白 圭 宮 騒 乱 記







 白圭宮(はっけいきゅう)は、戴国首都・凌雲山の頂きに広がる、泰王の御座所である。
 今そこは、新たなるあるじを得、祭にも似た高揚感に満たされていた。
 だが、そんな喧騒の輪から外れた場所も、あるにはある。
 正寝からも府第(やくしょ)からも均等に離れた場所が、まさにそれで、身分高そうな文官が一人、ぼけっと佇むにはまさにうってつけのあずまやだった。
 雲海の水辺に拠ったそこは、晩春から夏にかけては、涼を求める人々の憩いの場所であったが、十二国一早く訪れた冬の冷風を求める者は皆無だ。
 だからこそ、一人で考え事をしたい時、彼はこの場所を訪れるのだった。
 「瑞州・・・傳相かぁ・・・・・・」
 あずまやの三方を囲む欄干に頬杖をついて、雲海をわたる冷風に、ほつれた髪をなぶられながら、文官はぼんやりと呟く。
 身に着けた官服は、彼が正寝にも出入りできる身分である事を示しているが、その容姿は青年と言うよりは青年未満、と言った方が正しい。
 その外見年齢が二十代半ばで止まった事は、彼と、彼と親しい人間しか知らないことだったが、実年齢は既に百を過ぎた。
 年を取らない仙にしては、まだ若い方だと言えるが、人としての彼は、近年、気力を殺がれる事甚だしい。
 これが、王や仙が悩む『死に頃』というものかと、ぼんやりと感じながらも、彼は驍宗軍の有能な軍吏として、何とか仕事をこなしては来た。
 だがそれも、新しい王が登極するまでだ。
 仮朝が終わり、新しい王が白圭宮の主として入れば、とりあえず彼の仕事は終わる。
 その時は、驍宗に願って官を辞そう。
 そう思っていたのに、期待は見事に裏切られた。
 仮朝を支えていた彼の主が、泰王としてこの白圭宮に帰ってきたのだ。
 泰麒の選定を受け、正式に玉座に就いた驍宗は、麾下(きか)の将や軍吏を新朝の重鎮に据えて行った。
 その、大部分の人事は間違っていないと思う。
 驍宗の麾下には、元々有能な人材が揃っていたのだから。
 だが、辞めようと思っていた彼―――― 正頼は、泰麒の傳相を、と命じられた時、即答できなかった。
 傳相は、幼い麒麟を補佐する役。
 戴国の首都州・瑞州の令尹も兼任する事になる。
 そんな重職を受けてしまえば、簡単に官を辞するわけには行かない。
 正頼は、常に明朗な彼らしくもなく答えを保留にし、この場へ逃げてきたのだった。
 「私なんかが・・・麒麟のお世話なんてできるわけがない・・・・・・」
 仕事に忙殺されている間は、まだいい。
 だが、ぽっかりと時間が空いた時、何をする気にもなれない自身に、とうとうこの時期が来たかと、呆然とせずにはいられなかった。
 「こんなに気力がなくなっているのになぁ・・・」
 更に呟いた時、
 「
おい。瑞州の傳相になったそうだな」
 いきなり声をかけられて、正頼はぎくりと身を竦めた。
 声に、その性格が顕れるのが当然と言うならば、彼こそその論理の体現者とも言うべきだろう。
 戴に吹き荒ぶ冷風のごとき声の主は、間違いなく白圭宮一・・・いや、戴国一酷薄な男、英章だ。
 「・・・まだ、承諾はしてませんよ。悩み中なんで、脳みそのいらない肉体労働者は雲海で海水浴でもしてきなさい」
 振り返りもせず、素気なく言ってやったが、相手は去るつもりはないらしく、正頼の背後から手を伸ばし、武人らしい大きな手でがしがしと正頼の頭をなでた。
 冬の冷風にほつれていた正頼の髪が、戻し様もなく乱れる。
 「極寒の雲海に飛び込んだら、五秒で冷凍完了だ。嘘だと思うなら、ここから突き落としてやろうか?」
 正頼が頬杖をつく欄干の真下は、水底に暗雲たれ込める雲海である。
