Your Name? : ヒューゴ
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君は今、生まれ故郷を背に、ゼクセン連邦領へと乗り込んだ!
右手にはカラヤ族の親書!
左手にはジンバから預かったペンタグラム!
そして胸には熱いハート!
初めてのお使いはドキドキだ!
さぁ!ゼクセン領への最初の関門、ゼクセン騎士団の要塞・ブラス城が見えてきたぞ!
どんな冒険が待ち受けているのかな?!
そのナレーション用紙を渡されて、ジンバは満足げに頷いた。
「完璧だ、ルシア!初めてのお使い、グラスランド&ゼクセン編として、テレビ局に高く売れるぞ♪」
「そうだろう?私のかわいいヒューゴを主人公にしておけば、高視聴率は間違いないさ」
うっとりと頬を染めて、ルシアは親馬鹿な台詞を恥ずかしげもなく言う。
「ところでジンバ、ビデオ隊の配置は完璧なんだろうねっ?」
余程楽しみなのか、うきうきと声を弾ませるルシアに、ジンバは大きく頷いた。
「もちろん!カラヤ族の他、ダッククランにも依頼して、水上からの撮影も可能にしてある。
フーバーの隠しカメラは空中撮影が可能だし、近距離撮影はジョー軍曹が担当してくれる!」
「ふふ・・・。楽しみだねぇ」
親たちのたくらみなど知らず、明日、ヒューゴは初めてのお使いに出発する。
ちゃっちゃ♪ちゃちゃっ♪ちゃっちゃ♪ちゃちゃっ♪
どこからかBGMが鳴り響くのを訝しく思いながらも、ヒューゴはグラスランドを渡り、ブラス城の門前に立った。
『君は今、生まれ故郷を背に、ゼクセン連邦領へと乗り込んだ!
右手にはカラヤ族の親書!
左手にはジンバから預かったペンタグラム!
そして胸には熱いハート!
初めてのお使いはドキドキだ!
さぁ!ゼクセン領への最初の関門、ゼクセン騎士団の要塞・ブラス城が見えてきたぞ!
どんな冒険が待ち受けているのかな?!』
「・・・軍曹、何か言った?」
「いんや」
訝しげに眉を寄せ、傍らのダック戦士に尋ねれば、彼は涼しーい顔をして首を振る。
「俺、ブラス城には鉄頭しかいないと思っていたけど、カラヤの人間もたくさんいるんだね」
「・・・そりゃあ、ゼクセンは名だたる商業国家だからな。あちこちから商人が集まるのさ」
言いつつ、彼は大仰に羽根を振った―――― 気づかれそうだ。一旦、散れ。
合図とともに、カラヤ族の者達はさりげなく散っていき、ヒューゴは納得しがたいものを感じつつも、軍曹に急かされるまま、ブラス城の門をくぐることとなった。
「1カメ用意!正面からの映像確保!!」
ルシアの命令を無線で受けたカメラマンが、ゼクセン側の城門から駆け寄り、密かにカメラを構える。
「2カメ!そのまま背後から接近!気づかれないようにね!」
同じく、ヒューゴらの後をつけるカメラマンが、手にした籠の隙間から一行を捉えた。
「うん、いいね!最高の構図だよ」
わざわざブラス城近くに設置したコントロールルーム(という名のテント)の中で、各所から集まる画像を確認していたルシアが、満足そうに頷く。
「ここで一発、事件でも起こってくれればいいんだがな」
彼女の傍らで、ジンバが楽しげに呟いた時だった。
「あ!」
一行を横から映していた画面に、同行のルルが、騎士の一行とぶつかって派手に転んだ様が映った。
「きょろきょろしてるからだ」
苦笑するジンバの視線の先では、ヒューゴ達と騎士の一行がなにやらもめている。
「音声係!できるだけ近寄って声を拾うんだ!急いで!」
ルシアの命令が飛び、遠かった声が鮮明に聞こえるようになった。
物珍しげに、きょろきょろと石の壁を見回していたルルが、騎士の一行とすれ違う時、従者らしき少年とぶつかって、派手に転んでしまった。
「大丈夫か?連れが迷惑をかけた」
頭上から降り注いできた声は、澄んだ女性のもので、ヒューゴは目を丸くして馬上の女騎士を見上げた。
「その服装はカラヤの・・・・・・」
「そうさ、あんたは?」
ヒューゴの問いに、女騎士はなんのてらいもなく名乗る。
「ライトフェロー?もしかして、ビネ・デル・ゼクセの・・・・・・?」
だが、その問いはエルフ族らしい長身の騎士によって阻まれ、ヒューゴ達は不快な思いを抱いて、ブラス城を後にすることとなった。
「・・・・・・ジンバ。涙を流すのは別に構わないんだが、鼻水とよだれはよせ」
音声なんか拾うんじゃなかった、と、激しく後悔するルシアの傍らで、ジンバは身も世もなく泣いている。
「うっうっうっ・・・!マイリトルハニーラブリークリス!!純粋で愛らしい、俺の天使!!
