† The Rain Leaves A Scar †
7. Irritation.






† Heavenly †
[ 閲覧(0人) 参加(3人) : Urania,Hebe,Flora]
 
Flora †  どうしようばれた


 ろくな説明もなく打ち込まれた一文に、Uraniaはパソコン画面の前で眉をひそめた。


Urania †  落ち着いてください、Flora。何があったのか、最初から話してください。


 Uraniaがそう、打ち込んだ途端、Floraはとてつもない速さで事情を説明する文を叩き込む。
 まともな変換どころか、まともな文章にもなっていない文が表示される画面を黙って見つめていたUraniaは、Floraの手が止まってから、頷いた。


Urania †  つまり、先日このチャットに入ってきたLordが、あなたの素性を特定したと、そういうわけですね?
Hebe †  それやばいよ!フローラがあのひと殺したこともばれたの?!
Flora †  しょうこはないからいいがかりだとおもけど


 ―――― 証拠なんてあるはずがない。
 Floraの書き込みに、Uraniaは不快げに眉を寄せた。
 ロードが・・・あの一族の少女が、ある程度まではHeavenlyに迫ることは予想していたし、むしろおびき寄せもしたのだ。
 決して、Uraniaの失策で追い詰められたわけではなかった。
 しかしそれは、共犯の二人にも言えない事だ。
 Uraniaは、しばらく考えてからキーボードを叩いた。


Urania †  証拠などあるわけがありません。彼女は警察に対して証明できるものなど、なにひとつ持ってはいないのです。
Urania †  Flora、あなたが彼女の言動に対して、動揺することなど何もないのですよ。
Flora †  でもわたしたえられない


 ―――― 耐えられないのはこちらだ・・・。
 Floraの、ロードに対する恐怖が根深いことは知っていたが、たかが詰め寄られたくらいであっさりと屈しそうになっている彼女の弱さに、さすがのUraniaも苛立ちが募る。
 だがすぐに感情を押さえ込むと、Uraniaは殊更にゆっくりと、キーボードを叩いた。


Urania †  大丈夫。Lordがあなたに手を出せないよう、私が手を打ちます。
Flora †  ほんとうに
Urania †  ええ。ですからFlora、あなたは何も心配することなどありません。
Urania †  落ち着いてください。その間に、HebeがLordを殺します。
Hebe †  はい。とうとうですね。
Urania †  よろしくお願いします、Hebe。大丈夫。双子も、教師も、事故で片付きました。今度も同じです。
Urania †  Flora。安心してください。どうか落ち着いて。あの教師を殺した時のことを思い出してください。あなたは見事に彼を崖へ誘い出し、死に至らしめたではありませんか。
Flora †  はい。そうでした・・・。
Flora †  ごめんなさい、取り乱しちゃって。
Hebe †  ねぇ、実際はどんな風だったの?先生のことは私だけ、よく知らないよ。


 Hebeの問いに、Uraniaはほくそ笑んだ。


Urania †  雨でぬかるんだ山道を、Floraは大変な思いをして登ったそうですよ。
Flora †  すごく歩きにくくて大変だったけど、目的地にはなんとか一人でたどり着けたよ。
Flora †  ウラーニアさんの言った通り、そこは電波が通じてたから、崖に仕掛けをした後、あのひとに電話したの。怪我して動けないから、助けてって。
Hebe †  え?なんでそんな電話ができるの? 双子の時は、私があいつらのケータイ番号調べてウラーニアさんに教えたけど、教師のは教えてくれないでしょ?
Flora †  偶然だったんだけど・・・あのひと、私のクラスの担任になったんだ。
Hebe †  そんな偶然ってあるんだ!!
Flora †  うん。わたしもびっくりした。 でも、ケータイ番号聞くのには便利だったよ。
Flora †  電話して、本当に来てくれるかどうかは心配だったけど、あのひと来たよ。そして、私が仕掛けをした場所に足を乗せて、落ちてしまった。
Flora †  頑丈そうな人だったけど、すごく高い場所から落ちたし、下は岩場だったし、助からなかった。仕掛けを片付ける時、ちょっと下を見たけど、あのひと、全然動かなかった。
Hebe †  仕掛けって?
Flora †  あの辺りにたくさんある石をできるだけ平面に見えるように並べてから、裏に発砲ウレタンを吹き付けたの。
Flora †  岩の上だから安心だと思わせて、実は板と同じだから。足を乗せた途端、滑り落ちちゃうんだ。
Flora †  後は、発砲ウレタンを吹き付けたときに、一緒につけておいた紐で石の板は回収して、石はばらばらにして別の場所に捨てた。
Hebe †  発砲ウレタンかぁ・・・使いこなしちゃうのがすごい。
Flora †  そんなことないよ。簡単だよ。


 すっかり立ち直ったFloraの得意げな様子に、Uraniaは冷笑を浮かべた。
 ―――― 手の上で、踊れ・・・・・・。
 踊り疲れて、目を閉じるまで――――・・・・・・。
 思い浮かんだその言葉に、聞き覚えがあるような気がして、Uraniaはふと、視線をさまよわせた。
 だが、パソコンのバックライトに淡く照らされた周りに、目新しいものなどなく・・・再び、液晶画面に視線を落とす。
 そこでは、Uraniaの手の内で踊る二人が、興奮気味の会話を交わしてた。
 無理もない。
 Floraにとって念願の、『敵の排除』が始まるのだ。


Flora †  いつやるの?


 立ち直った途端、また出すぎた発言をするようになったFloraへ、Uraniaは苦笑を向けた。


Urania †  まもなく、ですよ。


 そう、まもなく、この『ゲーム』は終わる。
 Uraniaはしばし瞑目し、微笑んだ。
 この一連の不幸が、全てUraniaの仕組んだことだと知った時、『あのひと』はどんな顔をするだろう・・・・・・。
 猫が喉を鳴らさんばかりの満足げな表情を、しかし、Uraniaは拭うように消し去った。
 「まだ、終わっていない」
 戒めるように厳しい声音で呟いて、Uraniaはその日のチャットを終わらせた。



To be continued.
 














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