんて言わんさー。
 確定したのは、コレv
 そう言って、ラビがパソコンから引き抜いたUSBメモリを、3対の目が注視した。
 「それが・・・どうかしたんですか?」
 アレンが不思議そうに首を傾げると、ラビはにんまりと笑う。
 「エリリンにその話を聞いてから、ロード・キャメロットが来そうな時間帯にあたりをつけて、俺も保健室で寝てたんさv
 予想通り、彼女のクラスが体育やってる時に来たんで、隙を見てデータをコピったんさ♪」
 「ど・・・どうやって?!」
 目を丸くするアレンに、ラビは笑声をあげた。
 「ほんのちょっとエリリンに協力してもらって、ロード嬢がモバイルを置いてベッドを離れた隙に、ハードディスクの中身とUSBメモリのデータをコピったさ★」
 「犯罪じゃん!!」
 アレンがクッションを投げつけるが、ラビは余裕で受け止め、更に愉快そうに笑う。
 「でも、おかげで何が起こってんのか、大体つかめたさ。
 ・・・んで、知りてぇ?」
 「は?ここまで言っといて、ナニ焦らしてんだ、てめェは」
 神田が眉をひそめると、『だーって』と、陽気に笑った。
 「コレ見たら、犯罪の仲間入りだぜ、お前らv
 「・・・・・・・・・・・・」
 一様に沈黙してしまった三人に囲まれ、ラビはにこにこと笑う。
 しばらくして、
 「・・・・・・ずるいよ」
 悔しげにリナリーがうなり、
 「これだけ前置きされておいて、見ずに済むと思います・・・?」
 「・・・はめやがったな」
 アレンと神田も、忌々しげにラビを睨みつけ・・・・・・三人とも、意を決したように、頷いた。
 「見る!」
 「よっしゃーv
 陽気な声を上げ、ラビはUSBメモリを再びパソコンに差し込む。
 間もなく立ち上がったフォルダには、びっしりとファイルが詰まっていた。
 「これ、なに?」
 興味津々と寄って来た後輩達に、ラビは得意げに笑う。
 「ロード嬢の調査の記録さ。
 どうも双子のパソから、メールやパスワード、頻繁にアクセスしてたサイトなんかを引っ張ってきたみたいだな。
 すごいぜ、彼女。
 あるサイトの管理人が誰かを調べるために、色んな手を使ってるさ」
 「あるサイト?トレ・トレ?」
 首を傾げるリナリーに、ラビはしばらく考えた後、首を横に振った。
 「トレ・トレを真似た・・・というか、ミラーサイトを利用した、偽サイトさ」
 「え?!なにそれ・・・」
 リナリーが思わずパソコンに近寄ると、ラビはマウスを操作して、リンクのひとつを開く。
 「個人でやってるサイトじゃたまにあることなんだけど、アクセス数が多くて、レンタルサーバーじゃ捌ききれねぇことがあるんさ。
 大容量のサーバーを使ってればいい話なんだけど、まぁ、無料サーバーじゃ、限界もあるさね。
 トレ・トレもそんなわけで、ミラーサイトを持ってたんさ。
 それは本家が閉鎖された後も、一部が消されないまま残ってた。
 ロード嬢が探している『管理人』が、どうやって管理パスワードを入手したのか知らんけど、それを利用してトレ・トレの管理人を騙っている」
 「はぁ・・・でも、そんなことして何か、メリットがあるんですか?」
 「少なくとも、双子をおびき出すにはいい餌だったかも知れんさ」
 「餌・・・?」
 「そ。
 Treasure,to leisureって言う、超有名なサイトで有名になるって、餌」
 「そんなことに、価値があるのか?」
 神田の冷淡な言い様に、ラビが苦笑する。
 「ユウちゃんの価値観には外れんだろうさ。
 けど、そういうことにこだわる奴も、けっこーいるってコトはわかるさね?」
 「・・・ああ」
 頷く神田に頷き返し、ラビは続けた。
 「それで・・・本題な。
 おそらく、『タタリ』をなしているのは、ロード嬢が探している『管理人』さ」
 「え?!」
