† The Rain Leaves A Scar †
4. Investigate.






 六月に入って最初の日曜日は、厚い雨雲に覆われていた。
 「・・・なんか最近、よく降るよな」
 休診日の札がかかった診療所の玄関に立ったラビは、傘を開きつつ、ぼんやりと呟く。
 「ここんとこ空梅雨ばっかだったのに・・・アレン効果かな、やっぱ。
 雨男の研究とかしたら、儲かるかな・・・」
 らちもないことを呟きながら、ラビは雨の中へ歩を踏み出した。
 ぶらぶらと、急ぐわけでもなく道を行き、通りかかったコンビニエンスストアに入る。
 「やほーティナ♪」
 「げ、赤ウサ」
 レジにいた店員に声をかけると、彼女は思いっきり眉をひそめた。
 「なによ、邪魔しに来たんなら蹴りだすよ?」
 「んだよー。
 他に客いねーから、いいじゃん」
 「あー・・・まーね・・・・・・」
 特に用でもない限り、外出を控えたくなる雨の日だ。
 二人して見渡した店内には、彼らしかいなかった。
 「まぁいいや、暇だし。なんの用?」
 「うん、お前さ、ゴールデンウィークって、このバイト入ってたんだろ?」
 「・・・なによ。どーせデートの相手もいなかったわよ」
 じっとり睨まれて、ラビは慌てて手を振る。
 「いっ・・・いやっ!別に、そう言うこと言いてぇんじゃねぇさ!
 ゴールデンウィークに、この向かいであった事故のことを聞きたいだけさ!」
 「事故ぉー?」
 鼻に皺を寄せて、ティナはショーウィンドーの向こう側を見遣った。
 「あのお家の塀に車が突っ込んだ時のこと?」
 「そう、それ。
 お前、ガッコで話してたよな?あの事故の・・・」
 「目撃者よ。
 もう、犯人逃げちゃうもんだから、ケーサツがうるさかったのなんの!」
 ラビの言葉を遮るように言って、ティナはショーウィンドーの前の雑誌コーナーを示した。
 「雨が降り出す前の、午前10時ごろよ。
 あたしがそこで雑誌の整理してたら、いきなりすごい音がしてびっくりしたんだ。
 2階の自宅にいた店長も驚いて降りてきたんで、二人で店の前に出たのね。
 丁度、お客さんもいなかったしさ。
 そしたら、塀を壊した車が急発進したの。
 走って見に行ったけど、ここ、40km制限の道なのに、倍以上のスピードでいっちゃって、バックナンバーも見えなかったよ。
 店長がすぐにケーサツに電話したんだけど、あたし、あの家のおじさんがいつまでも出てこないから心配になってさ、道路渡って門のとこから声かけたら、中から『助けて』って聞こえたのよ。
 門開けて入ったら、おじさんが壊れた塀の下敷きになってて!びっくりして119番したの!」
 「ふぅん・・・そんで、おっさんは助かったんさ?」
 「うん。
 あたしは救急車呼んだつもりだったんだけど、塀の下敷きになった人助けてくれるのって、消防士?じゃない?なんだっけ?
 とにかく、消防署の人が来て、塀の下からおじさん助けて、病院に連れてったんだけど、骨折しただけで命に別状ないって」
 「そいつは良かったさ。
 で、犯人まだ捕まんねーの?」
 ラビがその問いを発した途端、ティナは眉をひそめ、辺りを見回す。
 誰もいないことを再確認したが、それでも彼女は声を潜めた。
 「今じゃ違ったんだってことは知ってんだけどさ、あの時はあたし、スキンの車だと思ったんだ」
 「黒のワゴンだろ?」
 「そう。
 あんただって知ってるでしょ?」
 「あぁ、通勤に使ってた奴だよな。バンパーの左側と左後部タイヤ上にこすった傷があって、型式が・・・」
 「いや、そこまでは知らないけどね」
 パタパタと手を振ってラビの話を遮ると、ティナは店の外を見遣る。
 「それで・・・あたしケーサツに、もしかしたら知ってる車かも、って言ったんだよ」
 「ふぅん・・・で、ケーサツはスキン君の車を調べたんさ?」
 「ん・・・そりゃ無理だよ。
 だってスキン、あの日に山に登って、落雷に遭って死んだんじゃん?」
 「あぁ・・・そだな」
 「それで結局、同じ車種の車じゃないかって話になって、えーと、車の塗料とか壊れたライトの破片とか?調べてたよ。
 何日か後で店に寄ったおまわりさんが、『車種は同じだった』って教えてくれたから、『スキンの車で間違いない』って喋っちゃった皆にも、ちょっとは名誉挽回できたけどね」
 「そか・・・サンキュv
 「ちょっと待て、赤ウサ!」
 礼を言って踵を返したラビの腕を、ティナがカウンター越しにすかさず掴んだ。
 「あんた、なんか調べてんでしょ?
