* 020 決断 *
* All is fair in love and war. *
〜 13.determination 〜
『騎士団』と言うものは、中にどれほど素行の悪い者を抱えていようと、基本的には礼儀正しく、正々堂々と勝負に挑む、戦場の精鋭集団であるべきだ。 騎士団内の、過剰に厳しい戒律も、石造りの城壁の中では、精神の鍛錬には不可欠なものとしてまかり通る。 しかし、騎士見習いなど、年若い少年達にとって、肉体的、精神的に厳しい日々の訓練は、耐え難いものであるには違いない。 親元を離れ、表には出さないものの、母親を恋しく思う者も多い砦の中で、彼らを優しく見守り、癒す女性達は、『貴女(ダーメ)』として慕われていた。 『貴女(ダーメ)』、『想い姫』と呼ばれる女性達は、ゼクセンに限らず、どこの騎士団にもいる婦人、または夫人である。 騎士となる者は、正式に入団した際、自分だけの『貴女』を選んで、全ての名誉をその女性にのみ捧げる。 だがそれは決して、その女性と恋人になることとイコールではない。 騎士は団長への忠誠と同じく、貴女へ忠誠を誓い、あくまでプラトニックな関係を保つのだ。 しかし、クリス・ライトフェロー―――― 彼女が騎士見習いとしてゼクセン騎士団に入団した後、当時の騎士団長、ガラハド卿は、苦笑しつつ彼女に言ったものだ。 「お前がダーメを選ぶものか、選ぶとしたら誰を選ぶものか、賭けまで始まっているらしい」 「賭け・・・ですか」 暇なものだな、と、クリスが呆れて問い返すと、ガラハドは傍らの副団長を見遣って、大笑する。 「ほら、わしの言った通りだろう、ペリーズ?クリスは、自分がどんな噂の渦中にいようとも、それに惑わされるような者ではない、と」 ガラハドの言葉を受けて、副団長も微笑を浮かべた。 「常に冷静であるべき騎士として、くだらない噂に惑わされないことは良いことですが、クリスは惑わされないと言うよりは、無頓着すぎますな。 少々、世事にも通じなければ、足元をすくわれることにもなりかねない。 それに・・・・・・」 と、ペリーズは一旦言葉を切って、クリスを正面から見つめた。 「侮るわけではないぞ。 しかし、事実としてクリス、お前は女だ。 私達に相談しにくいことも多々あるだろう」 「そこでな、クリス。お前がいいと言えば、の話だが、我が妻か、もしくはペリーズ卿夫人、この二人のどちらかをお前のダーメにしないものかと思ってな」 ゼクセン騎士団長夫人と、副団長夫人。 この二人は、ブラス城に住む婦人たちの中でも、一目置かれる存在である。 もちろん、彼女達の夫の地位が、敬意の根源でもあったが、彼女たち自身、美しく、慈愛と教養にあふれた、真の貴婦人たちだった。 もう若くはないとはいえ、彼女達には未だ、多くの騎士たちが『我が最愛のダーメ』として、愛を捧げている。 「どちらかを・・・といわれましても、私は既に、お二人には良くして頂いておりますし・・・・・・」 騎士団入団以前から、武家の名門、ライトフェロー家の若き当主であり、ゼクセン騎士、ワイアット・ライトフェローの娘であるクリスのことは、ブラス城内でよく知られていた。 団長夫人と副団長夫人は、騎士見習いとして入団したクリスを見止めるや、すぐに彼女を城内の自宅に迎え、母親が娘に説教をするように諭したものだった。 「剣を持って戦うなど、恐ろしいこと。あなたのように美しい少女が、戦場などに行くものではありません」 「いくらライトフェロー家が、武門の誉れ高き家とはいえ、まだ年若いあなたが、命の危険を冒す必要があるものでしょうか?」 何よりもまず、そう言われたことを思い出して、クリスは苦笑した。 「・・・えぇ、ガラハド様、ペリーズ様。 私には、お二人のどちらかを選ぶなんて、出来ません。 そこで、もし、お許しいただければ、の話なのですが・・・」 くすりと、いたずらっぽく笑ったクリスの提案を聞いて、二人はあからさまにほっとした顔を見せた。 