「雪ー♪」
回廊もあるのに、わざわざ雪の積もった中庭に出て、アレンは最初の足跡を刻んだ。
既に雪雲は晴れ、冬の透明な陽光が、たっぷりと降り注いでいる。
胸の中まで洗われそうな、冷たくも清澄な空気を深く吸い込んで、アレンは必要もないのに中庭を走り回った。
「白ウサギが、雪の中ではしゃぎ狂っておるようだな・・・」
苦笑交じりの声に、アレンが回廊を見遣ると、小柄な老人が、目を和ませて彼を見ていた。
「あ!おはようございます、ブックマン!」
アレンが、雪を蹴立てて駆け寄ると、老人は、白い息を吐きながら頷く。
「ウチの小僧は一緒ではないのか?」
「いっつも一緒に遊んでるわけじゃないですよ」
思わず吹き出したアレンに、老人はやや首をかしげた。
「いつも一緒ではないか、おぬしら」
「あれ・・・?そうですっけ・・・?」
しかし、優秀な記録者である老人が言うのなら、そうなのだろう、と、納得して、アレンは、苦笑した。
「まぁ・・・あれはあれで、雪の上を転がりまわっておるのだろう」
「あはは!雪の中ではしゃぎ狂う茶トラですね 」
「どちらかといえば、犬のような気もするが・・・。
ところで、早く雪を払わぬと、風邪を引くぞ」
「あっ!」
ブックマンが、アレンの白い頭の上で、早くも溶け出した雪を示すと、アレンは慌てて雪をはたき落とした。
「食堂で、温まってくるといい」
「はい!」
アレンの返事に、にこりと笑うと、既に朝食を終えたらしい老人は、彼とは逆の方へと、のんびりと歩いて行った。
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