 協力してやったんだから、あたしにアイスおごりなよ」
 「・・・なにがいいんさ?」
 「ハーゲンダッツドルチェのクレームブリュレvv
 キラキラと目を輝かせたティナに、ラビは苦笑する。
 「よりによってお前、高いアイスを・・・」
 「なによ。『伝説』の時だって協力してやったじゃん」
 「お前らが妙なこと言うから、タタリだとか騒がれはじめたんだけどな!」
 ぶつぶつ言いながらも、ラビはティナの言うまま、高いアイスをおごってやった。


 コンビニエンスストアを出たラビは、道路を渡って向かいにある家の前に立った。
 住人が入院中のそこは、塀の一部が壊されたまま放置してあり、危険を知らせる黄色と黒のロープが渡してある。
 事故車の遺留品は既に警察が持ち去っていたが、ラビは塀に刻まれた傷と塗料をじっと見つめた。
 「スキンのワゴンと同じ車が、ブロック塀をこれだけ壊したってことは・・・」
 呟きながら、ラビは車が塀にぶつかった時のスピードと角度を想像してみる。
 幾度かシュミレーションした中で、確実だろうと思われる値を導き出すと、踵を返し、日曜で車通りの少ない道路を見やった。
 一車線ずつのそこは、細いがおおむねまっすぐな道で、スピードを出したくなる気持ちもわかる・・・が・・・・・・。
 「ブレーキ痕、なし」
 いくらハンドルがぶれたとしても、視界のいい中、まっすぐな道に沿う塀に突っ込むドライバーがいるとは思えなかった。
 そう、通常の状態であれば。
 「・・・飲酒運転、とか?」
 自身の呟きに、ラビは眉をひそめた。
 その言葉は、嫌な記憶とダイレクトにリンクしている。
 「こんな・・・雨の日だったな・・・・・・」
 ラビは、大粒の雨滴が降り注ぐ空を見上げた――――・・・こんな雨の日には、永久(とわ)に別れた人のことを思い出す。
 あの日・・・祖父の診療所を訪れた彼に、手を振った。
 『また近いうちに』と言った彼の言葉を、疑いもしない。
 そしてその数時間後、ラビと彼は再び対面した。
 ラビは蒼褪めて、彼は、更に蒼褪めて・・・・・・。
 『飲酒運転だろう』
 と、立ち会った警官が教えてくれた。
 目撃者の話では、車は事故を起こす前から、明らかに蛇行していた上に、ブレーキすらかけずに彼を轢いたと言う。
 物言わぬ屍となった彼の傍らで、呆然と涙を流す友の傷ついた姿に、ラビはようやく我に返ったものの、かける言葉も見つからなかった。
 「嫌な・・・雨さ・・・・・・」
 彼を轢き殺した犯人は、見つからなかった。
 見つかったとしても、あれから5年・・・事件は既に時効を迎えている。
 「やなことは、早く終わらせねぇと・・・」
 虚ろな声で呟き、ラビは、道路に散ったブロック塀のかけらを蹴飛ばした。


 雨の中をしばらく歩いて、目的の店に着いたラビは、店の駐車場をうろうろしている少女の姿に首を傾げた。
 店、と言っても、ケータリングを主にしているそこは、厨房と料理をパッケージする作業場が主で、入り口に面した狭いカウンター以外に人の興味を引くものなどはない。
 「なぁ・・・なにやってんさ?」
 声を掛けると、彼女はびくっと身を震わせ、おどおどと彼を振り向いた。
 ベージュ色の傘の下から覗いた、まだ幼さの残る顔には見覚えがある。
 「あ・・・一年の子だろ?」
 アレンの教室を覗いた時に見た顔だった。
 「え・・・あの・・・」
 困惑げな彼女に、ラビは懐こい笑みを向ける。
 「アレンのクラスの子だろ?