すっかりお母さん似の美人になって、パパは嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて・・・・・・・!!」
放っておくと、いつまでも続きそうな気色悪い単語に、ルシアは冷ややかに目を細めた。
「もう、悪い虫の1匹や2匹、ついているかもな」
「ルシア!俺は今から害虫駆除に・・・!!」
「座ってろ!!」
鞘から剣を抜き放ち、今にもコントロールルームを飛び出そうとするジンバの首根っこをつかんで、無理矢理引き戻す。
「あたしがいない間は、あんたがヒューゴ達を見守るんだからね!絶対ここから出るんじゃないよっ!!」
「いぃーやぁーだぁぁぁぁ〜〜〜〜!!クリスちゃぁぁぁぁぁんっ!!!」
「誰かっ!!縄もっといで!!」
言うや、ルシアは泣き喚くジンバを縛り上げ、コントロールルームの床に転がしたのだった。
親達の騒ぎなど知る由もなく、ヒューゴ一行は無事、ブラス城を抜け、ゼクセンの森を通り、ゼクセン連邦の首都、ビネ・デル・ゼクセに至った。
隙間なく石畳が敷き詰められた街・・・。
訪れる者全てを海へ誘うように、港へと傾斜していくそこには、美しい石の建築物が整然と並ぶ。
その中心にある、一際壮麗な建物こそが、ヒューゴ達の目指すゼクセン連邦評議会議場だった。
「さぁ、行こうか!」
ジョー軍曹に促され、ヒューゴ達は初めて見るゼクセンの都に足を踏み入れた。
『幾多の苦難を乗り越え、とうとうたどり着いたビネ・デル・ゼクセ!
右手にはカラヤ族の親書!
左手にはジンバから預かったペンタグラム!
そして胸には熱いハート!
初めてのお使いはドキドキだ!
さぁ!ゼクセン連邦の本拠地、評議会議場はもう目の前!
どんな試練が待ち受けているのかな?!』
「・・・・・・軍曹、さっきから、変なナレーションっぽい声が聞こえない?」
「さぁ?俺には聞こえないぞ」
しれっと答え、ジョー軍曹は一行の先頭に立って坂を下っていく。
「・・・俺、ゼクセンの首都って、ゼクセン人しかないと思っていたけど、やたらダックが多いんだね」
「そりゃあ、我がダッククランは、旅を愛する民だからな。世界各地、どんな町でだって姿を見ることができるさ」
誇らしげに胸を張り、大仰に羽根を広げる―――― 目立たない所へ退避しろ。
その合図に、ダックたちは三々五々散って行った。
「さぁ、急がないと日が暮れるぞ!」
用事はたくさんあるんだ、と、ジョー軍曹に急かされて、ヒューゴ達は勾配のきつい坂道を下って行った。
「1カメ!坂を下る一行を逃がすな!2カメ!正面からの映像確保!!評議会議場前のスタッフ!もうすぐ来るぞ!!」
害虫駆除に出ることを禁じられたジンバは、コントロールルームを支える柱に括りつけられたまま、無線で指示を送った。
ルシアは、アムル平原で行われる、ゼクセン騎士団との会見の準備のため、一時カラヤへと帰ってしまったのである。
―――― 俺を差し置いてクリスに会うなんて!
悔しさに身もだえしつつ、視線は画面に固定したままだ。
「日が暮れたら撮影は終わりだ!なんとしてもそれまでにいい絵を取るんだ!!」
クリスへの情熱は、見事にビデオ撮影へと転化されていた。
ジンバの願い通り、いい絵は取れた。
だがそれは、ヒューゴのものではなく、明らかにカメラを意識したジョー軍曹のものだったが。
「すごいや、軍曹!今、なんて言ったんだ?」
頑迷にヒューゴらの入館を拒んだ、ゼクセン評議会の兵士に歩を譲らせたジョー軍曹に、ルルがきらきらと目を輝かせる。
「ふふん♪奴らは、威儀を重んじるからな。その習慣にあわせてやっただけさ」
ジョー軍曹は誇らしげに胸を張り、大仰に羽根を広げた。
「さぁさ!用はまだあるんだ。
鼻持ちならない評議会の連中からの正式な返答を待つ間に、全部片付けちまおうぜ」
「うん・・・・・・」
やたら仕事熱心なジョー軍曹を訝しく思いながらも、ヒューゴはさっさと評議会議場を後にする彼の後ろに従った。
『厚く冷たい国の壁に妨げられながら、君は無事、一つ目のお使いを果たした!