「いや、正直、助かった。 我が妻も、ペリーズ卿夫人も、お前のダーメの地位には少々固執しておってな。 二人とも冗談混じりながら、『クリスが私を選ばなければ、あの方とは絶交します』などと言う始末で・・・・・・」 苦笑を交わす団長と副団長に微笑みかけたクリスは、許されて退室した。 こうして、クリスは二人のダーメを持つことになった。 尤も、彼女にとって、二人は『想い姫』と言うよりは、母親に近い存在ではあったが。 結局、騎士達の間にはやった賭けは、その結果を見ぬまま終了してしまったわけだが、二人の貴婦人が一人の騎士見習いを取り合った噂は、しばらくの間、騎士達の酒の肴に供されたと言う。 ゼクセン連邦最大の砦である、ブラス城から遠く離れたグラスランドの一角。 炎の英雄が待つと言う地は、氷柱のように先の尖った岩の突き出る、洞穴の最奥にあると言う。 洞穴にしては、妙に湿気の少ない岩肌の間を、クリスは二人のダーメの顔を思い浮かべながら、焦燥と困惑に赤らんだ顔を俯け、ひたすら足元を見て歩んでいた。 ―――― どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・・・・・・・。 ただひたすら、その単語を思い浮かべつつ、二人の貴婦人の忠告を思い浮かべる。 『侮るわけではありません。ですが、事実として、あなたは女性です、クリス』 前騎士団長夫人の、気遣わしげな声が、耳の奥に蘇る。 『あなたのように美しい娘が戦場に赴くなど、とても恐ろしいこと・・・気をつけても、気をつけすぎるということは、決してありませんよ』 前副団長夫人は、そう言って、我がことのように身を震わせた。 二人とも、多くの信奉者を持ちながらも、特にクリスには気を掛けてくれていた。 『純潔であること、それは女性にとって、最も大切なことです。 周りがなんと言おうと・・・たとえ、古い考えだと嘲弄されようとも、決して蔑ろにしてはいけませんよ』 母親が娘に教え諭すように、二人のダーメから言われた言葉を、クリスは素直に聞いていた。 いや、ダーメ達の想い以上に、真摯に受け止めていたのだ。 ―――― ガラハド卿夫人・・・ペリーズ卿夫人・・・・・・!! 女神に懺悔を捧げるのと同じ真摯さで、心中に二人の名を呼ぶ。 ―――― 申し訳ありません・・・!!クリスは・・・クリスは・・・不義を犯してしまいました!! 泣き出しそうになりながら、進める歩は自然と早まって、いつしか同行者達に疾走を強いていた。 「ク・・・クリスさんっ?!どうしたんですかっ?!」 息を切らしつつ、必死に呼び掛けるリコの声も聞こえず、ただ、足元を睨みつける。 「クリス殿!!モンスターが・・・」 突如、眼前に現れた異形の姿に、注意を喚起しようとしたフレッドの声が、瞬く間に切り伏せられたモンスターの残骸を前に途切れた。 ―――― このようなこと、ダーメ方がお聞きになったら、どれほどお嘆きになるでしょう・・・!選りによって、妻のある男に・・・・・・! 涙の滲んできた目元を拭って、更に歩を進める。 夜の森で抱きしめられた時、冷たい空気の中で味わったぬくもりに、言いがたい歓喜を覚えてしまった。 ずっとあのまま、ぬくもりを感じていたいとさえ思ってしまったのだ。 そして口付けられ・・・逃げることもできただろうに、受け容れた挙句、火に吸い寄せられる虫のように、彼に誘惑された・・・。 ―――― お許しください、ガラハド卿夫人・・・!クリスは、純潔を守れませんでした!! 「待ってよ―――!!!」 「ちょっとはダッグの歩幅に気を使ってください!!」 だばだばだば・・・と、平面な足を必死に繰り出して、二羽のダッグ達も必死についてくる。 だが、自身の考えに捕らわれているクリスには、そんな必死の願いも全く聞こえない。 ―――― 申し訳ありません、ペリーズ卿夫人・・・!!