 俺、あいつの友達なんさ」
 「あ・・・はぁ・・・・・・」
 言った途端、傘を目深にさしかけて俯いてしまった彼女の様子に、ラビはふと思い至った。
 「もしかして・・・あんた、蝋花嬢?」
 「えっ?!なんで・・・!!」
 「アレンの名前聞いて、俯いちまったから」
 笑みを苦笑に変えて、ラビは蝋花に歩み寄る。
 「ごめんな。
 あいつ、別にあんたのこと嫌いってわけじゃないんさ」
 我ながらわざとらしいお節介だとは思いつつ、ラビはベージュ色の傘で隠れた蝋花を・・・『Flora』を見下ろした。
 「あいつ、うちのガッコ入る前から、リナのコト好きだったからなー。
 まぁ、リナにあのコエー兄さんがいる限り、あんたにも可能性がないわけじゃねーから、がんばんなv
 「そっ・・・そうなんですか・・・っ?!」
 思わず顔を上げた蝋花の、紅潮した顔に微笑んで、頷く。
 「ところでさっきから、どしたん?
 店のカウンターはこっちだぜ?」
 ラビが店のガラス戸を示すと、蝋花は真っ赤な顔を振った。
 「いっ・・・いえ、私・・・・・・」
 「ん?」
 笑顔で促され、蝋花は渋々続ける。
 「とっ・・・友達がバイトしてるんで、会えないかなって思ったんですけど・・・邪魔しちゃ悪いから・・・」
 「あぁ、そうなん?
 俺もこの店でバイトしてる友達いるから、一緒に呼んでもらうか?なんて子?」
 「いっ!いえっ!!いいんです!ごめんなさい!!」
 まくし立てるや、くるりと踵を返して駆け去った少女を、ラビは黙って見送った。
 「Floraは、Hebeを探しに来たんかな・・・」
 呟きながら店の中に入ると、ドアベルがカラカラと音を立てる。
 「いらっしゃ・・・あぁ、ラビ君」
 「店長、おひさーv
 なんか、こないだ大変だったんだって?
 ジジィが、店閉めんじゃねーかって心配してたさー」
 陽気に言うと、カウンターの向こうで店長は、不満げに眉をしかめた。
 「食中毒なんか疑われて、いい迷惑だよ、全く・・・。
 うちは、サラダに妙な海藻なんか入れやしないよ」
 「だよなー。
 やっぱあれ、山菜に毒草が混じってたんだと思うぜ、俺は。
 大体、コレステロール気にして食中毒になってりゃ、世話ねぇよな?」
 ラビの冗談に笑いかけて、店長は慌てて口を押さえる。
 「いや、笑い事じゃないんだよな。一人亡くなっていることは事実なんだから」
 とは言え、月が替わった途端、それは遠い昔のことのように人の口に上らなくなっていた。
 死人が出たのはつい先週のことだと言うのに、所詮は他人事、ということか。
 そんな思いを懐こい笑みで隠して、ラビは続けた。
 「理事長ん家って、ここのお得意さんだったんだろ?デイシャが言ってたさ」
 「そうだよ。定期のケータリングだね。
 メタボリック対策メニューが好評でさ、理事長はメタボメニュー始めた途端、1ヶ月の予定表組んでくれって注文してくれたんだよ」
 「1ヶ月間、ここのケータリング?
