礼拝堂には既に、多くの人が集まっていた。
が、そこはとても静かで、厳かな雰囲気に満たされている。
それぞれの手に、明かりを灯したキャンドルを持つ人々の中に、ミランダを見つけ、アレンとリナリーは、そっと歩み寄って声を掛けた。
「あら、早かったのね」
「急いで着替えたもの」
にこりと笑ったリナリーに、ミランダは密やかな笑声を漏らす。
「また、ブーツを発動したのかと思ったわ」
「し・・・しないわよ!
ね?!アレン君、歩いてきたわよね?!」
「はい。一緒に歩いてきました」
慌てて言い募るリナリーと、クスクスと軽やかな笑声をもらすアレンに、ミランダは、微笑んだ唇に指を当て、祭壇を示した。
司祭の、登場だ。
間もなく始まったミサに、礼拝堂は司祭の声の他は、厳かに静まり返った。
楽しげな聖夜の劇や聖歌は、昨日のうちに終了している。
今日は、聖書の朗読と説教が主で、子供達には退屈なはずだが、厳かな雰囲気に、誰も騒がず、おとなしくしていた。
それでも、長い説教に飽きてきたか、周りに視線をさまよわせた子供たちに、アレンはにこりと笑って親指を立てる。
―――― がんばれ、あと少し!
いたずらっぽくウィンクすると、気づいた何人かは、口元に笑みを乗せ、頷いた。
と、説教の声が、低く沈む。
「今年は特に・・・犠牲者が多く出たと聞いています」
はっと、息を呑む気配が、礼拝堂に満ちた。
アレンも、唇から笑みを消す・・・・・・教団に多大な犠牲を強いた人間の、最期を看取ったのは彼だった。
彼は・・・スーマン・ダークは、家族の元に戻りたいと・・・ただ、そう願っただけ・・・・・・。
だが、その心情を知らない者や、彼のせいで親しい者を喪った者達には、憎いだけの存在だろう。
波が寄せるように、いつしか嗚咽に満たされていた中で、一際、大きな嗚咽が聞こえた。
ふと見れば、科学班のジョニーが、顔を覆って泣いている。
この中でアレンと、彼だけが、スーマンの死を悼んでいた。
多くの人間が集ったこの場で、ただ二人だけが――――。
悲しみに満たされた堂内に、再び、司祭の静かな声が響き渡った。
「―――― とても哀しいことですが、彼らは彼らの、守るべきものを守るために戦い、神に召されました」
―――― 守るべきもののため・・・・・・。
アレンは、この司祭の話を聞くのは初めてだったが、『神のため』などと言わない彼に、好感を覚えた。
「彼らの冥福と、今なお戦場に在る者、そして、これから戦場に赴く者達のために、祈りましょう」
司祭の言葉と共に、傍らのリナリーが、す、と、床に跪く。
アレンと共に、あの戦場を経験したリナリーも、とめどなく流れる涙で頬を濡らし、一心に祈っていた。
「神よ、願わくは・・・・・・」
左手の十字架に軽く口付け、アレンは呟く。
「あの者に・・・迷える羊に、冥福のあらんことを・・・・・・」
アレンの呟きが聞こえたか、ジョニーは、はっと顔を上げ、アレンを見た。
アレンが頷いてみせると、彼もしゃくりあげながら深く頷き、震える手を、固く組み合わせた。
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