「ちーっす!」
「電器屋でーす!」
「・・・・・・・・・」
大量の電飾を持って、食堂に乗り込んできた三人の中で、未だ、神田だけは憮然としていた。
「アラアラ?電器ならもう、間に合ってるわよー?」
厨房から、からかうような声が返って、アレンとラビは、カウンターに寄る。
「姐さん、俺ら、コムイの命令で、電飾を飾りに来たんさ」
「ホコリ立てないように気をつけますから、窓辺を飾らせてください」
「任務完遂できなかったら、コムイが俺らを感電死させるって言うんさぁー・・・!」
「お願い、ジェリーさん!!」
あえて芝居がかった口調で、大仰に頼み込む二人に、厨房のシェフ達から笑声が沸いた。
「わかったわ。
アンタ達が殺されちゃったら、寂しくなるものね・・・って!
アラ?!アラアラ?!
神田!アンタまでお手伝いするの?!」
心底驚いた様子で、驚嘆の声を上げるジェリーに、しかし、神田は憮然とそっぽを向く。
と、
「ユウ、いい加減、諦めるさ。
コムイの『お願い』は、絶対断れないようにできてんだからさ」
なだめるように言いながら、ラビが、早速食堂の窓辺に脚立を立てた。
「そうですよ。我が身が可愛かったら、逆らわないことです」
脚立に昇ったラビに、電飾の束を渡しつつ、アレンも言うと、神田の目が更に吊り上がる。
「てめぇら、なんでそんなに気概がねぇんだよ!!」
「気概はありますよー。
でも、勝てないってわかってる勝負は、避けた方が賢明ですよ。
それが、なんの得にもならない上に、後で大変なことになるってわかってるなら、なおさらです」
アレンの言葉に、電飾を飾り付けていたラビも、何度も頷いた。
「そうそう。ユウの国のことわざでも、言うじゃん?長いものには巻かれろって」
「英語だと、It’s no use kicking
against the pricks.でーす!」
「なんだ、痛みに強く抗議しても無駄って!訳文合ってんのかよ!」
すかさず補足したアレンに、神田が怒声を上げる。
そのまま、彼はイライラと、吊り上がった目で食堂を見渡したが、いつも賑やかなそこは、夜中のように人がまばらだった。
「なんで今日に限って、こんなに人がすくねぇんだ?!」
仕事を押し付ける相手を見出せず、神田が更に怒声を上げる。
と、
「みんな、チャリティーに行っちゃったのよ」
たまたま、料理を持って通りかかったジェリーが、あっさりと答えた。
「アンタ達、忘れてるかもしんないけど、ここはカトリック教団で、エクソシストはカトリックの聖職者なのよ?」
「あ・・・」
ジェリーの指摘に、アレンが気まずげな笑みを浮かべる。
「じゃあ、みんな・・・?」
「えぇ。
先輩のファザーもマザーもブラザーもシスターも、朝早くから、クリスマス・チャリティーやクリスマス・ミサに出張してるわよ」
アレンの問いに、にっこりと答えたジェリーの手元から、フライドチキンが一つ消えた。
「俺はブックマンだから、カンケーねーけどな!」
脚立の上からつまみ食いしたラビは、厳しい料理長に脚立を蹴倒され、床へのダイビングを強要された。
|