クリスは・・・クリスは・・・・・・!! 本格的に全力疾走を始めたクリスに、同行者全員が絶叫した。 「またんか、コラ―――――――!!!!」 ―――― 不義の子を、身ごもったかも知れませんっ!! ・・・一般常識として、キス一つで妊娠できる生物が存在するかはともかく、閉鎖された砦の中で、二人の貴婦人に教育されたクリスが、必要以上に純粋に育ってしまったとしても、誰が責めることができるだろう。 むしろ、ここまで純粋に育ててくれた貴婦人達に、親ならば・・・少なくとも、ワイアット・ライトフェローならば、涙を流して感謝したに違いない。 だが今回は、その純粋さが災いした。 ―――― もし、妊娠していたら、騎士団にはいられない・・・!何よりも、私を信頼して送り出してくれた部下達に、軽蔑されるに違いないっ!! 信頼して送り出した部下たちが聞いたら、全員腰砕けに倒れ伏すだろう事を真剣に考えつつ、クリスは思考的にも身体的にも疾走を続けた。 ―――― ごめんなさい、お父様!!クリスは、お父様に合わせる顔がありません!! 戦の絶えない国のこと、世に未亡人は多いが、貴族の当主でありながら、未婚の母となるのは、いくらなんでも外聞が悪い。 ―――― 結婚もしていないのに・・・いや、到底、結婚など出来るはずもない、既婚者の子を身ごもったなんて知れたら、親戚達になんと罵られることか・・・! 洞穴の中にいるためか、次々に暗い想像が浮かんできて、クリスは混乱した。 が、 「クリス!!」 突然、声と共に後ろから腕を引かれ、ようやく我に返る。 「・・・壁に穴を開けるつもりか?」 ナッシュの呆れ声に、自分が既に、洞穴の最奥に至った上、更に壁に向かって突進しようとしていたことに気づき、顔を赤らめた。 「・・・・・・すまない」 ぽつりと呟き、背後を見れば、疾走していた彼女に追いつけたのはナッシュだけで、他は全員、遠く置き去りにされたようだ。 「・・・姫の疾走の原因は、もしかして俺か?」 彼の問いに、黙ったままのクリスを見下ろし、ナッシュはひとつ、吐息を漏らした。 「ごめん、まさか、初めてだとは思わなくて」 「は・・・初めてに決まっているだろう!!あ・・・あのようなこと、不用意に行うものではない!!」 「不用意にって・・・別に、からかったわけじゃないけど・・・・・・」 「つ・・・妻のある身で、不謹慎だと思わないのかっ!!」 「はぁ・・・すみません」 「すみませんで済んだら、裁判所はいらんのだっ!!」 ここで、二人の意識に、活断層並みのギャップがあることには、どちらも気づいていない。 「本当に、どうしよう・・・! 騎士団長の位を退くくらいならともかく、私を信頼して送り出してくれた部下達に軽蔑され、我が敬愛するダーメ方に嘆かれた挙句、ライトフェロー家の当主の座を廃立されでもしたら・・・!!」 青ざめ、震えながら、頭を抱えるクリスに、ナッシュが失笑する。 「いくらなんでも、それは大げさじゃ・・・」 「大げさなものか!!」 大きな仕草で、クリスの腕を掴んだままのナッシュの手を払い、そのままあとずさる。 「私自身に対する批判なら、いくらでも受けよう!だが我が子が、自身のせいでもないのに、いわれのない批判を受けなければいけないなんて、あまりにも不憫じゃないか!!」 「・・・クリス、妊娠しているのかい?」 「したかもしれないだろうっ!!」 なんでわからないんだ、と、涙さえ浮かべて地団太を踏むクリスを前に、ナッシュは気が抜けたように座り込んだ。 「クリス・・・俺も、全世界の生物を知っているわけじゃあないが・・・・・・」 少なくとも人類は、キスしたくらいで妊娠しない、と、続けようとしたナッシュの眼前から、クリスの姿が消えた。 「ク・・・クリス?!」 慌てて辺りを見回すが、狭い洞穴内に、その姿はない。 ただ、床に描かれた円形の模様が、微かに光を帯びているだけだった。 