 「Uraniaと名乗るそいつは、FloraとHebeって仲間と一緒に、双子とスキン君の死に関わっている」
 「どうしてそんな・・・・・・」
 「ロード嬢の・・・っていうか、双子のチャットログさ。
 彼女はログを取り損ねた・・・いや、取らせてもらえなかったようだけど、双子は結構、チャットに参加していたみたいで、ログを取っていた」
 「チャットの・・・ログ・・・?」
 訝しげな神田に、ラビはマウスを操作して、メモ帳を起動する。
 「これさ」
 そこには、『サンタンジェロ学園の死神』という噂の内容が書いてあった。
 「えっと・・・これ、なんですか?」
 アレンの問いに、ラビは難しい顔をしてうなる。
 「双子が上級生達につきまとい、俺がみんなに聞きまわった、例の噂さ。
 夜になると、サンタンジェロ学園の棟の屋上から、ガイコツの姿が見える」
 「そんな噂、初めて聞いたわ・・・!」
 「だろうさ。
 そんな噂、うちのガッコにはねーもん」
 「あぁ・・・確かに、そんな話は聞いたことがない」
 「そう、それを、さも本当のことのように・・・って言うのも変か。
 双子が、噂の真偽を確かめたくなるように、このUraniaが仕組んだんさ」
 「Uraniaだけ?
 だって、このログには・・・・・・」
 「あぁ、このコピペだけ見れば、Uraniaの他に何人か、あおっている奴らがいる。
 『サンタンジェロは俺たちの通ってる学校だ』って言う、双子の発言に、やたら盛り上がってるお調子者たちがな」
 けど、と、ラビは件のメモ帳から、名前別に別のシートへとコピー&ペーストしたデータを立ち上げた。
 「まず、Urania。
 すごく丁寧で大人っぽい・・・抑制の効いた文を書く『管理人』さ」
 「そうね・・・この人が、一番元の『管理人』に近い気がするわ」
 「そう、トレ・トレの管理人の口調を、よく真似てるさね。
 次に双子を一番あおってるのが『Amphitrite(アンフィトリテ)』さ。
 やたらと『!』とか『!!』なんて感嘆符が多い。
 顔文字が多いのは『Thetis(ティティス)』で、読みにくいギャル語が多いのは『Circe(キルケ)』。
 で、こいつらの名前別に、発言を並べたファイルを、立て読みしてみると・・・・・・」
 時間ごとに並んだログとして見た場合と違い、発言のみを発言者ごとに読んでみると、時々、『口調』が混じっている箇所がある。
 敬語など知りそうにない『Circe(キルケ)』がきれいな敬語を使っていたり、激情家に見える『Amphitrite(アンフィトリテ)』が突然煩雑な顔文字を使っていたり・・・それだけならば別に、チャットをしている間に語調が移ったのだろうと思うこともできた。
 だがそもそも、双子を入れて6人もの人間がチャットをしていながら、そのうち4人が全く違う口調、と言うことの方が不自然だ。
 「もしかして・・・」
 「これ・・・・・・!」
 「同一人物・・・?!」
 3人がたどり着いた答えに、ラビは頷いた。
 「そ。
 同じ人間・・・おそらく、Uraniaが、4人分のログを作ったんさ。
 双子を体育館棟の屋上におびき寄せるために」
 「そ・・・それで・・・・・・?」
 「こいつらみんなで、双子に『噂を確かめろ』とあおっている。
 ここでは、体育館棟なんて一言も出てないけどな。
 学園にある棟の、どれかとしか言ってねぇ。
 けど、そのどれかで『ガイコツ』が見れると、みんなであおった・・・うまいやり方さ。
 はじめから『体育館棟で』って指定があったら、双子は最初から体育館棟だけ調べればいい。
 頭に血が上る時間はなかったはずさ。
 けど、このチャットでは誰も、棟が3つあることすら知らないことになっている。
 双子は当然、校舎と部室棟、体育館棟の3つをくまなく調べなきゃいけないはめになる」