残るはあと一つ、ライトフェロー家へのお使いだ!
手にはジンバから預かったペンタグラム!
そして胸には熱いハート!
初めてのお使いはドキドキだ!
さぁ!ライトフェロー家は君のすぐ側!
どんな試練が待ち受けているのかな?!』
「・・・・・・やっぱり!なんか聞えるってば、軍曹!」
「いいや、気のせいだ!!歴戦の戦士である俺が言うんだから間違いない!お前は今、初めてのお使いで興奮しているだけだ!!」
激しく詰め寄られて、ヒューゴは絶句する。
「・・・軍曹の方が興奮しているように見えるけど?」
「それも気のせいだ!」
断言して、ヒューゴの反駁を塞ぐ。
「さぁ!日が暮れる前に次の用事を済ませるぞ!!」
ジョー軍曹に腕を引かれるまま、ヒューゴはライトフェロー家へと向かった。
「・・・懐かしい我が家だ」
テレビ画面に映し出された光景に、ジンバはしばし見入った。
石でできた街の中で、唯一、豊富な緑に飾られた屋敷・・・。
慎み深い秋の花々が彩りを添える庭には、幾羽もの鳥達が羽根を休めていた。
そこへ、ヒューゴの一行が入っていく。
彼らを迎えに出た、ライトフェロー家の執事の姿に、更に懐かしさは募る。
「じいや・・・・・・」
ジンバは画面ににじり寄った。
こめかみに、太く血管が浮き出ている。
「俺の天使に近づく害虫は、容赦なく駆除しろと言い置いていたよな?!」
こんなことなら、ペンタグラムだけでなく密書も持たせるんだった、と、激しく後悔するジンバだった。
「・・・これは、確かにワイアット様のペンタグラムです。これを、どちらで?」
温厚そうな執事は、突然訪れた他国の客に嫌な顔一つせず、丁寧な口調で対応した。
「カラヤの戦士、ジンバから預かったものです」
「ジンバ様・・・」
訝しげに首を傾げつつも、名家の執事として、接客に抜かりはない。
「わざわざありがとうございました。なにか、お礼を差し上げたいのですが・・・」
「別にいいよ。用事のついでに届けただけだから」
更に言い募る執事を制して、ヒューゴは踵を返し、ライトフェロー家を後にした。
「っヒューゴ!!なんて礼儀正しい、いい子なんだろう!!!」
「・・・ルシア、あんた、会見の準備はどうなったんだ?」
コントロールルームに飛び込むや、両手を硬く握り合わせて絶叫したルシアに、ジンバが唖然と呟く。
「まだ日があるんでね、一旦戻ってきたんだ」
言いながらも、視線は愛息子に据えられたまま、微動だにしない。
「やっぱり、うちの子が一番だわ!素直で優しく、立派なカラヤの戦士に成長してくれて、母さんは誇らしくて誇らしくて誇らしくて誇らしくて・・・・・・・・・・!」
「親馬鹿だなぁ、ルシアは」
自分のことは、遥か天上の棚に上げて、ジンバが笑う。
「だが、一番なのはやはり、俺の天使!
クリスちゃんの愛らしさは万人の認めるところだな!」
「・・・言っとくけどね、あたしゃ、カラヤの族長として、あの娘と剣を交えることに躊躇はないよ」
「大丈夫!うちの娘は最強だから、あんたにだって負けないさ!」
親馬鹿達の間に、見えない火花が散った。
「親馬鹿もいい加減におしよ、ワイアット!」
「親馬鹿はお互い様だろ、ルシア!」
「あたしは単に、うちのヒューゴが素直で立派に育ってくれて嬉しいって言っただけだろ!あんたみたいに、溺愛しているのとは訳が違うんだからねっ!」
「生き別れになった娘を、15年6ヶ月12日ぶりに見たんだぞ!!溺愛してなにが悪い!!」
悪くはないが、そこまで正確に測られていると、父親というよりはストーカーだ。
「俺だってなぁ!ずっと側にいられるものだったら、一時も離さず、真綿でくるむように育てたかったんだいっ!」
そして、美しく成長していく姿をずっと見守っていたかったのに、と、見も世もなく泣きじゃくる大男に、さすがのルシアも言葉をなくしてしまった。
『はるばるやってきたビネ・デル・ゼクセで、君は無事、お使いを果たした!