 「馬鹿を言ってるんじゃありませんよ。冷凍保存で済むあなたと違って、か弱い私は即死です―――― あぁ、でも、それもいいかな、って気分ですねぇ、今は」
 切なく吐息する正頼に、英章はむっと眉を寄せ、正頼の襟首をつまんだ。
 「そーか。落ちてみるか。言っとくが、冬の海は冷たくないぞ。そんなもの、感じる間もなく痛みが襲ってくるからな」
 冗談ではなく、雲海に放り出しそうな雰囲気に、正頼はようやく振り向いて抗議の声を上げた。
 「あのね、英章。私は考え事をしているんです。
 筋肉馬鹿の相手をしている場合ではないんですよ。邪魔しないでくれませんかね?」
 「無能非才のお前が、いくら考えたって無駄なことだ。言うだろう、馬鹿の考え休むに似たり、ってな」
 「・・・・・・馬鹿に馬鹿と言われるほど、落ちぶれちゃいませんよ」
 そう言い捨てるや、再び雲海に目を戻した正頼から手を放し、英章は自身の腰に両手を当てて吐息する。
 「傳相の件、断るのか?」
 「・・・あなたの嫌なところは、人が悩んでる時に結論を急がせるところですよ」
 「即断即決の武人だからな、俺は」
 「熟慮の文人なんです、私は」
 「官を辞する、なんて言わないだろうな?」
 「・・・・・・ほっといてくれませんかね?」
 遠慮のない言葉の数々は、いつもならば笑って過ごす程度のものだ。
 が、今日はその一つ一つが刺のように正頼を苛んだ。
 「・・・・・・琅燦が、気にしていた」
 やや間を置いて英章の口から漏れた名が、また正頼を苛立たせる。
 気にしていた、と、彼はいうが、実際は『こんな事を言っていた』と、冷静に分析されただけだろう。
 彼女は、一官吏の健康状態などに一々かまけるような人情家ではない。
 「あの小娘とお前は、年も大して変わらないらしいな?」
 意地の悪いことに、正頼の反応を楽しんでいるらしく、英章の声は明るい。
 「なのに、一方は心身ともに充実し、もう一方は今にも入水しそうな消沈ぶりか。中々面白い比較だ」
 「私は彼女に比べて、繊細にできてるんですよっ!」
 「ふん。その台詞、あの小娘が聞いたら、新たな兵器を発明してくれそうだな」
 冷笑を含んだ声に、正頼はむっつりと黙り込んだ。
 英章の言った事は、とても現実味を帯びていたので。
 「で、気にしていたというからには、彼女は私が悩んでいる理由を推理してあなたに聞かせたわけですか?」
 「おう。お前が死に頃を迎えているらしい、ってな」
 それは愉快そうな笑声を、憮然と背後に聞きながら、正頼は欄干に乗せた両腕の中に顎を埋めた。
 「諸行無常・・・・・・ですよ」
 ぽつりと呟いた言葉は、英章自身の笑声にまぎれ、彼には聞えなかったようだ。
 死に頃・・・人であれば、既に死んでいるだろう年になると、王も仙も、格段に気力を殺がれる事が多い、と言うことは以前から知っていた。
 こんなに暢気な自分には無関係な話だろうと、大して興味も抱いてなかったが、なんとなく無気力になっていく様に、もしかして、と疑いを抱いたのは、官吏の名簿を整理していた時だった。
 共に大学で学んだ者、同じ時期に官として登用された者の幾人かが、既に一身上の都合を理由に官職を退いていた事を知って、愕然としたのだ。
 「・・・琅燦に、聞いてみたんですよ。あなたには、こんな事はないんですか、ってね」
 ぽつりと漏らした言葉に、英章が更に笑声を高めた。
 「あの小娘が、そんな殊勝な心境になるものか。陽が西から昇ってもありえんね!」
 即答されて、正頼は腕の中に埋めた口元を、僅かに歪ませた。
 事実、そう尋ねた彼に、琅燦はうずたかく積まれた書籍群を示して言ったのだ。