 「だったら・・・最初は校舎よね。
 校門から一番近いし、職員室に入って、屋上の鍵を盗まなきゃいけないし」
 「そう、そして、次が校舎に隣接している部室棟。最後に体育館棟だな」
 「そのついでに、校舎と部活棟のフェンスを焼いた・・・?」
 「塩酸を持っているのは、双子だけさ。
 少なくとも、奴らはそう思ってた。
 だからまさか、自分達が寄りかかるフェンスが塩酸で焼かれてるなんて、思いもしない。
 無用心にも、奴らはもろくなったフェンスに上り・・・・・・」
 「・・・もろともに落ちた、か」
 「その通り」
 「自業自得、だな。
 同情する気にはなれないが、しかし、Uraniaのやり様も、俺は気にくわねぇ」
 「感心する気にはなれないさね」
 肩をすくめたラビの傍らで、パソコンを覗き込んでいたアレンは、不安げに眉をひそめた。
 「じゃあ・・・次に狙われる二人に早く、教えてあげた方がいいんじゃないかな?」
 そわそわとした口調に、しかし、ラビも他の二人も、難しげな顔をする。
 「信じて・・・くれるかなぁ?」
 「データ盗んだこと、バレたらヤバイんだけど、俺・・・」
 「ってか、この調査してんのは当のロード・キャメロットだろうがよ。知らせる必要あんのか?」
 とっくに知ってるだろう、と神田に指摘され、アレンは手を打った。
 「あ、そうですよね・・・!」
 顔を赤らめて俯いたアレンを見遣り、ラビは抱いていた背もたれから身を起こす。
 「俺、ロード嬢より先にUraniaを見つけようと思うんさ。
 俺の方が多分、彼女より冷静に対応できると思うし・・・」
 「対応って・・・どうすんだ?」
 神田の問いに、ラビは肩をすくめた。
 「もちろん、警察に自首するようお勧めするさ。
 まぁ・・・自首したところで、直接手を下してるわけじゃねェから、どの程度の罪になるかはわかんねぇけど」
 だからこそ、ロードは必死にUraniaを探しているのだろう。
 司直の手に任せず、Uraniaに復讐するために。
 そう言うと、リナリーが訝しげに首を傾げた。
 「ラビ・・・もしかして、Uraniaの目星がついているの?」
 「ホントに?!」
 目を見開くアレンに、ラビはあっさりと首を振る。
 「・・・まさか。
 ただ、双子とスキン君を殺すために、ここまで手の込んだことをする人間の真意が聞きたいだけさ。
 ゲームというには・・・殺意が明確すぎる」
 「はっ!
 手が込んでいようといまいと、殺人犯には違いねぇだろ。自分に罪科が及ばないようにするなんざ、卑怯な手ェ使いやがって」
 一刀両断に切り捨てるや、神田が立ち上がった。
 「邪魔したな」
 「あれ?ユウ、もう帰るんさ?」
 「くだんねェ噂の原因はわかった。
 一連の件のあらましもな。
 その上で、俺には関係ねぇって結論に達した。以上」
 一方的に言い終えるや、振り向きもせずに部屋を出た神田を、リナリーが憮然と見送る。
 「もう・・・憎まれ口ばっかり!」
 「はは・・・神田先輩ですからねぇ・・・」
 同じ寮生として、彼の恐ろしさを身に沁みて知っているアレンが、乾いた笑声をあげた。
 「でも・・・やっぱり怖いですよね。
 同じ学校で、次々に殺されているんですから・・・」
 とても、神田のように平静ではいられない、と呟くアレンに、ラビとリナリーも頷く。
 「月曜にでも・・・ロード嬢に直接会って、犯人探しの協力を申し出てみるさ」
 しかし、ラビの希望が叶えられることはなかった。
 ロード・キャメロットはこの日を最後に、二度とサンタンジェロ学園の門をくぐることはなかったのだから・・・。



To be continued.(前編了)
 














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