一瞬の浮遊感の後、クリスは、床や壁、天井に至るまで、隙間なく模様の描かれた、奇妙な廊下に座り込んでいた。 「・・・なに、ここ・・・?」 呆然と呟きつつ、辺りを見回すが、そこには今まで、彼女の側にいた男の姿はない。 いや、彼女が、彼の前から消えたのか。 目に滲んだ涙を拭ったクリスは、ようやく、自身が何のためにここに来たのかを思い出し、立ち上がった。 廊下の最奥にある扉にまで歩み寄り、手を掛けると、緊張を鎮めるために深く吐息し、思い切って開く。 と、小ぢんまりとした部屋には、意外にも見知らぬ英雄ではなく、既知の老女が立っていた。 「サナさん・・・」 目を丸くしてその名を呼んだクリスに、チシャクランの長である老女は、穏やかな笑みを浮かべて彼女を迎える。 「どうしてここに・・・いえ!ちょうど良かった!!サナさん、聞いていただきたい事があるのです!」 口を利く隙も与えず、詰め寄るクリスに、サナは目を丸くして、ただ頷いた。 「わ・・・私・・・!妊娠してしまったかもしれないんです!!」 「え・・・えぇっ?!」 老女が目を剥き、驚愕に震える手で、クリスの両肩を覆う。 「ど・・・どうして・・・?! いえ、いつの間にそんなことに?!まさか・・・・・・!」 最悪の想像をしてしまった老女の顔から、みるみる血の気が引いていった。 「な・・・なんと言う事でしょう!まぁ・・・ワイアットに、なんと言えば・・・!!」 サナの口から漏れた父の名に、クリスが身を竦ませる。 「わ・・・私・・・お父様に合わせる顔が・・・・・・!!」 「何を言うのです!!あなたは何も、悪くはないのですよ!!」 叱り付けるように声を荒げる老女に、クリスは俯けていた顔を上げた。 「で・・・でも・・・!誘惑されてしまった私にも非はあるのです!」 離れてしまった後、失われて行くぬくもりが惜しくて、再び彼に抱かれようとした・・・妻のある男に。 そんな自分の心根が、とても浅ましく、恐ろしい・・・。 「で・・・では、無理矢理・・・その・・・されたわけではないのですか・・・?」 震える声を、絞り出すようにして問うサナに、クリスは、曖昧な表情で俯いた。 「いえ・・・無理矢理と言えば、無理矢理・・・・・・」 途端、サナの表情が、厳しく引き締まる。 「だったら・・・いいですか?あなたは、何も悪くはないのです。落ち着いて、私にその時のことを話してごらんなさい。もしかしたら、いい方法を教えてあげられるかも知れませんから」 言いつつ、サナはクリスを、部屋のやや奥まった所にあるテーブルへと導いた。 椅子を引いて、まずクリスを座らせ、その手を優しく包んで、誠実な目を向ける。 「さぁ、落ち着いて・・・あなたにとっては、思い出したくもないことかもしれませんが・・・・・・」 気遣わしげな声に勇気を得て、クリスはぽつぽつと話し始めた。 それほど長くもない話を終えた時、呆然と動きを止めたサナを前に、クリスは涙を拭うことも出来ない。 ―――― やっぱり、絶望的なんだ・・・・・・! しかし、こうなったら、覚悟を決めるしかない。 涙を拭い、クリスは、きっ、と、顔を上げた。 「サナさん、身ごもった上は、私も覚悟を決めたいと思います。 騎士団長の位を退き、ゼクセン騎士団を脱退するのは仕方のないこと・・・・・・ですが、生まれてくる子の為にも、ライトフェロー家だけは、自分の手で守りたいと思います」 きっぱりと宣言して、クリスは席を立つ。 「申し訳ありません、サナさん。私は、この場所にいるにはふさわしくない者です。失礼させていただきます」 未だ、呆然としている老女を悲しげに見下ろし、踵を返そうとしたクリスの手を、サナが素早く取った。 「・・・・・・・・・お待ちなさいっ」 なんとか自失からは抜け出た老女の、かすれた声に、クリスは仕方なく足を止める。 「・・・あなたはまだ、純潔を失ってはいませんよ」 深々とした吐息と共に吐かれた言葉を、クリスは、慰めだと受け取った。 