 「あたしには、まだまだ知りたい事があるんだ。今、知りたいと思っている事を全部調べ終えたとしても、また新たな疑問が出てくるに決まってる。
 仙とはいえ、いつついえるか分からない生涯を、気力がどうの、なんて理由で無駄にしたくはないね」
 「・・・・・・よりによって彼女に聞いた辺りに、死に頃の悲哀が漂うってもんでしょ」
 吐息交じりの声に、英章はぴたりと笑い止んだ。
 「なんだ、本気だったのか」
 てっきり冗談だと思った、と、真剣な口調で言われ、正頼は更に気力を失う。
 よりによって琅燦に相談を持ちかけた挙句、冷酷な英章なんぞに愚痴るとは、落ちるところまで落ちたものだと、嘆かずにはいられない。
 が、英章は自身の腕の中に沈没した正頼の肩をつかみ、無理やり振り向かせた。
 「それならお前、傳相の件は、ぜひとも受けるべきだぞ」
 「なぜ・・・?」
 「いわゆる一つの、動物療法って奴だ」
 「・・・・・・・・・はぁ?」
 英章の言わんとする意味をつかみそこねて、正頼が首を傾げる。
 「動物療法って・・・犬や猫を飼って、精神的安定を図る、ってやつですか?」
 「おう。それだ、それ」
 気力を無くした老人や、情緒不安定な人間が動物を飼えば、精神が安定する事が多い・・・・・・。
 そんな論理よりも先に、それは長い荒廃に耐えてきたこの国の人々が、経験で身につけた療法とも言うべきものだった。
 蛇足ながら、動物療法を求める人種は、大学生が格段に多いらしい。
 「お前も大学の時、やたらと動物を飼っていたと言っていただろう?」
 「はぁ・・・まぁ・・・・・・」
 そう、曖昧な返答をしていた正頼が、はっと目を見開いた。
 「英章!麒麟をドーブツ扱いとは何事ですかっ!!」
 「動物だろう。それも、犬や猫より従順だし、そう簡単には病気にもならん。気のくじけたジジィを癒すにはうってつけのドーブツだな」
 「なんて事を言うんですかっ!!不敬罪ですよっ!!」
 世界に十二頭しかいない貴い神獣に対し、無礼極まりない、と激怒する正頼に、しかし、英章はしれっと言った。
 「だって、フツーのガキにしか見えないんだもんよ」
 「・・・はぁっ!?」
 「金のたてがみなら、一目で麒麟だと認識できるんだが、黒麒、ってのは見た目フツーのガキだよな。
 胎果だからか、妙にものなれない風で、驍宗様の後をぱたぱた追いかけてるし」
 「え・・・英章、いくらあなたでも、カナリ言いすぎですよ・・・」
 あまりの暴言に、めまいすら覚えた正頼の頭をまたくしゃりと撫でて、英章は笑った。
 「そう思うなら、実物を見て来いよ。俺の感想が正しいって分かるだろうさ」
 言って、軽く手を振りつつ去った英章の背を見送った正頼は、一つ吐息して、欄干に背を預けた。
 背後から迫る冷風にあおられ、乱れた髪が頬をくすぐる。
 「会ってみるだけなら・・・まぁいいか」
 冠を支える紐を解き、髪を結っていた巾を取り去ると、肩に落ちた髪を冷風が梳って行った。


 ―――― そんな馬鹿な。
 泰麒付の女官に、泰麒の居場所を聞いてやって来たのは正寝。
 来客があったとは知らず―――― それも、大王朝として名高い雁の王と台輔、更には慶の台輔まで臨席しているとは知らず、正頼は慌てて柱の陰に隠れた。
 そのまま、見つからないように退出しようとしたのだが、ちらりと目の端に飛び込んできた情景に愕然とし、硬直してしまった。
 ―――― 何を馬鹿な事を・・・!
 他国の王や麒麟に対して、その感想は甚だ不敬に当たると、分かってはいるのだが、そう思わずにはいられない。
 こともあろうに彼らは、泰麒を叩頭させようとしていた。
 ―――― そんな事ができるわけがないじゃないか!