 ってコトは、いつなんのメニューを届けるか、1ヶ月前には決まってたってコトさ?」
 「うん。
 自分で作ると、どうしても好きなもの作っちまうからってね」
 「あー・・・それ、わかるさ。
 俺も、メシ当番の時はいつもめんどくさくてカレーになるんさ。
 こないだなんか、肉じゃが作れって言われたんに、出来上がったらなんでかコンニャク入りカレーになってて、ジジィがめっさキレちまったんさ」
 ラビの話に、とうとう店長が吹き出す。
 「そりゃあ、院長もキレるよ!
 それで、今日は潔くうちに来てくれたのか」
 「そう。
 うちはメタボメニューじゃなくていいから、キレやすいジジィが落ち着くようなもんみつくろって欲しいさ」
 「じゃあ、食べたくて食べられなかった肉じゃがとか」
 「・・・・・・嫌味さ?」
 ラビの言い様に、店長はまた笑い出した。
 「じゃあ、どうする?
 出来合いのものでいいなら、すぐに院長好みのメニューを選んであげるけど?」
 「ん。よろしくさv
 ラビが頷くと、店長が笑って踵を返す。
 その背に、
 「店長、デイシャは配達中さ?」
 と、問い掛けると、彼は惣菜を用意しながら頷いた。
 「そうだよ。
 食中毒事件の直後は彼も動揺してたから、事故起こしちゃいけないって休ませたけど、今日はいつも通り配達に行ってるよ」
 「へ?動揺って、なんでさ?」
 ラビが問い返すと、店長は肩越しに振り向く。
 「聞いてないのか?
 食中毒事件の日ね、彼が理事長宅に料理を配達したんだよ。
 調理に関係ないとは言え、びっくりしたんじゃないかな・・・」
 店長の呟くような声に、内心の興奮を抑えつつ、ラビはさりげない口調で話を変えた。
 「そっかぁ・・・。
 ところでさっきさ、うちのガッコの女の子が駐車場うろうろしてたんけど、ここってデイシャの他にもうちの生徒いたっけか?」
 「いいや?
 配達のバイトは、デイシャ以外は大学生だよ・・・なになに?彼女できたのか、あいつ?」
 「それは知んねv
 興味津々と問い掛ける店長に、ラビは意味深に笑い返す。
 「それよりさ、この店も女の子のバイト入れればいいのに。
 いくらケータリング中心ったって、カウンターにおっさんじゃ、儲からねーさ」
 「・・・それはほっとけ。
 ってか、ケータリングの店に惣菜を買いに来る客なんて、近所の人間しかいないんだから。
 カウンターにおっさんでもいいんだよ」
 「そらまーそうか」
 料理よりも旨い情報を仕入れたラビは、レジに向かう店長ににんまりと笑う。
 「じゃあさ、ご近所価格でまけてさv
 「はいはい。
 配送料分は引いてやるよ」
 「サンキューv また来るさねv
 愛想よく言い置いて、ラビは店を出た。
 「やっぱり・・・Hebeはあいつか・・・・・・」
 雨音にまぎれた呟きは、先程までの陽気さを失って苦い。
 「Urania・・・とんでもないことしてくれたさ・・・・・・」
 厚い雲に覆われて、今は見えない空を見上げたラビは、天体の女神を気取る者に忌々しく呟いた。


 同じ頃、朝から止まない雨を眺めながら、リナリーは自宅でコーヒーを淹れていた。
 「兄さん、コーヒーはいったよ」
 「ありがとーv
 茶菓子と共に、兄の作業場へ二人分のマグカップを運んで行くと、趣味のロボット作りにいそしんでいたコムイは嬉しそうな顔をあげる。
 リナリーは兄にマグカップを渡すと、だいぶ形になってきた人形に目を細めた。
 「もうじき完成?」
 「んー・・・もうちょっとかかるかなぁ」
 とは言え、自信ありげな口調に、リナリーはクスリと笑みを漏らす。
 「ホントに、ASIMOみたいな二足歩行ロボットができるの?」
 「できるよ!おにーちゃんを信じないのかい?」
 リナリーの疑わしげな口調に、コムイはことさら大仰な言い方をした。
 「お手伝いロボットが完成したら、リナリーの負担も軽減できるからねーv おにーちゃん、がんばるよv