だが、まだまだ油断はできないぞ!
ここは敵地なのだから!
胸には熱いハート!
初めてのお使いはドキドキだ!
さぁ!明日はカラヤに帰還だ!
果たして無事に帰れるのかな?!』
「軍・・・!」
「どうしたんだ、ヒューゴ!お前、いくらはじめての場所だからって神経過敏になっているんじゃないのか?!」
ジョー軍曹は先手を打ち、ヒューゴの口を塞ごうとしたが、もう騙されない。
「絶対変だって!!なんでゼクセンにいるのに、俺たちの周りはいつもカラヤ族とかダックに囲まれているの?!」
「だから!ゼクセンは名だたる商業国家で、ダックは旅を愛する民だからだ!!」
「じゃあ、さっきから聞えるナレーションは・・・」
「幻聴だ!」
有無を言わせず断言し、すたすたと先に立って港へ向かう。
「さぁ!日も暮れるし、宿に行くぞ!!」
これ以上の撮影は無理だ、という宣言に、一行を囲んでいたカメラマンたちが離れていった。
「ふふ・・・。なんとか終わったね!後は、あの子達が無事に帰ってくる様子を収めるだけさ」
機嫌よく微笑んで、席を立ったルシアを、テントの柱に括りつけられたままのジンバが恨めしげに見上げる。
「俺を差し置いて、クリスちゃんに会いに行くんだな?!」
「会談は、族長の仕事だからね」
口の端を曲げ、意地の悪い笑みを浮かべると、ジンバは本気で泣き出しそうな顔をする。
「今はまだ、会うわけには行かない、って言ったのはあんただよ、ジンバ!男なら我慢しな!!」
そう、厳しく命じて、ルシアはコントロールルームを後にした。
明日は、いよいよゼクセン騎士団との和平交渉の日だ。
ほんのわずかな休息だとわかってはいるが、戦のない日々は、確かに疲弊した一族には必要なもの。
その日々を得るためにも、ルシアは自身に課せられた役目を全うする義務があった。
ルシアがコントロールルームから去った翌日の夜。
カメラは『ほのぼのホームビデオ・初めてのおつかい編』から急転直下、『激動!バイオレンスアクション!ゼクセンからの脱出!!』と、名を改めることになる。
港に面した通りに建つ、宿からの脱出は、湾内で優雅にたゆたっていたダック達の水上カメラが追い、街なかでの逃亡シーンは、通りすがりのゼクセン人を装ったカラヤ族が追った!
更には、フーバーに仕掛けていた空中撮影用カメラがようやく役目を果たし、ヒューゴ達の『初めてのおつかい』は、当初のナレーション通り、冒険活劇となってしまったのだった。
「・・・・・・で。テレビ局に売るのか、これ?」
後に、散り散りになったカラヤ族と合流し、ルシアと再会したジョー軍曹は、大事に持っていたビデオカメラを差し出した。
彼とカメラマンたちが、意地で撮影を続けたために、ホームビデオは既に、ヒューゴの成長記録とも呼べるものとなっている。
ルシアは、満足げにビデオを受け取ると、嬉しげにそれを抱きしめた。
「ヒューゴは絶対、もっと大きな事をするに違いないよ!それまでカラヤ族族長として、撮影続行を命じ、依頼する!」
そう宣言して、彼女は押しも押されぬ『馬鹿親』の称号を得たのだった。
〜 End 〜
お題63『お使い』でしたー。
このお題を見た時、すぐに連想したのはもちろん、『はじめてのおつかい』です(^^;)
馬鹿親たちが、ビデオを持っておっかけ(笑)
「ルシア!お前もか!」
なネタは、幻水3の公式HP、「うちのこが一番v」より(笑)
そして、幻水世界に、ビデオもカメラもテレビ局もあるかい、なんて突っ込みを入れた方へ。
えぇやん。どうせパロディなんやから。笑って許してや(にっこり)
「それ以前に、時間の経過がおかしいぞ!」
と思われた方へ。
スマイル¥0って、素敵な言葉だと思いません?(にっこり)
百八題