「ありがとうございます、サナさん。ですが・・・・・・」 「いいえ、慰めなどではありませんよ、クリスさん。あなたは本当に、純潔なのですから・・・・・・」 「え?」 目を丸くして問い返すクリスの手を掴んだまま、サナは、未だ焦点の定まらない目で彼女を見上げる。 「人間は、キスしたくらいで妊娠はしません。絶対に」 「嘘!?」 「こんな嘘はつきません!!」 甲高い声を上げるサナに腕を掴まれたまま、クリスは膝を崩して床にへたり込んだ。 「じゃ・・・じゃあ、私はまだ、純潔なのですか?!」 「純粋すぎるほど純粋でいらっしゃいますよ、クリスさん・・・・・・」 どういう教育を受ければ、ここまで純粋に育つのだろう、と、サナは額に手を当て、ワイアットの姿を思い浮かべた。 クリスが生まれた折、グラスランド中に散らばった元の仲間たちに、肖像画付き書簡をばら撒いた挙句、成長記の定期配布を行っていた彼の事だ。愛娘のために、強力な教育係を用意するくらいはやったかもしれない。 まさに彼の希望通り、愛娘は純真に育っていた。 「ガラハド卿夫人!ペリーズ卿夫人!!・・・・・・よかった・・・・・・!!」 堅く両手を組み合わせ、心底安堵したように吐息されると、サナももう、何も言えない。 脱力しきって、椅子から立ち上がれないでいる彼女と、床にへたり込んだまま、熱心に祈りを捧げているクリスの、奇妙な光景を、扉を開けた第二の人物は、ぽかんと口を開けて見つめた。 「あの・・・お邪魔します」 親の教育が行き届いているのだろう、カラヤクランの少年は、礼儀正しく声を掛けて、ぺこりとこうべを垂れた。 「・・・脱力しきっているところを悪いんだが、話を進めてくれないか」 その場に現れた第三の男は、そう言って脱力した女性二人と、なすすべもなく立ちすくむ少年を救った。 「えぇ・・・ごめんなさい、ゲド」 億劫そうに立ち上がったサナは、改めて三人を見回し、炎の英雄が既にこの世にない事、ここにいる三人の誰かが、真の火の紋章を継ぐべきであることを告げた。 サナの言葉に、クリスとゲドは、さりげなく半歩を退き、心理的に押し出される形となったヒューゴが進み出る。 新たな英雄の地位に臨んだ少年の、決意の言葉を聞きながら、クリスもまた、決意を固めていた。 ―――― ここを出たら・・・。 脳裏に、彼女に激しい焦燥を強いた男の顔を思い浮かべ、苦笑する。 ―――― 一発ぶん殴る。そして・・・・・・。 苦笑が、やや和らいだ笑みに変わった。 ―――― クリスティアーネは、今でもピクニックに連れて行ってくれたお兄様の事が好きだって、教えてやってもいい。 妊娠のことは、クリスの無知が招いた大勘違いだったが、妻がいようと関係なく、彼の子を産もうと決意していたことは事実だ。 クリスの話を聞いた後の、サナの顔を思い出し、思わず笑みを漏らしてしまったクリスに、ゲドは隻眼の視線を注ぎ、後の騒動を思いやって、深く吐息した。 〜 to be continued 〜 |
| お題20『決断』です。 実はこれ、もとネタがありまして・・・・・・; 氷室冴子さんの、『ざ・ちぇんじ』という、もう十何年も前に出版されたコバルト文庫です(^^;) 平安時代、某名家に一日違いで生まれた貴族の弟君は姫として、姉君は若君として育てられ、そのまま朝廷へ出仕・入内してしまっての騒動を書いたお話です。 これはコミックスにもなっていまして、すっごく好きだったのですね(笑) この中のお話で、親友だった男性にキスされた若君(実は女性)が妊娠したと大勘違いして、出奔してしまうくだりがあるのです。 クリスだったら同じ勘違いするかな、というのと、騎士にダーメがいるなら、クリスにもいるだろうという予想を元に、書いてみたお話。(なっがい言い訳やな;;) 展開が早いのか遅いのか、自分でもよくわかんない・・・。 |
百八題