 「あは・・・結局、片付けるのに時間かかるんだけどね・・・」
 そっと呟いて、リナリーは兄の隣に座る。
 「でも、コムリンを触れるくらい、余裕できてよかったね。
 こないだまで、兄さんホントに大変だったし・・・」
 「うん・・・でもまた、来月には触る暇なくなるんだよねー」
 「中間テストの準備か・・・・・・」
 う・・・と、眉をひそめてコーヒーをすすったリナリーの頭を、コムイは盛大に撫でてやった。
 「リナリーは頭イイから大丈夫だよぉv
 「・・・努力してるんだよ。兄さんが先生だし、悪い点取れないもん」
 成績が良ければ良いで、色々面倒な勘繰りをされるが、それは気にしないことにする。
 「偉いよねェv 自慢の妹だよvv
 ぎゅう、と抱きしめられ、リナリーの眉間から皺が取れた。
 「それにしても・・・色々事件がありすぎて、色んなイベントが中止になったのに、テストだけはしっかりやるんだね」
 「勉強は学生の本分でしょ」
 「そうだけど・・・」
 不満げな妹に、コムイは楽しげな笑声をあげる。
 「ボクが一年生の担当してたら、テストでも思いっきりいぢめてやったんだけどねー・・・でもあの子、中間の時にはいないか」
 つまんない、と呟いた兄に、リナリーは目を見開いた。
 「あの子って・・・アレン君?!
 中間の時にはいないって、どういうこと?!」
 悲鳴じみたリナリーの問いに、コムイも目を丸くする。
 「え?!聞いてなかったの?!アレン君・・・また外国に行くみたいだよ?」
 「ウソ?!そんなこと、一言も・・・!!」
 「あ・・・そうだね。ボクも、先週聞いたばっかだし・・・急に決まったんだって言ってたよ」
 やや気まずげに言えば、リナリーは更にコムイへ詰め寄った。
 「どうして?!」
 「後見人の要請だってさ。
 なんでも、外国にあるお父さんの財産の件で、アレン君の承認とかいるんだって」
 「じゃあ・・・すぐ帰ってくるの?」
 リナリーはほっと吐息するが、それにはコムイが首を振る。
 「それはわかんないって。
 ウォーカー先生のことはボクも知ってるけど・・・あの人の死後、ちょっと法的手続きが難しい事態が起こってたんだよね。
 アレン君の後見人はその解決を任されてたから、多分、おおむね片付いたんだと思うけど・・・場合によっては、向こうで暮らすことになるかもしれないって」
 「そんな・・・・・・」
 「難しいんだよね、相続って。
 ボクもパパンとママンが亡くなった時、手続きが大変で・・・リナリー?!」
 コムイの話を最後まで聞きもせず、リナリーは作業場を飛び出した。
 「なんで・・・言ってくれないんだよ!」
 部屋に戻り、携帯でアレンの電話にかけるが、コール音を発する前に、機械音声が電源が切られていることを伝える。
 「ひどい・・・!」
 苛立たしげに電話を切って、別の番号にかけると、相手はすんなりと応答した。
 「ラビ?!あのね、アレン君、ガッコ辞めるかも知れないって、聞いた?!」
 彼が知っていたなら怒鳴ってやろうと思っていたのに、ラビは、偽りなく驚いたようだ。
 「え・・・うん。今、兄さんに聞いたの・・・急に決まったって。
 アレン君に電話しても、電源切れてるんだ」
 『そっか・・・まぁ、あいつも急なことで、慌ただしかったんだと思うぜ?怒らないでやれよ』
 「うん・・・」
 慰めるように言われて、リナリーも頷いた。
 『ゴメン、ちょっと俺、用事あるから切るな?』
 「あ・・・うん、ごめんね、いきなり・・・」
 慌てて言うと、電話の向こうで笑う気配がする。
 『じゃあな』
 「あ・・・」
 最後の一言に、ラビらしくない屈託を感じて・・・リナリーはしばらく、困惑げに手の中を見つめていた。



To be continued.
 














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