† The Rain Leaves A Scar †
3. The first case.








† Heavenly †
[ 閲覧(0人) 参加(3人) : Urania,Hebe,Flora,]
 
Urania †  ニュースは見ましたか、皆さん?
Urania †  もうわかっていることでしょうが、あの双子は、事故で死んだのではありません。
Urania †  私は私のやるべきことをやりました。
Urania †  次は、あなたの番ですね、Flora。


 それぞれが、画面の前で凍り付いている様が、見えるかのようだった。
 いつまでも新たな書き込みのない画面を、Uraniaは満足そうに見遣る。
 チャットページとは別に開いたニュースページでは、サンタンジェロ学園で起きた事件が報道されていた。



国内
入学式前日の惨劇 4月8日10時00分配信
8日午前7時30分ごろ、私立サンタンジェロ学園(ケビン・イエーガー校長)の構内で、少年二人が倒れているのを同校職員が見つけ、119番通報した。
二人は同市内の病院に運ばれたが、死亡が確認された。
警察の調べでは、二人は同校に通う双子の兄弟。
家族の話によると、二人は昨夜午後10時ごろから連絡が取れず、同11時半頃、警察に捜索依頼が出されていた。
転落現場付近には、屋上に設置されていたと見られるフェンスが落ちており、同署は二人が屋上から転落したものとみて、調べている。



 ―――― 随分と驚いたことだろう。
 この3人しか参加できないチャットで、Hebeが『殺して欲しい』と言った二人が、本当に死んでしまったのだから。
 しかも、Uraniaの手によって。
 どれだけ動揺していることだろう、と、Uraniaはほくそえんだ。
 Uraniaの最後の書き込みから随分と時間が経った後、ようやくログが流れ出した。


Hebe †  ホンとにやったんですか
Flora †  ニュースでも事故の可能性が高いって言ってました
Urania †  私は最初に、あきらかに殺人だとわかるような殺し方はしないと言ったはずです。万が一にも、捜査の手が伸びるようなことがないように。当然の用心ではありませんか?
Urania †  あなた達には、あらかじめ教えていたでしょう?4月7日、夜に彼らを殺します、と。それに合わせて、Hebeはアリバイを作っておくようにと。それでも私を疑いますか?
Flora †  どうやって


 動揺のあまりか、まともな文も打てない参加者達に、Uraniaは笑みを深めた。


Urania †  それは、ちゃんと相談したではありませんか。
Urania †  彼らを、私のHPに誘ったのです。 かつてのHPが、未だに存在しているかのように見せていただけですが。
Urania †  カウンターを操作し、掲示板に彼らが喜びそうな話題を書き込んで、多くの閲覧者が彼らの活躍に期待していると思い込ませたのです。
Urania †  後は、電話で誘導するだけでした。彼らの、最期の悲鳴は録音してありますが、聞きたいですか?
Hebe †  いえ
Flora †  しんじます


 素直な参加者達に微笑み、UraniaはFloraに呼びかけた。


Urania †  さぁ、Flora。あなたの番です。あなたは私の敵を殺さなくてはいけません。
Flora †  でも
Urania †  いじめられる苦しみは、私もよく理解できるつもりです、Flora。 私の大切な友人であるHebeが、理不尽な要求に苦しめられている様を見逃せず、私はHebeの敵を殺しました。
Urania †  次はあなたが、私を苦しめる敵を殺す番です。
Urania †  Flora、私はあなたが、私達の友情を裏切りはしないと、信じていますよ。


 「信じている・・・・・・」
 呟いて、Uraniaはクスクスと笑声を漏らした。
 もしかしたらそれは、脅迫よりも、恫喝よりも、むしろ人を追い詰める言葉かもしれない。
 Uraniaは笑いながら、次の言葉を送信した。


Urania †  安心して下さい。 私の指示した通りにやれば、誰もあなたの犯行だとは気づきません。 そもそも、あなたには動機がないのですから。
Flora †  わかりました


 長い時間をかけて、しかし、とうとう送信されたFloraの答えに、Uraniaは満足げに頷く。


Urania †  Flora、よく決断しました。 Hebeはどうですか?
Hebe †  ウラーニアさんは私の敵を殺してくれました。だから私は、フローラの敵を殺します。
Urania †  ありがとうございます、Hebe。
Urania †  では、まずは簡単に、次の敵を殺す相談をしましょう。 Hebe、あなたはどんな殺し方を考えたか、教えてください。


 考える時間を与えず、UraniaはHebeを相手に話を進めた。
 Floraはまだ、迷っているだろう。
 だが、Floraを追い詰めるためにも、UraniaはHebeと共にFloraを囲い、逃げ道を塞がなければならなかった。


Urania †  よろしい、では、基本方針はこれで決まりとしましょう。 Flora、あなたもこれで大丈夫ですね?


 大丈夫ですか、とは、問わない。
 既に決定事項として話を進めるUraniaに、Floraはもう、同意するしかなかった。


Urania †  では、詳しい方法と実行日は、後ほど私が指示しましょう。 万が一にも私の敵が、罠から逃れることのないように。 Floraは、準備に怠りのないようお願いします。
Flora †  はい わかりました


 最早、そう言うしかなくなったFloraの気持ちを想像して、Uraniaはわずか、苦笑する。
 「大丈夫・・・」
 計画は天体の動くがごとく、精確に進行している。
 後はUrania―――― 天文学を司る女神になりきって、小惑星たちの動く様を見つめるだけだ。


Urania †  Flora、恐れないで下さい。 あなたは、絶対に無事です。 たとえ不備があっても、私が処理します。
Flora †  はい
Urania †  Flora、これはゲームなのです。 勝たなければ意味のないゲーム。 わかりますね?
Flora †  はい


 気の毒な生贄に、偽りではない同情を込めて、Uraniaは頷いた。
 Floraはもう、Uraniaの掌の上で踊るしかない。
 「花の女神よ、永遠なれ」
 ネット上での、偽りの口調が声になって漏れ、Uraniaはまた、苦笑した。



To be continued.

 


















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