 慌てて驍宗を見遣ったが、彼も冷静に泰麒を見つめるだけである。
 そうこうするうちに、泰麒の苦しげに歪んだ顔に幾筋もの汗が流れ、鋼色の髪を吸いつけて行った。
 「おやめくださ・・・・・・!」
 たまらず、飛び出していこうとしたが、床から現れた獣の脚が、正頼の官服の裾を床に縫いとめ、動きを封じた。
 「お静かに・・・・・・」
 いずれかの麒麟の、使令であるのだろう。
 あらぬ場所から漏れ出た声に、正頼は眉をしかめつつも従った。
 王や台輔達の居並ぶ中に、正頼がなんの権利もなく入って行く訳には行かないのだ。
 我が事のように、正頼は苦しげに再び泰麒を見遣ったが、苦行は間もなく終わりを告げた。
 泰麒の苦渋を見かねた麒麟達が、その本性にふさわしい仁をもって幼い麒麟を助けてくれたのだ。
 ほっと、胸を撫で下ろした正頼の耳に、なぜそのような蛮行が行われたのか、その理由が語られた。
 「麒麟は、王以外の者に額ずく事はできない」
 そんな、当然の事を、幼い麒麟は知らなかったのだという。
 驚き、気が抜けると同時に、どうしようもなく笑いがこみ上げてきた。
 先程とは違う苦しみに肩を震わせながら、正頼は使令に願って解放してもらい、慌てて部屋を退出するや、人の目につかない場所に駆け込んで、しばらく笑いつづけた。
 英章の言うとおり、普通の子供・・・それも、市井の子供と何ら変わりのない姿に、それまでの気負いがなくなって行く。
 「・・・・・・動物療法と言うのも、あながち間違いではないかもしれませんね」
 まだクスクスと漏れてくる笑いに肩を震わせる彼の顔は、先程、雲海に映った者とは別人のように生気に満ちていた。


 「おい。瑞州傳相の件、引き受けたらしいな」
 人事異動に際して、官舎を移る事となった正頼の元へ、英章が訪れたのは、それから数日後の事である。
 「えぇ。幼い麒麟をお輔(たす)けするのも、中々面白そうだと思いましたのでね、お引き受けさせて頂きました」
 彼の従者としてあてがわれた下官たちが、慌しく荷物を持って行き来する中、のほほんと茶を喫しながら正頼が笑った。
 「それで、わざわざお祝いにきてくれたんですか?」
 「おう。何か引き出物でもあるかと思ってな」
 予想はしていたが、素直ではない言い様である。
 「普通、お祝いを持ってきませんかねぇ?」
 苦笑する正頼に歩み寄り、英章はがしがしと彼の頭を撫でた。
 自宅とは言え、きちんと結っていた髪が乱暴な扱いに耐えかねて乱れてしまう。
 「なんで俺がそんな事をしなきゃならんのだ」
 吝嗇(けち)、であるのならまだ可愛げがある。が、英章はただ単に、人の為に何か選ぶ、と言う行為がめんどくさくてならないだけだ。
 「・・・もう、今更そんなことは期待してませんけどね。さっきから頭撫でるの、やめてくれませんかね?
 「いや、無能ながきんちょが良くやったもんだと思ってな」
 英章はおそらく、正頼が傳相の地位に就いた事ではなく、死に頃を乗り越えた事を言っているのだろう。
 その、素気ない口調に、正頼は苦笑した。
 「・・・・・・百歳超えちゃってもがきんちょなんですか、私は?」
 「俺より年下は、いくつになってもがきんちょだ」
 きっぱりと言われて、正頼が笑声を上げる。
 「では、あなたより先に挫けるわけには行きませんね。私が消えたら、あなた、死に頃の虚しさを解消する相手がいなくなるでしょう?
 寂しがり屋の先輩に、後追いされては外聞が悪いですからね」
 「・・・・・・・・・・・っ!」
 元気と共に戻ってきたらしい毒舌に、英章は絶句した。


 そうして、適材が適所に配された一日、正頼は泰王となった驍宗に呼び出された。
 「蒿里とは、上手くやっているようだな」
 「えぇ、おかげさまで。台輔はとても素直な、いい御子でいらっしゃいますね。他国と違って」
 彼の言葉は、我侭で扱いづらい麒麟の存在を、暗に含んでいる。
 先日、正式に面会した延麒の事だろうと察した驍宗が、むっと眉を寄せたが、正頼は気に留める様子もない。
 「・・・呼び出したのは他でもない。蒿里に、傳相とは子守りのことだと言ったそうではないか」
 「言い得て妙でしょ!私も中々名言を吐けるようになったものだと、感心しておりますよ」
 「えぇいっ!!自画自賛している場合か!」
 「あいにく私は、絵画をたしなんではおりませんが」
 「戯言を!」
 「私から戯言をとったら、骨と皮しか残りませんよ」
 短いが、激しい戯言の応酬に、根が生真面目な驍宗は早くも挫けていた。
 正頼は以前から、寝ている虎をわざわざ突付くような危険を冒しては愉しむ節のある男だったが、泰麒の傳相となって以来、その悪癖に磨きがかかったようだった。
 「とにかく!胎果である蒿里に、この世界の常識を教えるべき立場のお前が、率先してからかうとは、何のつもりだ!」
 気の小さな者であれば、失神するのではないかと思われる激しい怒号に、しかし、こゆるぎもせず、正頼はにっこりと笑った。
 「ボケ防止です」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだと?」
 聞き違いかと、問い返す驍宗の顔が、珍しく間抜けている。
 「ですから、ボケ防止です。
 毒舌の矛先は、今まで通り英章に受けてもらっているのですが、それだけですと、どうにも頭の回転が鈍くって。
 その点、台輔はいいですねぇ。素直でいらっしゃるから、次はどうやってからかおうか、考えるのが楽しくって!
 仕事に張りが出ましたよ」
 「ボケ・・・防止・・・・・・・・・?」
 そんな理由か、と、自失する驍宗に、正頼はあっさりと頷いた。
 「重要な問題ですよ。
 畏れながら泰麒は、世界に十二頭の貴い麒麟。
 それを動物療法に使えるなんて、私は運がいい」
 「ど・・・動物・・・・・・・・・」
 「驍宗様も、体験済みでしょう?泰麒の癒し効果は、大変なものじゃありませんか?」
 確かに、と頷きかけた驍宗は、慌てて首を振る。
 「蒿里はお前専用の療法士ではないぞ!!ちゃんと台輔としてふさわしく教育するのだ!!」
 「もちろん、その辺りにぬかりはありませんよ」
 心外だなぁと、笑う顔は爽やかそのもの。
 「対外的には完璧に!愛情込めて養育中です!」
 そのうち、観察日記刊行しますから、と嬉しげに笑う。
 「観察日記?」
 「はい。蓬山と雁、それに慶からは、既に定期購読の申し込みを頂いております」
 景台輔なんか、お一人で十冊予約されてるんですよー、と、笑う正頼に、再び驍宗の怒号が浴びせられた。
 「―――― っ私の知らないところで何をしているんだ、お前は!!」
 「あ、驍宗様には無料で贈呈しますから、そんなに怒らないでくださいよー」
 「そんな事を言ってるんじゃないっ!!」
 「そんなに怒ってたら、いつか脳の血管が切れますよ」
 もうお年なんですから、と、わざとらしく肩を竦める様に、根が生真面目な驍宗は言葉を失って撃沈した。
 「・・・・・・・・・もう・・・・・・・・行っていい・・・・・・・・・」
 それ以上、何も言えなくなったらしい王に、にっこりと笑って、正頼は一礼した。
 「それじゃ、失礼しまーす」
 にこやかに退出した彼からは、既に死に頃の悲哀は消え失せている。
 「さぁて。今度はどうやってからかおうかなぁ」
 厳冬の風に撫でられた頬には、少年のような活力が漲っていた。







  〜 劇 終 〜













作者コメント

・・・先に言っておきますが、英章も正頼も、まがい物ですからね;
容姿も性格も、『こんなんじゃないかな』という、願望90%、妄想50%ですから。(100%超えとるがな;)

これは、一条さん宅でのチャットが元でできました(笑)
正頼が泰麒で遊んでいるのは、ボケ防止じゃないかと、ふと思いつきまして、それが元ネタになっちゃってます(笑)
先にアップした、「悪友」(十二国画像全集)は、この話を読む前に、軽く免疫をつけておいてもらおうかな、と言う意図の元、作成されました(笑)
さぁ、これでちょっとでも戴と戴国官吏に興味を持たれた方は、
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十二国記